Rebel Wolvesが開発を手がけ、バンダイナムコエンターテインメントより2026年9月3日に発売予定のダークファンタジーアクションRPG「The Blood of Dawnwalker」。メディア向けに行われたプレビューイベントでの先行プレイの模様をお届けする。
本作は、戦争と黒死病によって荒廃した14世紀の中世ヨーロッパを舞台に、影に潜んでいた吸血鬼たちが牙を剥く凄惨な世界を描いた作品だ。プレイヤーは、昼は人間、夜は吸血鬼となる青年コーエンを操作し、故郷サンゴラ谷を支配する強大な吸血鬼の領主ブレンシスから家族を救い出すための過酷な旅へと身を投じていく。

今回は、プレビューイベント用に用意されたベータ版をプレイした模様を紹介。範囲はゲームの導入となるプロローグから、その後オープンワールドへと解き放たれる一部のエリア(約4時間)をまるごと遊べる内容となっており、本作の核となるナラティブ・サンドボックスの魅力の一端を肌で感じることができた。
なお、本記事では実際に触れて分かったプレイフィールはもちろん、プレイ後に行われた本作のナラティブディレクター、ヤコブ・シャマレク氏へのインタビューの模様もあわせてお届けしていく。
また、今回体験したゲームは、現在開発中のバージョンとなる。そのため、今後のアップデートにより内容が変更・修正される可能性がある。特に日本地域で発売予定のCERO Z版においては、流血表現や四肢欠損などの描写が調整・変更される可能性が高い点、あらかじめご了承いただきたい。
今回のプレイ動画はこちら(年齢制限あり)
https://www.youtube.com/watch?v=Su3UaWQnJeI
【ストーリー&世界観】黒死病の絶望に瀕した村と、突如突きつけられる過酷な運命
本作の舞台は、血塗られた紛争が大地を覆い、生き残った者たちを黒死病が蝕む14世紀の中世ヨーロッパ。プロローグの舞台となるのは、カルパティア山脈の神秘的な地域サンゴラ谷に位置する、主人公コーエンの故郷ラスレアという小さな村だ。
今回の体験プレイでは、このラスレア村を起点とした重厚なプロローグのドラマを体験することができた。村は黒死病の蔓延によって甚大な被害に苦しんでおり、コーエンの家族もその渦中にある。傭兵上がりの厳格な父ピーターからの頼みごとを聞いたり、病に蝕まれる母エスメの看病、そして幼い弟妹たちの面倒を見たりと、長男であるコーエンの優しくも責任感の強い人柄が垣間見えるエピソードが描かれる。


また、村で暮らす他の村民たちと会話を交わすことで発生する、いわゆるサブクエスト的な寄り道要素も豊富に用意されており、この世界が持つ陰鬱ながらもどこか温かみのある空気感をじっくりと味わうことができた。


しかしそんな平穏は、サンゴラ谷を掌握したヴラキリー派の首領・ブレンシスという強大な吸血鬼の登場によって一変する。不気味な儀式によって村を支配していく吸血鬼の脅威に立ち向かわなければならない場面が訪れ、その激動のドラマの中で、コーエン自身もまた半分人間、半分吸血鬼のドーンウォーカーとしての呪われた力に目覚めてしまうことになる。
この怒涛のプロローグが終わりを迎えると、ゲームは広大なオープンワールドのエリアへと移行する。そしてその瞬間にプレイヤーに科せられるのが、「30日間(30夜)のタイムリミットのなかで、囚われた家族を無事に救い出せ」という本作のメイン目的だ。世界へと解き放たれる爽快感と同時に、ここから本当の戦いが始まるという強烈な緊張感が襲う、極めてドラマチックなゲームの導入となっていた。



