アメリカ・ロサンゼルスにて2013年6月11日から13日(現地時間)まで開催されていた「Electronic Entertainment Expo(E3) 2013」に出展したKEMCOのスタッフにインタビューを行ったので、その内容をお伝えしよう。
PS4やXbox Oneといった新ハードが出展されたことで大きな盛り上がりを見せた「E3 2013」。しかし、E3には最新ハード以外にも、周辺機器やグッズ、スマートフォン向けアプリのメーカーなど、多種多様な企業が出展し、ブースを構えていた。
その中のひとつとしてブース出展し、スマートフォン用アプリ「アルファディアジェネシス」を発表していたのがKEMCOだ。古くからのゲームファンであれば知っている人も多いと思うが、KEMCOといえばファミリーコンピュータ時代からゲームを作り続けている老舗のメーカーであり、現在もストーリーを重視したRPGを多数制作している。
そんなメーカーが、なぜE3に出展し、さらには海外のRPGファンに向けて新作を発表したのか。今回は新作のことから、海外展開を進める理由、そして今後の展望までを、KEMCO・モバイルビジネス推進部の黒川雅臣氏と黒木めぐみ氏にいろいろと聞いてきたので、その内容をお伝えしよう。
――本日はよろしくお願いします。まずは、そもそもKEMCOとはどんなメーカーなのか、改めてお聞き出来ればと思います。
黒川氏:はい。KEMCOは創業から約30年を迎えるゲームソフトメーカーです。家庭用ゲーム機にはファミリーコンピュータの時代から参入していますが、現在は基本的に売り切り型のスマートフォン向けゲームを制作しています。
3年くらい前からは、高騰する開発費をカバーし、利益を出すために海外での展開も始めています。北米での配信は順調で、昨年は5タイトルほどリリースすることができました。また、今年は4月から毎月1本12タイトルをリリースする予定です。すべてのタイトルが一押しタイトルになりますが、今回の「アルファディアジェネシス」は、強くアピールしていきたいと思っています。
――私たちからするとKEMCOさんは、「ゲームメーカー」というイメージが強いのですが、システム開発もされているんですよね。
黒川氏:はい、やっています。システム開発とゲームが中心事業ですね。C言語よりも前のアセンブラを使える人がいるので、その知識が活かせています。基本、技術集団だと思ってもらえればいいと思います。
また、請負もやっていますし、もともとビジネスソリューションもシステム構築の依頼から、最近はスマートフォンアプリやサイトに関する話が増えています。
ゲームでノウハウを貯めていくスタイルで、ゲームが作れればなんでも作れると思っています。ゲーム自体も依頼があれば受けるキャパもありますし、実際何本か作っていますよ。
――なるほど。それではお話の中にもあった「アルファディアジェネシス」についてお聞かせください。
黒木氏:バトル画面がフィーチャーフォンから移植した2Dではなく、完全な3Dになり、派手なグラフィックを楽しめます。また、ボイスも収録するなど、かなり力を入れています。タイミングがちょうどよかったので、今回はE3で発表しました。
――北米での発表となりましたが、サービスは北米が先行するのでしょうか?
黒川氏:いえ、日本語版が今夏、英語版は2014年頃になる予定です。日本語版の完成後に翻訳を行うため、若干時間がかかってしまいますね。
本作以外にも2Dベースではありますが、たくさんのタイトルをリリースする予定です。現状リリースしている日本語版はすべて英語版でもリースする予定です。市場の動きとしてはAndroidが好調で、海外での収益も伸びてきています。
――となると、やはりAndroidをメインに開発しているのですか?
黒川氏:そうなりますね。iOSはバグなどがあると修正に時間がかかってしまうため、Androidで完成度を高めた後、iOSに移植して配信、という形が私達としては最善だと考えています。
――2Dと3Dの開発期間に違いはあるんでしょうか?
