1万本以上のゲームを所持しているゲームコレクターの酒缶さんが、ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々にインタビューを行う連載企画「ゲームコレクター・酒缶のリコレクションアーカイブス」。第4回目は、フォグの宗清氏へのインタビュー後編をお届けします。

昔遊んで今でも遊べるあのゲームの開発者に話を訊きに行く「リコレクションアーカイブス」の第4回は、前回に引き続き「みちのく秘湯恋物語 kai」のプロデューサー、フォグの宗清さんに話を訊いていきます。

今回のリコレクター:宗清紀之氏

フォグ代表取締役。フォグの全作品のプロデューサーで、関わったタイトルは「美少女花札紀行 みちのく秘湯恋物語」(PS)、「みちのく秘湯恋物語 kai」(PS)、「久遠の絆」(PS)、「久遠の絆 再臨詔」(DC、PS2、PSP)、「風雨来記」シリーズ(PS、PS2)、「ミッシングパーツ」シリーズ(DC、PS2)など多数。

酒缶:背景に使用している写真の撮影はどなたが行っているんですか?

宗清氏(以下、敬称略):ディレクターの加藤が行っています。

酒缶:プロットを作ってから、撮影に行っているんですか?

宗清:いや、取材が先ですよね。色々と話をして、東北にしよう、ということが決まって、主だったところをピックアップして、取材に行っています。

「みちのく秘湯恋物語 kai」

1999年12月22日にフォグがプレイステーション向けに発売したアドベンチャーゲーム。撮影旅行で東北に訪れたカメラマンの卵は、不思議な少女・朱鷺子と出会うことから、事件に巻き込まれていく。モデルとなる女の子を撮影するためには花札勝負で勝って撮影権利を得なければならない。2007年9月27日よりゲームアーカイブスで配信されている。

ゲームアーカイブス版
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0656npjj00091_000000000000000001.html

酒缶:取材しておいて、後でいい絵がなかったら、また撮影に行ったり?

宗清:行ってますね。どうしても組んで行くと足りないモノが出てきちゃうので。あの頃はデジカメがなかったので、結構お金が掛かっているんですよ。カメラ屋さんでフィルムをフォトCDに変換してもらうんですけど、結構お金が掛かっています。リバーサルフィルムという結構いいのを使っていたので。今は天国ですよ。デジカメがありますから。

酒缶:背景の絵はないけど、民話のシーンは描き起こしていましたよね。

宗清:遠野のね。撮影できないものは作らざるを得ないので。イベント絵で、パトカーが来るところなんかも描き起こしています。

酒缶:朱鷺子さんが訪ねる家のドアも、思いっきりグラフィックでしたよね。

宗清:小屋みたいなところですよね。どうしようもないところだけは、描いてもらっています。

酒缶:「みちのく秘湯恋物語」は撮影の権利がなかなか入らなかったけど、「kai」はだいぶ緩くなっていましたよね。

宗清:お客さんから「厳しすぎる」と散々言われていたので、緩くしました。でも、撮影の権利って、今の人にはわからないでしょうね。何で24枚が制限なのか、とか。デジカメだと、無制限に写真が撮れますから。みちのくの時から、花札に関して「難しい」という声は良く聞きました。やはり花札自体に馴染みがないからでしょうか。対COMのアルゴリズムがきついという話が出ていましたけど、一切、八百長というかズルはやってないんですよね。

酒缶:女の子が序盤の方ではこいこいをしてくれるので、役ができたらすぐに上がっちゃえば結構勝てますし。

宗清:慣れてくると絶対に勝てるはずなんです。当時は、麻雀のアルゴリズムでひらで打ったら人間が絶対に勝っちゃうので、COMにズルをさせないとまともなゲームにならなかったけど、花札はズルをさせなくてもいい勝負になってました。

酒缶:役を覚えないと辛いですけどね。単純に手配の絵を合わせているだけじゃなかなか揃わないので。

宗清:単純なゲームなので、いくらこっちが熟達しても勝率で6割とか7割とかで、8割9割は絶対に勝てないんです。

酒缶:「kai」のスタッフロールを見たら、加藤さん以外に日本一の社長さんと会長さんの名前がディレクターに入っていたんですけど、ディレクターが3人ってすごいですね。

宗清:それで僕がプロデューサーでしたね。「kai」は結構大変だったんですよ。マスターアップの時期に丁度加藤が結婚したんだけど、結婚式の前日にマスターロムを提出してこれが通ればいいなと思っていたら、結婚式の会場に北角さんと新川君が次のバージョンのマスターロムを持ってきていて、「スミマセン」て(笑)。

酒缶:(笑)。元々、「みちのく」に対して「kai」を作った理由は何だったんですか?

宗清:何だったんだろうな? 廉価版的なものを出そうと思ったんだけど、もうちょっと絵を増やしたかったのかな? あ、売るもんがなかったんですね。「風雨来記」の開発が延びちゃったので。

酒缶:「風雨来記」は2001年の1月に発売されていますね。

宗清:「風雨来記」は99年の遅い頃か2000年の早い頃に出す予定だったので。

酒缶:でも、「kai」はかなり遊びやすくなっているし、アーカイブス的にはこれがあってよかったですよね。

宗清:そうですね。「kai」では、タイトルから「美少女花札紀行」が外れているんですけど、これは企業としての成長の証かも知れない(笑)。「みちのく秘湯恋物語」は、ソニーの商品登録では「美少女花札紀行」なんですよ。だから、販売店さんの商品一覧では、「美少女花札紀行」がメインタイトルのように扱われていて、店頭で「「美少女花札紀行」をお待ちのお客様」とアナウンスされるのが恥ずかしいという苦情もあったりで、「kai」では、「美少女花札紀行」を取りました。

酒缶:サターン版の「みちのく秘湯恋物語スペシャル」では、いわゆる18禁に挑戦をしたんですか?

