洋ゲーという言葉の認知度は高まってきているが、ゲームの評価が売り上げに結びつかないことも多く、国内での市場は苦戦している感もある。そこで今回、洋ゲーを専門に取り扱っている「カオス館」の店長である土屋氏に、国内における洋ゲー市場について伺ったので、その内容をお届けする。
読者の皆様は、“洋ゲー”という言葉にどんなイメージを抱いているだろうか。これまでは「大ざっぱなゲームデザイン」や「理不尽さを感じるほどの超絶難易度」といったネガティブなイメージをお持ちの方も多かったと思う。
しかし昨今……といっても、もうかなり前からだが、国内において洋ゲーのイメージは大きく変わってきている。おそらくターニングポイントとなったのは、全世界で1400万本というとんでもない記録を打ち立てた怪物ソフト「Grand Theft Auto III(以下「GTAIII」)」の発売だろう。
PS2用ソフトとして北米で2001年にリリースされた本作は、広大なマップを自由に探索できる「オープンワールド」というゲームデザインを確立させた記念碑的タイトルとして、世界中のゲームファンに衝撃を与えた。
その後「GTAIII」は、2003年に国内版も発売され、約40万本(廉価版含む)のスマッシュヒットを記録。海外産のゲームとしては異例とも言える売り上げをもって、国内ユーザーにその存在感を示した。
また存在感という意味で言えば、これまで国内ではニッチなジャンルと言わざるを得なかったFPS(ファーストパーソン・シューティング)の知名度を大きく引き上げた「HALO」や「Call of Duty 4: Modern Warfare」といったタイトルも忘れてはいけない。
特に「Call of Duty(CoD)」シリーズはFPSの定番タイトルとして、国内でも数多くのファンを獲得している。日本のユーザーの中には、「CoD」シリーズで初めてFPSをプレイしたという人も、決して少なくないだろう。
ただ、以前に比べて認知されるようになったとはいえ、国内において洋ゲー作品から100万本クラスの大ヒットタイトルが出たかというと、残念ながらそこまでには至っていないというのが現状である。未だに洋ゲーを色眼鏡で見ている人が多いのは、ソフトの売り上げなどからも容易に察することができるだろう。
我々洋ゲーファンとしては、もっと色んな人に洋ゲーの素晴らしさを知ってほしいのである!「GTA」「CoD」といったタイトルにしても、国内には熱心なゲームファンが沢山いるので、もっともっと売れていいはずだし、むしろそうでなくてはいけないとすら思っている。
そこで今回、洋ゲー専門店の老舗であるトレーダー4号店・カオス館の店長である土屋 輝樹氏に取材を敢行して、国内における洋ゲー市場について色々と聞いてきた。ちなみに、カオス館が主に取り扱っているタイトルは、いわゆるローカライズされた国内版ではなく、産地直送の輸入盤。まさに、本当の意味での“洋ゲー”を専門に扱っているのだ。はたして、長年に渡り洋ゲーと向き合ってきた同氏は、国内の洋ゲー市場をどのように見ているのか。気になることをあれこれ聞いてきたので、興味のある方はぜひ目を通してみてほしい。そこにはきっと、洋ゲーの未来が見える……かもしれない。
カオス館 店舗情報
〒101-0021
東京都千代田区外神田3-14-8
トレーダー4号店 2F
電話・03-3255-3431
営業時間・11:00~20:00
日本のユーザーはマルチプレイの面白さに気づき始めている
――カオス館さんは長年に渡り洋ゲーを取り扱っていますが、お店ではどのようなタイトルが売れるのでしょうか。
土屋氏:ザックリ言ってしまうと、国内未発売タイトルが一番多く売れてますね。あとはFPSなどの、オンライン対戦が盛り上がっているものも売れていますよ。そういうタイトルが日本版よりも先に出たときは、普段より多くのお問い合わせをいただいています。
――オンライン対戦って、日本と海外の間でもの凄く温度差がありますよね。海外では盛り上がっているけど、日本版ではガラガラっていうパターンもありますし。
土屋氏:そうですね。ただ個人的には、だんだん日本のユーザーさんもマルチプレイの面白さに気づき始めているんじゃないかと思うんですよ。ここ数年の傾向を見てみると、それがすごく顕著に出ている気がしますね。
――国内におけるマルチプレイの普及というと、「CoD」シリーズの存在はかなり大きかったように思います。「CoD」シリーズの日本展開といえば忘れてはならないのが、スクウェア・エニックスさんが立ち上げた“EXTREME EDGES”ですね。
