フリューが展開するインディーズADVシリーズ「カタルヒト」。ゲームコレクター・酒缶さんによる、同シリーズを立ち上げたプロデューサー・大地将氏へのインタビュー第1回と、「彼岸花の咲く夜に」のインプレッションをお届けする。

フリューが配信を始めたインディーズアドベンチャーの良質な名作を掘り起こしていくレーベル「カタルヒト」。その第1弾として2016年7月27日に配信を開始した3タイトルのインプレッションと「カタルヒト」レーベルのプロデューサー・大地将氏へのインタビューを順次掲載していく企画の第1回。今回のインプレッション部分では「彼岸花の咲く夜に」のインプレッションをお送りします。

これをみんなに読ませないといけない
大地将氏

酒缶:大地さんって、これまでどんな仕事をされてきました?

大地将氏(以下、敬称略):ゲーム雑誌のライターから始まり、ゲームの開発会社、パブリッシャーへと移り、フリューに入りました。フリューでは、「ロストディメンション」(PS3/PS Vita)、「結城友奈は勇者である 樹海の記憶」(PS Vita)、「食戟のソーマ 友情と絆の一皿」(3DS)、「ドラえもん 新・のび太の日本誕生」(3DS)などのディレクター、プロデューサーを担当しています。

酒缶:フリューさんはパッケージタイトルのイメージが強いのですが、どうしてダウンロードに特化したタイトルを作ろうと思ったのですか?

大地:あっ、パッケージ版が無いのは酒缶さんには申し訳なかったですね(笑)。

酒缶:あぁ、その辺のことは知って頂いているんですね(笑)。

大地:おっしゃる通り、フリューの家庭用ゲーム事業では、わりと既存のスタイルに沿った物作りをすることが多いのですが、僕としては違う方法を試してみたかったんです。アドベンチャーゲームをやりたいというユーザーの声をすごく聞くけど、どのタイトルも苦しい結果しか出ていなくて、それこそ裁判のゲームと学級裁判のゲームしか売れないような……。

酒缶:ノベル系でも、有名声優さんの声が入ったり、有名イラストレーターさんが入ったり、有名原作があったり、色々乗っかってやっとパッケージ化という流れがありますよね。

大地:そんな中、最近はインディーズタイトルが華やかで、3DSでインディーズタイトルが発売されるケースが増えてきています。しかし、単発で出しても打ち上げ花火になるケースが多く、なかなか次にはつながりにくいな、という思いがあったんです。僕らが若い頃でいうと、「月姫」のような特大花火がドカンと上がりましたよね。あの文化の後に続くような良作は昨今もあるんですけど、それらが表というか、メジャーな舞台でアピールする機会はめったにないんです。なので、一発一発じゃなくて「こんなに面白いタイトルがあるんだよ」というタイトルを並べておくことで次のタイトルを探せる形を作りたくて「カタルヒト」というレーベルを立ち上げました。

酒缶:ダウンロードタイトルを1本出しても探しにくいということと、インディーズタイトルの良作を家庭用ゲーム機に引っ張ってこようという両方の意図があったんですね。

大地:フリューがいきなり1本だけダウンロード専売タイトルを出してもなかなか目に留まりにくいだろうし、インディーズタイトルを1本出しても苦しいと思うんです。

酒缶:「カタルヒト」レーベルには、「インディーズADVシリーズ」と付いているんですけど、インディーズタイトルの中でもアドベンチャーに特化したレーベルなんですか?

大地:そうですね。インディーズタイトルにはアクションゲームなど他のジャンルもあるんですけど、商業的に一番シリーズとして見えやすく、移植のハードルが低いであろうと思われるアドベンチャーゲームであれば、安定供給できるのではないかと考えました。アクションゲームの場合、0からフルスクラッチで3DSに移植すると安定供給にはつながらないので。

酒缶:ハードごとの特殊な要素がありますし、操作もあるし……。

大地:ちょっと突っ込んだ話をすると、「カタルヒト」のタイトルは共通のUIを使用していて、デザイン的には各タイトルの世界観に寄せていますけど、操作方法は全部同じなので、1タイトルプレイすると他のタイトルも同じ操作で読み進められるようになっています。

酒缶:確かに、下画面は、スキップとオートとバックログがあり、STARTボタンでシステムメニューを開くなど、共通になっていますね。

大地:そこはレーベルで統一感を出したかった部分ですね。

酒缶:配信から1カ月以上が経ちましたけど、反響はどうでしたか?

