アメリカ・ロサンゼルスのLAコンベンションセンターにて2012年6月5日~7日(現地時間)まで開催された「E3 2012」。グリーブースでは、開発本部長の藤本真樹氏と、「GREE Platform」総責任者である吉田大成氏にインタビューの機会が得られたので、その内容をお届けする。
――まずお二人の担当されている業務内容を教えてください。
藤本氏:エンジニアリング全般を担当しており、日本では開発本部長をしています。エンジニアのチームと技術面の業務を広く見ています。
吉田氏:僕はプロダクト全般を見ています。今グリーが大きく行っている事業、ソーシャルゲームと「GREE Platform」事業の総責任者を担当しています。グリーは世界に9拠点あり、アメリカは青柳が中心にやっていますが、主要マーケットである韓国、中国、UKのオフィスではゲーム開発も進めていますので、そちらの立ち上げや管理も担当しています。
――その業務内容で、今見えている課題というのは何がありますか?
吉田氏:課題はいくつかあると思っていますが、1つは5月23日にグローバルに対応した「GREE Platform」をローンチしていますので、事業面では今後このプラットフォームの拡大や、認知度を向上していくことが大きいと思います。ゲームに関しては、各拠点でいくつものタイトルを開発していますので、それらが確実にリリースされ、幅広いラインナップを揃えられるかどうかが課題だと思っています。
さらに、各拠点によってマーケットの違いや、また国民性と言いますか、現地の方々の考え方や得意としている部分が異なると思います。そのため、それぞれのマーケットを理解し、いかに早くユーザーさんが求めるものを出していけるかが課題だと思います。
藤本氏:組織として、人がすごく増えてきたというのがあります。エンジニアに関しては、人が増えてきた中でもスピードを落とさず、次々と新しいものを作っていける組織にできるか、ということが課題になります。また、Facebookさんでは1000人や2000人、Googleさんにいたっては1万人ほどのエンジニアがいます。そのような企業とも競争できるようにならなくてはいけないので、もっと質の高い仲間を集められるかという、採用も重要な課題だと考えています。
グローバルに対応した「GREE Platform」をローンチし、これからは技術面でも世界中の企業と競争していくことになります。今までは「FacebookやGoogleすげえ!」と言っていましたが、これからは、自分たちが周囲からそう言われるものを作るために、技術基盤を今まで以上に意識し、開発しなければいけないと思っています。
社員が多くても競争できなかったり、やりたいことがスピード感をもって出来なかったり、規模が増えてうまく動けなくなってしまうという事態が起こる可能性もあるので、組織とテクノロジーの両面が大事です。グリーは6月決算で7月から新しい期が始まるので、また新たなチャレンジがスタートすると思っています。
――お話にもありましたが、「GREE Platform」がリニューアルされました。その手応えはいかがですか?
吉田氏:日本では約3000万人向けて展開していますが、各デベロッパー様から出されているゲームが、プラットフォームを通じてインストールされているかなど、求められることはいくつかあります。ユーザーさんから見た場合には、数多くのゲームがちゃんと提供されているか、というのはすごく大事になってくると思います。その部分を測る指標となるインストールの効果であったりゲームの複数利用数ではグローバルでも日本に近い値が出てきています。すでにアメリカで提供中の「Zombie Jombie」は、ゲーム単体での効果が出てきています。今後もプロモーションを行いながらゲームのラインナップを揃えていくことで、日本同様のプラットフォームを構築できるのではないかと考えます。
――リニューアルされたばかりですが、今後追加したい機能などは検討されているのでしょうか?
吉田氏:これは日本においてもですが、ゲームだけでなく、よりユーザー間のコミュニケーションを強化していきたいと思っています。例えばユーザー間でのメッセージのやり取りや、タイムラインと呼んでいるSNSのホーム画面がありますが、そのカスタマイズを行うことで、ユーザー同士のつながりをより密にしていきたいです。
ゲーム部分でのSDKに関しては、ネイティブアプリの良さがまだまだ活かしきれていないところがありますので、友達や仲間がログインして誰かがゲームを始めたときに、リアルタイムでほかのユーザーに通知されるようになるとか、ゲーム中でのソーシャル機能の強化を進めていく予定です。
――これまでエンジニア向けコンテストの開催や様々なツールの導入などを行われていますが、今後エンジニアや若手の育成、サポートで予定されていることはあるのでしょうか?