黒川氏:若干長くなる程度ですね。ゲーム会社の難しいところは、開発工数を伸ばせばコストが上がってしまい利益が出なくなってしまうんです。そこはできる範囲内できっちりやっています。
もしそこで削った面白い要素があれば、それは次のタイトルに活かします。ただ購入頂いた分楽しんでいただけことは重要視しています。
――そもそも、海外展開するに至ったきっかけはなにかあるのでしょうか?
黒川氏:スマートフォンが日本と海外、共通のデバイスとして普及していた点がひとつです。
それともうひとつ、KEMCOは30数年前からゲームを作っており、ニンテンドー64などの時代ではアメリカにも事務所を持っていたんです。当時「トップギア」シリーズはミリオンに近い売上があったと聞いています。「北米でケムコと言ったら『トップギア』だよね」と言われるくらいなんですよ。そういう意味では、北米での知名度もまだまだあるし、再び展開する余地もあるのではと考えました。
僕が入社したのが13年くらい前なんですが、その当時はE3にも、今年よりも巨大なブースを設置していたんです。その当時一緒に来ていて、「アメリカでビジネスをやるって派手で面白いな」と思ってたんです。その夢があったので、またやりたいなと思って2年前から視察をはじめて、去年始めてブースを出し、今年も出しました。E3を通して、なんとか新しいビジネスに繋げたいですね。
――海外展開するといっても、開発自体は日本国内で行なっているんですよね。
黒川氏:昔は海外で開発していたこともあるんですが、今は日本がメインで行なっています。また、デバッグ自体も社内でやっているので、アプリのクオリティにも自信を持っています。
――大企業から個人が入り乱れ、クオリティもバラバラな海外のモバイル市場ですが、KEMCOさんから見てどのような感想をお持ちですか
黒川氏:アイデア勝負で売れているものもあるので、感心させられる部分もありますね。ただ、長くやっていくのは丁寧に作っていくことが良いのかなと思います。プレイヤーさんが飽きずに少しずつレベルアップしていくのがベストだというのが、私たちの考えなので。
――KEMCOさんを始めとした国産のRPGはストーリーを重視している印象ですが、そのようなRPGは、海外ではどのように受け入れられているのでしょうか。
黒川氏:ニッチな層ではありますが、コアなファンは確実にいます。北米の、30代後半くらいのファンが特に多い印象ですね。
――ストーリーは開発会社の方が作られているんですか?
黒川氏:それもありますし、弊社からコンセプトを出す場合もあります。得意とする開発会社に作ってもらい、弊社がディレクションを行うケースが多いです。
黒木氏:ひとつのアプリにつき1人が担当し、制作する形ですね。
――シナリオを追加していくような売り方はされないのですか?
黒川氏:今のところは考えていないですね。シナリオを追加するよりも、新タイトルで遊んでもらったほうが良いと考えています。やっぱり、新しいもののほうが良くないですか? 無理やりつなげてもどうかなと思うし、シチュエーションを変えたほうがユーザーさんも飽きないかなと。
黒木氏:新しい体験や楽しさを与えることを重視しています。それに、。同じものをずっと作っていると、こちらとしても飽きてしまって、良い作品は作れないと思うんです。
――1タイトルあたり1ヶ月程度遊べるボリュームになっているんですか?
黒川氏:集中して数十時間遊んでしまえば、数日でクリアしてしまいますが、電車の中や寝る前に少しずつ遊ぶようなスタイルであれば1ヶ月程度楽しめると思います。そして、次の月に新しいタイトルがリリースされるのが理想かなと考えています。以前は月に2本出していたときもありましたが、そのときはディレクター陣が大変でした(笑)。
アメリカでもだいぶ認知されてきたのかなと感じていますが、アメリカはアクションRPGが人気なんですよね。それは分かってるんですが、日本のRPGであることを主張する意味も込めて、あえてターンベースでいっています。
――PRの仕方も日本のRPGであることを全面に出しているんですね。
黒川氏:はい、そうです。どうみても日本のRPGですからね(笑)。海外進出するときに海外向けに作る会社さんもありますが、(言語のみローカライズし)そのまま配信しています。加えて、戦闘時にボイスがでるタイトルもあるんですが、そのボイスも日本語のままにしています。
ですから、海外でのメインターゲットも、日本のRPGが好きな人になります。現在はスマートフォンゲームでも欧米のタイトルが強くなっていますが、かつては日本のファミコンが世界のゲーム市場を作ったわけですし、うまくいかないわけが無いと考えています。
――今後3Dの作品が増えていくのでしょうか?
