ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンが本日3月15日に配信したPS3専用ソフト「風ノ旅ビト」。本作を事前にプレイする機会が得られたので、そのプレイインプレッションと、ローカライズプロデューサーへのショートインタビューをお届けする。
「風ノ旅ビト」は、「flOw」「Flowery(フラアリー)」など、一風変わった世界観のゲームを開発してきたthatgamecompanyの新作アドベンチャーゲームだ。プレイヤーは未知の世界で目覚め、どこまでも広がる砂漠の中を進んでいき、古代の文明を見つけていくこととなる。
本作は公式サイトがオープンしたときから筆者が気になったタイトルであり、先行体験会にも喜び勇んで参加させてもらった。非常に楽しみにしていたタイトルであるだけに、同じく本作を楽しみにしている方、特に購入を決めていたりすでに購入した方は、ゲームの情報を調べるよりも、まずはプレイしてほしいと思う。雰囲気や世界観に惹かれたのであれば、きっとこの世界を気に入るはずだ。
人によって、ゲームの事前情報をしっかりチェックする方と、あえて情報は見ない方がいるだろう。本作に関しては、なるべく事前情報を入れず、まっさらな気持ちでプレイしてほしいというのが、プレイしてみた感想だ。逆に購入を迷っている方や、どんなゲーム内容なのか知りたいという方は、その参考にしていただきたい。
ゲームの操作方法から見どころまで紹介
ここからはゲームの内容について触れていきたい。まずゲームを始めると、いきなり一面砂だらけの世界に降り立つこととなる。プレイヤーが操作するキャラクターがいったい誰なのか、目的は何なのか、そもそもここはどこなのか、そういった説明も一切入らない。いきなり見知らぬ世界に放り込まれることにロマンを感じる人もいれば、逆に抵抗感を覚える人もいると思う。
ただ、はるか遠くに見える山の頂や、近くに点在する墓標のようなものなど、何となく「こっちかな?」と思う方向に進んでいけば、大体間違いなく進めるようになっている。「何をしていいか分からない」と悩むよりは「とりあえず何かしてみる」というスタンスでプレイしてみるのがオススメだ。
操作の基本は左スティックでキャラクターの移動、右スティック(もしくはSIXAXIS)で視点移動、○ボタンで合図、×ボタンでジャンプとなっており、覚えることも少なく、難しい操作に煩わされることはないだろう。なお、ゲーム開始時はジャンプすることはできないが、ほんの少しだけ進むとすぐにジャンプできるようになる。
また、ジャンプをする際にはエネルギーが必要となる。エネルギーはキャラクターが身にまとっているマフラーのようなものに光の文様として浮かび上がり、ジャンプしてエネルギーを消費すると文様が消えていく仕組みになっている。ステージの様々な場所に、キャラクターのマフラーと同じような素材でできた布が浮いていたりするのだが、そこに近づくことでエネルギーをチャージすることが可能だ。
この布のようなものがゲームを進める上でのカギとなっており、細切れになって集団で集まっているものや、非常に大きいがボロボロになっているもの、意思を持った生物のようなものなど、複数の種類が存在し、それぞれ効果も異なってくる。
例えば、細切れになってたくさんの数が舞っている場所で○ボタンを押すと、一定時間空を飛ぶことができる。そしてボロボロになっているものの近くで同じように○ボタンを押すと、真新しいものへと生まれ変わり、ステージを先に進むための変化が発生する。このように仕掛けに対して簡単なアクションを返していき、ステージの最後に用意された祭壇のような場所を目指していくのが目的となる。
祭壇にたどり着くと、意味深なムービーや謎の壁画が映し出され、次のステージへと進めるようになる。この祭壇での映像に一体どんな意味が秘められているのか、今回プレイした範囲ではほとんど分からなかったが、それゆえに最後まで見てみたいという欲求も生まれてきた。
ムービーを見終わり、祭壇の先に進むと次のステージへ移っていく。最初は墓標のようなものが点在していて少しもの悲しい印象を受けたが、建造物が多い場所や、ひたすら滑り降りていく谷のような場所、地下遺跡のようなところなど、辺り一面砂だらけというベースはそのままに、ステージによって異なる雰囲気を堪能することができる。
また、もの悲しい場所であればあまり意識が向かないような曲が、谷を滑り降りていく場所であれば疾走感ある曲が流れるなど、ステージの雰囲気に合わせ、ゲームへの没入感を深めてくれるBGMも見事。ほかにも細かいところにこだわって作られており、坂道を登るときには砂をかき分けて進むような動きで移動速度が落ちるリアルさがあり、逆に坂道を下るときには“ザザッー!”と滑り降りる感触が何とも言えず気持ちいい。
グラフィックは特に砂の表現に年数をかけて開発したようで、一面の砂はまるで海のように感じられ、太陽の光を反射する演出も綺麗だ。体験会でプレイした範囲では、石柱が並んだ回廊のような場所に夕日が差し込んでいる場面が、今でも印象に残っている。
なお、本作はPlayStation Networkにも対応しており、ちょっとしたオンライン要素も兼ね備えている。その内容については、本作のローカライズプロデューサーであるソニー・コンピュータエンタテインメント Worldwide Studios JAPANスタジオ エクスターナルデベロップメント部 アソシエイトプロデューサー 岩瀬 尚子氏へのショートインタビューでお伝えしていくので、引き続きチェックしてほしい。
ローカライズプロデューサー岩瀬氏へのショートインタビュー
――まず本作のコンセプトを教えてください。
岩瀬氏:人によってとらえ方が変わってくると思いますが、開発側としては“人の一生”をコンセプトに作っています。もちろんゲーム内の要素は一緒ですが、人によって「これは何を意味しているのだろうか」といった考え方が違ってきます。
――本作を見たときの第一印象を教えてください。
岩瀬氏:一番最初は、一面砂だらけのところに降り立つシーンから始まりますが、その砂のキレイさや、世界観とBGMがマッチしているところなど、統一感が本当にすごいなと感じました。
――お気に入りのシーンはどんなところでしょうか?
