「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーラヴクラフト作品を原案にマオリ文化を織り交ぜた、不穏な南極の物語

プレイレビュー
0コメント 松本鹿介

Fellow Travellerより、2026年10月17日にPC(Steam)向けに配信予定の「ペンギン・コロニー」のレビューをお届けする。なお、本作は2027年にNintendo Switch 2向けにも配信予定だ。

ペンギン・コロニー公式サイト
ペンギン・コロニー公式サイト

「ペンギン・コロニー」は、1939年の南極を舞台に、強大な力を持つ古の存在へと接近する人間たちの物語を“ペンギン”の視点から追っていく、コズミック・ホラーを題材としたナラティブなアクションADVだ。

開発を手掛けるのは、ニュージーランドに拠点を置き、代表作に「ウムランギ ジェネレーション」を持つORIGAME DIGITAL。脚本・ディレクターを務めたNaphtali Faulkner氏はマオリ族の血を受け継ぐ人物で、本作ではH.P.ラヴクラフトの小説「狂気の山脈にて」「時間からの影」を原案に、マオリ文化の影響を織り交ぜた物語が描かれる。

今回、Steam版のコードを提供いただいたうえでレビューをお届けするが、本文中にはストーリーの一部ネタバレが含まれる。また、作中にはナチスやファシズムに関わる思想・政治体制が物語の要素として盛り込まれているものの、開発スタジオはファシズムを支持しない立場を明示している点について、あらかじめご留意いただきたい。

ヨチヨチ歩きに腹滑り。ペンギンとなり南極の奥地へ

ゲームは、辺り一面が雪や氷で覆われた南極の雪原からスタート。群れの中にいる一羽のアデリーペンギンを操作し、探索を進めていく。移動の基本となるのは、ペンギンならではのヨチヨチ歩きや腹滑り、水中での遊泳などで、直立の状態でジャンプすると「ピョコッ」と軽快なSEが鳴るのが可愛らしく、この後に待ち受ける不穏な舞台・物語とのギャップが印象に残った。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

作中では近くにいる別のペンギンへ操作を切り替えることも可能。確認した限りでは、ヒナを含む計8種類の“プレイアブルペンギン”が登場し、それぞれ異なる特徴を持つ。たとえば、最初に操作するアデリーペンギンは万能型で、イワトビペンギンはジャンプ力に優れ、背の低いコウテイペンギンのヒナなら狭い隙間にも入れるといった形だ。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

こうした能力を状況に応じて駆使しつつ南極の奥へ奥へと進んでいくが、探索の最中には「知識」が得られる。これはペンギンのスタミナを上昇させるほか、ナレーションを通じて語られる隠された真実の解放にも役立つ。

とはいえ、プレイした限りではスタミナ管理が重要だと感じる場面は少ない。ペンギンならではの動きを楽しみつつも、アクション性を前面に押し出すより、探索を通じて物語を追うことに重きを置いている印象だ。「知識」の収集についても、能力の強化以上にストーリーを知る手がかりとしての役割が大きいように思える。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

なお、開発元によると、本作は名作ホラーゲーム「SIREN」から影響を受けているとのことで、広大で荒涼とした環境や、プレイヤーの手では変えられない周囲の世界などが、その例として挙げられている。

一方で、雪原から遺跡へと舞台が移る中では、狂気に飲まれた人間たちや異形の存在と遭遇しても戦闘には発展しない。そのほとんどが屍人のようにこちらを捕捉して襲ってくるわけではなく、ペンギンたちの動向を全く意に介さないため、プレイヤーができるのは目の前で起きた出来事をただ眺めることである。

“古の存在”を巡る思惑と、狂気に飲まれる人間たち

本作のストーリーは「ハワード・ブレイクリー」という科学者が自身の体験を語ることで、断片的に明らかになっていく仕組みが取られている。ナレーションを務めるのは「Disco Elysium: The Final Cut」のナレーターや、「ULTRAKILL」でシジフォス・プライム役を演じた声優のLenval Brown氏で、彼の低音で艶のある声色も本作の魅力の一つだ。

