1万本以上のゲームを所持しているゲームコレクターの酒缶さんが、ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々にインタビューを行う連載企画「ゲームコレクター・酒缶のリコレクションアーカイブス」。第9回目は「海腹川背・旬 セカンドエディション」に携わった酒井潔氏へのインタビューをお届けします。

スーパーファミコンの時代から「海腹川背」は隠れた名作扱いになっていたので、2012年9月に「海腹川背・旬 セカンドエディション」の配信が発表されると間髪入れずにスタジオ最前線さんに取材申請をして、速攻で取材をさせていただきました。

今回のリコレクター:酒井潔氏

フリーのゲームプログラマー。制作に関わったタイトルは、「海腹川背」シリーズ(SFC、PS、DS)、「サルゲッチュ」(PS)、「最速!族車キング~仏恥義理伝説~」(PS2)、「最強!白バイキング」(PS2)、「THE タクシー2~運転手はやっぱり君だ~」(PS2)、「のりもの王国DS ~YOU! 運転しちゃいなよ!~」、「シャイニング・ハーツ」(PSP)など多数。

酒缶:「海腹川背」は、ゲームファンにはかなり話題の多いタイトルになりましたね。

「海腹川背・旬 セカンドエディション」

2000年1月26日にエクシングがプレイステーション向けに発売したラバーリングアクションゲーム。ルアーの付いた伸び縮みするロープを巧みに操って、魚を捕まえたり、壁を登ったりしながら、ゴールの扉に向かって突き進んでいく。ゴールで飛び込む扉によって、難易度の違う面に進める。2012年9月26日よりゲームアーカイブスで配信されている。

ゲームアーカイブス版
http://www.jp.playstation.com/software/title/jp0067npjj00662_000000000000000001.html

酒井氏(以下、敬称略):発売された当初は単純に攻略の話題があったんですけど、「ゲームセンターCX」で取り上げてもらって知った人が…あれはスーファミ版だったんですけど、それを見て遊んでみようと思った人がそこそこ出てきて、PSPやDSで発売されました。スーファミ版やPS版を作った当時、私が所属していたディベロッパーの役員の方が権利関係をクリアにした結果、「海腹川背」を新規に出せるようになったという話です。

酒缶:酒井さんはPSP版の開発には関わられていないんですよね?

酒井:私は関わっていないです。PSP版を作る前に、「権利を取ってリメイクできるようになったので、プログラマーとしてやってくれないか」という話があったんですけど、その時はお断りしていたら、しばらくしてからPSP版が発売されました。

酒缶:DS版には関わっているんですよね?

酒井:DS版は、私がやらなければ誰もやらないだろうと思ったので、関わりました。

酒缶:そして、今回ついにPS版がゲームアーカイブスで配信されたので、酒井さんに取材のお願いをさせていただきました。酒井さんの子ども時代の話をお聞きしたいのですが、生まれて初めて触れたゲームは何ですか?

酒井:任天堂のインベーダーゲームです。当時、インベーダーの大ブームで、私はみんながやることをやりたがらないタイプだったのでやらずにいたんですけど、それも長く続かず、駄菓子屋にあった任天堂のインベーダーをやったのが最初でした。

酒缶:その頃はゲームで遊んでいたんですか?

酒井:ゲームセンターにはコンスタントに行ってはいたんですけど、面白いのがあるという話を聞いたら「見てみるか」という感じで遊んでいました。その後、中学1年の時に、父親が仕事でパソコンを導入したけど全然使ってないという話を聞いたので、「使ってないんだったらうちに持って行っちゃえば?」と言ったら、家でパソコンを使えるようになったんです。でも、ビジネス用の特殊なパソコンだったので、マニュアル以外のことを勉強しようとしても解説本がなくて…。中学2年の時にMZ-700を買ってもらいました。学校の科学部でパソコンをやっているので入ると2、3人、パソコンを持っている友達ができて、横の情報交換ができるようになりました。

マシン語でゲームを作れるようになってからは、狂ったようにゲームを作って、MZ-700にある程度慣れてからは、週に一本くらいのペースでゲームを作っていました。実はX1で作ったゲームが、テクノポリスブランドとしてパッケージ化されて発売されたことがあります。

酒缶:発売されたゲームはどんなゲームだったんですか?

酒井:アニメの「魔法の天使クリィミーマミ」のキャラを使ったパズルゲームです。テクノポリスのプログラムが掲載されるコーナーに投稿したんですけど、あまりにもプログラムのサイズがデカすぎたので、パッケージ化して2000本くらい売ってもらいました。

酒缶:当時の2000本は、かなりいい数字だったんじゃないですか?