【ゲームシステム】進めるか、準備するか 最も重要なリソースとしての時間
プロローグが終わり、オープンワールドへ移行すると同時に提示される本作の根幹システムが、時間(30日間)という有限な資源の概念だ。プレイヤーには、家族を救い出すためのメインミッションとして30日の昼夜という明確なタイムリミットが与えられることになる。
ここで非常に特徴的なのが、ただ広大なマップを歩き回ったり、探索を楽しんだりしているだけでは、ゲーム内の時計は進まないという点だ。時間は、クエストの達成やアビリティ(パーク)の取得など、特定の重要なアクティビティを行った瞬間に初めて前進する仕様になっている。つまり、時間の流れのコントロールは完全にプレイヤー自身の手に委ねられているのだ。
このシステムの存在により、本作が掲げるナラティブ・サンドボックスの面白さが一気に際立ってくる。ゲームの構造上、限られた時間のなかで用意されている全てのクエストをクリアすることは難しい。そのため、「真っ先に救出へ飛び込むか、それとも時間を消費してスキルを磨き準備を整えるか」、「独りで強行突破するか、仲間を探して同盟を結ぶか」という、常に贅沢で切実な“取捨選択”をプレイヤー自身が下していくことになる。
タイムリミットがあるからといって、単にプレイヤーを焦らせるだけのストレス要素ではなく、自分の1分1秒の選択が、この世界と家族の運命を左右しているという極めて高い没入感と緊張感を生み出す装置として、この時間の概念が機能しているのが見事だと感じた。


【昼夜のサイクル】プレイスタイルを劇的に変える人間と吸血鬼の二面性
昼は人間、夜は吸血鬼として活動する独自のデュアル・ゲームプレイループは、本作の探索と戦闘の双方に劇的な変化をもたらす大きな特徴だ。ゲーム内の時間は特定の行動によってダイナミックに変化していくが、その時間帯によってコーエンのアビリティや目標達成への道筋そのものがガラリと姿を変えることになる。
昼(人間状態):吸血鬼特有の凄まじい身体能力や残虐な力は使えないものの、剣を手に取り、強力な魔法を操りながら敵に立ち向かう。夜のように周囲を警戒したり、吸血鬼としてのリスクを常に気にする必要がないため、じっくりと世界の調査や村民との対話に集中できるのが強みだ。
夜(吸血鬼状態):重力に逆らうような残忍な自然の力と一体になり、人間を超越した超常的なスキルや鋭い爪を駆使した強力な立ち回りが解放される。戦闘や探索効率は大幅に強化されるものの、その大きな長所の裏には、吸血鬼として生きることのリスクや短所(ジレンマ)も常に存在し、プレイヤーに戦術の適応を迫ってくる。
成長要素であるパークの育成ツリーも人間専用、吸血鬼専用、共通の3つのカテゴリに分かれており、人間のままでいることに拘るか、それとも呪われた力を受け入れるか、どちらの力をどれだけ育成していくかによって自分だけのプレイスタイルを構築していく手応えを感じられる。



【バトル】4方向の駆け引きか、直感的なスピード感か 2つの戦闘システム
昼夜で姿を変えるコーエンの戦術を支えるアクション要素として、非常にユニークかつ画期的だったのが、プレイヤーの操作の選択(ボタンの使い方)次第でその場に応じて使い分けることができる2つの戦闘アプローチだ。
方向指定型戦闘(Directional):コーエンの攻撃と防御(上・下・左・右)の4方向を自在に操作するテクニカルなスタイル。敵のアタックモーションを正確に見極めて受け流し(パリィ)や攻撃を繰り出す必要があり、正しく実行できれば特定のバフ(強化効果)を得られる可能性があるなど、あらゆる戦闘のリズムと流れを自分なりに作り上げる深い駆け引きが楽しめる。
オムニアタック&オムニブロック(Omni):攻撃の方向を意識する必要がない、シンプルで直感的なスタイル。スピード感がある楽しいアクションが展開し、一般的なアクションRPGに慣れているプレイヤーなら最初から反応の良い操作感ですぐに手に馴染む操作性が魅力だ。ただし、この従来の戦闘方式(オムニ)は、受け流しを行った際のスタミナ消費量が方向指定型よりも多くなるという明確なデメリット(制限)も存在する。
わざわざ設定をいじらなくとも、強敵と1対1で対峙する際は方向を意識してバフを狙いながらじっくりと立ち回り、多数のザコ敵を爽快に捌く際は方向を気にせずオムニのスピードで圧倒するなど、自分の操作次第でバトルのリズムを自在に適応させられるのが非常に新鮮だった。