土屋氏:EXTREME EDGESに関して言うと、紆余曲折しながらも、現在「Modern Warfare 3」まできっちり発売しましたよね。最初のころは国内版と海外版の違いについて色々ありましたけど、結果的にEXTREME EDGESが洋ゲーの普及に貢献したという事実は、否定できないと思います。
――カオス館さんのように洋ゲーを専門に取り扱っている小売店からすると、EXTREME EDGESはどのような存在なのでしょうか。
土屋氏:う~ん。まあ、最初は目の上のたんこぶ的な感覚で見てましたよ(笑)。ただ、プレイヤーさんの意見をどんどんくみ上げていって、次回作に生かしていきましたよね。そこはすごく共感が持てたんですよ。否定的な意見が多かったタイトルもあったと思うんですけど、そういう苦い思い出を次に繋げていった事は評価できると思いますし、結果、海外ゲームというブランドをユーザーさんに根付かせた功績は大きいと思います。あと、これはEXTREME EDGESに限った話ではありませんが、海外と国内の販売ラグも昔に比べてだいぶ短くなってきたというのも、ユーザーさんにとっては嬉しいポイントですよね。
――確かにそうですね。昔はローカライズまで、2、3年かかるものもザラにありましたし。
土屋氏:そうなんですよ。僕等も昔は、「洋ゲーなんてやってる奴わけわからねえ」とか、「どうせ洋ゲーでしょ?」なんて言われることもありました。でも、最近は洋ゲーに対してポジティブに捉える人も増えてきましたよね。今は国内で洋ゲーの裾野を広げるチャンスだと思うんですよ。ですから、ローカライズを担当するメーカーさんには、ゲーム本来の魅力をしっかりとユーザーさんに届けてほしいと思います。
――近年ではFPSをプレイする人も増えてきましたよね。一昔前からすると想像すら出来ませんでしたけど。
土屋氏:FPSも昔は、酔うっていう理由で嫌う人が多かったと思うんですけど、最近のFPSはグラフィックがヌルヌル動くので、酔うことも無くなってきていますよね。
――そうですね。昔、「酔う」っていう理由で「DOOM」をやらなかった友人がいるんですけど、今は普通に「Battlefield 3」を楽しんでいます。
土屋氏:昔のFPSは画面のチラツキも多かったし、動くたびに上下運動があったので、それが原因で酔う人が多かったみたいですね。でも今のFPSはオプションでそういった部分をオン/オフできるし、グラフィックが60フレームで動いている作品も多いので、目に対するチラツキも減っているんですよ。
なので、「今のFPSは気持ち悪くならないですよ!」って声を大にして言いたいですね。昔のFPSの洗礼を受けた人って、「FPSは酔うものなんだ」って思い込んじゃっている人も多かったりするから、そういう人には、ぜひ今のFPSをプレイしてほしいと思います。
――自分も昨今のFPSでは全然酔わないですけど、昔、セガサターンとプレイステーションで発売された「エイリアントリロジー」で少し酔ったことがあります(笑)。
土屋氏:アクレイムから発売されたFPSですね。あれは結構チラチラが多いですから(笑)。暗い通路を進んでいくタイプのものとか、カメラの動きがコマ飛びだったりするタイプのものは、それだけで酔っちゃう人もいるんですよね。
洋ゲーを語る上では外せない、“リージョンコード”について
――ちなみにカオス館さんのゲームタイトルにはリージョンのシールが貼られていますけど、そういう部分からもお客さんに対するサポートの姿勢が感じられますよね。リージョンに関してお客さんから問い合わせがあったりするんですか?
土屋氏:PS3はすべてのタイトルがリージョンフリーなんですけど、Xbox 360に関してはすべてがリージョンフリーではないので、実際に入れてみないと分からないんですよ。
実は北米の人たちも、北米版のタイトルが日本のXbox 360で動くかどうか分かっていないし、わざわざ教えてもくれないんですね。まあ現地の人からすれば、日本の本体で動いても動かなくても関係ないですから(笑)。アジア版に関しては、同じ諸外国なので現地の人も保証してくれるんですけど。
――なるほど。
土屋氏:ですので有名タイトルの発売時には、お客さんから「これ、日本の本体で動きますか?」っていう質問がよく来るんですけど、そこは正直に、「Xbox 360のソフトは、入れてみないと分からないです」とお伝えしています。まあ、お店に商品が届いたら実際にこちらで確認をしてWeb上で告知しますから、特に大きな混乱はないんですけどね。ただ今までは、ここのメーカーのタイトルなら動くだろうっていうセオリーみたいなものがあったんですけど、最近は山が外れちゃうケースも結構あるんですよ。
――リージョンフリー率の高いメーカーさんというのは?