大地:家庭用ゲーム機では斬新な新規タイトルとして扱われますけど、インディーズシーンでは押しも押されもせぬビッグタイトルたちなので、原作ファンの初動が大きかったです。そのため、好きな人がもう一回遊びたくて買ったり、3DS化おめでとうの意志として買ってくれたりする人がすごく多いです。

酒缶:PCでは2011年から2012年くらいに発表されたタイトルですもんね。

大地:パッケージでもそうなんですけど、ダウンロードタイトルも配信が始まってから、いったん落ち着く期間があって、その先にメディアへの露出があったり、オピニオンリーダーの発信があったりした時にちょっと伸びることの繰り返しなので、遊んでくれた人が周りに布教してほしいんですよね。今回は口コミを相当期待しています。そのこともあって、Miiverseは1タイトルごとじゃなくて「カタルヒト」レーベルで1つにまとめています。

酒缶:eShopなんかでも、1メーカーで1タイトルだけ出してもランキングから消えるとなかなか見てもらえないんですよね。

大地:そう思って、あえてフリューという会社名に上乗せする形で「カタルヒト」というレーベルを立ち上げたのです。

酒缶:社内の反応はどうでした?

大地:「このえぐ味は大丈夫?」という反応がすごく多かったです。インディーズのアドベンチャーゲームは、家庭用ゲーム機ではあまり見ないテイストのゲームが多いので……。

酒缶:デザイン的な話ですか?

大地:デザインもそうですけど、お話の内容も、です。「彼岸花の咲く夜に」の1話でいきなりショッキングな話がありますし、お話の内容も悲劇が多く、死や怪我など、ショッキングなシーンが多いので、「CERO、大丈夫なの?」みたいな感じで……。

酒缶:むしろCEROの話なんですね。ゲーム内容的に一般受けするか、みたいなところはどうでしょう?

大地:今回はチャレンジとして通しているので、社内的には「経過観察しよう」というノリでした。

酒缶:他のプロデューサーさんたちから羨ましいと思われたりはしなかったですか?

大地:そういう気持ちもあったと思いますが、「本当に行けるのかいな」という気持ちもあったでしょうし、社内的には半々だったと思います。関心を持って見てくれているような気がします。

酒缶:インディーズタイトルと家庭用ゲーム機のタイトルの違いって、どんなところにあるんですか?

大地:現在の家庭用ゲーム機向けのゲームはマーケット手動で、「こういうモノが売れそう」という分析から始まって、売れるロジックが存在する企画が通って、そこにタイトルの個性が足されていくため、最初に個性ありきの企画を商品化するのは難しいんです。僕らが子どもの頃に遊んでいたゲームはそうじゃなかったはずなので、ゲーム業界に生きる人間としてそれが単純に寂しくて。

酒缶:はい。

大地:そんな現状から見て、インディーズタイトルはいろんな人の手が入っていないので、開発者自身が伝えたいことがすごい純度で詰まっているので、すごく個性的なんですよね。

酒缶:作り手の個性を詰めるというところに関してはインディーズゲームの方が見えやすいですよね。

大地:ほぼ一個人の思いで作ってるんで、その方向で評価するなら究極ですよね。そこには大勢のクリエイターで作り上げたビッグタイトルとはまた別の美しさがあると思うんです。インディーズとメーカー産タイトルの違いって、そこじゃないでしょうか。言ってしまえば、僕自身が面白さを理解できないタイトルだって、大勢の濃いファンが着いているタイトルならリリースを検討してみたいです。そもそも、インディーズゲームなので“プレイする人を選ぶ作品”なんですよ。「一寸のゲームにも五分の魂」って感じで、インディーズ作品のとんがった個性を世に問うレーベルでもあると思いますから。いろんな小説を次々に読む人がいるみたいに、「カタルヒト」を通していろんな作家さんの個性に触れてもらえたらうれしいですね。