藤本氏:いくつか検討しています。現在、グローバルの各拠点ごとに採用を行っておりますが、社員も各地で特色が異なるため、社員同士の交流を深めていきたいと思います。アメリカではエンジニアが数多く働いています。日本のエンジニアの中では「アメリカってなんか凄そう」といった印象を抱く人もいるため、「では実際はどうなのか」ということを確かめられるようにしたいです。
ほかにも、韓国だとMMOがすごく進んでいますので、そういった技術情報を共有し、グリーでひとつのエンジニアグループとして働けるようにしたいです。その中で英語が必要になれば、英語学習をサポートするプログラムも準備しています。またグリーの日本法人で働くエンジニア達も多国籍になってきたので、社員同士の知識や技術を共有するための独自もワークショップを行っています。グローバル化を進めているので、それらを活かしていきたいと思います。
もうひとつは、2、3年ぐらい前だとグリーにエンジニアとして入社する方は、ウェブサービスを作っているサーバーサイドな人たちばかりでしたが、現在は多種多様にです。前職がコンソールゲームメーカーの方や、コンピューターシステムを開発していた方など、様々な職種の方がいらっしゃいました。そのような方たちが、今まで携わったことがなかったサーバーサイドの勉強をしてみたり、逆に今までウェブばかり担当していた方がコンソールゲームを作っていた方とネイティブアプリを開発することで、エンジニアとしての幅を広げられるようにしていきたいです。
今後、この業界のエンジニアに求められるスキルは高くなっていくと思いますので、そこに対応できるようになるためにも、チャンスを活かせる機会を作るのが大事だと思っています。もちろん専門性を深めていくことも重要ですし、それを求める人を止めるつもりはありません。希望すれば横軸で様々な勉強をできるようにし、今までなかった知識を吸収できる機会を増やしていくことが、僕たちのできることだと思いますし、これから挑戦してみたいことでもあります。
――エンジニアの業務で特に苦労した点や、逆に楽しかったことはありますか?
藤本氏:苦労した点はいっぱいあります(笑)。例えばネイティブのアプリケーションを提供するようになってから一番苦労したことは、ウェブサービスを提供した後でもちょっとずつ改善していくこともできますが、ネイティブアプリ、特にiOSでは不具合のあるプロダクトの修正は難しいです。ユーザーさんの環境にしてみても、古いバージョンのOSを使っているかもしれないということを考える必要があるため、そこがウェブサービスとネイティブアプリケーションを提供する違いで苦労した点でした。
あとは直近だと、まさにグローバル化についてです。今まで日本向けにサービスを提供していたものを世界に出せるよう、多言語に対応したり、日付のフォーマットを調整したり、古い仕組みを書き換えたりしたので、そこは本当に苦労しました。あとはユーザー数が1億人から10億人に増えることを考え、それに耐えられるように対処するといった苦労はありましたが、チャレンジはこれからも必要という気持ちを持っています。
楽しいと感じることは人によって違うと思いますが、僕はプログラミングをすることが楽しいです。それに加え、今期グローバル向けに僕たちのサービス(GREE Platrofm)を出せたことは本当に嬉しかったです。それまでは、日本でしかサービスできないものでした。日本市場もまだ伸びしろはありますが、世界中の方に使ってもらえるプロダクトの基盤ができたので、「例えばオーストラリアの人が使ってる!」といったこともあり得ますし、そういうのってすごくワクワクします。やはり新しいチャレンジができたことは嬉しいです。
――吉田さんは企画立案も担当されているようですが、アイディアを考えるときに重要だと思うことや、アイディアが出ないときにリフレッシュする方法などは何でしょうか。
吉田氏:成功事例の焼き直しをするのではなく、例えば2年後3年後を見据えて、スマートフォンが「こういう使われ方をしているのでは?」いうことを実現できるように考えることから始めるようにしています。それによって色々な構想が膨らみますし、技術的な進化を踏まえながら「こういうことができるのでは?」と考えることで、アイディアを膨らましやすいと思っています。そういう企画を考えることは苦になりませんし、楽しいことですので、あまり詰まることはありません。
ただ、具体的にユーザーさんに現段階でどういう体験をしてもらいたいかということを考えていく中では、今できることとできないことが当然あります。したがって、ユーザーさんの満足度を上げるためにできる技術や企画内容を絞り、優先順位付けをするところが大変な部分だと思っています。
リフレッシュ方法については、藤本がプログラミングを楽しんでいるのと同じで、僕も新たな企画を考えている時が一番楽しいです。それが苦痛だったり、リフレッシュしないといけないような状況だと、この業界にいない方がいいかも、と思ってしまいます。なので24時間365日、僕はそういう企画を考えていることが自分にとって一番のリフレッシュになり、逆にその時間が取れないことの方が苦痛に感じます。
――E3に来て自社ブースと会場全体を見た感想をお聞かせください。
吉田氏:自社ブースに関しては、開催当日になってこのブースに歩いてくるまで、人がいるかどうか若干心配だったというのが本音です。やはりコンソールゲームが中心のイベントに、僕たちはスマートフォン向けのゲームを出展していますので、ブースに訪れた人がその違いを感じられるかどうかが心配でした。しかし、実際に来てみたら、想定していた以上の方々に来ていただけて、さらに実際にスマートフォンを手に取って遊んでいただけました。
