2026年8月27日にコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)から発売されるPS5/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/Xbox Series X|S/PC(Steam)用ソフト「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.2」のレビューをお届けする。
本作は、「メタルギア」シリーズの各タイトルを、発売当時のゲームそのままに最新プラットフォームでプレイできるようにすべく制作された、コレクションタイトルの第2弾だ。


筆者は前作にあたる「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.1」のレビューを2023年に執筆している。レビューで重点を置いたことは、間違いなくゲーム史に燦然と輝く名作シリーズでありながらも、現代の基準で考えたときに時代の経過に伴って飲み込みづらくなった各種仕様について、その文脈や進化・洗練の経緯を明らかにすることで、初見プレイヤーとの間に横たわる齟齬を埋めることだった。
この「Vol.1」のレビューに書いた内容は、約3年が経過した現在もほとんど問題なく通用するものであると考え、本レビューはこの続編として位置付けている。すなわち、「Vol.2」に収録されている各タイトルのゲームデザインについて、オリジナル版発売当時の文脈や進化・洗練の経緯の解説を交えることで、“現代のプレイヤー”が作品理解を深める一助となるレビューを目指した。
レビューを執筆する上でプレイしたのはSteam版。また、発売前のバージョンであるため、アップデートなどにより仕様変更が行われる可能性がある点は留意してほしい。
「MASTER COLLECTION Vol.1」「Vol.2」「MGSΔ」の登場により「V」へと至る道を辿ることが容易に
「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.2」に収録されるコンテンツは以下の通りだ。
・「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」(MASTER COLLECTION版)
・「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER」(MASTER COLLECTION版)
・「METAL GEAR Ghost Babel」を含むボーナスコンテンツ
前提として、これらがいまひとつのパッケージとしてリリースされることを、筆者は極めて意義深いものであると考えている。「MASTER COLLECTION Vol.1」に比べると、収録タイトルの数で言えば少ないが、ひとつひとつのタイトルが現行プラットフォームで遊べることに大きな価値があるものばかりだ。

シリーズにおける“正史”の中でも重要なピースのひとつでありながら、長らくPS3以外のハードへの移植が行われてこなかった「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」(以下、MGS4)が収録されているのは、とくに大きな功績と言っていいだろう。
「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER(HDエディション版)」(以下、MGSPW)もまた、現状のナンバリング最終作である「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」(2014年)および「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」(2015年)を深く理解する上で極めて重要なタイトル。

これで「METAL GEAR」、「METAL GEAR 2 SOLID SNAKE」、そして「METAL GEAR SOLID」(MGS)シリーズのナンバリング1~5作と「MGSPW」という、メタルギアサーガ“正史”を現行ハードで網羅できるようになったということだ。コンピューターゲーム文化の発展に大きく寄与しつつ、業界において唯一無二の作家性を示し続け、人々を魅了したタイトルに多くのゲーマーが容易にアクセスできるようになったのは素晴らしい。
この3年のあいだに、「Vol.1」のレビューで現代の感覚だと「遊びづらさを感じた」と指摘した「MGS3」には、操作系や映像表現を現代水準に発展させたリメイク作「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」(MGSΔ)の方をプレイするという選択肢が加わったのも付け加えておきたい点だ(もちろん“原典”に近い体験がしたいのであれば、「MASTER COLLECTION Vol.1」収録の「MGS3」をプレイするのも大いにアリだろう)。

なお、個人的に「METAL GEAR SOLID」シリーズの操作系は2014年の「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」でひとつの完成形を迎えたと思っている。本レビューは、そうした立場の人間が、今回のコレクションに収録されている主要2タイトルを、“「MGSV」に至る発展途中”と解釈している面が少なからずあることに留意してほしい。
また、正史ではないものの、こちらもまた長らく移植が行われてこなかった「METAR GEAR Ghost Babel」という、比較的低い知名度ながら非常に高く評価されているタイトルがボーナスコンテンツとして収録されているのもコアなファンには嬉しいところだろう。

「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」:ソリッド・スネークの物語の完結編にして、シリーズの“先鋭化”ここに極まる
「MGS4」は2008年にPS3用タイトルとして発売。「MGS2」の主な舞台だった“ビッグ・シェル占拠事件”から5年後の2014年、急激に老化が進行したソリッド・スネーク=オールド・スネークにとって最後の任務が描かれる。シリーズ過去作に登場した存命のキャラクターたちが総登場、さまざまな因縁が結実し、そしてスネークの戦い続けた人生もまた、ひとつの結末を迎える。