ブレイクリーの語りや作中のムービーから浮かび上がるのは、南極の最奥に潜む古の存在を巡る人間たちの思惑である。強大な力を利用せんと画策するナチス側と、代々受け継いできた教えに倣い古の存在の目覚めを阻止しようとするカイティアキ(ニュージーランドの部族から選ばれた守護者)の一行とが対立し、同じ存在を前にしながらも両者の向き合い方は大きく異なっていた。

また、語り手であるブレイクリーは、もともとナチス側に雇われて南極へと赴いたようだが、彼も大いなる存在へと近づく中で、異なる思惑を巡らせていく。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

三者三様の思惑の中心にある古の存在は、ナチスの科学者によれば“スゥルーミン”と呼ばれる旧支配者であり、数千年前に地球を支配していたという。ナチスはこれをアーリア人の祖としてプロパガンダに用いようと調査隊を送り込んだ。しかし、彼らの意図など関係ないと言わんばかりに、古の存在はその力で人々を狂わせ、死に至らしめる。

序盤で訪れる「野営地」では、まさに人々が狂気に飲まれる様子が見られ、耳鳴りのような音とともに頭が吹き飛ぶ者や、建物の柱に頭を打ち続ける者も。中には「スゥルーミン」とつぶやきながらナイフでギコギコとこめかみ周辺を切りつける者もいた。非常に痛々しいが、単にグロテスクというだけでなく、この後プレイヤーが見届けていく不吉な事象の始まりを予感させる。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

壊滅状態のキャンプを抜けて吹雪の中を進んでいくと、巨大な塔を備えた建造物へと行き着く。ここが古の存在が待つ最奥部への玄関口と見られ、その先には黒みがかった岩石で構成された遺跡群が広がっていた。人間が造ったとは思えない異様な光景は、近代的・近未来的な建築物とも異なり、失われた超古代文明の痕跡を思わせる。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

遺跡内では時折ドイツ兵も見られるが、彼らはもはや人間としての尊厳を有していない。ある者は仲間を食らい、ある者は体から触手が生えているような有り様だ。彼らはこのまま、白骨と化すまで朽ちていくのだろう。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

物語も終盤に差し掛かったチャプター4では、巨大生物(ショゴスと見られる)とのチェイスも発生。ここではドイツ兵が銃火器で応戦するものの、まったく歯が立たない。それまで傍観者だったプレイヤー(ペンギン)にも敵意が向けられ、今度は逃げる側に回るわけだが、焦燥感を煽る重厚なBGMによって緊迫度が増していった。

「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像
「ペンギン・コロニー」レビュー:ヨチヨチ歩くペンギンの横で人間たちは自傷行為――愛らしさと狂気のギャップで描かれるコズミック・ホラーの画像

巨大生物から逃げ伸びると、いよいよ物語は結末へと収束していく。カイティアキが目覚めさせまいとする古の存在は一体何なのか、ブレイクリーの思惑とは何なのか、ここから先はぜひご自身の目で見届けていただきたい。

発見を共有し考察を深めるコズミック・ホラー体験

参考程度に、筆者のクリアまでのプレイ時間は3時間ほどだった。一方で、マップによっては探索範囲がかなり広く、「知識」をはじめとする収集要素をコンプリートしようとするなら、さらに多くの時間を要するだろう。

また、前述の通り、本作では断片的な語りをつなぎ合わせながらストーリーを把握していくのだが、すべてが明快に説明されるわけではなく、その解釈はプレイヤー次第だ。開発者のFaulkner氏もまた、クリア後のメッセージにて本作をプレイした他の探検者と発見を共有し、楽しんでほしいという旨を述べている。

「狂気の山脈にて」などのラヴクラフト作品を再解釈し、人間たちの狂気をペンギンの視点から追うという独特のアプローチを取った本作。大いなる存在と、それを前にした人間の無力さを描くコズミック・ホラーの一端を、小さな傍観者とともに覗いてみてはいかがだろうか。

自身が幼少期を過ごした2000年代の作品に魂を引かれがち。特にホラーゲームをこよなく愛する。Gamerのほか、Game*Sparkなどでもニュース記事を中心に執筆中。

本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

ペンギン・コロニー公式サイト
ペンギン・コロニー公式サイト

関連タグ

ペンギン・コロニー 関連ニュース

関連ニュースをもっと見る
ペンギン・コロニー公式サイト
ペンギン・コロニー公式サイト

注目ゲーム記事

ニュースをもっと見る

ゲームニュースランキング