実は、今回各ゲームの出展コーナーで開発者がゲーム紹介をしていました。そこで直接フィードバックもいただけましたし、「これはアメリカで流行るよ!」といった嬉しい声をかけてもらえたので、出展してよかったと思います。僕達が今まで準備してきたプラットフォームやゲームをアメリカでも成功させるという意思でやってきましたが、それが確信に変わったと言いますか、このままいけばアメリカでも受け入れられるプラットフォームとゲームを提供できるのではないかと、実際にブースを出してみて感じました。
実は僕、去年初めてE3に来たのですが、その時グリーはまだE3にブースを出せるのか分からない状況でした。ただ、会場を訪れてみて、デベロッパー様やメディアを含め多くのゲーム関係者が来場していることを知り、やはりこの舞台に立ちたいと去年強く感じ、ブース出展を決意しました。
去年はもっと家庭用ゲームの出展が多く見受けられましたが、今年は各プラットフォーマーさんもソーシャル要素を取り入れたり、マイクロソフトさんがモバイル端末を通じて家庭用ゲームを楽しめるサービスを発表したりとか、僕達が考えているモバイルの未来とゲーム業界が近づいてきていると思います。ソーシャルゲーム、モバイルゲーム、コンソールゲームの各業界を分けがちだったと思いますが、これからはハードウェアや技術を含めて境目がなくなっていくと思います。その境目の年が、今年または来年になると思います。とても楽しみです。もしかしたらモバイルという言葉がなくなるかもしれないです。ゲームが全ての端末で遊べます といった未来が来るのではないかと感じられたイベントだったと思います。
藤本氏:グリーブースに関しては同じ感想です。みんなが頑張ってくれて、ちゃんとしたブースができてよかったというのが開場前の感想で、あとは開場したら予想以上の人が来てくれました。やはりグリーのことをご存じじゃない方も多い印象がありましたが、だからこそ「この会社は何?」といったことをたくさん聞いてもらえてよかったと思いますし、面白い印象を持ってもらえたら嬉しいなという思いがありました。だから本当に出展してよかったですし、来年に向けてどう変わっていけるかという目標もできました。
ほかのブースについては、僕は割と「これはできる、これはできない」とか「これをうちでやろうと思ったらこうしなきゃいけない」といったように、技術面で見ることが多いですが、それにしてもこの国は本当にFPSが好きだなと思いました(笑)。ある種極めようとしているのではないかと思いますし、特に技術的にも本当にすごいと感じました。
一通り各社のブースを見て回ったところ、グリーが戦っていく方向ではこんな技術が必要とか、こういった要素が欲しいというところも分かってきました。グリーがプロダクトとしてもエンジニアリングとしてもネットワーク面を成功させれば、うまく存在感を出していける感触が得られたので、今回E3に出展してよかったなと思いました。
――お二人とも普段からゲームはプレイされるんでしょうか?
吉田氏:僕もゲームはしますが、彼はもっとゲーマーですよ(笑)。
藤本氏:いやそんなことは(笑)。年を取ると難しいですね、山と積まれています。
――好きなジャンルは何でしょうか?
吉田氏:僕はあまりアクション系が得意ではないので、シミュレーション系の方が好きです。ずっとちまちまやり続けるタイプの方が好きです。
藤本氏:僕は何でもプレイします。本当は時間があったらMMORPGをずっとプレイしていたいのですが、そうすると会社に来られなくなってしまうので(笑)。わりと短いサイクルのMOや、FPSのように、1時間ほどで区切りがつくもので遊ぶことが多いです。
――こんなゲームがあったらいいよね、というようなものがあればお聞かせください。
藤本氏:僕は企業秘密で(笑)。
吉田氏:そうですね…ゲームジャンルはこれからも増えていくかもしれませんし、家庭用ゲームを含めて何十年も続いていく業界なので、その中で築かれたものはこれからも残り続けると思っています。ただ、そこに何かエッセンスを加えてあげることで、ゲームが大きく変わってくるのではないかと思っています。例えばここ5年、10年ぐらいで、ゲームは一人で遊ぶように特化した感じになっていますが、その真逆がソーシャルゲームです。本来ゲームはみんなでプレイしている方が楽しいと思うので、色々なジャンルにソーシャル要素が加わり、ゲームモデルが再構成されるのを楽しみにしています。そうして作られたものが、これから先、面白いと言われるゲームになればいいと思います。
――最後に今後の取り組みに向けての意気込みをお聞かせください。
藤本氏:2012年前半、特に5月は「GREE Platform」のグローバル版をといった目標を達成できたのでよかったと思っています。後半は、どこまで戦っていけるかという年になると思いますし、日本からグローバルで成功したプラットフォームやインターネットサービスはまだないと思いますので、そこにチャレンジできるのはすごくありがたいです。後はしっかり実績を残せるよう、僕もテクノロジーやエンジニアチームをちゃんと作っていきますので、半分ワクワク、半分ドキドキしつつ頑張っていきたいと思います。
吉田氏:全世界で10億人に使ってもらうプラットフォームという目標がありますが、それに向けた基盤はできたかなと思っています。後は、いかにより良いコンテンツ、ソーシャルゲームを提供できるかということと、その中でユーザーさんにコミュニケーションをとってもらえるかだと思っています。フィーチャーフォンからスマートフォンの時代になり、MMORPGやFPSなどソーシャルゲームで出せるゲームジャンルの幅も広がってきましたので、これから幅広いゲームを出していき、「GREE Platform」を軌道に乗せていきたいと思います。
※画面は開発中のものです。
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