科学アドベンチャーシリーズの制作秘話や最新作「ロボティクス・ノーツ」の話題で盛り上がった志倉千代丸氏トークイベント「緊急招集!400人委員会」をがっつりレポート

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11月5日、法政大学市ヶ谷キャンバスにて、MAGES.代表取締役社長の志倉千代丸氏によるトークイベント「緊急招集!400人委員会」が開催された。2年前にも同大学にて行われたトークイベントだが、今回は、科学アドベンチャーシリーズに焦点を置いてのトークが展開された。

アニメ版「シュタインズ・ゲート」は“お作法”がしっかりと入り込んでいた

志倉千代丸氏
志倉千代丸氏

まず、今年4月~9月の間放送された「シュタインズ・ゲート」のアニメに関する率直な感想について志倉氏は、「放送までは心配だった」と今だから話せる心境を語った。

元々アドベンチャーゲームのシナリオは膨大なテキスト量だが、「シュタインズ・ゲート」ではアニメ化するにあたって1割程度にまとめ、テキストで表現していた部分については、キャラクターの動きなど表現を加えることで事象を説明できたという。その結果、作品を楽しむ上での“お作法”として必要な知識がわかりやすく落とし込めたと語った。

また、本作を語る際に頻出する「伏線が多い」ということについては、“世界線”という本作のキーワードを用いて「すべてのADVゲームは分岐することで世界線が変動している」という持論を展開し、その中で“世界線が変動する”ということにマッチした「シュタインズ・ゲート」はリアリティがあり、アニメの中でも一番いい選択ができたと感想を話していた。

続いて、科学アドベンチャーシリーズ1作目である「カオスヘッド」のアニメ版についてトークが展開。「シュタインズ・ゲート」の24話に対して、半分の12話で構成された同作品では、「凝縮しすぎはよくない」という印象をもち、また、「ゲーム版を知っている人にとっては驚きの展開」となっていたそうだが、作品自体はゲーム版とは違うものの、それはそれでエンターテイメントとしてはありだと自身の考えを述べた。

また、志倉氏は、作品のファンである“原作厨”について、原作が1番であるとしてアニメで知った人に対して上に立つという考え方に疑問を投げかけ、“究極の原作厨”は原作者なのだから、「もっとやさしくしてくれていいんだよ」と思わずポロリ。「俺が原作厨だ!」と言い切るなど、同氏らしい場面も見られた。

劇場版「シュタインズ・ゲート」は“一見さんお断りの映画”に

話は「シュタインズ・ゲート」に戻り、今度はTVアニメ最終回放送後に発表された劇場版に関する話題へ。志倉氏は、発表時にツイッター上で情報を拡散したことについて触れ、当日アニメが放送されていた埼玉県(テレ玉)だけが“情報強者”にならず、全国で共有したかったとその思惑を語った。

本題である劇場版の進行具合について聞かれると、現在まだ本格的な制作には取り掛かっていないものの、志倉氏がずっと発言している“一見さんお断りの映画”にしていきたいと考えているという。イメージとしては、「シュタインズ・ゲート」を知っている人は泣ける、全く知らない人はなぜ泣いているかわからない、と思うぐらいにしたいと構想を述べた。

また、「総集編にはしないのか?」という質問については、「シュタインズ・ゲート」は長くても2時間ほどの映画でまとめられる内容ではなく、具体的な要素としては紅莉栖とのその後や、後日談となる「シュタインズ・ゲート 8bit」と「シュタインズ・ゲート」の間あたりについて触れていきたいと考えており、今のところはいくつかのプロットを用意している段階であるとのことだ。

「シュタインズ・ゲート 8bit」は5ヶ月の制作期間であれだけの意欲作に

続いては、先月末に発売されたばかりのWindows用ソフト「シュタインズ・ゲート 8bit(正式タイトル:変移空間のオクテット)」の話へ。

本作が制作された経緯としては、志倉氏が1年半ほど前に「昔の88(PC-8800シリーズ)みたいなのを作ろう」とスタッフに提案し、そのとき賛同したメンバー5、6人とともに本作の制作をスタートしたという。すでにその段階で構想は練られていたものの、その後1年ほどは「ロボティクス・ノーツ」の制作に追われ、実際に着手したのは5ヶ月前ほどと短い時間ながら発売にこぎつけられたと語った。