【オープンワールドの探索】ワクワクする広大な世界と、吸血鬼の渇望が招く恐るべき“事故”
プロローグの激動のドラマを経て、コーエンがドーンウォーカーへと変貌を遂げると、いよいよ広大なオープンワールド(今回のデモでは特定のエリア)の自由な探索が解禁される。
画面に突きつけられた「30日以内に家族を救う」という切実なメイン目標に向かって直進しなければならない緊迫感はあるものの、目の前に広がるフィールドの密度が高く、ゲーマーとしては「あそこには何があるんだろう」という探索へのワクワク感がどうしても勝ってしまう。
幸い、どれだけマップが広大であっても移動が苦になることはなかった。フィールドには祠のようなスポットが点在しており、一度発見すればファストトラベルスポットとして機能し、瞬時に高速移動が可能になるため、広大なサンゴラ谷を非常に快適に駆け回ることができた。
そうして世界を巡っていると、行く先々で様々なロケーションやサブクエストが発生するのだが、ここで筆者は本作のシステムが持つ本当の恐ろしさ(そして面白さ)に直面することになる。

プロローグをプレイしている時には気が付かなかったのだが、吸血鬼の状態で行動する夜間は、特に注意しなければならない致命的な仕様がある。それがHPの減少=血の飢えに直結しているという点だ。
戦闘でHPを削られた飢餓状態のまま、何気なく周囲のNPCに話しかけようものなら、なんと会話の選択肢を選ぶ余地すら与えられず、コーエンが本能のまま問答無用で相手の血を吸い、噛み殺してしまうのである。
コーエンは本来、長男として幼い弟妹を世話し、他者への思いやりを深く持って育った青年だ。そんなエンパシー(共感)に溢れた彼が、血の飢えという呪いの前に理性を失い、救ったはずの人間を噛み殺してしまう――。この設定と実際のプレイで起きる容赦ないギャップには、文字通り唖然としてしまった。
しかし、これこそがまさに本作の恐ろしくも魅力的な部分だ。この絶望的なハプニングをきっかけに、それまで善人として生きてきたロールプレイを「こうなったら修羅の道を行くしかない!」とダークサイドへ割り切って変針させていくなど、想定外の物語がリアルタイムに紡がれていくライブ感は、他のRPGでは味わえない本作ならではの醍醐味だと確信できた。

プレイヤーの選択と“覚悟”が試される、新時代のナラティブ
約4時間にわたる体験プレイを終えて強く印象に残ったのは、本作が単に吸血鬼の力で無双するアクションRPGではなく、プレイヤー自身のモラルや選択の重さを徹底的に追求した極めて尖った作品であるということだ。
限られた30日間という時間のなかで、どのようなアプローチで家族を救うのか。あるいは、システムや自らの過ちによって予期せぬ運命の脱線が起きたとき、それをどう受け入れて物語を紡いでいくのか。人間と吸血鬼という二面性を軸にしたゲームプレイは、一瞬一瞬に本物の“覚悟”を要求してくる。
この唯一無二のプレイ体験と、底知れない自由度を持つナラティブ・サンドボックスの裏側には、一体どのような開発哲学が隠されているのだろうか。ここからは、本作の物語と世界観の構築を率いるナラティブディレクター、ヤコブ・シャマレク氏へのインタビューの模様をお届けする。
【インタビュー】ナラティブディレクター、ヤコブ・シャマレク氏が語るゲームデザイン哲学
プレイの後には、「The Blood of Dawnwalker」ナラティブディレクターのJakub Szamałek(ヤコブ・シャマレク)氏へのインタビューが行われた。本作の目指すサーガの展望や、ナラティブ・サンドボックスの裏側に隠された意図をじっくりと訊いた。