戦争がビジネスに変貌した世界におけるスネークの任務は、この状況をさらに拡大させようと企てる宿敵、リキッド・オセロットの野望の阻止。ゲームプレイにおいてリリース前から掲げられてきたゲームのコンセプトは“戦場への潜入”。ゲームの序盤において、このコンセプトは見事に実現されていた。
フィールドでは、PMC(民間軍事請負会社)と敵対する現地の武装勢力は絶えず戦い続けており、スネークを操作するプレイヤーは、この戦禍を掻い潜りながら任務達成のために目標地点を目指す。現地勢力側に手を貸す行動を取ることで、スネークの“英雄度”が上昇。彼らと共闘できる局面が増えるといった仕組みも特徴だ。
NPC同士の戦闘によってフィールドの状況が動き続ける中、プレイヤーにある程度の介入の余地も与えられているシチュエーションは極めてユニーク。こういった表現は、PS2から性能が飛躍的に向上したPS3だからこそ実現できたものだったように思う。

「MGS3」より導入された、敵兵からの見つかりにくさを表す“カムフラージュ率”の概念は引き継がれており、「MGS4」のスネークは新たな装備“オクトカム”を使用。しばし壁や床に張り付いていると、スネークの戦闘服がタコのようにその場所の色や模様に擬態してカムフラージュ率が上がる仕組みは、前作で生じていた地形にあわせていちいち着替える過程をスキップしつつ、見た目にもおもしろく、これまたPS3ならではの表現力が感じられた部分だった。
そのほかにも、周辺の状況を可視化する“ソリッド・アイ”や“スレットリング”、兵士ごとにID管理されており、本来はユーザー以外が使うことのできない武器や弾薬をポイントによってアンロック・購入可能にする武器商人ドレビンの存在など、世界設定に紐付いた近未来的な新システムが多数採用されている。

操作系の面では、現代において銃撃戦をともなうアクション・アドベンチャーゲームの多くで採用されている“狙いを定めながらの移動が可能”な、いわゆるTPS操作が導入され、本作でほぼ完成形に仕上がっている。周囲の状況をある程度把握しながら射撃がしやすいTPS視点と、さらに正確に狙いを定めるための主観視点を使い分けられることもあり、“主観撃ち”が基本だった過去作の操作系からの移行は容易であろう。
“しゃがみ歩き”の採用も、これ以降のシリーズへの影響は非常に大きい。素早く移動できるが遠くからでも敵兵に見つかりやすい通常の“走り”と、移動はゆっくりになるが敵兵に見つかりづらい“ホフク前進”の中間に位置するこの移動方法は、なにかと取り回しやすい。本作においては、しゃがみ歩きをしばらく続けていると腰痛になってしまうなど、スネークの老化に伴ったデメリットもあるものの、重宝する状況は多いはずだ。
ほかにも移動に関しては、ホフク時に移動スティックをわずかに傾けることで通常のホフク前進以上に見つかりづらい超低速移動が使えたり、ホフクから横方向へのローリングが可能になっていたりと、シチュエーションの複雑化に対応した幅広いアクションが用意されている。「MGS3」に引き続き近接戦闘術“CQC”も使用可能だ。

各種アクションは多彩かつ、ほとんどが直感的に操作できるもので、シリーズにおいて現代のアクションゲームに慣れている人にとって比較的操作しやすいのは、この「MGS4」以降の作品になるのではないかと思う。
ゲームは全5章からなる章仕立てとなっており、スネークは章ごとに世界各地を転々とする。この点でも、過去作から物語の規模感は大幅にスケールアップしていると言えるだろう。一方で、ゲームプレイにおける自由度や試行錯誤を伴うやりがいは、序盤の第1章および第2章でピークを迎える。それ以降はシリーズを追い続けてきたプレイヤーに対するファンサービスを伴いつつ、“ソリッド・スネークの物語に終止符を打つ”ための話運びと舞台立てが、ゲームプレイにおいても比重を高めていくことになる。