ただし、本作は短期間での制作にも関わらず、さまざまな機種を選べたりカナオンリーにしたり、さらには、機種によってテキストを表示するとBGMがもたつく(処理落ちする)仕様にするなど、“わかる人にだけわかる”要素を詰め込んでいったという、まさに意欲作と言える作品となっている。

志倉氏は、「コミケで2000本売れればいいかな」というぐらいに考えていたものの、実際には初回で20,000本を出荷するなど好調な滑り出しになっているという。また、レトロゲー好きとしても知られる志倉氏自身の本作における満足度は、ビジネスを考えず、100%楽しみながら制作できたことで“100点満点”と発言していた。

この流れを受けて「『カオスヘッド』の8bit版を作るしかない」という発言も。これは期待せざるをえないかも!?

新ブランド「GigasDrop.」について

「シュタインズ・ゲート 変移空間のオクテット」は、MAGES.の新ブランド「GigasDrop.」から発売されたが、今回新ブランドを立ち上げた経緯についても語られた。

志倉氏によると、今までMAGES.(5pb.)ではコンシューマタイトルしか取り扱っておらず、しかしながら表現の自由度を求めるとPCでの発売に行き着くということで、「カオスヘッド」のときは企画の作風に合うソフトメーカーだったニトロプラスにお願いしたそう。

この企画を立ち上げる際には、ニトロプラスに出向いて、同社のスタッフに6時間にもおよぶプレゼンを行ったという。ここでは、企画書はひとつの作品であり、流れができあがっているため、企画書は説明に合わせて見てもらうようにしていると、自身のプレゼンにおける手法についても語っていた。

そういった流れもあり、今後も科学アドベンチャーシリーズのPC展開についてはニトロプラスにお願いしていくそうだが、「8bit」やその他のPCタイトルを自社で展開していくためのブランドとして、今回「GigasDrop.」の立ち上げに至ったとのことだ。

気になるブランド名の由来については、「ギガ」「メガ」などのデジタル用語にしようというアイデアなど、いくつかのアイデアが出てきたそうだが、最終的にはスタッフと志倉氏の考えた言葉を合わせてブランド名にしたそうで、特に深い意味はないという。

志倉氏が語る「科学アドベンチャーができるまで」

ここまでは各タイトルに関する話が中心となっていたが、続いて「科学アドベンチャーができるまで」に関するトークへと展開。ゲームの企画や音楽プロデューサーとしても活躍する志倉氏の作品作りへのこだわりが語られた。

志倉氏は、「自分の妄想の起源がいろいろなところに転がっていると」と休みを含めたどんな時でも企画のネタになる何かを発見し、ICレコーダー、写真、テキストで記録しているという。そしてそれらを寄せ集めることで作品を作り上げていくのだと語った。

また、科学アドベンチャーについて、「科学と言っている以上、ファンタジーではない」と発言。例えば、渋谷、秋葉原などリアルな場所で人が死亡することは怖いことであり、どこか架空の世界の出来事よりもそれは重くのしかかってくる。一人の人の死が軽く描かれると物語も軽くなってしまうため、もし人の死を描くのであれば本当に重く描く。ファンタジーにせずに、死んだことに重要な意味合いを持たせることでリアリティを求めているという。

そして、伏線については100%は回収しないが、大きなものについては必ず回収すべきであり、読んでる人が“気持ちのよい心の着地点”が見つかるように意識して作っていると述べた。

さらに、「シュタインズ・ゲート」で登場する人工衛星について、当初は登場する予定がなかったことを明かした上で、ラジオ会館に出現させるに至った経緯が語られた。

志倉氏は、ポスターイメージを制作する際、「カオスヘッド」におけるヒロインが妄想の剣「ディソード」を持っていたことを踏襲し、「シュタインズ・ゲート」では剣の代わりに携帯電話を持っているビジュアルにしようと考えていたという。しかしながら、書いている最中に「これ地味じゃね?」と思い、なんとかしたいと思ったそう。

ポスターに落としこむ際のキャッチーさを与えるためにいろいろと考えていくなか、「なにかを落とそう」という考えに至り、質量を持ったものが光速を超えることはないという観点から当初扱わない予定だったタイムマシンを人工衛星の形状でラジオ会館に墜落させるかたちで背景に落とし込んだという。

そして、当初考えていた、質量を持たないデータが光速を超えることができれば過去にメールを送ることもできるかもしれないというアイデアや電話レンジを、人工衛星とどう結びつけていけるかということに半年以上の長い時間を費やしていたというエピソードを語った。

