「人の財布」や「かがみの特殊少年更生施設」を手掛ける第四境界の新たな日常浸食型イベントとして、本日7月17日から7月31日まで開催される「050-5893-5336展」(ひとのでんわ展)。関係者プレビューに参加してきたので、こちらの模様をお届けする。
「東京建物 ぴあ カンファレンス」にて、開催される新たな日常侵蝕型イベント「050-5893-5336展」(ひとのでんわ展)。ここでは、前日7月16日に実施された関係者向けプレビューにて体験したイベントの魅力をネタバレにならない程度にレポートをしていく。また、記事の後半では「第四境界」総監督・藤澤 仁氏へのインタビューも掲載しているので、あわせてチェックしてもらいたい。

「時空のテレホンカード」で会話の記録を聴いて謎に迫る
「050-5893-5336展」は、本展のためだけに開発された「時空のテレホンカード」を使って電話に残された会話の記録を聴いて回ることで、物語の謎に迫っていく内容となっている。
最初に訪れる部屋「歴史の展示室」は、電話の変遷を辿ることができるというもの。時代ごとの電話機や人々の暮らしに触れながら、これから始まる物語の土台となる電話という存在の変遷を体感することが可能だ。昭和生まれの筆者が懐かしく感じる黒電話だけでなく、それ以前の磁石式公衆電話機やダイヤル式ピンク電話といったものまで並んでいる。

携帯電話も第1世代だったデジタル・ムーバから、その後の折り畳み式やPHS電話機など、多彩なものが用意されており見ているだけでもおもしろい。時空のテレホンカードと連携したスマートフォンから飛べる特設サイトで各電話の説明を読むことができるのも興味深いだろう。

その次は2つの体験ルートを選ぶ「問いかけの部屋」へ。人と人との意識を直接つなぐ技術の開発に携わった人々の通話の記憶を辿る「Black」と、やがて怪物と呼ばれるひとりの少年を取り巻く人々の通話の記録を辿る「Red」があり、参加者はどちらか一方を選ぶことになる。事前に「Red」は暴力などの表現があることを注意されるが、迷わず「Red」を選ぶ参加者が多かったのが個人的にはおもしろかった。

筆者は「Black」を最後までプレイさせていただいたあと、取材ということで特別に「Red」も見せてもらった。ここでは「Black」のレポートを書くが、「Red」も同等の進行だったので参考にしてもらいたい。
次の部屋では電話に残された「通話の記憶」を聞いて、崩壊した世界を調査することになる。各電話機が設置されている台に「時空のテレホンカード」をかざし、受話器を手に取ることで、実際に電話の音声を聞くことができるという仕組み。「歴史の展示室」にあった各時代の電話機から通話を聴くことができるというわけだ。凝っていたのはコール音で、実際にその電話機のコール音ではじまるため、本当に電話を使っている気持ちになる。






久々に触った黒電話の受話器が重く「こんなに重かったっけ?」と驚いたり、久々に触ったPHSが懐かしかったりと、エモい気持ちになれた。各電話は実際の時代と連動しているため、古いものから順番に聴いて流れを把握するのもありだが、実際にはほかの参加者もいるので、空いている電話から聴いていくことになるはずだ。そのため、それぞれの参加者で情報が開示される順番が異なり、物語体験としても違うものになるだろう。そういった点もおもしろいポイントだと感じた。

なお、スマートフォンから飛べる特設サイトはどの電話の情報を聴いたのか随時更新されるので、迷う心配は無い。基本的には1枚のカードで物語を最後まで体験できるが、同じ音声を複数回聞きたい場合や、すべての音声を踏破したい人はカード単体の販売も同じ部屋でおこなわれているので検討してみるといいだろう。
実際に聴ける具体的な内容は伏せるが、電話の音声は豪華な声優陣によるものとなっている。BLACKとREDで演じている声優が異なるのでお気に入りの声優がいるほうを選ぶのもアリだ。
出演声優
【メインキャスト】
仮面の男:速水奨
赤いフードの少女:飯田ヒカル
謎のマスコット:遠野ひかる
【BLACKルート】
研究に人生を捧げた男:三木眞一郎
重い病を抱える少女:上田麗奈
家族思いの女性:大久保瑠美
止められなかった男:江口拓也
■■の秘密組織に属する男:祐仙勇
大学生:三木一眞
研究者:こばたけまさふみ
被害者:折原秋良
【REDルート】
怪物と呼ばれた男:細谷佳正
後悔を抱えて生きる女:生天目仁美
怪物に愛された女:稗田寧々
裏社会に身を置く男:斉藤壮馬
ヒミツを知る女:荻野葉月
見守る女:本間沙智子
踏み込めなかった女:園田れい
昭和の頑固親父:酒巻光宏
事務的な男:齋藤峻
情に厚い刑事:堂坂晃三
怪物に仕える男:木暮晃石
【EXTRA】
音声アナウンス:千春
???:前川涼子
???:杉山里穂
???:青木陽菜(追加キャスト)
???:本西彩希帆(追加キャスト)
???:緒方佑奈(追加キャスト)
第四境界が制作しているだけあり、後半も驚きの仕掛けが用意されているが、そこは実際に体験してみてのお楽しみにしてもらいたい。実際に受話器を取って電話を取るという行為は没入感があり、とてもおもしろかったのでぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