岩瀬氏:谷のような場所をどんどん滑っていくところが一番気持ち良くて好きですね。途中に石の門のようなものが置かれていて、どれだけ間を通って滑れるかに挑戦することもあります(笑)。
――開発で一番こだわったポイントを教えて下さい。
岩瀬氏:前作の「Flowery(フラアリー)」から3年ほどが経っていますが、砂のサラサラ感など、砂の表現に年単位で力を入れていると聞いています。
――言葉や文字を使わないタイトルとのことですが、ローカライズで苦労したところはどこでしょうか?
岩瀬氏:ゲームを初めて日本で見たときはほぼ完成していて、ゲームの出来については安心だなと思っていました。あとは、いかに世界観を壊さないかですね。ローカライズで壊れてしまってはよくありませんので、一番苦労したのはタイトルを決めるところです。
原題は「Journey」というシンプルなものだったのですが、日本では英単語一つだけだとなかなか使うことができず、少し方向を変えて日本語にしようとシフトしていきました。そこでもJourney(旅)というのは使いたいという気持ちがあったので、あとはゲームをプレイすると“風”という要素も大きいので、風と旅をプッシュしていこうと思って進めました。開発元とも何度かやり取りを重ね、ようやく今の「風ノ旅ビト」に落ち着きました。
――海外ユーザーからはどういったところが評価されていますか?
岩瀬氏:やっぱりこの世界観の美しさですね。「どこを見てもすごいビューティフルだ!」という意見が一番多いです。あとはこのストーリーをどういう風に解釈するか、という話し合いをネット上で議論しています。開発側としても、グローバルで同じ気持ちを共有したいという思いが強いので、日本でも海外のユーザーさんと意見を共感しあえるところがあるんじゃないかなと思います。
――オンラインプレイにはどんな要素があるのでしょうか?
岩瀬氏:PlayStation Networkにサインインしてプレイしていて、同じ時間に同じステージをプレイしている人がいると、自分と同じ姿のキャラクターがふと気づくと隣にいたりします。そのキャラクターに付いていくのも付いていかないのも自由になっていますが、一緒にいるとちょっとしたメリットとして、ジャンプをするためのゲージをチャージし合うことができるようになっています。ただ、コミュニケーション手段は○ボタンでの合図だけなので、どうやって意思疎通を図るか意義深いと思います。
ゲーム内では、オンラインプレイで隣に出てくるキャラクターがほかのプレイヤーです、といった説明は一切出てこないようになっています。そのため、何も知らない人がプレイすると「なんか付いてくるな」とか「あっ、チャージしてくれた」とか、言葉は通じないけど何となく一緒にいる感じを味わえると思います。最後には、分かる人には分かるよう、実はあのキャラクターはこの人でした!というものが出てくるのですが、それが分からない限り、ただの通行人と思ってしまう人がいるかもしれないですね。
最近ソーシャルゲームが流行りではありますが、開発側が考えているソーシャルゲームというのは、一緒に対戦するといったことではなく、一緒の感情を共有するところにあるんじゃないかなと思っています。そこをゲームとしてどういう風に表現していいか考え、現在の形になりました。
――一見するとゲームシステムが分かりづらいタイトルではありますが、どんなユーザーにプレイしてほしいとお考えですか?
岩瀬氏:一番最初にあったのは、このゲームをおばあちゃんに渡してもプレイしてもらえる簡単なゲームであってほしいというのが開発側の願いです。実際に手に取って遊んでみると、あまりゲームをプレイしたことがない人でも「何となくこっちかな?」と進んでいくことができますので、ゲームに親しみがない人にプレイしてほしいと思っています。
ただ、それ以外にもオンラインプレイの要素ですとか、今までのオンラインゲームにあるマルチプレイとは違うものになっていますので、コアなユーザーの方にも楽しんでいただき、こういうオンラインゲームの有り方というものを知ってほしいなと思っています。