more gamesとフォアキャスト・コミュニケーションズが提供する、女性向け恋愛シミュレーションゲームの新ブランド「epicaria(エピカリア)」。ブランドプロデューサー・青木良氏とmore games代表取締役社長である田中昌明氏に意気込みや今後の展開を伺った。
ソーシャルアプリ事業を手掛けるmore gamesと、日本テレビグループで豊富なデジタルコンテンツへの展開力を誇るフォアキャスト・コミュニケーションズの両社は、高い成長率に期待が高まる「恋愛」をテーマとしたエンターテインメントコンテンツ市場に注目。新たな事業展開として、女性向け恋愛シミュレーションゲームブランド「epicaria」を設立した。
2月1日より、第1弾タイトルとなる「肉食男子に恋をする」がGREEにて先行配信スタート。そこで今回、ブランドプロデューサー・青木良氏とmore games代表取締役社長である田中昌明氏へブランド設立に対する意気込みや今後の展開を伺った。
――現在の恋愛ゲーム市場に関して、どうお考えですか?
田中氏:恋愛関連コンテンツの市場規模は、およそ年間2~3000億円に届くと予測されています。非常に成長している分野だと捉えていますが、僕たちが見ている限り、もっと高い成長率で伸ばせるのではないかと感じています。そういった意味で、これまでとは違うブランディングや展開を行い、市場全体をもう一段階上のステップへ押し上げたいと考えていますね。
これまでは、もともと好きだった人たちが中心にコンテンツを利用してくれています。新しいユーザーがファンになってくれれば、さらに市場を拡大させることができるでしょう。
青木氏:僕自身、恋愛ゲームは制作も含めて体感したことがありませんでした。まず、どういう問題があるのかを何本も見て吟味したところ「粗製乱造」という言葉がぴったりきたんです。そこで、これまで他メディアで培ったものを投影するような作り方をしようと考えました。メディアミックスを展開することによって、広く世の中に向けた訴求力を高めるためのブランドを設立しよう、といった流れです。
――「epicaria」の設立についてお聞かせください。
田中氏:このブランド名には、叙情詩という意味の「Epica(エピカ)」と、オペラを演じるという意味の「Aria(アリア)」を組み合わせた「情熱的な物語を紡いでいく」というメッセージを込めています。
恋愛ゲームというのは一言でいうと、プレイヤーが主人公を通して、攻略対象となるキャラクターとの会話形式で進めていくものです。ゲームの軸はキャラクターとの絡みですが、その一歩手前として、物語としての作品性をもっと高めてもいいと思うんですね。恋愛ゲームはシナリオゲームとも、一方では恋愛ドラマとも言われています。そうしたドラマ性・物語性を高めた作品を作って、ユーザーの皆さんに感じてほしい。このブランド名には、そういった意味を含めました。
青木氏:実は、ブランド名を考えたのは僕です(笑)。コンセプチュアルな部分をどうするかというのが最初のテーマで「女性に向けたブランド」であることを非常に意識しました。
新しいブランドを作るとなれば、今までと違うことをしないと意味がないじゃないですか。ただフォアキャスト・コミュニケーションズさんにバックアップしてもらって僕がプロデュースするだけでは、ここまでしないと思います。新しい風を起こすという特別な決意の表れを、ぜひ見て頂きたいですね。
――第1弾タイトル「肉食男子に恋をする」についてお聞かせください。
田中氏:ブランドに込めたメッセージというのはやや抽象的なので、伝わりにくい部分もあると思うんです。なので、ゲームとしては「王道」「ど真ん中ストレート」にしようと企画しました。タイトルから分かる通り、すごくシンプルな現代劇になっています。
恋愛ゲームを遊ぶユーザーは、男らしくて頼りになるキャラクターが好きな人が多いと思っていますが、その理由として、男らしい男性に引っ張られたい、助けてほしいという欲求があると思うんです。そこで、強い男性とのストレートな恋愛をコンセプトにし、キーワードとして「肉食男子」を持ってきました。それをより強く感じてもらうためのギミックが「草食男子モード」と「肉食男子モード」です。2つのギャップを楽しみながら、より「男らしい男性との恋愛」を体感してほしいですね。
青木氏:先ほども言いましたが、作僕は恋愛ゲームをプロデュースするのは初めてなんです。第1弾は、実際に作りながら「こういうものなんだ」というのが分かってきた感じですね。その分、これまでと違った創り方もできました。
例えば、いわゆる恋愛ゲームの「しきたり」「セオリー」みたいなものにすごく疑問が湧くんです。恋愛ゲームとしての符号という意味もあるんでしょうけど、実際は「なんとなく」「適当」な要素がとても多い。そこを掘り下げたらどうなるのか、というものはどんどん実行しています。
プレイヤーの皆さんだって、急に恋愛している状態になったら「なんで?どうして?」って思うじゃないですか。それに「こういうものです」って答えてはだめですよね。「ここでグッとこさせるにはこうしよう」というのを、僕自身の経験やキャリアから取り入れてみました。シナリオとしてのエンターテインメント性を高めたい、ということですね。今後は、より高いレベルの作品を作り上げたいです。
――プロモーション活動としては、どのような展開を考えていますか?