続いて志倉氏が語ったのは、アイデアから話を作り出す過程について。物語を構築する際に、志倉氏は、人工衛星の存在に対する回収はもちろんのこと、物語にもっとインパクトを出すために、より回収が難しい事象を起こそうと考えたとのこと。その発想のなか生まれた伏線が、「人工衛星の登場と同時に秋葉原から何千人という人が消失すること」であり、「主人公・岡部倫太郎が世界線を飛びこえる力を持っていたから」という回収に帰結していったのだという。

そのように、物語の流れからインパクトのある事象を生み出すのではなく、先に演出として派手な事象を用意し、あとでそれらをつないで物語を構築することでにインパクトが生まれるのだという持論を展開した。

次に、タイトルの由来について。「カオスヘッド」については当初ボツ案として、当時業界内で漢字とアルファベットの組み合わせが流行していたことから「哀SWORD」や「侍コンデンサ」などのアイデアがあったそう。ちなみに「侍コンデンサ」はシナリオの林直孝氏が絶賛し、作中に星来の武器「サムライ☆コンデンサ」として採用されたという。

そして、「シュタインズ・ゲート」についてはボツ案が全くなく、当初からそのタイトルで決まっていたとのこと。その由来について志倉氏は、「シュタイン」というドイツ語と「ゲートという」英語をくっつけたバカさ加減が後々岡部の厨二病設定とも繋がり、また、「アインシュタインが残したものの扉」という意味からスタートしていると語った。

続いて、司会の方から「シュタインズ・ゲート」が成功した感想について聞かれた志倉氏は、当初は「3万5000本売ろう」という企画だったことを明かした。Xbox 360でアドベンチャーゲームというジャンルでその数字は難しいものであったが、今では0をひとつ足してもいいくらいのヒットとなっていることには3年前は全く妄想できなかったとのことだ。しかしながら、ゲーム業界の中でのアドベンチャーゲームの市場は大きくなく、まだまだこれからだとその胸中を語った。

また、メディアミックスについては、ユーザーの大半が認識しているゲームが原作ではなく、企画書とプロットが原作であるという見解を示し、それがゲームになったり、アニメになったりと作品ごとにさまざまな媒体へメディアミックスしていくのだと語った。

そうしたさまざまな狙いはあったものの、「シュタインズ・ゲート」が成功したのは“結果オーライ”であり、作りたいものを作ったら多くのユーザーが賛同してくれたことを対する喜びを表していた。

そして、現在は、アドベンチャーゲームの市民権をもう一段階上げるためにどうしたらいいかを考えており、そのために用意しているのが「ロボティクス・ノーツ」ということだ。

「ロボティクス・ノーツ」にARを取り入れた理由とは?

まず、東京ゲームショウのステージイベントで「『シュタインズ・ゲート』は超えられない」と語ったことに言及、各メディア(筆者含む)でその発言が取り上げられたことから「おー、釣れた釣れたー」と楽しそうに語り、会場の笑いを誘っていた。

舞台が種子島へと移った「ロボティクス・ノーツ」では、すでに「ロボット」「拡張現実(AR)」を題材として取り上げることが明らかになっている。

今作でその2つの題材を扱おうとしたきっかけについて志倉氏は、もともと科学ネタがいくつかあるなかで当初はロボットのみをやろうとしていたそうだが、日々進化を続けるARについては、今扱わなければ真新しいものではなくなってしまうため、ARの未来を示すにはこのタイミングでないといけないと考え、一緒にすることに決めたのだと語った。

これについては、「シュタインズ・ゲート」で使われた「SERN(セルン)」や「光速を超える」、「宇宙デブリ(※人工衛星、ロケットの破片など地球の衛星軌道上を周回している人工物体)が地球上に飛来する確率が世界線変動率になっていること」なども、旬なタイミングで取り入れたいと考えた上でのアイデアであったのだという。

また、2つの題材を同時に扱うことにしたもうひとつの要因として、あらかじめ設計図がデータセットしてあるARを通してロボットをみることで、その場で座標とマッチングしたロボットの設計図がわかるようになったりするのではないか、などといったロボットとARの親和性が高かったことを挙げた。

