水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】

CEDEC 2026
0コメント 仁志睦

7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」。本稿では23日に行われた講演「水彩画風2Dイラストのキャラクターをその見た目のままモバイル上に3D化して動かしてみた! Toon表現のさらに先を見据えたLookDev検証の挑戦について」のレポートをお届けする。

このセッションは、水彩画風の2Dイラストのキャラクターを、もとのイラストの画風そのままにリアルタイム描画として3D化するためのさまざまな技法を紹介するというものだ。

登壇者の岡本鯉太郎氏は、ヘキサドライブのテクニカル・ディレクター。システム基盤を使ったアーケードゲームやファミコンの時代からゲーム開発に携わっており、近年ではモバイルゲームやVRゲームの開発も手掛けるなど豊富な経験を持つベテランクリエイターである。

ヘキサドライブの岡本鯉太郎氏
ヘキサドライブの岡本鯉太郎氏

岡本氏は、今回の水彩画描画を実現したLookDev検証を2部構成で解説。LookDevとは簡単に言うとCGの見た目を決定する工程のことで、この水彩画風描画技術を確立するために用いられたノンフォトリアリスティックレンダリング(手描きのようなCGを作り出す技術のこと)のさまざまな描画手法が紹介された。

後半では、3D化された水彩画風キャラクターが実際のモバイル端末で動いている映像を紹介。使用されたキャラクターは乙女向けスマートフォンアプリ「MakeS ‐おはよう、私のセイ‐」に登場する「セイくん」だ。ユーザーの生活をサポートしてくれるイケメンのキャラクターで、同アプリは累計70万ダウンロードを記録している。

水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像

3Dモデルの外観を決定する「マテリアル」に関する描画技法

まずは3Dモデルの質感や光の反射などを決定する「マテリアル」に関する描画技術について。取り上げられた技法は以下のとおりで、それぞれの内容を簡単に紹介しておこう。

・ライトベクター
Toon的な表現にDirectionalLight(ディレクショナルライト=太陽光などの効果を作り出すのに役立つ光源)のベクターの取得は必須で、Unreal Engine 5(以下「UE5」)上での取得の方法などが紹介された。

・ハーフランバート
物理学的には正しくないが、光が当たらない影の部分を自然に見えるようにする効果がある。UV値(3Dモデルの表面に2Dテクスチャーを貼り付ける際の基準となる座標)を計算する手段として活用できるという利点もある。

水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像

・階調付きマテリアル
UE5の機能のひとつであるAtlas Curve(アトラスカーブ)を利用して階調色を増やす方法が紹介された。Mayaのランプと同じ機能で、色を段階的に取得することでグラデーションを滑らかにしたりすることができる。

・スペキュラー
ツヤやハイライトを表現するための光効果で、UE5のReflectionVector(リフレクションベクター)から作成する方法が紹介された。

・メタリック
光の疑似的な反射効果を得る表現。縦横にUVで伸ばせるようなテクスチャーとSpiralBlur(スパイラルブラー)という画像を渦巻状にぼかす効果を組み合わせた手法が紹介された。

水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像

・両側の色が違うリムライト
RimLight(リムライト)はキャラクターを際立たせる照明効果のこと。カメラの方向や位置のベクトルを取得するCameraVector(カメラベクター)を使うことでモデルの両端の色が異なるリムライトを作ることができる。

・マテリアルレイヤー
複数のマテリアルやテクスチャーをレイヤー構造で合成する機能。設定する項目が多く、管理が複雑になるので少し扱いにくいが、内部的には面白い効果があるとのことだ。

・髪のハイライト(天使の輪)
その名のとおり髪の毛の天使の輪を表現する効果。一見すると複雑そうだが、UE5ではわずか5つのノードで作成できる。光の反射の表現はテクスチャーの形で動かす場合と、形は止まったまま内部のテクスチャーがキラキラ光るというふたつの方法があるが、好まれるのは後者とのことだ。

水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像

表面の質感を表現するテクスチャーについての描画方法

次は、テクスチャーに関する技法で、ボロノイノードを利用したテクスチャー化やSDF(Signed Distance Function)という関数を使った技法などが紹介された。ただ、これらはほんの一部で、もっと知りたい人は検索して調べてみてほしいと岡本氏は語っていた。

・ボロノイノードを利用したテクスチャー生成
UE5のDrawMaterialToRenderTarget(ドローマテリアルトゥーレンダーターゲット)やNormalFromHeightMap(ノーマルフロムハイトマップ)といった機能を利用したテクスチャーやノーマルマップ(法線マップ)の作成方法が紹介された。

・SDF(Signed Distance Function)による顔影制御テクスチャー
SDFとは符号付き距離関数のことで、本来はフォントや輪郭線のエッジを少ない容量の画像で綺麗に見せる手法。この関数の機能を利用することで、顔の影の形状を制御することができる。

・ランダムなテクスチャー
Cell Bombing(セルボンビング)というもので、Voronoi Texture(ボロノイテクスチャー)やXYZの3方向からテクスチャーを貼り付けるUV TriPlaner Mapping(トリプラナーマッピング)といった機能と合わせて利用することでランダム性の高い効果を取得できる。

水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像

そのほか、トゥーン表現に欠かせない輪郭線の表現技法や、映像にさまざまなフィルタをかける「ポストプロセス」を使ってのぼかしやハッチング(ペン画)といった画風を作る技法なども紹介された。これらの技法を使えば既存の背景アセットの映像もさまざまに変化させることが可能で、作品に合った画風に作り直すことができると岡本氏は語った。この画像の変化の仕方はかなりインパクトがあり、これらの表現技法の効果を実感することができた。

後半ではモデルとなる「セイくん」の映像を使って各種パラメーターによる表現調整やマスターシーケンサーでの操作などについて解説。最後に、モバイル端末での2D水彩画風の3D映像が紹介され、セッションは終了となった。

水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像
水彩画風2Dイラストを3D化するための表現技法の数々を徹底解説!プロフェッショナル向け実践的セッションをレポート【CEDEC2026】の画像

本稿では、それぞれの表現技法の概要や使用するUE5の機能を簡単に紹介しただけだが、実際のセッションでは、ひとつひとつの技法の解説が詳細にもっと深掘りされていた。さらに、UE5上での操作も動画で紹介するなど、専門的になるが非常に実践的なので、プロのクリエイターやクリエイター志望の人は、ぜひ見ておくべき充実の内容になっていた。

かなり勉強になるため、未視聴の方はタイムシフト配信での視聴をおすすめする。今回のセッションで使用されたパワーポイントもCEDiL(CEDEC Digital Library)にて公開予定とのことなので、こちらもチェックしておくといいだろう。

本セッションは8月4日午前10時までCEDEC2026公式サイトにてタイムシフト配信中だ。

CEDEC2026公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2026/

本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

注目ゲーム記事

ニュースをもっと見る

ゲームニュースランキング