「第四境界」総監督・藤澤 仁氏インタビュー
ここからは「第四境界」の総監督・藤澤 仁氏へのインタビューをお届けする。

――今回の「050-5893-5336展」はどのような経緯で開催されることになったのでしょうか?
藤澤:第四境界というチームが世の中に知られることになったきっかけの作品として、「人の財布」という商品がありました。その「人の財布」からはじまり、我々は誰かの持ち物をモチーフに物語を作っていくということをはじめました。「人の財布」のあとは給与明細、交換日記、カレンダー、最近はゲームカセットなども出しました。そのなかで大きなイベントとしてやっていく第1弾が今回の「ひとのでんわ」になります。
――藤澤さんが考える「050-5893-5336展」のオリジナルの見どころを教えてください。
藤澤:今、世の中を見渡すと「〇〇展」というようなものが増えているのかなと感じています。「展」というのはその名の通り展示会ですので、何かを展示して見ていただくことがイベントの趣旨になります。
そのなかで我々は、ただ電話を展示しているだけではなくて、電話の歴史や、その電話を使って行われた通話の記録、あるいは人の営みのようなものを展示しています。メディアとして電話を使わせてもらうという、通常の展示会とは異なるものになっています。

――第四境界さんの作品は熱狂的なファンを生み出しており、体験をした後には誰かに話したり、共有したいという感情を抱くことが多いと思います。今回の「050-5893-5336展」では共有したくなる体験をどのように設計されているのかお聞かせください。
藤澤:僕たちもイベントをやるときに自分がやったことを人に伝えたくなることは大切な要素だと思っています。その最たるものが、人によって体験が異なることなのではないかと考えます。
今回の構造上の仕組みとしては、中に入ると2つのルートがあって、どちらのルートを選択するかで体験が変わるという大きな構造上の差があります。また、ただ電話の声を聞くだけではなくて、自分から何かを伝えることによってリアクションを得るということもあり、人によって体験が変わってくるものにしてあります。そういったところが人に共有したくなる要素でもあるし、今回の大きな特徴ではないかなというふうに思っています。
――人々がこれだけ熱狂するほどの要素にはどういったものが必要になるのか、藤澤さんがどう考えているのか、お聞かせください。
藤澤:「こんな体験はしたことないな」という思いをできるかどうかじゃないかと考えています。僕たち第四境界はどんどん自分で自分の首を絞めているので、ちょっと口にするのを躊躇するようになっているのですが、「一度やったことはもうやらない」という鉄の掟があります。
それによって僕たちも作ったことがないものを毎回作っているし、それは当然世の中に対してもまだ誰も体験したことのないものを作っているということになります。第四境界というチームに対して支持をいただけているのは、そういった我々の姿勢にあるではないかと考えています。

――スマートフォンが当たり前になった時代で、受話器を持つという体験は知らない世代にとってはかなり新鮮な体験になると思います。あえて電話というものを題材にした理由を聞かせてください。
藤澤:「人の」シリーズはいろいろなことをやっていますが、そのなかでも僕たちは人と人を繋ぐメディアを使って物語を表現していくという手法を大事にしています。電話は時代によって使い方もスタイルも変わるもので、僕らが若いころは黒電話が家に一個だけあって、これを家族で共有しないと使えないという時代でした。
もっと前にはさらに他のスタイルもありましたが、それらをまとめて体験できるということ自体がなかなかないことだし、それは体験として得難いことになるのではないかという僕らなりの仮説がありました。
実際にいろいろな時代の電話を並べてみて、「黒電話の受話器ってこんな重たかったっけ」みたいな体験をすると、それ自体は僕らにとっては懐かしい体験だし、若い人からすると「こんな重たいもので喋ってたのか」というひとつの体験になるのではないかと思います。僕らが紡ぎたい物語と相性が良かったのではないかというふうに思っており、今回は電話をテーマにさせていただきました。
――大規模なリアルイベントということで、内装とか雰囲気作りにこだわった点をお聞かせください。
藤澤:多くの展示会は先ほども申し上げた通り、展示物を見るということが主体になっているので、まず最初にちゃんと電話を見ていただくスペースは取ろうと思っていました。その先に何が起こるかわからない、電話を展示しているだけではない体験を作るという、全体の構造を最初にイメージしましたね。

――難易度について苦労している点などをお聞かせください。
難易度については、今もなお悩んでいる部分ではあります、一度自分たちなりにここが最良ではないかという形で展示はしてはいるのですが、今回は1か月という長期間の開催でもあるので、分かりづらいところは分かりやすくしなくてはいけないし、よりこうエキサイティングな展開を作れるのであれば、それは作らなくてはいけないと考えています。そのため、この1ヶ月の間でも進化させていきたいと考えています。
また、第四境界のコンテンツはちょっと難易度は高いです。そこを楽しんでいただけるという覚悟で来ていただけると良いのではないかなと思います。
――すでにプレイしている人の感想はいかがでしたか?
藤澤:まず、僕自身が多くの人が電話に並んでる姿を久しぶりに見たなと思いました。僕らが若い頃は電車が止まったりすると電話ボックスの前に何人も行列ができるようなこともありましたが、そんな時代のことを不意に思い出すぐらい、その情景が非常にエキサイティングだなと思いました。
実際にイベントを終えた人にも感想を聞いてみましたが、みんな一様に面白かったということを言っていただけました。内容が新鮮だっただけではなく、ちゃんと物語に入り込めたという感想をいただけてうれしかったです。
――今回、来場を楽しみにされていらっしゃる方にメッセージをお願いします。
藤澤:第四境界もだんだん人が成長していて、今回のイベントは滝沢桃という新人が本当にいい仕事をしてくれました。今回のイベントは東京駅直通という利便性も高いところで、我々にとっても大きな挑戦でした。本当に気合を入れてやっているプロジェクトなので、どうぞ皆様、足を運んでいただければ幸いです。

ひとのでんわ展 オフィシャルスチール
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