【BitSummit 4th】須田剛一氏と飯田和敏氏によるトークステージと須田剛一氏へのインタビューをお届け

須田剛一氏と飯田和敏氏によるトークステージ

グラスホッパー・マニファクチュア 須田剛一氏と立命館大学映像学部教授 飯田和敏氏によるトークステージが行われた。長年ゲーム業界で活躍してきた両氏が過去を振り返る話題でスタート。飯田氏がアートディンクから独立したと知って、刺激を受けたという須田氏。

当時は、最近のスタートアップといった形態ではなく、やりたいことをやるために、自身で環境を作り、仲間を募り、一緒に稼いで作り上げるといったもので、ゲーム制作以外のさまざまなことを学んできたという。近年はキックスターターといったバックアップがあるが、1本目、2本目とタイトルを作っていくに連れて、燃え尽きてしまったり、チームの内紛、さらには結婚といった自身の人生などさまざまなことが起きると語る両氏。

飯田氏は、「巨人のドシン」あたりまでは何も考えずに勢いで作っることができたが、その後空っぽになってしまったと当時を振り返る。その後、ゲームとは少し離れ、科学未来館の展示「アナグラのうた」を手がけ、そこで2度目の燃え尽きを起こしてしまう。しかし、BitSummitの会場を訪れ、またゲームを作りたくなってきたと語っていた。

このような経験をしてきた両氏は、インディーデベロッパーに向けて、1～3本目までは勢いでいけるが、そこから先は茨の道が待っているから覚悟しろとアドバイスを送っていた。

会場でも出展されていた「シルバー事件」に触れられた須田氏は、本作がうまく行けば、続編である「シルバー事件25区」への流れができると今後の展開への意気込みも見せた。

終始、須田氏と飯田氏の独特のトークですすめられた本ステージだが、最後にかっこいいことを言おうとした飯田氏が、「シルバー事件」のロゴが独特のデザインでかっこいいと話すと、須田氏が読めることよりも三角形のポリゴンの集合体で文字を作ることが大事と回答。さらに「VRシルバー事件ってかっこいいね」といった発言も飛び出していた。これについては、インタビューで聞いてみたのでそちらもご覧頂きたい。

須田剛一氏にインタビュー

――リマスター版をSteamとPLAYISMで配信するに至った経緯を教えて下さい。

須田氏：10年ほど前から海外版を含めた移植をしたいと思っており、計画していましたが、なかなか実現しませんでした。昨年、PLAYISMさんから「シルバー事件」を出したいとオファーいただきました。海外版をリリースできないと難しいですよと答えたのですが、「うちには『シルバー事件』の日本語版をクリアした外国人スタッフが3人いるから、やらせてもらえるなら翻訳も完璧にやりますよ」と返事がきたんです。

そこから、僕の中でもイメージが鮮明になって、実現したいという思いが強くなりました。

――開発自体も昨年からスタートしていたのですか？

須田氏：いえ、今年の3月スタートしたので、今5ヶ月目ですね。

――開発の進捗状況は？

須田氏：先週アルファで8月中旬にベータになり、9月末頃には最終のマスターにします。そのあと調整などを行い、11月頃のリリースになるのではないかと思います。

――リマスター版を作るうえで気をつけた点は？

須田氏：やり過ぎないことですね。ベタ移植ではダメですし、良くし過ぎないということです。いろんな提案がアクティブゲーミングメディアさんから届くのですが、それをひとつひとつ丁寧に見て、クオリティを調整します。たとえば、各装飾パーツの意味があるのかどうかを考え、意味がなければ捨てるといった選択をします。当時なぜこうしたのかを思い出しながら、やり過ぎないように進めています。

――やり過ぎてしまうと雰囲気が崩れてしまうということですね。

須田氏：はい、どこかPS1のときのポリゴンの雰囲気が残るようにすることが大事です。PS1風のジャギ感、ポリゴンの粗さのようなものがうまく出るように、ワンシーンずつ確認しながら作っています。

――開発で難しい点はどこでしょう？

須田氏：背景ですね。ワンシーンごとにチェックをしながら進めています。絵作りのルールをひとつひとつ確認していて、自身でも見ることにより大事なものを発見することもあります。

アクティブゲーミングメディアさんから、水をリアルな表現で提示されたことがあり、それを見てやり過ぎだと思い、戻したこともありました。

――今回英語に翻訳が行われましたが、海外ファンからの要望が多かったのですか？

須田氏：昨年、グラスホッパー・マニファクチュアのアートブックを出して、そこに「シルバー事件」が載っていたんです。アートブックの一番後ろに載っていたのですが、グラスホッパー・マニファクチュアの原点でもある本作の圧倒的な存在感があり、海外の遊びたいという声を感じるようになりました。

――英訳の出来についてはいかがですか？

須田氏：英語がわからないので、翻訳スタッフに委ねています。さっきTwitchの配信を見ていて、スラングなどが自然で良いといった反応があったので、うまく雰囲気が再現されていると思います。会話劇としての面白さが残っていることがわかって安心しました。

――今回のブースも人気でしたね。

須田氏：常にお客さんがいる状態で、特に日本のファンは「きれいになってビックリしました」と喜んでくれています。

――「シルバー事件25区」のリマスター版の開発されるのでしょうか？

須田氏：まだです。今回の「シルバー事件」の結果を見て考えます。

――「花と太陽と雨と」などのリマスター版も見てみたいです。

須田氏：「花と太陽と雨と」までいけたらいいですね。「シルバー事件25区」が折り返し地点で、「花と太陽と雨と」がゴールであると思っています。

――「シルバー事件」のグッズ展開は？

須田氏：アクティブゲーミングメディアさんが「シルバー事件」のグッズ展開について考えてくれているみたいです。

――ステージで「VRシルバー事件」の話が出ましたが。

須田氏：相性はいいと思うんですよ（笑）。入った瞬間にさまざまなウィンドウが浮いてて、うしろで壁紙が流れていて、素敵な世界になるんじゃないかなと思います。あながちギャグじゃないですよ。向いているということは認識していて、半分本気で考えていますよ。

――最後に「シルバー事件」を待つ読者にメッセージをお願いします。

須田氏：1999年のレトロゲームで、人によっては生まれる前のゲームかもしれません。今回、リマスター版として復活するということで、日本や海外の人たちがざわついてくれてありがたいです。それは、「シルバー事件」が独特の魅力を持っていて、僕自身気づいていない魅力があるんだと思います。そういった所をまだ遊んだことのない人にも遊んで欲しいです。