宗清:当時、PS版が売れるかどうかわからない状態でスタートして、セガさんとも話し合いながら、プレステ版と差別化するために、エッチなところを強めにしました。

酒缶:でも、プレステでも風呂のシーンでは、何度も写真を撮っていると、結構大胆なポーズをしていますよね。

宗清:はっきりした規定はなかったけど、ソニーさんとは結構ぶつかりましたよ。これはいい、これはダメとかで、微妙な修正ですよね。タオルを5cm下げたりとか。ケツは見えちゃダメだというので、どっからがケツですか?みたいなことはずっとやってました。

酒缶:じゃ、CEROがない時代に戦っていたんですね。

宗清:いい想い出ですよね。

酒缶:「みちのく秘湯恋物語」の次が「久遠の絆」でしたけど、だいぶ路線が違いましたよね。

宗清:違う路線というのを考えていましたよね。一本目が思いの外売れたので、ホップステップジャンプでだんだん大作に持っていきたいという夢があったんです。アドベンチャーかどうかは別にして、スケールのでかいものをやりたいと思ったところで、加藤が企画書を上げてきたので、「久遠」が始まりました。

酒缶:「みちのく」は花札があってノリ的にもシナリオが強引というか、火サスというか、その手のノリだったのに、「久遠」は完全に読みモノになりましたね。

宗清:そこまでのボリュームは出来そうにないので、花札をゲームの縛りとして入れて、全体のゲーム時間をコントロールしたというのが「みちのく秘湯恋物語」や「kai」なので、「久遠」とは全然違いますよね。

酒缶:「みちのく秘湯恋物語」の続編とかは構想はないんですか?

宗清:やりたいですけどね。PS2版「風雨来記」のおまけシナリオに「みちのく秘湯恋物語」のヒロインの朱鷺子が出てくるのを知っています?

酒缶:えっ? そうなんですか!?

宗清:すんごい入りづらいおまけシナリオで、とんでもないところから分岐が出てくるんです。 とんでもない仕様なんですよ。

酒缶:PS版の「風雨来記」に「みちのく秘湯恋物語」の終盤に出て来る由美が出て来ますけど、あれも難しかったですよね?

宗清:酷いですね。意地悪ですよ。うちの企画者。おまけシナリオなのに……。

酒缶:でも、「風雨来記」ってどこでもいけるという、フリーダムな遊びができるじゃないですか? だからこそ、おまけシナリオも探しにくいんですよ。では、そろそろ締めに入ります。今後のゲームとの付き合い方ってどうですか?

宗清:不思議なもので、だんだんだんだん体力が衰えて、どんどん年寄りになって、今、51歳なので、ほどなく死んでしまうわけなんですけど。やっぱ、30台や40台は仕事をする人間としてはピークみたいな部分があって、その時期が一番、ゲームが嫌いだったのかな、という気がしますね。

酒缶:嫌いですか?

宗清:仕事として取り組まないといけない部分もあるし、家族を持っている人間として、一番きつい時期じゃないですか。将来に対する不安もあるし。でも、最近は、ソーシャルゲームなど、ゲームをする時間が増えました。フォグを作ったのが35歳で、コンシューマのパブリッシャーとして10年近くやって、ディベロッパーがメインになって5、6年くらいやっていて、現在、15年以上経っていますけど、もう一回、フォグを作った時のゲームに対する強い気持ちが芽生えてきているような気がしますね。

原点に戻って、メディアとかどうでもいいので、お客さんにも楽しんでいただけるものを、楽しく作っていけるんじゃないかと。また、荒っぽいことをやりたいですね。「みちのく秘湯恋物語」が主たるもので、「kai」になって「美少女花札紀行」が取れてタイトルが短くなるのは会社のステージが上がっているんですけど、それと同時に何か失ったものがあるんじゃないかと思うんです。ソニーさんとケンカすることもどんどんなくなってきたし……また、とんでもないものを出せるように……今は潜伏期間です。

酒缶:潜伏期間、ですか……。では、最後に、あなたにとってゲームとは何ですか?

宗清:難しい質問ですね。ま、生業として社会人になってゲームの仕事しかしなかったので、人生と言えば人生なんですけど、そんな大したもんじゃないんだよな。でも、小学校3年の時に全財産の500円をピンボールで使いきって青くなってから40年以上。人生というほど重くはないんだよな。難しいなぁ。空気みたいになっちゃいましたね。

酒缶:空気ですか。

宗清:人生というと家族と暮らすことになっちゃうので。趣味でもあるし、生業でもあるという風ですね。空気みたいになっちゃいましたね。気が付いたときには自分の前にあって、それでお金を稼いだり使ったり……。

酒缶:ゲームがないと死んでしまう?

宗清:ないと死んじゃいますよね。どうでもいいと思っているけど、ないと死んじゃいますよね。空気です。

酒缶:分かりました。現在、潜伏期間ということなので、潜伏後の次回作を期待してます。ありがとうございました。

訪問後記

フォグというと「久遠の絆」や「風雨来記」が有名ですが、この2タイトルが発売されるまでの流れに「みちのく秘湯恋物語」と「kai」があったことがわかると、また違った感覚でゲームを楽しめますよね。現在、フォグさんは潜伏期間に入ったようですが、潜伏期間が終わった後には何か面白い展開があるようなので、今後もフォグさんと宗清さんに注目していきます。

●プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター

1万本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。ニンテンドードリームにて「酒缶が訪う」連載中。最新作は3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」。

■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
http://www.sakekan.com/

■twitterアカウント
http://twitter.com/sakekangame

■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」
http://www.pubooks.jp/item/detail?id=386

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