――まずは自己紹介からお願いします。
「The Blood of Dawnwalker」ナラティブディレクターのJakub Szamałek(ヤコブ・シャマレク)です。本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。そしてデモ版をプレイしていただき本当にありがたいです。このゲームは数年にわたって開発している作品なのですが、自身の一部をこの作品に注ぎ込んでいるので、皆さんにプレイしていただけてとても嬉しいです。
私のバックグラウンドを少しお話しすると、現在の会社(Rebel Wolves)を設立する前は、「ウィッチャー3 ワイルドハント」「サイバーパンク2077」などに携わっていました。
――本作におけるプレイヤーの選択は、次回作や今後の展開にどのように影響を与えていくのでしょうか。答えられる範囲で教えてください。
この物語は長大なサーガとして組み立てており、本日体験していただいたデモ版はその第1部となります。物語は中世から始まり、何部作かを通して、最終的には現代にいたるまでを描く予定です。
そして、1つの作品の中での重要な選択肢やその背景は次のゲームへと持ち越されるので、きちんとそれぞれの作品が繋がっているという実感を持ってプレイできるように組み立てています。また、それぞれのプレイヤーにとって全く違う体験となるようにも気を配っています。
――吸血鬼というとコウモリのイメージが強いですが、このゲームでは象徴として赤い虫、蛾のようなものが描かれていました。これにはどういったイメージや関連性があるのでしょうか?
あの蛾の存在は、ゲーム内でとても重要な位置を占めています。あまりネタバレはしたくないのですが、蛾は別世界や別次元というものを表しており、この世界の吸血鬼はそれと深く関連しているのです。
――今回のゲームの中で、例えばNPCのキャラクターなどと特別な関係(恋愛など)になれたりするのでしょうか。
色々なキャラクターと仲良くなり、いずれは特別な関係になることも可能です。ただ、そこで気をつけないといけないのが、夜に出会うキャラクターというのは、どれだけ親しくなった相手であっても全員が血を吸える対象でもあるということです。
主人公のコーエンは半分人間、半分吸血鬼なので、そのバランスをきちんと考えました。吸血鬼の姿であれば自由に強力な動きができるのですが、気をつけないと大事な人も噛み殺してしまう可能性があるという、利点と欠点が両方存在する(表裏一体の)バランスを作りたかったのです。
――プレイの仕方によって展開がかなり変わるということですが、1回あたりのクリアの大体のボリューム感、プレイ時間はどれくらいでしょうか。
プレイヤーによってプレイ時間は大きく異なります。私たちの開発の柱の1つに、ゲーム内に見えない壁(制限)を作らないというものがありました。
プロローグが終わるとオープンワールドが開かれますが、その後は本当に自由です。家族を救うという明確な目的も存在しますが、極端な話をすれば、1日目にその家族を救うことも可能です。非常に難しいですが、一応物理的には可能にしています。
そのほかにも、探索を自由に楽しむことも可能ですし、スキルやレベルアップを最大までやり込むことも可能です。自由に探索する場合であれば、60時間以上は楽しめるボリュームになっています。
また、敵キャラクター(敵対勢力)がただその場所に留まっているだけではない、という点も非常に重要なシステムです。ゲーム内には敵対勢力との関係を示すメーターが存在します。プレイヤーがアグレッシブに行けば行くほど、彼らを倒せば倒すほどそのメーターが上がっていき、敵の行動も変わっていきます。プレイヤーが攻撃的になれば、敵もよりアグレッシブに行動するようになります。敵対度が高くなりすぎると、向こうから賞金稼ぎがこちらを倒しに来るというシステムもあります。
――30日以内に家族を救うという制限の中で、もし30日を過ぎてしまったときは、また別の目標ができたりするのでしょうか。
もし30日間のタイムリミットが過ぎてしまった場合は、家族は命を落としてしまいます。しかしそこで終わりではなく、家族を失った後は復讐劇という新たな目的へとシフトすることになります。
――逆に、30日以内に家族を無事に救い出した場合は、そこでハッピーエンドとして物語が終わるのでしょうか。それとも、そこからまた新しい選択肢や展開が生まれるのですか。
あまりネタバレはしたくないのですが、家族を救い出した後、その地域や登場人物、そして救われた家族がどのように変わっていくかを見届けてほしいです。
家族の救い方には複数のルートが存在し、まっとうな方法もあれば、驚くようなサプライズも用意しています。本作の舞台は黒死病が蔓延し、吸血鬼が暗躍する過酷な世界です。プレイヤーの様々な選択によって、その地域が迎える結末も複数存在しています。