続いて、現在公式サイトに表示されている世界線変動率が「シュタインズ・ゲート」と同じであることについて志倉氏は、本作では2010年に秋葉原で起きた事件(「シュタインズ・ゲート」)から9年後の2019年に種子島で起きた事件という流れになっており、そもそもロボットを巡ってこの事件が起こるとしたら世界線変動率が「シュタインズ・ゲート」のトゥルーエンドと同じでないと起こらないのだと発言。

その理由については、全世界による核廃絶が実現し、その結果として各国は国費をロボット開発に傾倒させ、人に役立つロボットを開発しようとしているのが本作の世界線であり、だからこそトゥルーエンドの世界線変動率を明示していると述べた。

このように、科学アドベンチャーでは、世界線が大分岐する瞬間をカメラで捉えているという認識で作品を制作しており、分岐を繋げないと過去の作品を否定してしまうことになるという。

また、今回、JAXA(宇宙航空研究開発機構)に協力を依頼したことについては、ロボット製作が可能になる設備や重機、スキルなどの環境を持っている実在の施設が作中に登場することで、リアリティを支えることを依頼の理由として挙げていた。

科学アドベンチャーの今後と質問コーナー

科学アドベンチャーの今後について聞かれた志倉氏は、少なくとも第4弾はやると発言。現在、自身がひとりで考えているすごく面白いアイデアが頭の中にあるという。「時代がこの作品を欲しがっている」とまで志倉氏に言わしめるそのテーマについて、判明するのはしばらく先になりそうだが、まずは最新作「ロボティクス・ノーツ」の出来に期待したいところだ。

ひとしきりトークが終わったところで、事前に応募していた質問に志倉氏が回答することに。ここではその中から一部抜粋して紹介しよう。

今後のアニメ・ゲーム業界について

志倉氏自身は、アドベンチャーゲームの市民権を一段上げることを第一に考えており、そのために「ロボティクス・ノーツ」を3Dグラフィックにしたという。アドベンチャーゲームは志倉氏いわく“電脳紙芝居”であり、ゲーム性はあまり追求するものではないと前置きした上で、それでも今後、ゲーム性は付加していくだろうという見解を示した。

また、現在、小島プロダクションの小島秀夫監督とワールドワイドで勝負できるアドベンチャーゲームを制作しており、そちらで新しいテキストアドベンチャーとしてのかたちを確立して世界で勝負したいという。

そういったことを含め、アドベンチャーゲームを軸にしてキャラクターを大事にしていくことを重点的に考えており、その分野は今後も伸びていくだろうと語った。

サビでの転調が多いことについて

志倉氏といえば、作曲家としての顔も持っており、音楽関係の質問も多かった。その中でも特に興味深かったのがサビでの転調について。転調はインパクトが出やすいものの歌い手が歌いづらくなることもあるそうだが、志倉氏は、調が変わっても歌い手のメロディーはBメロ最後とサビ最初の音を同じにしており違和感なく歌えるようにしているという。

転調の際にリードの楽器の音を変化させないということは、クラシックなどでも昔から使われているセオリーに則ったやり方であるため、音楽をやっている人はぜひ転調の基本を勉強してほしいと語っていた。

ソーシャルゲーム(モバイル、スマートフォンなど)に思うこと

コンソールゲームの機種としては12月にPlayStation Vita(PS Vita)が発売されるが、スマートフォン機種は小刻みに新しくなってきている。そのことに触れた上で志倉氏は、PS Vitaの発売から3年後には、スマートフォンが抜いているかもしれない可能性を挙げ、今後、コンソール、スマートフォンの区別がなくなるときが訪れ、それがコンソールにとっての分岐点になると思っていると述べた。

イベント終了後、志倉氏への合同インタビューが実施されたので、その内容も合わせて紹介しよう。

――2年ぶりに法政大学で行われた今回のトークイベントはいかがでしたか。

志倉氏:2年ぶりなんですよね。まず何で1年空いたのか、なぜ去年は呼んでくれなかったのかと(笑)。

それも気になりながらの2年ぶりの参加でしたけど、相変わらずお客さんはマニアックな顔ぶれで、濃い人たちが集まってくれる場所なんだと思いましたね。どんな話をしてもついてきてくれますし、いつもツイキャス(※Twitterと連動したライブ配信サービス)に参加してくれる方ばかりなのでやりやすかったですね。逆に言うとグダグダ普通にやっていたので、そのグダグダ感が心配ではありますけど(笑)。

