スクウェア・エニックスが放つステルスアクションシリーズ最新作「ヒットマン アブソリューション」。2011年のE3以降目立った情報がなかった本作だが、今回はプロデューサーのルーク・バレンタイン氏によるメディア向けプレゼンテーションとインタビューの機会をいただいたので、その内容をお伝えする。
「ヒットマン」シリーズは、デンマークの開発メーカー・IO Interactiveのステルスアクション。過去のシリーズはイギリスのパブリッシャー・Eidosから発売されていたが、企業合併により本作は合併元となるスクウェア・エニックスからの発売が予定されている。
さて、「ヒットマン」の主人公といえばファンにはお馴染み、スキンヘッドの後頭部に数字のバーコードを刻印された殺し屋「エージェント47(以下、47)」。彼は暗殺組織「エージェンシー」に属し、数々の依頼を実行する伝説の暗殺者だ。
もちろん今回もその流れを汲んだ展開となっており、ファンにとってはストーリーなどが気になるところだろう。そういった点についても本記事ではお伝えしていくので、ぜひファンのかたはもちろん、ステルスアクションフリークの皆さんにも注目してほしい。
プロデューサー「ルーク・バレンタイン」氏によるプレイ紹介
スクウェア・エニックス本社で行われたメディア向けプレゼンテーション。今回は筆者が個人的にも注目している「ヒットマン」シリーズ最新作がどのような開発状況にあるのかに注目しながらの参加となった。
昨年のE3ではとある大きな図書館からの脱出シーンがトレーラームービーとして公開され、あの時点でもかなりの完成度の高さを予想させるできだったが、今回は果たして。プレゼンテーションは、バレンタイン氏による解説付きでスタートした。
余談だが、バレンタイン氏は日本でのゲーム開発経験もあるとのことで、日本語が堪能だ。
衝撃のストーリーが明らかに!
まずは本作のストーリーについてだが……いきなりバレンタイン氏から、衝撃の事実が伝えられる。
「今回、47はダイアナを殺害するところから物語は始まります――」
これがどれほど大きな意味を持つか、シリーズファンならばお分かりいただけるだろうか。簡単に言うと、「ダイアナ・バーンウッド」は暗殺組織「エージェンシー」のオペレーターで、これまでのシリーズを通じても47に対する暗殺依頼はすべてこのダイアナを通して行われてきたのだ。もちろん47の任務のアシストも行うが……それ以上に、彼の友人であり、唯一の理解者だった、あのダイアナを殺害する。本作は、そんな冒頭から物語が始まるのだ。
物語の発端については、今のところはここまでしか情報は出せないとのことだが、ファンにとってはこれ以上ないインパクトではないだろうか。
プレイスタイルでガラリと変わるゲーム性。ステルスする?しない?
続いては、ゲーム中で実際にプレイすることになる1つのミッションを、バレンタイン氏が2パターンでプレイして披露してくれるとのこと。すなわち、極限までステルスに徹したプレイと、強硬手段による敵一掃のプレイだ。
本来ステルスアクションというのは前者こそがプレイのメインになり、敵に発見された場合は進行がかなり難しくなるくらいに難易度が上がる場合が多い。しかし、本作では状況に合わせたプレイスタイルが楽しめるのだ。これは、本作の持つ懐の深さに通じているのではないだろうか。
プレイ1:ひっそり隠れます、死体も隠します。
まずはステルスに徹したプレイから。47が建物内に設置されたベッド、ピアノ、ロッカーなど、至る所に身を潜めながら潜入していくことになる。身を潜めるアクションはボタン1発で行え、その状態から他の物陰に素早く移動するのも、もちろんボタン1発で可能だ。このあたりは、ステルスアクションの代表的な操作感だろう。
そんな中、とある部屋に入ると警官が椅子に縛り付けられ、ギャングから手荒な尋問を受けているシーンに遭遇する。なんとか助けてあげたい気もするが、ここはステルスでの任務を優先。残念ながら、この後彼はギャングたちに殺されてしまうのかも……。
