「D-topia」レビュー:“最大多数の最大幸福”で人は幸せになれるのか?AIが管理する楽園で幸福の本質を問いかけるSFアドベンチャー

プレイレビュー
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Annapurna Interactiveとマルミッツゲームスが手がけるPC(Steam)用ソフト「D-topia」のレビューをお届けする。

「D-topia」レビュー:“最大多数の最大幸福”で人は幸せになれるのか?AIが管理する楽園で幸福の本質を問いかけるSFアドベンチャーの画像

朝、心地よい陽の光で目を覚まし、洗面台で顔を洗う。卓上には美味しそうな朝食が自動で提供され、食事を済ませたら作業着に着替えて就労施設“ファクトリー”へ向かう。午前中の就労を終え、午後からは自由時間だ。綺麗に整備されたガーデンでくつろぐもよし、友人たちと談笑に浸るもよし、ホームでのんびり過ごすのだっていい。夜になってホームへ戻れば、今度は豪華な夕食が卓上に並んでいる。食事を終えたらお風呂に入り、眠りにつく。毎日この生活を繰り返す。土日は休日なので就労はない。

規則正しい健康的な生活が送れる上に、自由時間だってたくさんある。こんな夢のような暮らしが送れるなら、ぜひとも送ってみたいものである。

ここは“最大多数の最大幸福”が実現された楽園、D-トピア。人類の幸福を目的としたAIがすべてを管理し、誰もが不自由なく暮らせる理想郷だ。住人たちは日々の生活に満足し、それぞれの幸せを享受している。

しかし、AIの管理によって生まれた“大多数の幸福”は、“本当の幸せ”と言えるのだろうか?

「D-topia」は、AIによって管理された楽園を舞台にしたSFアドベンチャーゲーム。プレイヤーは施設整備士となり、D-トピアの設備を維持・管理しながら、住人たちの悩みに寄り添い、時には彼らの人生を大きく左右する決断を下していくことになる。

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“最大多数の最大幸福”を守る仕事

ゲームの序盤は、主人公 シローがD-トピアに到着するところから始まる。D-トピアは、人類の幸福のために立案されたユートピア計画をもとに建設された施設型居住区。The A.I.が全てのシステムを完全管理し、規則と規律が徹底されていることで、秩序と治安が高水準で保たれている。そのため、D-トピアにおいては、遺伝子において優良とみなされた人種のみが多いという特徴が存在する。また、安全な生活を保証するために、不要・不快とみなされた視覚情報をブロックする“視覚最適化システム”が導入されており、住人たちはなにひとつ不愉快なものを見ることなく日々の生活を送っている。

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シローが就く施設整備士というのは、D-トピア内の様々な設備のメンテナンスを担う人物のことを指す。施設の大半が自動化されているため、その役割は街の存続を支える重要なもの。任される人物も限られていることから、住人たちからは尊敬される存在として見られている。

もっとも、施設整備士の仕事は機械のメンテナンスだけではない。住人の相談役として悩みに耳を傾け、ときには彼らの人生を左右するような判断を下す必要もあるなど、彼らを導く存在でもあるのだ。

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そのため、シローはD-トピア住人の義務であるファクトリーでの就労に勤しみつつ、住人のサポートを行っていくのが日課となる。ゲームサイクルとしては、起床→ファクトリーでの就労→住人との交流、といった形となっており、基本的にはこのサイクルが続く形で物語が進行していく。

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直感的に楽しめるロジックパズル

本作はキャラクターとの会話を通してゲームを進行していくが、途中にはパズルを解いて進める場面も存在する。パズルは設備の修理の際に登場するほか、日々の日課であるファクトリーでの就労時にも取り組むことになる。

パズルは複雑なルールのない、ロジックパズルと呼ばれるもので、基本的には画面を見ただけである程度のルールは理解できるようなつくりになっている。

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特定の数字を指定されたマスへ配置するグリッド状のパズルや、ラインを数字の上を通して指定された数値になるようゴールを目指すもの、数値と矢印を手がかりにバグが隠されたマスを見つけ出すものなど、本作では数字を使ったさまざまなロジックパズルが楽しめる。

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難易度は簡単すぎず、難しすぎずと絶妙なバランスとなっていて、解けたときの達成感は心地よく、まさに頭の体操といった印象を受けた。一部ストーリー進行上で必須となるパズルはスキップできないものの、ファクトリーで挑戦するパズルはスキップが可能なため、パズルが苦手な人でも安心してプレイできるだろう。

