Thermite GamesとSmilegateより、2026年11月5日にリリース予定のデスゲームアドベンチャーゲーム「病能探偵」のレビューをお届けする。
「病能探偵」は、認知異常を抱える神候補者たちがデスゲームを繰り広げるアドベンチャーゲームだ。台湾のインディーゲームスタジオであるPHOSEPOが手がけた作品となっている。

先日のTGS2026でも試遊レポートを掲載していたが、今回はひと足早く製品版のSteamコードをご提供いただけたので、こちらのレビューをお届けする。
※ネタバレは極力避けているものの、レビューという性質上、物語への言及も含まれるため、まっさらな気持ちでプレイしたい人は注意してほしい。
驚くほど高品質の傑作ミステリーアドベンチャー
本作は「ダンガンロンパ」シリーズの影響を色濃く受けた作品。キャラクターの矛盾を指摘する“論破モード”や真実を整理する“真相再現”などからは、かなり「ダンガンロンパ」を意識していることがうかがえる。

しかし、本作が「ダンガンロンパ」の模倣であるかというとまったくそんなことはない。本作ならではの設定は斬新で登場するキャラクターたちもオリジナリティあふれる愛すべきキャラクターたちだ。ミステリー部分の謎解きも二転三転する内容で驚きに満ち溢れていて先が読めなくてとてもおもしろい。

そして“病能”という本作独自の設定に悩むキャラクターたちの葛藤が本当に胸を打つ。自分自身、こんなに熱中してひとつのゲームをプレイしたのは久しぶりだった。ライターとして正しくはないが、「とにかくプレイして欲しい」の一言を真っ先に伝えたいゲームだ。
もしもこの文章を読んでいるあなたがアドベンチャーゲーム好きで、これまで筆者が書いてきた文章と波長が合うと感じているのであれば、ネタバレを踏む前に今すぐ遊んで欲しい。2章の途中まで遊べるデモも配信されており、この段階でも本作のクオリティは確認できるので、これを遊んでみるのも手だ。(※製品版の配信日は2026年11月5日)

ここからはなるべくミステリー部分について触れないように魅力を紹介していく。本作は「理」と呼ばれる宗教組織が台頭し、世界最大の宗教となった世界を舞台にしている。そして本作には「病能者」と呼ばれる能力や異常を抱えたものたちが存在しており、そんな彼らに「理」からデスゲームの招待状が届くことに。殺人を成し遂げ、かつ発覚を免れた者は「神」となり、どんな願いも叶えられる……というストーリーだ。

こういったデスゲームは参加者以外は進行役ぐらいしか外部のものがいないのがポピュラーだが、本作の舞台となる建物には多くの信者が存在している。信者たちが自ら積極的にデスゲームに関与することはないが、ほかのデスゲーム作品とは異なる異質な空気感を作り出している。
また、「病能探偵」にはこういった本作ならではの設定が多数あり、これらが単なる雰囲気作りではなく、物語や設定に密接に関わっている。物語やシステム、謎解きがすべてしっかり繋がっているのは本作を筆者が高く評価したポイントのひとつだ。

本作のデスゲームは「汝は人狼なりや?」がベース。人狼を引いた人物は、殺人を犯して自分の願いを叶えるために行動することになる。毎回ゲームごとに役職が変わり、主人公が占い師を引いたことで最初から人狼となる人物が明らかになる場合もある。
どのエピソードもクオリティが高く、シナリオが後半になるほど事件の真実が明らかになったり、キャラクターの秘めた想いが明らかになり、盛り上がりが増していく。第1章はチュートリアル的な内容になっているが、この段階でさえ、ものすごくおもしろい。

デスゲームものは最初の事件がインパクトが強く、終盤にふたたび驚きの展開が待っているという作りが多い印象だが、本作は最初の事件のクオリティも当然高くておもしろいが、その後も右肩上がりでおもしろさが加速していく。
事件が発生する前の日常パートはキャラクター同士のコミカルなやり取りもあるが、事件の真相が明らかになっていく後半はまさかのトリックにハラハラし、明らかになるキャラクターの想いにボロボロと泣いてしまうハズだ。真相が明らかになる場面では、謎が解けるうれしさがありつつも、それぞれのキャラクターがどんな歪んだ世界で生きていたのかが分かるものとなっているため、胸が締め付けられることだろう。

本作の最大の特徴は、各キャラクターが顔を認識できない「相貌失認」だったり、左側の情報が欠落する「空間無視」だったりといった“病能”を持っており、その病能を人に伝染させることができるというところだ。自分の病能がどういうものか最初から明かしているキャラクターもいれば、隠しているキャラクターもいる。また、明かしたからといってすべてを明かしているとは限らない。

この病能は現場の見え方や証言、プレイヤーの理解そのものを左右する仕掛けとなっており、ミステリーとしての深みを増している。矛盾のない証言であっても、認知の歪みに縛られた本人にとっての真実である可能性もあるなど、ミステリーとして考える要素が一段階増えているのだ。この設定が上手く絡み合い、本作のミステリーとしてのおもしろさのレベルを大きく引き上げている。

なお、超常的な設定があることでミステリーとしてフェアかどうか不安に思う人もいるかもしれないが、各事件で推理に必要な要素は事前に提示され、後出しで重要な新設定が明らかになることはない。そこは安心してプレイして欲しい。
キャラクターは主人公のライルと妹のレナのほか、ライルの幼なじみであるモトウ、頼りになる大人の左守、過去の出来事をすべて記憶できる「完全記憶」を持つものの推理はポンコツな探偵のハイバなど、誰も彼もが個性的。どのキャラクターもしっかりバックボーンが存在しており、物語の見せ場があるので全員を好きになること間違いなしだ。それぞれのキャラクターの葛藤や決意が本作の大きな見どころではあるが、ネタバレになってしまうのでここでは伏せておく。

殺人事件や処刑シーンの演出は、一般的なコンシューマー向けタイトルと比べるとかなりショッキングな内容が多く、少しグロく感じてしまうこともあるかもしれない。ただし、そういった部分を真正面から描くことが本作においては正解ではないかと思っている。テーマともかみ合っているので、筆者は露悪的には思わなかったし、嫌悪感も無かった。

キャラクターの立ち絵やスチル、そしてAIに頼らずにすべて手描きで作っているというアニメーションもクオリティが高く、要所要所で物語をとても盛り上げてくれた。


ゲームのボリュームもしっかりあり、かといって冗長な引き延ばしもなく、ちょうどいいバランス。本当に最初から最後まで没頭して楽しめた。繰り返しになるがミステリーアドベンチャーやデスゲームものの作品が好きな人はぜひチェックしてもらいたい1作だ。
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