酒井:秋葉原のマイコンショップのゲーム売り場を何件か回って、1か所だけ売っているのを見て感動しました。沢山探し回って1件だけ。でも、当時全然交流がなかったスタジオ最前線の近藤君がその「クリィミーマミ」のゲームを買ってプレイをしていたらしいです。その話を聞いて、「買った人いたの?」と思いました。

酒缶:(笑)それはいるでしょう。

酒井:でも、2000人の中の1人がここにいるのか、と思ってビックリしました。縁があったんでしょうね。高校3年の時には、就職する時に見せるゲームを1本作ろうとしました。X1のアクションロールプレイングゲームみたいなモノを作っていて、結局完成しなかったけど、ある程度動くものが出来ていたので、高校を卒業してすぐにパソコン雑誌の広告にあるスタッフ募集を見つけて、「作品を作ったので見てほしい」と売り込み、システムサコムに入りました。その時に作っていたゲームは後に「ユーフォリー」というタイトルに完成させて、パッケージとして発売してもらいました。

酒缶:それからしばらくシステムサコムさんの方にいたんですか?

酒井:システムサコムでは、MSX2の「幽霊くん」というゲームを作って…それだけですね。クロンに移籍してゲームボーイの「アスミッくんワールド」、「かこむん蛇」、メガドライブの「魔物ハンター妖子」を作って…。

酒缶:「魔物ハンター妖子」って、サイドビューのアクションゲームですよね。

酒井:メディアミックス戦略だけど、「魔物ハンター妖子」の名前とキャラを使えば何でもいいという話だったので2Dアクションにしたんですけど、会社で作っていると上手くいかなかったため、メガドライブの機材をうちに持って帰って作って、「魔物ハンター妖子」を完成させてから会社を辞めました。

酒缶:クロンを辞めてからどうしたんですか?

酒井:勝手にアーケードゲームの「キャメルトライ」をX68000に移植して、電波新聞社に持ち込んだ後、ゲームの仕事をしたくなくなって、しばらく別の仕事をしていたんですけど、それもすごく詰まんなくて、「やっぱりゲームなのかな?」と思って…。オリジナルのゲームを作るにあたって、どうにもまとめられない、というか、作っている途中で面白くならないことがわかった時って最悪じゃないですか。

酒缶:はい。

酒井:どうにもならなくて、どうにもなんないけど止めるわけにもいかないし……というのがすごく嫌で、どうすればいいかと考えた結果、一番確実な方法は、試作を作ることだろう、という結論になりました。プロトタイプに時間を掛けて、これは面白いというモノを作ってから作り始めるのが確実だろうと。だから、会社に入らずに貯金を食い潰しながら、家で試作を作っていたんですよ。

X68000で1本作っては面白くないから止めて、また1本作って、面白くないから止めて、3本目に作ったのが「海腹川背」のベースになっています。このシステムだったらちゃんと作り込めば行けるだろうと思ったので…。

酒缶:システムというのは、キャラクターの動きとかですか?

酒井:マップとかギミックとかは製品版とは程遠いんですけど、ベースとなる動きは製品版とほとんど変わらないようなモノになっていました。

酒缶:最初からあの海腹川背さんだったんですか?

酒井:ボツにした最初の試作品を作っている時からタイトルは「海腹川背」にしようと考えていました。当時、たまたまテレビで見た旅番組で「海腹川背」という用語の説明を見て、「かっこいい単語だな。これをゲームのタイトルにしよう」と思って、キャラクターも海腹川背さんにするつもりでした。で、ある程度面白いところまで持って行けたので、システムサコムやクロンで一緒だった人が自分で作った会社に持っていって、「ここまで出来ていて、これは面白くなるから、これを作らせてくれ!」と言って、その会社に入って、作りました。

酒缶:最初からスーファミにしたいと思って、持ち込んだんですか?

酒井:スーファミに限定するわけじゃないんだけど、家庭用の市場でやりたいというのはあって、パソコンの市場は大きくないし、メジャーなゲームを作りたい、というのがあったので…パソコンの市場のゲームで、知る人ぞ知るとなっても嬉しくないので。

酒缶:正に、知る人ぞ知る、というゲームになっちゃいましたけど。

酒井:(笑)なっちゃいましたね。

酒缶:プロトタイプからスーファミ版の開発に進んだ際に、変わった仕様はありましたか?

酒井:ゲームの本質的なところは変わってないんですけど、発売元を見つけてくるまでの期間が長くて、2年くらいちまちまといじっていたので、その期間に挙動は格段に良くなっています。パラメーターをいじり回して、少しずつ良くなっていって、完成後に試作品をプレイすると、全然動きが悪いし、「こんなのでよくいけるな」と思いました。

酒缶:PS版に「2」と付けないで「海腹川背・旬」としたのは、どうしてですか?

