「DEATH STRANDING」を形作ったGuerrilla Gamesとの熱き共闘――コジマプロダクション「DECIMA」エンジン選択の舞台裏【CEDEC2026】

CEDEC 2026
0コメント アサミリナ

7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」。ここでは、24日に行われたセッション「DEATH STRANDINGを作り上げるゲームエンジンの選択、その舞台裏」のレポートをお届けする。

「DEATH STRANDING」を形作ったGuerrilla Gamesとの熱き共闘――コジマプロダクション「DECIMA」エンジン選択の舞台裏【CEDEC2026】の画像

登壇者は、コジマプロダクションの酒本海旗男氏、CEDEC運営委員会の岩倉宏介氏、西田綾佑氏。分断された世界を繋ぎ直す、「DEATH STRANDING」がもたらしたかつてないゲーム体験の裏側には、オランダと日本のゲームスタジオによる、まるで映画のような繋がりのドラマが隠されていた。

左から、西田綾佑氏、岩倉宏介氏、酒本海旗男氏
左から、西田綾佑氏、岩倉宏介氏、酒本海旗男氏

設立直後のスタジオに課せられた過酷なミッション

コジマプロダクションは、2015年12月16日に設立されたゲーム開発スタジオだ。同スタジオの設立後初となるタイトル「DEATH STRANDING」は、現在までにシリーズ累計プレイヤー数が2,700万人に到達している。

酒本氏によれば、会社を設立したばかりの当時はゲームの内容が極めてチャレンジングであり、全貌が完全には見えていない状態であったという。

ゲームデザイン側からの要件は、「オープンワールドであること」「拠点間そのものを遊ばせること」「フォトリアルなルック」「動的なマップ変化」という、非常にハードルの高いものだった。

なるべく早くユーザーに作品を届けたいという強い意志があったため、時間のかかる社内製エンジンをゼロから作る選択肢は早々に除外され、既存エンジンを探すことになったそうだ。

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9年の結晶をUSBメモリで手渡す、Guerrilla Gamesの異常な熱量

そこで有力な候補として浮上したのが、オランダのGuerrilla Gamesが開発していたエンジンであった。

PlayStationハードウェアにおいて極めて高いパフォーマンスを発揮できる点や、当時彼らが開発中だった「Horizon Zero Dawn」の実績から、求める要件をクリアできる勝算があったという。

しかし、筆者が何より衝撃を受けたのは、Guerrilla Games側の熱意である。

酒本氏は当時のGuerrilla Gamesの技術トップと、毎日のように電子メールで文通を繰り返していた。やり取りは日を追うごとに長文になり、最終的には3ページに及ぶ技術用語の羅列が飛び交い、翻訳担当者に「もうやめてくれ」と懇願されるほどだったという。

その熱意の最たる例が、USBメモリなどを通じてエンジンのソースコード一式が丸ごと提供されたというエピソードだ。9年もの歳月を費やした開発者たちの愛の結晶を惜しげもなく提供する姿勢に、CEDEC運営委員会の西田氏、岩倉氏らも驚きを隠せなかった。

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さらにGuerrilla Gamesは、リリース前の「Horizon Zero Dawn」のアセットがそのまま入った開発用PCまで送付してきた。搭載された巨大な冷却ファンが輸送時の衝撃で折れていたという笑い話もあったが、酒本氏はこの実機を用いて詳細な検証を進めていった。

彼らは「単にエンジンを使ってほしいのではなく、コジマプロダクションに使ってもらうことで、自分たちの技術がより良くなることを期待している」と語っていたという。ゲーム業界におけるこの国境を越えたリスペクトと信頼関係には、胸を熱くさせずにはいられない。

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文化の違いを乗り越える共闘

エンジンの使い方を学ぶため、コジマプロダクションのメンバーはオランダのGuerrilla Gamesへ1週間の出張に赴いたそうだ。

Guerrilla Games側は1週間分の詳細なカリキュラムを用意して待ち受けており、現地のエンジニアたちは自分たちの作った最強のエンジンについて、非常に楽しそうに説明してくれたという。

また、Guerrilla Gamesのスタッフが日本を訪れ、開発環境のセットアップをサポートしたこともあった。Guerrilla Gamesの独自環境を、そのまま日本に再現したのである。

この際、「ネットワーク回線が遅くて、全然足りない」と指摘され、すでに工事が終わっていた1GbpsのLAN回線を急遽10Gbpsに変更してもらったという、本気度を示す裏話も明かされた。

しかし、壁はもちろんあった。初心者向けドキュメントの不足、そして最大の壁はシネマティクス制作におけるワークフロー文化の違いであった。

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Guerrilla Gamesのエンジンは、社内で仕様を固めた後に外注へ出し、後戻りしない設計になっていた。対してコジマプロダクションは、最後の最後までカメラワークや動きの試行錯誤を繰り返し、何度もやり直すスタイルである。

この違いから、初期のテストでは1フレームあたり2億頂点というオーバースペックなデータになってしまう問題も起きたという。

この状況を打破するため、Guerrilla Gamesのスタッフが再び日本を訪れた。夜には一緒に飲みに行き親睦を深めつつ、正しい使い方について濃密な情報共有が行われた。コジマプロダクションが目指すワークフローを伝えたところ、Guerrilla Games側も強く共感し、エンジン側の作り変えに多大な協力をしてくれたという。

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「DECIMA」という名前に込められた歴史的ロマン

セッションの終盤、このエンジンの「DECIMA」という名前の由来が語られた。

検証を始めた当初、このエンジンにはまだ正式な名前がついていなかったという。コラボレーションを発表するにあたり、オランダと日本の歴史的な繋がりを象徴する長崎の「出島(デシマ)」をベースに名付けてはどうかというアイデアが提案され、Guerrilla Games側も「それが一番クールだ」と賛同し、「DECIMA」という名前が誕生したのである。

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コジマプロダクションでは、新しい技術を取り入れる意欲の高さから、今後発売されるタイトルには「Unreal Engine」を採用しているものもあるという。DECIMAでの成功に安住せず、常に挑戦し続けるスタジオの文化が示された。

設立直後のスタジオが、海を越えたトップスタジオと手を組み、互いの技術と情熱をぶつけ合いながら限界を突破していく。その熱い繋がりがあったからこそ、我々は「DEATH STRANDING」という唯一無二の体験を享受できたのだ。

ゲームの裏側に潜むドラマチックな人間模様に、感動を覚えたセッションであった。

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なお、各講演は8月4日(月)10時までタイムシフト配信での受講も可能だ。詳細は公式サイトで確認してほしい。

CEDEC2026公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2026/

人生のうちの40年以上をゲームと共に生きる、人生の大半をゲームに捧げた、北の大地に住むライター。JRPGが主食。スクウェア・エニックス、トライエース、フロム・ソフトウェア、カプコン、アトラス、任天堂、ファルコム、タイプムーンあたりに目がない、ソシャゲも山のように嗜む雑食ゲーマー。ゲーム音楽やコラボカフェ、2.5次元なども大好物。北の大地に移り住む前は数多くのイベントに通い詰めた、イベント大好き人間です。 note:https://note.com/rinaasami/n/nb31a2e54c31f

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