なお、筆者は未だに簡単な計算でも手計算をしてしまうほど数字が苦手だが、それでも最後まで大きく詰まることはなかった。唯一、マスを進むごとに数値が加算され、指定された数字に合わせていくタイプのパズルには少し苦戦したものの、考え方を変えた途端に解くことができた。本作のパズルは数学的な知識よりもひらめきや柔軟な発想力を必要とする、誰でも楽しめるつくりになっているのが特徴だろう。

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D-トピアの暮らしと楽園の裏側

ファクトリーでの就労と住人たちの問題解決が本作のゲームプレイにおける主要要素だが、物語の合間ではショッピングや住人たちとの会話、各エリアの散策などを通して、D-トピアの暮らしを満喫することができる。

ファクトリーでの就労などを通して獲得できるUポイントを使うことで、食べ物やインテリアなどが購入可能だ。インテリアはホームの見た目を変えられるアイテムで、ゲームの進行には必須ではないものの、部屋に生活感やおしゃれさを加えてくれるため、暮らしを彩る要素として楽しめた。

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また、本作では朝・昼・夜の食事が生活の一部として組み込まれており、食事を抜くと、お腹が鳴って食事を促すテキストが表示される。自動販売機で購入したお弁当でも空腹は満たせるが、筆者としてはホームで提供される食事をおすすめしたい。

というのも、本作では毎日3食分のメニューが用意されており、しかも毎回内容が異なる。もちろん料理のグラフィックもそれぞれ作り分けられており、食事ひとつ取っても開発チームの並々ならぬこだわりが感じられた。どの料理も思わずお腹が空いてしまうほど美味しそうなので、毎日「今日は何が出るのだろう」と楽しみになるほどだった。本作をプレイする際は、ぜひ全メニューを制覇してみてほしい。

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他にも、D-トピアの至るところにはインタラクトできる住人がおり、自由に会話を楽しめる。彼らとの会話では、日々の暮らしや価値観、この世界ならではの文化などを知ることができるため、世界観を掘り下げる要素としても魅力的だ。

例えば、遺伝子マッチングによるパートナー制度について語る住人や、D-トピアへ来る以前の生活を振り返る住人など、それぞれの話からは「この世界では何が当たり前なのか」が自然と見えてくる。メインストーリーだけでは描かれない生活感が伝わってくるため、筆者は新しいイベントが始まるたびに街を一周し、住人全員に話しかけるのがちょっとした楽しみになっていた。

なお、会話内容はストーリーの進行に合わせて変化していく。同じ住人でも心境や話題が少しずつ変わっていくため、「今度は何を話してくれるのだろう」と、つい寄り道して全員分の会話を聞きたくなってしまうほどだった。

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舞台となるD-トピアの美しさも必見だ。白を基調としたミニマルな建築や街並みは、本作のシンプルなグラフィックとも見事に調和しており、非常に洗練された印象を与えてくれる。ぱっと見は、映画などで描かれる“徹底的に管理されたディストピア”のような雰囲気も感じられるが、街の至るところに植物や水辺が配置されていることで、クリーンでありながらどこか心が安らぐ空間に仕上がっている。まさに楽園という言葉がふさわしいロケーションだ。

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また、景色は時間帯や天候によって表情を変えるため、ゲームプレイ中は思わず足を止めてスクリーンショットを撮りたくなってしまう。個人的には、空が淡く色づき始める夜明け前や、しっとりとした空気に包まれる雨の日の景色がお気に入りだった。

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しかし、美しい楽園にも裏の顔がある。前の方でも述べたが、ここの住人たちには視覚最適化システムが導入されており、不要・不快な視覚情報はブロックされている。ただし、シローは施設整備士のみが行える視覚システムのスイッチによって、“ブロックサイド”の景色を見ることができるのだ。

ブロックサイドは、いわばD-トピアの現実ともいえる空間だ。施設設備のメンテナンスなどを行う際にアクセスすることになり、普段住人たちが見ている街並みとはまったく異なる景色が広がっている。

白を基調とした明るく心地よい街とは対照的に、ブロックサイドは青白い光に包まれた無機質な空間。耳に入ってくるのは機械の低い駆動音だけで、人の温もりはほとんど感じられない。まさに、映画などで描かれるディストピアのような不穏な雰囲気だ。

都合の悪い現実――つまり楽園の裏側を住人たちには見せないことも、D-トピアにおける幸福の一つなのだろう。本作の掲げる“最大多数の最大幸福”という思想を象徴する、どこか不気味で印象深い演出だった。