酒缶:小規模で開発することだけを考えれば、家庭用ゲーム機でもダウンロードタイトルであれば可能ですけど、作り手の個性を詰めるというところではインディーズの方が勝っています。

大地:究極ですよね。その美しさは超ビッグタイトルに負けていないと思うんです。超ビッグタイトルの中にもときどき変なところに拘って狂っているタイトルがあって大好きなんですけど、インディーズタイトルは小規模であっても作り手の魂の純度が高く、インディーズと家庭用ゲーム機向けのタイトルの違いはそこだと思っています。

(インタビューは次回に続きます)

怖いけど、怖いのに、つい読み進めてしまう「彼岸花の咲く夜に」

ゲームのアイコンはちょっと凛々しい女の子。タイトル画面はおどろおどろしい雰囲気。ここから連想するのは「トイレの花子さん」的な学園モノの若干コミカルな要素のあるホラー作品。

花子さん的な捉え方をしたとしても、コミカル寄りからかなりダークなモノまでありますけど、ゲーマーなのでゲーム化された花子さんを想像すると、どうしてもそちらの花子さんが頭にちらついて、トボけたテイストなのかな、と思ってしまいます。

だって、彼岸花が女の子の名前でしょ? 花子さんと同じく名前に花が入っているし……と怖い思いをしないように一生懸命イメージを作ってゲームを始めるも、シナリオセレクト画面もどんよりとダークな雰囲気を作り出しています。インプレッションなのに最後までプレイしてしまったため、全てのロウソクが出ていてすみません。本当は1話終わるごとにロウソクが増えていくようになっています。

話を選ぶと最初にぱっぱと映っては消える背景は学校のモノ。学校が舞台だと把握し、過去に通過した学校という風景を見ているだけなのに、なぜか不安な気持ちがよぎります。人がいることで成立する学校という場所が、人がいないだけで感じてしまう不安感。少しずつ気持ちが沈んでいく中で、トイレにたどり着きます。

しかし、次から次へと表示されるテキストは、いわゆるホラーな内容ではありません。それは学校で起こっている出来事。生徒が生徒から受けたことや生徒が先生から受けたこと、その事実関係が語られているだけなのですが、その内容が自分自身の気持ちを暗闇へと引きずり込みます。具体的な内容には触れませんけど、妖怪に襲われたり、怪奇現象に出くわしたりするよりも、ずっとずっとダークな空間に引きずり込まれてしまいます。学校というありふれた空間で起こっている、人と人のやり取りが、精神的にくる恐怖を引き起こしていきます。

ここでオープニング曲に合わせて恐怖を煽る映像。映像に合わせて現れるグラフィックや演出にじわじわと恐怖を感じるのですが、何よりもいい具合に表示されるテキストが不安感を煽ってくれます。

オカルトモノをプレイするつもりであれば期待感が募るところですが、ふと気を抜くと精神的にズドンと落とされてしまいます。まだ一人も妖怪が出てきていないのに、一人の少女と一人の教師の間に起こっている事件の状況を知るだけで、何かに憑りつかれたような、不穏な空気を抱え込んでしまいます。

最初の1話は森谷毬枝が学校妖怪めそめそさんになる話であり、学校妖怪の序列第三位の彼岸花がめそめそさんよりも常に上位にいることを見せつけられる話。それなのに、妖怪の恐さよりも人間同士が引き起こす恐怖の方が勝っていて、音とグラフィックと演出が恐怖を煽ってくれます。

物語自体は、時間軸的には進んでいるかもしれませんけど、1話ずつ結末まで描かれているため、1日1話のようなペースで読み進めることができます。それなのに、次の話が気になってしまい、ついついうっかり読み始めてしまうと、切り上げるタイミングを忘れてしまいます。

