3月7日、公益財団法人「科学技術融合振興財団(略称FOST)」は東京・帝国ホテルにて、第6回FOST賞授賞式・記念パーティーを開催した。
公益財団法人「科学技術融合振興財団」(以下「FOST」)は、コーエーテクモホールディングス代表取締役社長の襟川陽一氏が理事長を務めている団体で、シミュレーション&ゲーミングの調査研究など、社会や文化のなかで科学技術の融合を促進させる研究への助成と、その成果を還元するための普及啓発・国際交流などを活動の柱としている。
「FOST賞」は同団体によって2007年(平成19年度)に設立された賞で、研究助成金に基づいた研究成果発表の中からもっとも優れた研究者に贈られる。さらに、2008年(平成20年度)より補助金事業の報告者である若手の研究者を対象とした「FOST熊田賞」の贈呈も開始。2012年(平成23年度)にはゲームの研究・開発・応用に関連して、社会貢献の観点から顕著な業績を上げた人物・団体を表彰する「FOST社会貢献賞」も設立された。
授賞式では、まず理事長の襟川陽一氏が挨拶。襟川氏は、昨年逝去されたFOSTの元監事である故熊田節郎氏に感謝の意を表し、「若手の研究者の方々に向けた“FOST熊田賞”の精神を引き継いだ、何らかの新しい賞を設立したい」と語った。
続いて、FOST賞審査委員長で創価大学名誉教授の大西昭氏が登壇。大西氏は「科学の進歩と精神的・人間的な進歩がシンクロしていなければ地球の未来は危うくなる」と現状への危機感を表明。その上で、今回の受賞者の研究が、いずれも人間の精神的な進歩をうながすようなゲーミングソフトであったことを喜び、「FOSTは未来の人間社会への貢献になると思っています」と、その意義を述べた。
FOST賞受賞者 松田稔樹氏(東京工業大学大学院)
今年度の「FOST賞」を受賞したのは東京工業大学大学院の松田稔樹氏。松田氏の研究テーマは「問題解決の見方・考え方を養う技術教育用S&G教材の開発」というもので、ゲーミングの手法を利用した問題解決力を育成するためのeラーニング教材の開発と、その設計原理に関する考察が評価されて今回の受賞となった。
松田氏は「シミュレーション、ゲーミングは自分で考えるための道具なのであって、コンピューターが人に教えるなんていうのはけしからんと考えています」と第一にコメント。「ゲームというのは何かを体験する場であって、コンピューターから学ぶのではありません。あくまで人同士で一緒に学ぶのです」と強調した。
ただし、体験の場を与えれば問題解決力がつくというわけではなく、何かができるようになるには、やはりちゃんと教えていかなければダメなのだという。では、問題解決力を与えるための見方・考え方というのはどういうものなのか。ゲーミングを用いてそれをどう教えていくのかが、今回の研究テーマになっているとのことだ。
このような技術教育というのは海外ではメジャーな分野になっていて、そちらでも考え方のようなものを教えていく教育方法が主流になっているという。ただ、海外でもまだまだ手探り状態なので、「これからさらに研究していきたい」と松田氏は抱負を述べた。
FOST熊田賞受賞者 末田航氏(シンガポール国立大学)浅見智子氏(東京大学大学院)
「FOST熊田賞」はシンガポール国立大学の末田航氏と東京大学大学院の浅見智子氏が受賞した。末田氏の研究テーマは「オートマティックライフロギングシステム“勝手に絵日記”の開発・実装~実世界の集合知を利用した空間意識の可視化に関する研究~」というもの。「勝手に絵日記」とは日記風のライフログを自動生成するアプリケーションで、インターネット上にある位置情報が付いた文章や写真などのユーザコンテンツと、それらに含まれるユーザタグを実世界の集合知と見なして集積処理することで、ユーザーの行動を自動的に日記のように記録するのだという。
末田氏は日記を書くのを3日以上続けられないそうで、「自分の身の回りで起こった出来事を全部人の写真や文章で書いてもらったら、当たらずとも遠からずな日記が勝手にできるのでは」と考えたことから、このアプリの制作を思い立ったそうだ。
また、末田氏は5年ほど携帯ゲームのゲームメーカーで働いていたのだが、そこではコンテンツをリリースした瞬間に数万のユーザーからアクションがあり、その中には自分が作るものよりもいいアイディアがあったりしたのだという。そして、それらのアイディアやクレームをもとに改善を加えていくことで、コンテンツがより素晴らしいものになっていったとのことで、そういった体験も今回の研究のきっかけになったと語った。
もうひとりの受賞者である浅見氏は「推理アドベンチャーゲームを学習へ応用するためのゲームデザインとその評価~中学校理科天文分野を中心に~」をテーマに研究。シリアスゲームの面白さと学びの要素を高いレベルで両立させたゲーム「それでも地球は回る」の開発が評価され、受賞に至った。このゲームはガリレオを主人公にした天動説と地動説の論争ゲームで、当時の主流であった天動説をくつがえすべく、ガリレオとなって議論でバトルしながら証拠を集めていくという興味深い内容になっている。
浅見氏はゲーム会社に勤めていた頃から、ゲームは物の考え方を養うのに向いているのではと思っていて、特に理科という分野はいろいろ考察したり、証拠を集めたりするのがアドベンチャーゲームとマッチすると考えたのだという。ガリレオの時代を選んだのは議論が中学生くらいの簡単な内容ながら、同時に科学というものの根深いところを探っていく哲学にも触れるようなものだったからとのことで、「そういったものをエンターテインメントゲームにできたらと思って作りました」と開発の動機を述べた。
FOST社会貢献賞受賞者 トレンドマイクロ株式会社
「FOST 社会貢献賞」に選ばれたのはセキュリティソフト「ウィルスバスター」の開発元として知られるトレンドマイクロ株式会社。コンピューターウィルスからインターネットの信頼性を確保するため、絶え間ない技術革新を行って変化する環境に対応した最適なソリューションを迅速に提供し、かつ、インターネットの安全教育等の啓蒙活動にも取り組んできたことから受賞となった。
登壇した同社の取締役副社長である大三川彰彦氏は「当社は日本では個人ユーザー向けのウィルスバスターが有名ですが、企業系セキュリティの先駆者でもありまして、グローバルでのマーケットシェアはナンバーワンとなっております」と同社の実績を紹介。近年ではサーバーのセキュリティやAndroidをはじめとするモバイル系のセキュリティでも信頼を得ていることなどにも言及した。
その上で、今後もデータや情報をいかに守るか、何かあった場合はいかに早期に復旧するかに注力していくと力強くコメント。さらに、「台湾出身の3人が作った会社ではありますが、本社機構は日本にあって、しっかり日本に税金を納めております」と会場の笑いを誘ったあと、アメリカなどの先行を許しているIT業界の現状を打破すべく、「アニメやゲームなど日本の得意とするさまざまな分野と互いに連携して、日本からアジアそして世界へ向けて一緒に羽ばたいていけたらと思っております」と語った。
※画面は開発中のものです。
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