「MGS」シリーズはかねてよりムービーシーンの長大さ(それに加え業界随一のこだわりが投入された映像演出の見応え)が特徴のひとつとなっていたが、各章開始前のブリーフィングを含めたとき、本作のそれはシリーズの中でも突出して長い。恒例と言える“言葉遊び”的なセンスもかなり尖っている。あらゆる構成要素に“意味”や“理由”を散りばめたシリーズならではの作家性が、良くも悪くも最も先鋭化し、ゲーム全体の構成さえもそれまでの常識から大きく逸脱しているのが「MGS4」最大の特徴と言えるだろう。
本作に“乗れる”かどうかは「メタルギア ソリッドというシリーズに何を求めているか?」に大きく左右されると感じる。“乗れた”者ならば万感の想いで結末を見届けられるだろう。少なくとも筆者は、シリーズを追ってきた者としての感慨深さはありながらも、十分に“乗れた”側の人間ではなかった。それでも、ここまで先鋭化と逸脱を極めたタイトルは今後おそらく現れないであろうことを思えば、賛否に関わらず一度体験してみるべき一作であることは間違いない。

MASTER COLLECTION版はオリジナル版で長らく必須となっていた各章をまたぐ際のデータインストールが不要になり、快適性が向上しているのも嬉しい点だ。
「METAL GEAR SOLID PEACE WALKER HD EDITION」:携帯機向けでありながらシリーズの極めて重要な“ピース”
「MGSPW」のオリジナル版は2010年に携帯機のPSP向けタイトルとして発売。翌2011年にはPS3とXbox 360向けに画質や操作性などを向上させた「~HD EDITION」が発売されており、MASTER COLLECTION版はこちらがベースとなっている。
時代はふたたび遡り、「MGS3」でネイキッド・スネークが“BIGBOSS”の称号を与えられてから10年後の1974年。南米・コロンビアで独自の軍隊を組織していたスネークは、軍隊のない国家であるコスタリカから来訪した人物から武装集団の調査および排除を依頼される。

本作の成り立ちを理解する上で重要なのは、オリジナルであるPSP版が開発・リリースされた2000年代後期~2010年代初期における日本国内のゲーム業界は、ニンテンドーDSやPSPといった携帯ゲーム市場が、PS3やWiiなどの据置ゲーム市場を大きく凌ぐ勢いを持っていたということだ。
ニンテンドーDSでは、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」に代表される“ゲームの定義拡大”を目指した“Touch! Generations(タッチ・ジェネレーションズ)”と銘打たれた作品群が世代を問わない支持を得て大ヒット。そしてPSPでは「モンスターハンター ポータブル」シリーズが特大ヒットを記録。若いゲーマーを中心に、オフラインで集まって協力プレイに励む光景がいたるところで見られた。

「MGSPW」もまた、PSPにおける前作「METAL GEAR SOLID PORTABLE OPS」(2006年)の流れを汲みつつも、当時の業界の流れを受けて設計されたであろうゲームデザインの構成要素が多々見受けられるタイトルとなっている。
ムービーシーンにバンドデシネ風の演出が取り入れられるなど、制約の多いゲーム機でも過去作に見劣りしない独自の見せ方が工夫されており、このあたりもまた各種ハードの特性を活かしたその時代ごとの“最高のゲーム体験”を追求してきたシリーズならではのこだわりが感じられる。


改めてプレイして再認識したのは、本作の携帯ハードを前提に簡略化された操作系やミッション制のゲームプレイは、大きな画面でプレイしても快適に楽しめるものだということ。
“ホフク”の体勢は取れるものの、シリーズのアイデンティティのひとつと言える“ホフク前進”は使えなくなり、あくまで敵兵をやり過ごすためのアクションに。必然的に「MGS4」から登場した“しゃがみ歩き”がスニーキングの基本になっていることで、ゲームのテンポ感が向上している。
CQCには、近くに敵兵が密集していた場合、タイミング良くボタンを押せば矢継ぎ早に複数の相手にCQCを仕掛けられる“連続CQC”のアクションが追加。少し離れた場所の敵兵にCQCで捕らえた敵兵を投げ飛ばして双方を気絶させるといったアクションも使える。


これらはステルスアクションの緊張感を保ちつつも、携帯機らしい“手軽な楽しさ”を追求した結果の仕様変更だったように感じる。それでいて、しゃがみ歩きや連続CQCの有用性は「MGSV」でも健在で、「MGSV」における操作系の洗練は、この「MGSPW」を経由したからこそのものであるようにも思える。
短時間でクリアできる達成条件の数々をこなしていくことでストーリーが進展するミッション制の導入もまた、携帯機に最適化した仕様でありつつも、「MGSV」の“オープンワールドにおけるステルスアクション”でも真価を発揮したゲームデザインだったと言えるだろう。