それもそのはず。「ひぐらしのなく頃に」や「うみねこのなく頃に」でお馴染みの竜騎士O7氏のシナリオのため、ぐいぐいと引き込まれてしまいます。

プレイヤー自身が何かを選ぶわけではなく、ただ自分のタイミングでボタンを押して物語を進めていくだけ。オートプレイにすれば、ボタンを押すこと自体がなくなり、ゲームの進行に合わせてテキストが表示され、グラフィックが変化して、演出が発生するだけなのですが、それでもプレイヤー自身のタイミングで、怖いからちょっと進行を止める、さっとテキストを通過する。それでもさっといかないような怪しい演出が差し込まれることで、怖さが倍増。物語の強さをひたすら実感することになります。

人間と人間が引き起こす恐怖。妖怪の影響を受けて人間が引き起こす恐怖。妖怪が引き起こす恐怖。表面的には人間と妖怪のどちらが原因で起こっているかわからないし、プレイヤー自身は第三者の視点で読み進めればいいのに、なぜか引き込まれて一緒に恐怖を感じてしまいます。

これはきっと、プレイヤー自身が対象となる人間やめそめそさんに感情移入をしながら、どこかで彼岸花に恐怖を感じて物語を読み進めているからだと思います。また、彼岸花視点で物語を体験しようとしても、どこか天邪鬼なところがあって、必ずしも予想通りの行動をしない彼岸花に対する認識のズレも恐怖を助長させているのかもしれません。

秋になりましたけど、寝苦しい夜があれば、涼しくなる1つの方法としてプレイすることをお薦めします。読書の秋なので、読む本を探している人がその候補として選んでみるのもよろしいかと思います。ホラーが好き、オカルトが好き、という方は当然ながら読むべきでしょう。

但し、より寝つきが悪くなったり、陰な気持ちになってしまったりしたとしても、自己責任でお願いします。

[カタルヒト]彼岸花の咲く夜に第一夜(07th Expansion)

フリュー

3DSダウンロード

  • 発売日:2016年7月27日
  • 価格:800円(税込)
  • 17歳以上対象
[カタルヒト]彼岸花の咲く夜に第一夜(07th Expansion)

[カタルヒト]ファタモルガーナの館(Novectacle)

フリュー

3DSダウンロード

  • 発売日:2016年7月27日
  • 価格:950円(税込)
  • 17歳以上対象
[カタルヒト]ファタモルガーナの館(Novectacle)

[カタルヒト]WORLD END ECONOMiCA Episode.1(Spicy Tails)

フリュー

3DSダウンロード

  • 発売日:2016年7月27日
  • 価格:800円(税込)
  • 17歳以上対象
[カタルヒト]WORLD END ECONOMiCA Episode.1(Spicy Tails)

[カタルヒト]WORLD END ECONOMiCA Episode.2(Spicy Tails)

フリュー

3DSダウンロード

  • 発売日:2016年9月28日
  • 価格:800円(税込)
  • 12歳以上対象
[カタルヒト]WORLD END ECONOMiCA Episode.2(Spicy Tails)

「カタルヒト」ポータルサイト
http://www.cs.furyu.jp/kataruhito/

プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター

1万本以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。ゲーム関係者へのインタビューをまとめた電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション」を展開中。関わったゲームソフトは3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」「謎解きメイズからの脱出」など多数。価格コムでは、ゲームソフトとAndroidアプリのプロフェッショナルレビュアーを担当している。

■公式サイト「酒缶のゲーム通信」
http://www.sakekan.com/
■twitterアカウント
http://twitter.com/sakekangame
■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」
http://www.amazon.co.jp/dp/B008GYU7B4/
■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション2」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00CJ320S6/
■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション3」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00DI3T160/
■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション4」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00IXLHLVE/
■電子書籍「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション5」
http://www.amazon.co.jp/dp/B00KA6CZWU/

(C)竜騎士07/07th Expansion (C)FURYU Corporation.
(C)Novectacle (C)FURYU Corporation.
(C)2011-2016 Spicy Tails (C)FURYU Corporation.

※画面は開発中のものです。

この記事のゲーム情報

機種
3DS
プラットフォーム
ダウンロード
会社
フリュー
ジャンル
アドベンチャー
  • G123.JP特集ページ
  • セガゲームス特集ページ
  • セール情報
  • Figgy

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