――30日間のプレイヤーの目標は家族を救うことですが、人間として生きるか、吸血鬼として生きるかで、家族と共に暮らす時の幸せの形も違ってくるのではないかと感じました。家族を救うという意味は、1つだけではない深みがあるのでしょうか。
私たちは単なるハッピーエンドだけではなく、白黒つけられないグレーゾーンの物語を描くのが好きなので、善と悪ではない部分というのも常に考えています。ご指摘の通り、コーエンが自分自身の人間性をどこまで保てるかというのは、ゲーム内でとても重要な位置にあります。
本作には、プレイヤーのプレイスタイルにゲームが気づくという仕組みがあります。例えば、プレイヤーが吸血鬼としての欲望に溺れてプレイを続けていると、ゲームはそれに気づいて、その生き方に相対するような展開を突きつけてきます。逆に、少しでも人間性を保ちたいというプレイの仕方をしていると、ゲームがそれに気づいて、それに応じたストーリーを返してくれます。
吸血鬼としての力を多用すれば強力なスキルがたくさん解放されますが、一方でモラルのシステムも連動しており、モラルを保ったプレイをしていれば、それに沿ったストーリーが展開していくというバランスになっています。
――悪行を重ねていたプレイヤーが急にいいことをしても周囲のNPCに信じてもらえなかったり、逆に善人プレイをしていたのに急に裏切ると周囲が激しくショックを受けるといった、反応の違いはあるのでしょうか。
キャラクターによっては、まさにそういう状況は起こります。すべての人ではありませんが、プレイヤーが裏切りの行為を行った際、それに激しくショックを受けるNPCは確実に存在します。
私自身のゲームデザインの考え方としては、選択の重さを最も重視しています。とある選択肢を選んだときに、ゲーム内のシステムとしてはネガティブな反応が返ってきたかもしれない。けれど、その後、夜寝るときにプレイヤー自身が「あの選択は本当にいい選択だったのだろうか……」と、現実世界でもずっと悩み続けてしまうような、そんな体験を生み出すゲームを作りたかったのです。
――世界観を作るうえでビジュアルやサウンドでこだわったポイントをお聞かせください。
ビジュアルに関しては、やはり中世の絵画などからインスピレーションを受けました。ゲームをプレイする際、作中に出てくる絵や本をよく見ていただくと、当時のカルチャーをモチーフにしていることが分かってもらえると思います。
音楽はスラビック・ミュージックやケルト音楽、そしてカルパティア地方の伝統的な山岳音楽などから強いインスピレーションを受けています。私たちは東欧の伝承などをうまく取り入れることで、他のRPGとは違う独自のユニークさを表現したかったのです。
――本作の核となるナラティブ・サンドボックスは、発表時から非常に重要な要素としてアピールされています。これを作り上げるのはどれほど大変だったのでしょうか。また、今後もこのシステムをスタジオの強みとしていく予定はあるのでしょうか。
非常に難しかったです。既存のオープンワールドゲームにある広大な世界と、そこに点在するクエストという構造をさらに拡張したわけですからね。ただ、すべてが初めての挑戦ですので、自分たちでシステムを作り上げ、そこからさらに学んでいくというプロセス自体を楽しみながら開発しています。
また、本作にはTRPGの概念も取り入れています。ゲームが用意した選択肢を選ぶだけでなく、プレイヤーが今、ここで何をしたいのかを自由に表現できる場にしたかったからです。
そのため、システムの構築は本当に困難を極めました。例えば「このクエストをこなした後に、あっちのエリアに行くとどうなるか」「特定のNPCを誤って殺してしまった後にそこへ行ったら、世界はどう変化するのか」といった無数の繋がりを、すべて確認し、制御し続ける作業は非常に大変でした。
このナラティブ・サンドボックスという手法は、間違いなく私たちのスタジオにとっても重要な要素の1つになりますし、今後はこれをキーとして様々な作品を展開していきたいと考えています。
――プロローグの中で、母親のために薬を作る際、事前に聞いたNPCの話通りに正しく実行できるかを試される場面がありました。このようにプレイヤーがNPCの話をきちんと聞いていたかを試すようなギミックは、ゲーム内の他の部分にもあるのでしょうか。
はい。私たちはプレイヤーが話をきちんと聞くこと、つまりダイアログ(会話文)をしっかりと読むことを非常に重要視しています。プレイヤー自身の行動や観察が、必ず何らかの結果として世界にフィードバックされるという体験をゲームの冒頭(プロローグ)で提示したかったのです。