土屋氏:ActivisionとかUbisoftはリージョンフリー率が高いですね。ただ、Activisionの中でもゲームによってブランドが違ったりすると、動かないケースが多々あるんです。たとえば、「CoD」シリーズはリージョンフリーだけど、「Cabela’s Outdoor Adventures」はリージョンがかかっていたりとかね。
――国産タイトルの海外版に関してはどうですか?
土屋氏:日本メーカーさんのタイトルだと、リージョンに関しては寛容ですね。ただ例外もあって、最近発売された「BIOHAZARD Operation Raccoon City」などは、アジア版は国内本体でも動くんですけど、北米版はリージョンがかかっていたので、だいぶ誤算でした(笑)。
――「BIOHAZARD Operation Raccoon City」は開発こそ海外チームですけど、れっきとした日本のゲームですよね。そういうタイトルでも海外版を求める人が多いんですか?
土屋氏:海外版の方が早く発売される場合などは、海外版をお求めになられる方もいらっしゃいますね。
――なるほど。ちなみに海外のお客さんって多いですか?
土屋氏:多いですね。日本に住まわれてる海外の方もいらっしゃいますし、観光で日本に来られてウチで買い物をしていく方もいらっしゃいます。……ただ、後者の感覚はちょっと疑問でしたね(笑)。なんでわざわざっていうか。
――確かにそうですね。向こうで買えるのに(笑)。
土屋氏:おそらくヨーロッパのユーザーさんなんじゃないかと思います。聞いた話なんですけどヨーロッパって、ゲームなどの娯楽品は税金が高いらしいんですよ。生活必需品は安く買えるんだけど、趣味趣向のものに関しては価格設定が端っから高い。だから、「日本に来れば、ゲームが安く買えるのかな」って考えて日本のゲームショップに買いに来られるんでしょうね。そこで値段見て「日本も結構高いなっ!」ってビックリされるという(笑)。
日本には熱心なSFファンが少ないことが、FPSの好みにも大きく反映?
――現在、土屋さんがチェックされている期待の洋ゲーを教えていただけますか?
土屋氏:すでに国内版が発表されているタイトルではありますけど、「Bioshock Infinite」は注目ですね。あとは、「HALO4」が発売されますけど、これに関しては海外とほぼ同発だと思うので、ウチではそこまでプッシュすることはないかなと。あと今年は、「Call of Duty:Black Ops 2」と「Medal of Honor:Warfighter」が出る予定なので、FPSが好きな人にとっては非常に濃い年になりそうですね。
――FPSの中でも戦争物とSF物がありますけど、この2つってバッティングするんですか?
土屋氏:いや、バッティングはしないんじゃないでしょうか。日本では完全に戦争物の方が強いので。ウチもずっとFPSを売ってきているので、そこは結果として出ちゃってますから。
――なるほど。
土屋氏:ただ、僕はどちらかというと戦争物よりSF物の方が好きなんですけどね。SF物はエイリアンが相手だからいいんですけど、戦争物は相手が人間ですから、そこがちょっと、ね……。まあ「洋ゲー売ってて何を言ってんだ!」って言われちゃいそうですけど(笑)。
――SF物は完全にフィクションですけど、戦争物は生々しい感じがしますしね。
土屋氏:そうなんですよ。なので僕は、「HALF-LIFE」とか「Gears of War」とかの方が好きなんです。ただ世の中の傾向でいうと、ミリタリー物の方に分がありますね。
――日本ではSFというジャンル自体が、それほどメジャーな題材ではないというのも関係してるかもしれませんね。 「Mass Effect」もゲーム自体はすごく優秀なのに、日本ではそれほどヒットしていませんし。
土屋氏:日本人はSFを軽視している人が多いのかな、という感じがするんですよね。SFは子供っぽくて、戦争物は大人向けみたいな感じで見ている人が多いと思うんですよ。なので、その辺の日本人の考え方みたいなのが、売り上げとして顕著に出てちゃっているのかなと。「スタートレック」とかも、思いっきりマニアックなファンがいますけど、裾野自体は広がっていませんし。
――確かに「スタートレック」って、日本ではそこまで有名ではないですよね。
土屋氏:そうなんですよ。「スターウォーズ」とかも人気はすごくあるんですけど、新作の映画がやる時だけ盛り上がって、上映終了するとすぐに冷めちゃう人が多いじゃないですか。でもアメリカで「スターウォーズ」っていうと熱狂的なファンがめちゃくちゃ多くて、熱量が非常に高いんです。日本でいう「ガンダム」に近い部分がありますよね。
――おそらく日本のユーザーには、食わず嫌いしてる人が多いのかなと思います。「Mass Effect」も本当はすごくいいゲームなのに、ジャケットの時点で引いちゃってる人もいそうで、それが残念ですよね。
土屋氏:まあ「Mass Effect」に関して言うと、坊主頭のおっちゃんがジャケットですからね(笑)。でもご存じだと思いますけど、あれはキャラクターエディットで見た目を変更できますから、まずはやってみて判断してくれよって言いたいですね。「Oblivion」とか「SKYRIM」などのファンタジーものは受け入れられやすいと思うんですけど、SFロープレって聞いた時点で「う~ん」って感じになっちゃう人が多い。なので、そこはもったいない気がしますね。
ダウンロード販売が主流になっても、パッケージ版が無くなることはない
――これは洋ゲーに限った話ではないと思うんですけど、現在ダウンロード販売がだんだんと主流になってきてますよね。長年小売店としてゲームを売ってきた土屋さんは、今の傾向についてどのようにお考えですか?
