部活も遠足もネットでできる―まったく新しいネットの高校「N高等学校」の施策発表会をレポート

発表会・イベント取材
0コメント 仁志睦

3月22日、カドカワは東京・六本木ニコファーレにて、2016年4月に開校予定の双方向教育システム「N高等学校」のスクールライフについて施策発表を行った。

「N高等学校」はカドカワが高校卒業資格のほか、職業体験や各業界のプロのキャリア教育など、さまざまな学園生活を提供する「ネットの高校」である。大学進学のための授業をはじめ、プログラミング、ゲーム、アニメ、ファッション、美容など多種多様な課外授業を好きなときに好きなだけネットで受講することが可能というもので、今回の発表会では双方向教育システム、ネットコミュニティ施策、アドバイザリーリポートについて具体的な内容が公開された。

双方向教育システムの3つの機能

パソコンやスマートフォンなどのデバイスを使用して授業を受ける「双方向教育システム」。スマートフォンでは画面の上半分にテキストや問題、下半分に授業の映像が流れるという形になっていて、「まだまだ改良の余地はあるが、現段階でもまったく問題ないものができている」と説明を担当した英語講師の中久喜匠太郎氏は語った。

授業では「コメント」「アンケート・クイズ」「挙手&生添削」の3つの機能が利用可能になっている。「コメント」はニコニコ動画のコメント機能を授業で利用するというもので、生徒が授業中に疑問点を「コメント」で質問して講師がそれに答えるといったリアルタイムでのやり取りができる。「アンケート・クイズ」は講師が選択式の問題や質問を生徒に出せるシステムで、挙手などが苦手な生徒のアクティブな授業参加をうながす効果が期待できるという。

カドカワ代表取締役社長の川上量生氏 左から中久喜匠太郎氏、坂田アキラ氏、吉村総一郎氏

さらに面白いのが「挙手&添削」機能で、画面に表示される挙手ボタンをタップして、紙に書いたテキストをスマートフォンのカメラで撮影して送信すると、送った画像が授業の画面に表示され、講師にそれを直に添削してもらえる。実際の授業における時間のロスを大幅に減らせることから、中久喜氏は「リアルの授業を超えた機能ではないか」と賛辞を送った。

これらのシステムについて数学担当講師の坂田アキラ氏は「受験業界に革命を起こしたと言っても過言ではない」と興奮気味にコメント。プログラミング講師の吉村総一郎氏は生添削機能に特に感銘を受けたとのことで、「(プログラムの)スクリーンショットを送ってもらえばミスしている箇所をすぐに指摘できる。生で教えるのと同じ感覚でできるすごいシステムです」と賞賛した。中久喜氏も「自分の当初のイメージの数段上をいくもの」で、「既存の予備校や塾に負けないサービス、コンテンツを提供できる」と改めて自信を見せた。

「ネット部活」や「ネット遠足」で友達づくり

N高等学校は友達づくりなどの交流にも力を入れていくとのことで、生徒同士は「Slack(スラック)」というSNSを介してコミュニケーションを取ることができる。川上氏によると、Slack上では学年などある程度の個人情報は開示されるが、基本的にハンドルネームを使用して交流し、年齢も非公開になるとのことだ。

ネットでの部活動も推奨されていて、「将棋部」「囲碁部」「サッカー部」「格闘ゲーム部」の開設がすでに決定している。将棋部と囲碁部はネットでの対戦を中心に将棋・囲碁を楽しむというもので将棋部は阿部光瑠六段が、囲碁部は藤澤一就八段が特別顧問を務める。

サッカー部ではKONAMIの「ウイニングイレブン2016」を使用して対戦。特別顧問はサッカー元日本代表の秋田豊氏で、ゲームを通じてサッカーの戦術やフォーメーションなどを学べるという。格闘ゲーム部の顧問は未定だが、e-Sportsへの参加などプロゲーマーを目指すことも視野に入れているとのことだ。

いずれの部もその道のプロや実力者が特別顧問を務めるため、初心者から上級者までレベルに応じた活動が可能。もちろん、N高生として各種の大会に出場することもできる。また、リアルでの活動や交流も実施予定で、サッカー部の場合はフットサルの直接指導、将棋部では将棋会館ツアーなどを考えているとのことだ。