酒井:パラメーターは違うけど、ゲームシステムは基本的に同じで、マップ数もほとんど同じ、「2」というほどの変化がないので「2」とは言いたくなかったんです。「2」じゃないんだけど、何かないかな、と思っていたら、微妙に「旬」という言葉が流行っていたので…。

酒缶:ちなみに、スーファミの「海腹川背」を作ってからPSの「海腹川背・旬」を作るまでの間に、何をされていたんですか?

酒井:その期間はずっとジャックポットにいて、「矢追純一極秘プロジェクト UFOを追え!!」というゲームを作っていました。

酒缶:じゃ、時系列的には、スーファミの「海腹川背」、PSの「矢追純一極秘プロジェクト UFOを追え!!」、PSの「海腹川背・旬」の順なんですね。

酒井:「矢追」を作った後、エクシングさんがお金を出してくれるからPS版を作るぞ、という話になりました。でも、マスターを上げる頃には会社が立ち行かなくなって、ディスクを焼いて朝一でバイク便で送らないといけないのに、バイク便を頼むお金がないような感じで…。「海腹川背・旬」が発売された頃には、スタッフがみんないなくなって、私も会社を辞めちゃいました。

酒缶:「海腹川背・旬 セカンドエディション」は、廉価版ですけど、中身が変わってますよね。

酒井:CMがなくなって、代わりに近藤くんに貰ったイラストを入れて、新規のマップが3面入れてあります。

酒缶:ラバーリングアクションというのは後付けなんですね。キャラクターとかゲームのシステムが出来て、その流れで…。

酒井:多分、社長がマーケティング的に何かキャッチフレーズがないとダメだと考えたのではないかと。

酒缶:海腹川背さんが何をしたいのか、とか、ストーリー的なものは表立ってないですけど、裏設定はダークですよね。実際のところの設定はどうなんですか?

酒井:一応、考えていたのは、裏設定のイメージそのものなんですけど、キャラクターをフィーチャーしたゲームにしたかったので、ゲームのシステムができる前からタイトルとキャラクターを「海腹川背」と決めていました。でも、ゲームを通して1人のキャラクターを描きたくて、ストーリーで語るのは自分の中で違和感があったので、キャラクターを語るんだったらキャラクターそのものを表現しないとダメだというところに行きつき、川背さんの心の中を旅するゲームという風にしたんです。

酒缶:心の中の旅だから、背景マップにでっかい野菜や文房具があったりするんですか?

酒井:その辺はあまり厳密な意図があったわけじゃないんですけど、それっぽくしています。

酒缶:海腹川背さんがリアルに何かをしているわけじゃなくて、空想の中の話だったんですね。

酒井:そうですね。「クリィミーマミ」のゲームを作った話をしたんですけど、なぜ「クリィミーマミ」のゲームを作ったかというと、アニメの「クリィミーマミ」にめちゃくちゃハマったからなんです。「クリィミーマミ」のちょっと前に「魔法のプリンセス ミンキーモモ」というアニメがあって、2大魔法少女アニメだったんですけど、放送時間の関係で私は「クリィミーマミ」は見ていて、「ミンキーモモ」はあまり見てなかったんです。でも、実は作品的には「ミンキーモモ」の方が好みで、それはなぜかというと、「ミンキーモモ」はストーリーがないんですよ。

酒缶:(笑)はい。

酒井:ストーリーはあるんだけど、あんまり重要じゃないというか、「クリィミーマミ」には設定がちゃんとあって、シリーズ全体を通して話が進んで行くんだけど、「ミンキーモモ」はその回その回に問題を解決するアニメで全体のストーリー進行がなかったんです。「ミンキーモモ」は、「ミンキーモモというキャラクターが可愛いね」というのをずっと見せてくれるアニメで、自分の中ではキャラクターを描くというのはこういうことなのかな、と。

酒缶:「ワンピース」や「ドラゴンボール」よりも、「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」……という感じでしょうか? 例えはアレですけど(笑)。

酒井:そうですね。ストーリーがあると、ストーリーが主役になるというか、見ている自分がストーリーの中に入れないから疎外感があるというか、自分とは違う世界の出来事という感じがするんですよ。キャラクターだけを見せていく感じだと、疎外感があまり感じなくて、そういうゲームを作りたいと思ったんです。

(インタビュー後編へ続く。後編は来週12月2日に掲載予定です)

●プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター

1万本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。ニンテンドードリームにて「酒缶が訪う」連載中。最新作は3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」。

■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
http://www.sakekan.com/

■twitterアカウント
http://twitter.com/sakekangame

■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」
http://www.pubooks.jp/item/detail?id=386

※本連載のインタビューを受けていただける方を募集しております。ゲームアーカイブスで配信されているタイトルに携わった方々で、インタビューをお受けいただける方がいらっしゃいましたら、お問い合わせフォームよりご連絡下さい。スケジュールや内容によってはお受けできない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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(C)モーションバンク/2000 エクシング/2012 スタジオ最前線

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