――ツイキャス感はありましたね。

志倉氏:次はツイキャスをやっているところも見てもらいたいですね。やっぱりツイキャスだとリアルタイムで質問が飛んでくるので、それに答えるところをみんなに見てもらうことができたら面白いかなと、今日やりながら思いました。

――TVアニメ「シュタインズ・ゲート」が終了し、劇場版に向けてのこのタイミングでのトークイベントはいかがでしたか。

志倉氏:そうですね。あまり「シュタインズ・ゲート」に特化したイベントにしたくないなと思っていたのですが、「シュタインズ・ゲート」を中心とした科学アドベンチャーや、楽曲などの物作りに対する興味を持っている人が集まってくれていたので、僕的にも話したいことや共有したいこととか、皆さんに聞いてみたいこととかがたくさんありました。(今回のように)500人以下のメンバーでやるなら、もうちょっとお客さんからの意見を聞いてみる場面を増やしてもいいかなと思いました。

――クリエイターとしてこのような場でやってみたいことなどはありますか?

志倉氏:今、クリエイティブな仕事をしている人はたくさんいますよね。僕もその一人ではあるんですけど。音楽を作る人や、ニコニコ動画でも「歌ってみた」「踊ってみた」など、クリエイティブなことをやっている人がたくさんいるので、クリエイティブ井戸端会議みたいなことをやりたいなと思っています。

――音楽を作る上での思いなどはありますか?

志倉氏:音楽だけではなく全体的にエッジの効いた作品を作りたいと思っています。音楽についてもエッジが効いていることはもちろんなんですけど、その作品から切り離せない音楽を作りたいと常に思っていて、全然関係のないアーティストが別の意図で作られた楽曲をその作品に乗せることは避けたいと思っています。

だから、自分が曲を作っていないプロジェクトでプロジェクトリーダーをやるような場面でも、そういったマッチングはしたことがないです。作品と切り離せない音楽を作ることにはこだわっていますね。

――「歌詞がネタばれ」と言われることについてはどう思いますか?

志倉氏:歌詞のネタばれ感もそうですし、分かりやすく言ったら昔のアニソンのようにタイトルを連呼するようなものもありますよね。そこまでやらなくてもいいとは思いますが、意味合い的にその作品と切り離せないものが、ゲーム音楽、アニメ音楽を支えていくベースになるのだと思っています。

――来場者の中にはゲーム制作に携わっている人もいましたが、そういった方々に一言お願いします。

志倉氏:元々僕は音楽しか作っていなかったんですが、物語を作るって結局日本語なので、できないことはないじゃないですか。面白いかどうかは分からないですが。

だからやってみることだと思いますよ。やればできるんですよ!僕も最初のころは全然ダメで、自分は面白いと思っても別の価値観を持った誰かはそれを面白いと思ってくれるかはわからない。そんなところが面白さでもあるのですが。

それを何回も繰り返しているうちに「こういうことが面白いと思ってくれるんだな」ってだんだん掴めてくるんですよね。(物語を作ることは)日本語を書ける人なら誰でもできるし、それが作文レベルの文章力でもいいと思っています。今はネットを通じて発表できる場もありますしね。

――学生のみなさんに対して今回のトークを通じて伝えたかったことはありますか?

志倉氏:今の若者たち全般は物に対する執着が薄すぎると思っています。僕がそれこそ、大学生の年齢のころには車だのバイクだのコンピューターだのにもっともっと執着していたんですけど、今はみんな浅く広く、何を語らせても深くない気がします。

その根性を叩きなおしてやりたいと思っています。色んな興味を持てそうなことを共有して、もっと育ってもらいたいですね。一つのことに興味を持つって、勉強よりも大切なことだと思うんですよ。

――ラジオ会館に人工衛星を落とそう(※10月28日~10月30日の期間、実際にラジオ会館のビル最上階に人工衛星が埋めこまれているかのようなかたちで出現した)というアイディアは志倉さんのアイディアだったのですか。

志倉氏:言い出しっぺは僕ですね。2年くらい前から「本当にできないかな」とずっと言ってたんですね。スタッフには、「コストもかかるし、やるならARのタグを貼って、iPhoneやiPad、もしくはAndroidで見ると突き刺さっているように見えることで我慢するよ」と言っていたんですけど、ラジオ会館さんの協力もあって、今回実現できました。