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あなたが選ぶ、それぞれの“幸せ”

本作における重要な体験の一つが、住人たちとの交流だ。D-トピアには個性豊かな住人たちが暮らしており、仲を深めることで、それぞれが抱える悩みや過去、価値観を知ることができる。

住人たちには好感度が設定されており、会話で相手に寄り添った受け答えをしたり、ホームからアクセスできるバーチャル茶室へ招待したりすることで親交を深められる。関係が深まるにつれて、過去の経歴や性格なども明らかになり、キャラクターへの愛着も自然と湧いてくる。

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また、施設整備士としてD-トピアの設備を維持するだけでなく、住人たちの悩みやトラブルを解決することもシローの重要な役割だ。物語では、それぞれ異なる背景や事情を抱えた住人たちと向き合うことになり、ときには彼らの人生を大きく左右する重大な決断を下さなければならない。

例えば、不本意な事情でルールを破ってしまった住人がいるとする。もし事実を報告すれば、その住人はD-トピアから追放される。あなたはルールを守るために通報するのか、それとも目の前の一人を救うために嘘をつくのか。本作では、こうした倫理的な判断を迫られることになる。

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そうした選択は、“脳内会議”と呼ばれるシステムを通して行われる。フローチャート形式で状況や選択肢が整理されており、自身の考えを整理しながら判断を下せるのが特徴だ。プレイヤー自身の考えがまだまとまっていなくても、「何を優先すべきか」「どのような結果を望むのか」が視覚的に整理されるため、非常にわかりやすいシステムだと感じた。

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目の前の一人を救うために嘘をつくのか、それとも“最大多数の最大幸福”という理念を守るためにルールを優先するのか。本作では、人の人生や価値観に踏み込むような選択を何度も迫られる。その一つひとつからは、「誰のための幸福を優先するべきなのか」という問いの重さが伝わってきた。

最大多数の幸福を掲げるD-トピアでさえ、すべての人が幸せになれるわけではない。だからこそ、プレイヤー自身の価値観を頼りに答えを導き出していく過程が、本作ならではの魅力だ。「この人にとって本当の幸せとは何か」を何度も自問自答しながら物語を進める体験は、非常に印象深いものだった。

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ただし、実際の選択はテーマから想像するほどシビアではない。本作では、人を救う選択をしたことで別の誰かが犠牲になったり、自らが大きな代償を背負ったりするような、究極のトレードオフを迫られる場面はほとんどない。

基本的には、相手を思いやる選択を積み重ねていけば、住人たちが幸せになれるハッピーエンドへとたどり着く。いわゆる「誰かを救うために誰かを切り捨てる」といったトロッコ問題のような展開もなく、多くの問題が円満に収まるため、重大な決断というわりには、選択の重みはやや薄く感じられた。

もっとも、この点は見方を変えれば長所でもある。後味の悪い物語や救いのない展開が苦手な人でも安心して楽しめるうえ、「住人たちの幸せを守る」という温かい結末を迎えられるため、クリア後の心のつっかえはない。

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“幸せ”を考えるSFアドベンチャー

ユートピアともディストピアとも言い切れない、そんな曖昧な立ち位置にあるのがD-トピア。本作は、その世界で暮らす住人たちとの交流や重大な選択を通して、「人にとっての幸せとは何か」を自然と考えさせてくれるSFアドベンチャーゲームだった。物語主導の作品ではあるものの、適度に挟まれるロジックパズルのおかげでテンポよくプレイできる点も好印象だ。

テーマだけを見ると重厚な作品に思えるが、白を基調とした洗練された街並みや、細部まで作り込まれた生活描写のおかげで、プレイ中は不思議と穏やかな気持ちでD-トピアでの暮らしを楽しめた。住人との何気ない会話や毎日異なる食事など、生活感を大切にした演出も世界への没入感を高めてくれる。

住人たちの人生を左右するような選択を迫られる場面は多いものの、実際にはプレイヤーを本気で悩ませるような究極のトレードオフは少なく、そのぶん救いのない結末に心を痛めることはない。住人たちの幸せを描き切る温かな物語として、クリア後には心地よい余韻が残る作品でもある。

D-トピアという世界で暮らしながら、「人にとっての幸せとは何か」を自分なりに考えてみたい人には、ぜひプレイしてほしい一作だ。

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※画面は開発中のものです。

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