田中氏:まず第1弾タイトルのプロモーションは、複合的なメディア展開を行っていきます。配信先はソーシャルネットワークのプラットフォームなので、メインのターゲットはそのユーザーさんになります。しかし、恋愛ゲームが好きなユーザーはここ以外にもたくさんいらっしゃいますよね。ソーシャルネットワーク以外の、色々なチャネルにも仕掛けていきたいと思っています。最近は一般的な女性誌でもアプリの特集などを組まれていることが多いですから、雑誌も考えられますね。
――すでにメディアミックスも視野に入れているということですが、今後はどのような展開を目指しているのでしょうか?
青木氏:最近は女性をターゲットにした舞台や演劇、アニメなども大きな注目を集めていますね。しかしこうした展開は、声をかけて頂かないと成立しないものでした。こちらから能動的に仕掛けていきたいというのが僕のいる意味なのだと感じていますし、さまざまな展開をしていきたいです。個人的にはコンシューマゲーム化も視野に入れたいですね。
とはいえ、これまでのこのジャンルには「メディアミックスに耐えうるのか?」という問題が根本にあると思います。閉じた世界で粗製乱造を繰り返し、同じ人に買わせて完結する。それはロングテール事業と言えませんよね。メディアミックスというと、どうしても派手な部分が目に付きますけど、まずは「揺るがないベース」となる内容自体をしっかり作るのが重要だと思います。
田中氏:これまではコンシューマゲームからソーシャルゲームですとか、アニメがソーシャルゲームになるというのがメディアミックスの流れだったと思うんです。青木さんも仰ってますが、せっかくソーシャルゲームという分野が盛り上がっているのですから、メディアミックスに耐えられるタイトルをきちんと作ってヒットを飛ばしたいですね。
そしてもっと大きなメディアで展開すれば、これまでソーシャルゲームに馴染みのない新規ユーザーもファンになってもらえるだろうと思っています。恋愛ゲームですと、ノベル・コミック・アニメ・演劇といった展開もやりやすい。。「肉食男子に恋をする」を皮切りに第2弾以降も順次幅を広げていけたらと思います。とくにノベルは、恋愛ゲームを好むユーザーの興味を引きやすいのではないでしょうか。
――有名アーティストなど、タイアップ企画はありますか?
田中氏:構想には入っています。「肉食男子に恋をする」のノベルティとして制作したドラマCDには有名な声優さんも起用していますし、今後は声優さんやミュージシャンの方に歌を歌ってもらったり、イベントを行ったりするかもしれません。
青木氏:正直、展開すること自体は難しくないでしょう。しかし、まずはファンに喜んでもらうのが前提なので、地道にやっていきたいですね。
――ブログやサイトを活用した手法はコンシューマゲームに近いものを感じましたが、意識されてのことですか?
田中氏:意識はしています。ソーシャルゲームのユーザーだけでなく、コンシューマタイトルを遊んでいるユーザーにも満足いただけるようなタイトルにしていきたいですね。
青木氏:コンシューマゲームのユーザーの中には、気に入ったキャラクターだけプレイするという方もいらっしゃるようですね。でも僕は、全てのキャラクターとシナリオを楽しんでもらえるように作りたいと考えています。その分、シナリオの制作やチェックがものすごく大変になっていますけど(笑)。
――第2弾以降への期待が高まりますが、現在の状況はいかがでしょうか?
田中氏:第2弾は春ごろのリリースを予定しています。ジャンルとしてはもちろん恋愛ゲームになるのですけど、恋愛のテーマや舞台は変わります。世界設定としては、ファンタジーや歴史ものではなく現代劇を考えています。間違いなく言えるのは、ストレートな恋愛ものです。
ユーザーにブランドのメッセージを感じてもらうためには、ゲームをプレイしてもらうのが1番なんです。なので、タイトルも「こういう恋愛をしてほしい」「こうキュンキュンしてほしい」をシンプルに表現した、分かりやすいものになるよう心がけていきたいと思います。
――ありがとうございました。
プロフィール
青木 良(あおき りょう)
「epicaria」ブランドプロデューサー/メディアプランナー/作家。
92年より番組を始めとする日本テレビ系の事業企画等を手掛ける。その後ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て、99年より漫画原作をメインとした作家に。ビッグコミックスピリッツ、少年サンデー、ヤングサンデー他多数執筆。
06年より企画・原案・原作を担当するITとメディアを融合させたプロデュースをスタート。芹沢直樹氏との「セブンズシーフ」、藤沢とおる氏との「渋谷ハチ公前」、ふなつ一輝氏との「コック・キング・ロワイヤル」等をメディアミックス展開。1月25日よりMobageで「セブンズシーフ」(配信元・日本写真印刷)がソーシャルゲーム化。自身のGREEブログでは小説も提供中。
田中 昌明(たなか まさあき)
株式会社more games 代表取締役社長。
前職にてモバイルコンテンツ事業を立ち上げ、「新宿の母」等の占いコンテンツをメディアミックス展開でヒットさせ、占いブームを牽引するとともにコンテンツ事業の成長に寄与。
11年2月、株式会社more games代表取締役社長に就任。GREEやmixi等のソーシャルプラットフォームにおいて、「LovePlan~オトナの恋愛ストーリー~」「恋愛ゴシップ~彼と私の裏事情~」といったオリジナル女性向け恋愛ゲームのヒットを創出。恋愛ゲームの次のステージとして、「epicaria」ブランドを立ち上げる。