ちなみに、現時点での部活は上記の4つのみだが、ドワンゴ教育事業本部の秋葉大介氏は生徒の要望があれば部の新設も検討すると説明。「生徒同士が集まって同好会などが自然発生していくこともありうるので、一定の要件を満たせば部に昇格できる仕組みも提供していきたい」と語った。

左から志倉千代丸氏、秋葉大介氏 齊藤陽介氏

N高等学校では遠足もネットで実施される。開催場所はなんとオンラインRPG「ドラゴンクエストX」の世界で、生徒たちはN高の制服を着たキャラクターを操作してフィールド探索や「鬼ごっこ」などのレクリエーションで交流するのだという。

スクウェア・エニックス執行役員で「ドラゴンクエスト」プロデューサーの齊藤陽介氏は、川上氏からこの話を聞いたとき、「またまた御冗談を」と思ったという。だが、川上氏が本気だということが分かり、堀井雄二氏も新しくて面白いものが好きであったことから、「じゃあ、いっちょやってやるか!」となったそうだ。

このネット遠足について、MAGES.代表取締役会長の志倉千代丸氏は「ドラクエをやっているとリアルに友情が芽生えたりするので、いろいろなドラマがこの遠足から生まれるんじゃないかと思います」とコメント。齊藤氏も「ニコニコ超会議などでオフ会的に会うのもアリなんじゃないですか?」と語るなど、「ドラクエ」が生徒同士の深い交流の一助になることを期待していた。

有識者たちにデータを提供し、アドバイスを得る

各分野の有識者を委員に迎えた「アドバイザリーボード」を設置することも発表された。ネットを活用した新たな取り組みについて専門的知見から助言してもらうほか、同校で得られたデータ(ログやアンケート、学習習熟度など)を研究データとして提供。研究の成果や分析の結果などを広く公開してもらうのだという。

ボードメンバーは精神科医で筑波大学医学医療系社会精神保健学教授の斎藤環氏、秋田大学大学院工学資源学研究科助教の鈴木翔氏、教育経済学者で慶應義塾大学総合政策学部准教授の中室牧子氏、社会学者の古市憲寿氏、社会学者で立命館大学特別招聘教授の上野千鶴子氏、評論家で「PLANETS」編集長の宇野常寛氏の6名で、上野氏と宇野氏を除く4氏が今回の施策についてそれぞれ所見を述べた。

左から斎藤環氏、鈴木翔氏、中室牧子氏、古市憲寿氏。上野千鶴子氏と宇野常寛氏もボードメンバーに就任予定だ。

斎藤氏はひきこもりや不登校など若者の非社会的行動について研究していることから、「どのようにすれば自己肯定感をアップできるかなどの対策に生かせるのでは」と期待のコメント。鈴木氏は「普通の学校との違いが何を生み出すのか」をつぶさに見たいと主張。通常の対面しての人間関係は深い友情を得られる一方、いじめなどの負の影響ももたらすが、「ネットを介したコミュニケーションもそうしたものに結びつくのか注視していきたい」と語った。

中室氏は不登校、特別支援、外国人といった個別の支援を必要とする子供たちへのケアという部分でN高等学校はブレイクスルーになる可能性があり、そうした子供たちにより良いサービスを届けるため、データを使って全体を俯瞰し、もっとも高い効果を教育経済学の知見から明らかにしていきたいと抱負を述べた。

古市氏は高校時代に読んだ村上龍の「希望の国のエクソダス」で描かれていた「教育の再生」と同じような可能性をN高等学校に感じているそうで、「既存の教育システムを変えるきっかけになってほしい」「日本における“学歴”の持つ意味を変えてほしい」と激励を送った。

最後に2016年4月6日に「ネット入学式」が行われることが発表された。生徒はチャットツール「Slack」で参加となるが、入学式会場に直接参加することも可能とのこと。また、入学式の模様はニコニコ生放送にてライブ中継される予定だ。

※画面は開発中のものです。

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