お次は通路に1人で立っている見張り役が。背後から忍び寄り攻撃ボタンを押すと、画面には「Snap Neck(首折り)」と「Pacify(制圧)」の2つの選択ボタンが表示されるのだが、ここは後者の「Pacify(制圧)」を華麗に選択。47は静かに、そして巧みに敵の呼吸を手で止め、いとも簡単に暗殺に成功する。
ここで「Snap Neck(首折り)」を選択した場合、短時間で敵を確実にダウンできるが、骨が折れる際の音や断末魔で周囲の敵に気づかれる可能性があるそうだ。
ここでふと思うことが。周囲の敵の動きがかなり頻繁なのだ。ステルスアクションといえば、プレイヤーを待ってましたとばかりに敵が配置されて動かないことが多いのだが、本作では、ガンガン敵が周囲を徘徊している。正直、かなり難しそうなイメージを受ける。
だが、そんな時に役に立つのが、「インスティンクト(直感)」システム。47は完璧に訓練された暗殺者なので、彼は様々な「インスティンクト(直感)」による能力を発揮することができるのだ。以下に、そのうちのいくつかをまとめよう。
- 敵がこの先の短時間(数秒)で、どういった進路を取るかを予測できる。
- 周囲の敵の数や居場所を障害物越しに把握できる。
- 周囲にある物体で、武器にできるものがわかる(バール・斧・音の出るおもちゃ・ぬいぐるみなど)
- 敵を倒した際、近くで死体を場所がわかる身を隠したり、死体を隠したりすることのできる場所がわかる(ロッカーやゴミ箱、隠し通路など)。
- 敵の衣類を奪って変装した際、自分に気付きそうな敵を察知して顔をそむける環境に溶け込むアクションを取る。
上記はほんの一例だが、「インスティンクト(直感)」を駆使することで、ステルスによる進行もかなりラクになるのではないだろうか。バレンタイン氏も実際このシステムを駆使して、今後敵が動く進路や視界を見事に避けつつゲームを進めている。しかし、ここでローカライズプロデューサー・塩見氏が一言。
「このプレイ、かなり考えられた進め方で、ルークも相当練習してますので、ここまで綺麗なステルスは初見では難しいですね」。
なるほど、この華麗なステルスは、やはり相当やり込まないと難しいようだ。
この後は、ベッドの影に隠れたり、、通風口を移動して隣の部屋に侵入し、階段の影に身を潜め、シリーズお馴染みとなる倒した敵の衣装で変装を行い、1階フロアに降り、密集する敵に紛れ、その中をかいくぐりつつ孤児院の地下へと向かい、建物のブレーカーを落として本ミッションは終了となる。ここまで、敵はおそらく20~30人程度出現するのだが、殺害したのは5人程度。全ての死体をしっかりと隠すという、完璧なクリアとなった。
プレー2:ショットガン、ぶっ放します。警官、助けます。
続いては、同じステージを先ほどとは全く異なり、強襲でのクリアを目指すバレンタイン氏。のっけから「インスティンクト(直感)」で周囲にある使用できる武器を見つけ、目の前の敵を斧で一撃。
他にも、音の出るぬいぐるみを投げて敵の注意を逸らした隙にハンドガンで撃ちまくるという、まるで隠れる気すら見せない豪快な強襲による潜入をしていくことに。
そんな中、先程は見捨てた警官の尋問シーンで、今回は殺害される前に周囲の敵を一掃することに!すると、その警官が「ありがとう、1階のチャペルにショットガンがあるから使ってくれ」という感じのプレイのヒントをくれるのだ。
本作には、こういった細かい違いや作り込みが随所に見られるため、プレイスタイルによっては同じミッションが全く違った様相を見せるのだろう。
こうして敵との撃ち合いどんと来い!なプレイで最後の大広間に突入。まずは「インスティンクト(直感)」で爆発させられるガスボンベを見つけて敵をふっ飛ばし、ラストは複数の敵をマーキングして、一気に撃ち倒すという「ポイントシューティング」を披露。これは実際に軍隊などで行われている技術だそうで、複数の敵に視線を移動することなく、気配のある場所に銃弾を撃ち込む戦闘方法だそうだ。
「ポイントシューティング」も「インスティンクト(直観)」によって使用することができる。ゲームシステムとしては、インスティンクトを使用することで周囲の時間経過がゆっくりとなり、敵の急所を確実に、そして複数個所狙うことができるようになり、インスティンクトが発動されると時間経過が戻り狙った場所を連続で撃ち抜くことができる。もちろん、極限の訓練を受けた47にはたやすいことなのだろう。