敵兵を含む兵士たちをフルトン回収して、マザーベースのスタッフを増やし、運営・発展させる要素も本作から。2~4人協力プレイ“CO-OPS”や最大6人による対戦プレイ“VERSUS OPS”は、「~HD EDITION」からオンラインに対応。遊びの幅の広さでは、ナンバリングタイトルに負けず劣らずである。
カズヒラ・ミラー、パス、チコ、ヒューイなど、「MGSV」の物語にも関わる重要人物が複数登場する点でも、やはりメタルギアサーガを理解する上で極めて重要な本作。作中でのVOCALOID技術の利用や、パスを演じる声優・水樹奈々さんが歌う挿入歌が意外なシチュエーションで使用されるなど、キャッチーな要素も取り入れつつ、“平和”や“抑止力”をテーマとした骨太なストーリーもまた、“正史”に名を連ねるタイトルとして見劣りしない。

「携帯機向けタイトルならでは」と「メタルギア正史ならでは」をしっかり両立しつつ、「MGSV」に続く極めて重要な“ピース”でもある、こちらもまたぜひプレイしてほしい一作だ。
「METAL GEAR Ghost Babel」:コンパクトで高密度な、完成度の高いゲームプレイ。「MGS」とパラレルな世界が楽しめる一作
最後に、「METAL GEAR Ghost Babel」に軽く触れてレビューを終えようと思う。というのも、筆者は本作をこのレビューを書くことになり初めてプレイしており、まだエンディングまで辿り着けていないのだ。しかし、その完成度に夢中でプレイしてしまっている。シリーズでもお気に入りの一作になることはすでに間違いなさそうだ。

本作は、2000年にゲームボーイカラー向けに発売された、メタルギアサーガ“正史”に組み込まれていない、パラレルな世界におけるソリッド・スネークの任務を描いた作品だ。「METAL GEAR SOLID」の約2年後のリリースとあって、携帯機向けの“2Dメタルギア”でありながら、2D作品、3D作品の高く評価されたポイントをかけ合わせた、当時の集大成的な作りと言って良いだろう。
ミッション仕立てになっており、細かく区切られていながらも連続性のあるフィールド攻略とストーリーは、区切りの良いところでサクッとやめられる手軽さと、スケールの大きな任務の全体像を両立している。


アラスカで静かに暮らすスネークを呼び戻すキャンベル、セーブ担当兼レーダーなどのシステム開発者であるメイ・リンなど、「METAL GEAR SOLID」と一部被る登場人物やシチュエーションが見受けられつつも、そのほかのキャラクターや物語設定は異なっている。まさに“MGSシリーズから枝分かれした世界線”が楽しめる一作だ。
ストーリーの進展により変化していくシチュエーション、地形と敵兵の組み合わせにより常に頭を悩ませてくれる潜入経路のバリエーション、新たなアイテムを手に入れたときの喜び、パズル色の強いギミックなど、コンパクトだからこそゲームプレイの密度は高い。「MGS」にあった“VRミッション”も収録されているなど、長く、深く楽しむための要素も多い。近年の作品とは異なるシンプルな駆け引きに夢中になっている。
ゲームボーイカラー向けに、ここまでこだわりを持って制作されたステルスアクションゲームがリリースされていた事実に、改めて驚くばかり。ちなみに、筆者は「MGS」シリーズでは監視カメラの真下が死角だったため、本作でも通用するのではと思い試してみたが、普通に見つかってしまった。「MGS」シリーズを経て本作をプレイする人は気を付けてほしい。


以上が、「METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol.2」に収録されている3タイトルのレビューとなる。今回収録されているタイトルは、「~Vol.1」と比べてもそれぞれが異なったベクトルでよりいっそう強烈な個性を有したタイトルばかりだ。
ある意味、操作系の洗練と相反するように、発売時期が新しいタイトルであるほど、人を選ぶ要素も増えていると言えるかもしれない。ここまで読んでいただけたならおわかりかと思うが、筆者自身、どの作品に対しても全肯定できているわけではないのだ。
しかし、常識に囚われない変化を厭わなかったからこそ、人々の記憶へと強烈に残り続けたシリーズであることも間違いなく事実であろう。さまざまな試行錯誤を続けた本シリーズは、「MGSV」であらゆる意味での集大成を迎える。本コレクションの登場により現行プラットフォームでも辿ることが出来るようになったこの壮大なサーガに、心惹かれたならぜひ触れてみてほしい。
(C)Konami Digital Entertainment
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