「Wwise(ワイズ)」の開発を手がけたAudiokinetic社が、カナダ大使館にて日本法人開設の発表会見と開発者向けイベントを実施

発表会・イベント取材
0コメント 仁志睦

世界中のゲームスタジオで採用されているオーディオオーサリングミドルウェア「Wwise(ワイズ)」の開発元であるカナダのAudiokineticは、2月28日、日本法人「AudiokineticK.K.」設立の発表会見と開発者向けのローンチイベントを行った。

カナダのモントリオール市に本拠を置くAudiokinetic社は、インタラクティブメディアやゲーム産業に向けたサウンド・ミドルウェアの開発・提供を行っているクロスプラットフォーム・オーディオソリューションのリーディングプロバイダである。

同社が開発した「Wwise(ワイズ)」はさまざまなアウォードを受賞するなど、革新的なミドルウェアとして各方面で高い評価を獲得。「メタルギア ライジング リベンジェンス」「アサシン クリードIII」「HALO4」など、300を超える大作ゲームの開発に使用されている。

マーティン H. クライン氏
マーティン H. クライン氏

発表会見では、まずAudiokineticの社長兼最高経営責任者(CEO)のマーティン H. クライン氏が日本法人設立の経緯を説明した。クライン氏は「ビデオゲーム誕生のふたつの国のひとつであり、世界有数のゲームディベロッパーがある日本は我々にとって重要な拠点になると考えています」と、日本のゲーム業界を重視していることをアピール。2006年初頭より日本のディベロッパーとの関係を深めていき、2011年以降は月1回の頻度で来日するようになったこと。国産ゲームエンジン「OROCHI」シリーズの開発を手がけたシリコンスタジオとパートナーシップを結んだことなどを紹介した。

ただ、その過程でクライン氏は、自社のテクノロジーを使ってもらうには日本のゲーム業界へのツールの適応と質の高いサポートの提供が不可欠であることに気づいたそうで、そのために2500ページ以上のユーザードキュメント、40個以上のトレーニングビデオ、自社のウェブサイト、その他の教育用ツールをすべて日本語化することにしたのだという。Audiokinetic社にとってこれは大きなチャレンジだったとのことで、「完成できたことを誇りに思う」とクライン氏は自賛した(完全日本語版のWwiseは6月にリリースされる予定)。

このように、日本オフィス設立の第一の目的が日本のゲームコミュニティへのサービスの進展であることを説明したクライン氏だったが、同時に日本のディベロッパーと緊密に作業をすることは自社の技術のさらなる進化に貢献するだろうとも語り、「(日本オフィス設立は)わが社が成長し続けていくための重要なマイルストーンになります」と、その意義を改めて強調した。また、韓国、中国、台湾などにもクライアントがいることから、東京オフィスをアジア地域全体のネットワークの中核にするという構想もあるそうだ。

クライン氏のスピーチに続いて、AudiokineticK.Kでテクニカルセールス代表を務める田島政朋氏とジャパンサポートマネージャーのニコラ・フォルネル氏が紹介された。田島氏は大阪のゲーム開発会社でサウンドデザイナーとしてさまざまなゲームの開発に携わったとのことで、今回の発表に際しては「日本のゲームオーディオ業界に最先端の技術を提供できることに対し、非常に興奮していると同時に誇りに思っております」と述べた。

フォルネル氏はコナミやエレクトロニック・アーツなどで20年以上に渡ってゲームオーディオ関連の業務に携わってきたキャリアの持ち主で、「Audiokinetic社の一員としてサポートをご提供できることを非常にうれしく思っております」と挨拶した。

田島政朋氏(左)とニコラ・フォルネル氏

Wwise導入のさまざまなメリットも紹介

営業・事業開発担当副社長のジャック・ドゥボー氏によるWwiseの概要や特長の説明も行われた。WwiseはPS3、Xbox 360、Wii U、iOS、Androidなど13ものプラットフォームに対応。OROCHI3、Unreal、Unikty Proといった主要ゲームエンジンとの統合もなされており、トリブルA級の大作ゲームからインディーズやモバイルゲームまで、あらゆるタイプのゲーム開発に利用できるという。

ジャック・ドゥボー氏
ジャック・ドゥボー氏

このWwise使用のメリットとして、ドゥボー氏は第一に高品質なオーディオ制作のためのすべてのツールが備わっていることに言及。複雑な設定の必要がないのでプログラマーへの依存度が低く、サウンドデザイナー自身がさまざまな操作を直接行えるのだと語った。

素早い動作や高い安定性など、パフォーマンスに優れていることも利点のひとつとして強調。すでに20以上のバージョンをリリースしており、各プラットフォーム向けの最適化も行われているため、導入のリスクは非常に低くなっているそうだ。また、カスタマーサポートの評価が高いこともあわせて紹介された。

また、これまでは「オーサ」「統合」「プロファイル」といった段階ごとの開発を順番に行っていく必要があったが、Wwiseはこれらの開発プロセスにおけるどの段階でもサウンドに関するあらゆる要素を自由に操作・変更できるとのこと。そのため非常に効率的で、開発コストを下げる効果も得られるのだとドゥボー氏は述べた。

ゲームをリモート接続して、実際にプレイしながらサウンドのCPU使用率や再生しているボイスの数などをモニタリングしたり、サウンドを調整して接続中のゲームに直接反映できたりすることも紹介された。サウンドはCPUやメモリの制約を受けることが多いだけに、これらの使用状況を確認しながら調整ができるのはクリエイターにとって非常にありがたいはず。ドゥボー氏も「これが最強の機能かもしれません」と語り、Wwiseの機能紹介を終えた。

プラチナゲームズのスタッフがWwiseの活用事例をプレゼン

記者発表の終了後に実施されたゲーム開発者に向けた発表会には「メタルギア ライジング リベンジェンス」のサウンド開発を担当したプラチナゲームズのリードサウンドデザイナー・中越健太郎氏と音楽ディレクター・田中直人氏がゲストとして登場。実際の操作を交えながら、Wwiseの活用事例やそれによって得られたさまざまな効果についての紹介を行った。ただ、説明の内容が多岐に渡ったため、ここでは両氏のプレゼンで使用されたスライドのみを掲載しておく。

プラチナゲームズの中越健太郎氏(左)と田中直人氏
中越健太郎氏によるプレゼンで使用されたスライド
田中直人氏によるプレゼンで使用されたスライド

最後に今後実装が予定されている新機能がいくつか紹介された。詳細は以下のとおりで、個人的に特に興味深かったのが教育利用に向けた「LIMBO」というゲームソフトの搭載。記者会見時の質疑応答でクライン氏が述べていたのだが、海外ではWwiseはすでに大学やメディアセンターなどで幅広く使用されているそうで、今回の日本法人の設立を機に日本においても教育機関でのトレーニングに参加したいとの考えがあるのだという。提供は無償とのことなので、今後は日本の大学や専門学校においてもWwiseの利用が広がっていくかもしれない。

今後実装が予定されている新機能

  • ゲーム中で大きな音が鳴ったとき、それに合わせて小さい音のボリュームを一時的に下げる「HDR Audio」
  • 「True Peak」、「Peak&RMS」及び2種類のラウドネスをチェックできる「Meter」
  • バスのポジションを自由に変える機能
  • WAVEファイルを読み込んでWwise上で直接ソースを編集する機能
  • バス再生中のボリュームをモニターする「Voice Monitor」ビュー
  • 教育利用向けに制作されたゲームソフト「LIMBO」

※画面は開発中のものです。

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