このように、1つにミッションに対する2つのスタイルでのプレイは終了。ステルス/強襲、どちらのスタイルでも物語は進められるので、それぞれのプレイヤーが持つ47のイメージに従ったロールプレイも可能だし、縛りプレイややり込みプレイも可能だろう。個人的には、バレンタイン氏が最初に見せてくれた超ステルスプレイが再現できたら、かなりの緊張感&潜入しているという感覚が味わえるので、早く体験できる日が来るのを心待ちにしたい。
バレンタイン氏へのインタビュー
それでは、ここからは「ヒットマン アブソリューション」の開発状況について、バレンタイン氏にお話をうかがったのでお伝えしよう。
――昨年のE3から情報がほとんどありませんでしたが、現時点での開発状況を教えて下さい。何%くらい完成しているのでしょう?
ルーク・バレンタイン氏(以下、省略):数値的に何%と言うのは難しいのですが、非常に順調に進んでいます。はっきりとした発売時期などはまだお伝えできませんが、2012年中には皆さんにお届けしたいと考えています。
――かなり順調なようで安心しました。
けっこう大変ですけどね(笑)。
――体験版の予定は?
それについては、今のところはまだ何もお伝えできませんが……あるといいですね!
――47と関係の深いダイアナを殺害することからストーリーは始まります。今後、どういった展開を見せるのでしょうか?
まず、シリーズファンにとっては「47がダイアナを殺害する」というのは、非常に衝撃的かつショッキングな出来事になります。まずはここから想像を広げていただき、発売を楽しみにしていただけばと考えています。もちろん、今後発売に向けてさらにストーリーが判明していきますのでご安心くださいね。
――今回のミッションに登場した仮面のギャング集団ですが、ストーリーにも深く関わるのでしょうか?
もちろん!詳しくは言えませんが、ダイアナ暗殺に深く関わる人物がいて、その人物から汚い仕事を請け負うギャング集団が彼らです。至るところに出てきますね。
――ステルスアクションシリーズの最新作となりますが、新たな試みや研究したタイトルなどはありますか?
特にコレを参考にしたというタイトルはありません。もちろん同様のステルスアクションもあるので、似ている部分などもあるとは思います。
ただ、本作は「47」という一流の暗殺者が主人公のため、過酷な訓練を受けた彼だけが使用できる特殊な「インスティンクト(直感)」システムは、このタイトルにオリジナリティを与えているのではないかなと思っています。訓練を積んだ暗殺者だけが行える高度な暗殺術を楽しんでいただけると思います。
――では、本作の特徴となる「インスティンクト(直感)」システムについて教えて下さい。
47だけが使える「インスティンクト(直感)」は、様々な効果の総称となります。敵の進路予測だったり、敵の位置や数の把握だったり、何が使えて何が壊せるのか、そして敵の衣類を奪って変装した際に感づかれないようにするという動作なども、この「インスティンクト(直感)」システムに内包されています。
「インスティンクト(直感)」という大きな枠組みのなかに、47が生き残るための様々な知恵と経験、手段が含まれているという考え方ですね。
――「インスティンクト(直感)」システムはどのような条件で使用できるのでしょうか?
ヘッドショットやサイレントテイクダウン(音を立てない殺害)、死体の隠蔽など、より暗殺のプロフェッショナルとして行動することでポイントが貯まり、このポイントで「インスティンクト(直感)」を発動させることが出来ます。
先ほどのプレイでは最初から知っているような流れでベッドなどに隠れましたが、初めてプレイする場合はポイントを貯めて「インスティンクト(直感)」を使って隠れる場所を探しながらのプレイになるのではないでしょうか。
――ちなみに、このシステムを取り入れることになったきっかけなどは?