なので、しっかりとNPCの話を聞いて推理しなければならないようなクエストは、本編にも存在します。
――主人公のコーエンは、優しそうでありながらどこか影のある雰囲気が非常に魅力的です。アバターとしての選択肢の自由度と、コーエン自身の確固たるキャラクター性のバランスを取るうえで、意識したことはありますか。
コーエンというキャラクターを形作るにあたり、開発チーム内でも数え切れないほどの議論を重ねました。ありがちなあらゆる修羅場をくぐり抜けてきたベテランの強者といったキャラクターではなく、それとは全く違う主人公像を作りたかったのです。
コーエンは自分の感情を周囲にオープンにしますし、とても新鮮で人間味のあるキャラクターです。彼の最大の特徴として私たちが強く打ち出したかったのがエンパシー(共感)です。彼は他人の話を真摯に聞きますし、相手の立場に立って物事を考えることができる、そんなキャラクターを目指しました。
だからこそ、ゲーム内で選択を迫られたときに、現実世界と同じように「この決断によって、誰かの運命が変わってしまうかもしれない」という躊躇や、心の葛藤をプレイヤー自身にもシンクロして感じてほしかったのです。
そして、私はビデオゲームという媒体こそが、そうした人間のジレンマを表現するうえで最も優秀なメディアであると信じています。現実の私たちが、ゲームという安全な架空の世界を通して、様々なモラルのコンパスを使いながら決断を深掘りすることができる。プレイヤー自身が様々な選択肢を通してジレンマをリアルに経験できることこそが、ビデオゲーム最大の強みであると思っています。
――ネズミの血を吸った時にコーエンが非常にリアルで嫌そうなリアクションをしていました。人間やそれ以外の生物において、血の質やシステムとしての影響はあるのでしょうか。
やはり人間の血が最も栄養価が高く、ゲーム内でも最も効率の良い回復源です。一方で、ネズミなどの動物の血は、あまり効率の良い回復手段ではありません。
また、作中では他の吸血鬼の血を吸うことも可能なのですが……それがどのような結末を招くのかは、ぜひゲームを通してその結果を確かめてほしいです。
――他人の家の中に入ってアイテムを盗む行為は、ゲーム内で何かペナルティなどの影響があるのでしょうか。
盗みの影響はちゃんとあります。ただ、それは長期的に影響を与えるような重いものではありません。ゲーム内の単純な犯罪取り締まり機能の1つであり、盗みを重ねると罰金を科される、といったシステムになります。
――今作はクエストをこなしたり、アビリティを取得していくことでゲーム内の時間(日数)が進むシステムになっています。30日という制限がある中で、全てのパークを取ろうとすると時間が足りなくなるといった、プレイヤーの取捨選択が発生するのでしょうか。また、いわゆる取り返しのつかない要素はどこに集約されているのでしょうか。
まず前提として、完全にアイテムやクエストを取り逃して二度とアクセスできなくなる、といった状況は、本当に数少ないケースでしか起こらないように設計しています。
それよりも、プレイヤーに最も大きな影響を与えるのは、特定のNPCを待たせすぎたことによる世界の動的な変化です。
メインの30日間というタイムリミットとは別の部分で、世界時間は非常にダイナミックに変化しています。例えば、とあるクエストのイベントラインが始まり、プレイヤーがそれを無視してしばらく放置していると、そのクエストはそのままずっと静止して待っているわけではありません。裏で時間が進んでいるため、状況が最悪の方向に進んだり、結果が変わっていったりということが起こります。
今の時代、プレイヤーの皆さんにとって時間は何よりも貴重なものです。だからこそ、現実世界における時間の尊さ・切迫感をゲーム内にも落とし込みたかった。時間制限や時間経過のシステムは、プレイヤーに悪い意味でのストレスや緊張感を与えるためだけの機能ではなく、ゲームへの没入感を極限まで高めるための装置として入れています。何かを決断し、行動を選択する際の一瞬一瞬の重要度が上がるように作っていきました。
――最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
日本のプレイヤーの皆さんが本作をプレイしてくださる日を、開発チーム一同、本当に楽しみにしています。皆さんの感想やリアクションを見るのが、今からものすごく楽しみです。とっても情熱(パッション)のあるプロジェクトですので、ぜひ発売を楽しみにお待ちください。よろしくお願いいたします!

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※画面は開発中のものです。
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