――「ロボティクス・ノーツ」でアドベンチャーゲームを社会的に一段階上に持っていきたいという社長の思いを聞かせてください。

志倉氏:アドベンチャーゲームをやってくれている人って、アダルトゲームからコンシューマのアドベンチャーゲームまで、恋愛をテーマにした、いわゆるギャルゲーと呼ばれてきたものをこの10年くらいずっと遊んできていて、その間、恋愛が入っていないアドベンチャーゲームって無かったんですよ。

なので恋愛を軸としないアドベンチャーゲームで復活させたいという思いはずっとありました。「カオスヘッド」も「シュタインズ・ゲート」も、そして「ロボティクス・ノーツ」もそうなんですけど。

(アドベンチャーゲームが)この10年間で何が変わったかというと何も変わっていないんですよ。背景があって立ち絵があって、テキストウィンドウにテキストが出て…。ゲームって色んなジャンルがあるけどどのジャンルよりも進化が止まっている。止まっているのならばその進化を前に進めてあげたいなと思っています。前に進めることで進化していけば今までアドベンチャーゲームに遠慮していた人も、もしかしたら興味を持ってくれるんじゃないかなと思っています。

その一つが、キャラクターの3D化です。キャラクターが動くことでアニメーションとこれまでのアドベンチャーゲームの真ん中あたりまでは持ち上げられると思っているので。動くことでこれまで手に取ってくれなかった人も興味を持ってくれるし、表現の幅ももちろん広がるし、そういったところで一つ市民権を上げたいと思っています。

あとは小島監督と共同制作する作品で小島監督の力もお借りしてさらに市民権をあげたい。そこで世界にもチャレンジしていきたいという思いがこの3年くらいずっとあったので、そのために「ロボティクス・ノーツ」も1からエンジンを開発しています。

――一方で「シュタインズ・ゲート 8bit」の方向性でのアドベンチャーゲームも作っていますね。

志倉氏:あれはもう本当に遊び。僕が昔を懐かしみたいなと。

――「シュタインズ・ゲート 8bit」は若い人も買っているのでしょうか

志倉氏:まだアンケートを取っていないのでわからないですが、感覚的には半分は30代後半くらいの方、残り半分は若い人で、昔のゲームはやっていないんですが、「シュタインズ・ゲート」が好きで買ってくれたという人が半分くらい。若い人の中にも「まだ高校生だけど「シュタインズ・ゲート 8bit」クリアしました。今までのどんなゲームよりも難しかったけどクリアしたときの喜びはひとしおでした。」みたいな意見もあったので、意外と若い人にも行けるかも、とちょっと調子に乗り始めています(笑)。

―若い人から見ると衝撃的ですよね。

志倉氏:衝撃的なグラフィックって今までいろいろ出てきましたけど、その新しい一つです。

――小島監督との合作で現状言えることはありますか。

志倉氏:小島監督と一緒に原作を作っていて、現在はプロットのキャッチボールをしています。一番元のネタは僕が考えさせてもらって、小島さんと会食をしながら、小島さんと作るならこのネタだろうと投げたら小島さんも面白いと言ってくれて。そこからはお互いにプロットに肉付けしていくためにキャッチボールをしている状態です。

ただ、小島さんは突拍子もないことを言ってくるんです。それをキッパリ無いものは無いと言わないとダメだ思っているんで、「それ説明できないしネタとしてもやめたい」と小島さんに返しています。

今まで小島さんが手がけたアドベンチャー作品と言うと「スナッチャー」「ポリスノーツ」の2タイトル。「メタルギアソリッド」もそうですけど共通するのは主人公がかっこいいハードボイルドな親父なんですよ。でもそれはやめたいですと小島さんに言って、小島さんにもそこはご了承いただきました。今回の主人公は高校2年生の男子。わりと科学アドベンチャーにも通じるところがあって、オタク男子ですね。

僕が作る物語って、設定的に主人公が僕に近くないと妄想しにくので、基本的にオタクですね。今回のはインターネットオタクみたいな人です。科学アドベンチャーっぽい主人公を小島さんが触るとどうなっていくかというところに乞うご期待ですね。

僕自身はどちらかと言うと設定オタクで、小島さんが投げてきたネタに対して僕が「それをやるんだったらこういうギミック、設定で行きましょう」と補足してまた返すを繰り返しています。そのペースは意外と速くて、小島さんに返すと、5倍くらいのテキスト量でまた返ってきます。

――ゲーム作りで志倉社長がストッパー側になるのは珍しいですね。

志倉氏:その通りですね(笑)。

※画面は開発中のものです。

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