土屋氏:実は数年前から、今後はダウンロード販売が主流になっていくだろうと想像はしてました。特に洋ゲーに関しては「Steam」がありますからね。「Steam」って、パッケージの10分の1くらいの値段でゲームが売ってたりするじゃないですか。僕等はそういうのをずっと見てきたので、特に驚きはしなかったですね。
ただすべてのゲームがダウンロード販売でいいかというと、そういう事でもないと思うんです。やっぱりダウンロードでいいゲームと、ちゃんとパッケージが欲しいゲームって、違いがあると思うんですよ。
――違い、ですか。
土屋氏:ええ。データとしてハードディスクの中に存在しているだけなんだけど、それでもいいよっていうゲームと、パッケージとして、マニュアルとかも全部封入されていることに所有欲を感じられるゲーム。そこはきちんと二分化していくと思うんですよ。
ただ今は、極力コストを削減する方向に向かっていますし、若いユーザーさんは物に対する固執があまりないので、今後もダウンロード販売は増えていくでしょうね。
――音楽もダウンロード販売が主流になってますし、本に関しても、電子書籍での販売が増えてきていますよね。
土屋氏:そうですね。ダウンロード購入というものに違和感を感じない人が増えてきていますから、ゲームも同じようにスライドしていくとは思います。ただCDにしても本にしても、現物をコレクションする熱心なファンの人がいるじゃないですか。なのでどんどん数は減るにせよ、ゲームに関してはすべてがダウンロード販売になることはないかなと。
――確かにそうですね。あと、お店に行く楽しみが減ってしまうというのは、それはそれで寂しい気もしますし。
土屋氏:小売店をやっていく以上は、それが無くなってしまうと、続けていく意味もなくなってしまいますからね。ただ、少し前に出た「風ノ旅ビト」みたいなダウンロード専売のゲームが出てきてもいいと思いますし、それとは逆にパッケージ版しか出ないゲームがあってもいい。
さらに、パッケージ版とダウンロード版の両方が出るゲームがあってもいいと思うんです。要はお客さんの選択肢が増えるということなので。例えば、夜遅くまで仕事をしているような人はお店にいけないですよね。そういう人には、ぜひダウンロード版を利用してほしいと思っていますから。
――確かに仰る通り、お客さんの選択肢が増えるのは歓迎すべきことですね。
土屋氏:ただ僕等も小売店として、生き残るためにゲームショップならではのサービスを心がけていかなきゃいけないとは思ってます。お客様に質問されて、きちんと答えられるスキルも必要ですし、自分もゲームを楽しむ人間として、お客様とのコミュニケーションは常に大切にしていきたいですから。
――分かりました。それでは最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
土屋氏:この記事を読んで洋ゲーに興味を持たれた方は、ぜひお店に遊びに来てほしいですね。今は洋ゲーもだいぶ市民権を得ていますから、今さら洋ゲー洋ゲーって言う気もないですけど、もしかしたら今まで見たことのないようなソフトが見つかるかもしれませんので。ご来店お待ちしております。
――ありがとうございました。
カオス館ギャラリー
店内に入って真っ先に目に止まったのが「hit BOX」。一見アーケードスティックのように見えるが、なんとレバーがない!「こんなのでゲームができるのか?」と思うかもしれないが、聞くところによると、慣れてしまえばレバー操作では不可能なほどの正確な入力も出来るようになるのだとか。土屋氏曰く「hit BOX」を試遊できるのはカオス館だけとのことなので、実際に触ってみたい人は今すぐカオス館へGO!
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