そうですね、今までのシリーズですと画面に簡易マップが表示され、敵の居場所やオブジェクトの配置などを上からの視点で把握することが出来ましたよね。これが非常に平面的というか、47じゃない誰かの視点のようで、止めたかったのです。
47の目線、視点で敵がどこにいるのか、何がどこにあるのかをよりリアルに把握してもらうために考えたのが、このシステムです。
――では、今回は大きなマップはなく、レーダーのように大まかにしか要素が表示されないミニマップ以外は「インスティンクト(直感)」だけが頼りということですね。
はい。一流の暗殺者の目線から状況を感じ、把握し、世界を認識してもらいたいと思っています。今回はグラフィックも非常にキレイですし、ずっと簡易マップばかり見ているというのももったいないですからね!
――ところで、47が武器として使用できるアイテムはどれくらい登場するのでしょう?
うーん、正確な数を把握するのが難しいくらいたくさん登場しますね。しかも、1つのアイテムにも様々な使用方法を用意していますので、状況によって使い方を変えていかないといけないでしょう。開発者として、やはりプレイヤーの皆さんにはたくさんのモノに触れ、色々と試してもらえるような状況を楽しんでもらいたいと思っています。
斧にしても、叩き割るだけではなくて武器として投げることもできるし、投げて音を出して注意を引き付けるようなことも可能です。もちろん、ぬいぐるみなども投げたり出来ますよ。あまりダメージにはなりませんが(笑)。
――ぬいぐるみ以外にも、ユニークなオブジェクトはあるのですか?
もちろん!ただ、サプライズにしたいのでここではお伝えしないでおきましょう。その他にも、本作ではシリーズファンがニヤリとするような隠し要素(いわゆるイースターエッグ)もたくさんあります。例えば、「HITMAN」シリーズには必ず水に浮かべる黄色いアヒルちゃんのおもちゃが出てくるのですが、今回もさり気なく登場していますよ。
――ところで、今回2パターンのプレイを見せて頂きましたが、プレイスタイルによってストーリーやエンディングは分岐するのでしょうか?
いえ、ストーリーやエンディングに分岐はありません。1本の大筋を追う形になります。ただし、プレイスタイルによってミッション中の状況は変わりますし、入手できるアイテムなどもまったく違うものになりますね。
その他にも、先ほどの警官の例にもありましたが、本作では敵やNPCがとにかくしゃべりまくります。それは単なる雑談などではなくて、プレイスタイルによる状況の変化によってもぜんぜん違うことを話したりするので、そういった部分を含めて何度もプレイできると思いますね。
――では、プレイスタイルや何かの成功によるアンロック要素などはありますか?
もちろん、いわゆるトロフィーや実績的なものはありますが、それ以上のアンロック要素などについては、今のところはなにも言わないでおきましょう……これも、あるといいですね!あ、でももちろん今回もシリーズではおなじみとなっている最高の暗殺者の称号・サイレントアサシンなどはありますよ!
――オンライン対戦などのモードはありますか?
個人的な立場としてはやりたいとは思っていますが、具体的な情報は全く決まっていません。基本的に47は唯一の存在なので、オンラインで47がたくさん出て来るのも違うだろう、というのは常に考えているので、悩みどころですね。
――最後に日本の「ヒットマン」シリーズファンに一言お願いします。
本当におまたせいたしました。前作からすでに6~7年経っているので、早く皆さんのもとにお届けしたいと思っています。本作は、とにかくたくさんの要素が詰まっていて、かなり自由度の高いゲームとなっています、待っていただくのも、もうそろそろ終わりです!ぜひお楽しみに。
――ありがとうございました。
今回のプレゼンテーション&インタビュー、いかがだっただろうか。本作の持つ懐の深さや、まるで箱庭ゲームのような自由度、プレイヤー自身が暗殺者の目を通じて様々な試みが行えるという内容は、間違いなく本作の大きな特徴となるだろう。発売日などの情報は随時リリースされるそうなので、今後の情報に期待しよう。