黒川氏:昨年も3Dベースの戦闘シーンを採用した「シンフォニー オブ オリジン」というタイトルをリリースし好評を得ました。今回の「アルファディアジェネシス」も好評であれば、どんどん作りたいですね。
――購入者はKEMCOさんのタイトルを指名買いされるリピーターが多いのでしょうか?
黒川氏:はい、ほとんどリピーターだと思います。フィーチャーフォンから合わせると100タイトルを超えているのですが、全部やっている人もいるかと感じています。
――KEMCOさんに限らず、モバイル向けアプリは特定メーカーのタイトルをプレイし続ける傾向が強いのでしょうか?
黒川氏:はい、そうだと思います。「KEMCOのRPGなら安心してプレイできる」と思ってもらえるようになりたいですね。
――数多くのタイトルをリリースされていますが、そのほとんどが完全新作で、続編はあまりない印象です。続編を展開する考えはないのですか?
黒木氏:確かに完全新作が多いですが、例外もありますよ。例えば「アルファディア」シリーズは2008年にフィーチャーフォンで配信されて以降、5作品が配信されていて、さらには新しい世界観の作品となる、今回の「アルファディアジェネシス」も配信予定です。このシリーズに関しては累計で35万ダウンロードを超えています。
――続編を出すかどうかは、プレイヤーの意見を見て検討するのでしょうか?
黒木氏:はい、レビューやメールなどでいろいろなご意見を頂き、参考にさせていただきます。100本以上作っているとストーリーもなかなかネタが無くなってしまいますしね。本当、世界が何回滅んでるんですかね(笑)。
――フィーチャーフォン版をスマートフォンに移植することはないんですか?
黒川氏:実は以前1作目や2作目を移植したのですが、フィーチャーフォンですでに遊んでいる人が多かったんです。
黒木氏:ストーリーは、新規の人でも楽しめるように作っていますし、過去作を遊んでいる人にはより楽しめるものにしています。それでも「2」と付いているだけでハードルが高くなってしまいので、やはり難しいですね。
――KEMCOさんはRPG以外にもノベルゲームなどを配信していますが、そちらの海外展開はあり得るのでしょうか?
黒川氏:主力タイトルをRPGにしたいと思っているので、今はあまり考えていないです。RPGのローカライズをやっていると、どうしても他のジャンルまで手が回らないというのもあります。
黒木氏:アドベンチャーなどではテキスト量が多くなってしまい、英語にしづらい点もありますね。ノベルゲームの場合は、神経を使い、時間をかけて翻訳しないといけないので。
黒川氏:社内にネイティブで英語ができる人がいない状態でやっていますから、結構プレッシャーかかってますね。ローカライズは外注さんにやってもらっています。
――今後は、北米以外にもヨーロッパなどにも展開されるんですか?
黒川氏:そうですね。ヨーロッパも人が多いですし市場も大きいと思うんですが、6カ国語タイトルでRPGとなると大変ですね。一部のゲームでイタリア語版も作っているんですが、それほど大きな売上にはなりませんでしたね。
――ヨーロッパにも日本製の、いわゆるJRPGのファンはいるんでしょうか?
黒川氏:いますね。数は少ないと思いますが世界中にいると思いますよ。
――今後どのようなRPGを作って行きたいですか?
黒川氏:今北米で情報を集めていて、ゾンビとか忍者とかがいいかなと思ってるんですけど(笑)。あとは国際的なIPを使ったものを出したいと思っています。世界に売れる物を作りたいです。何かのきっかけがあれば一緒に仕事をしてみたいですね。
――ありがとうございました。
(C) KEMCO
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