2017年8月30日から9月1日にかけてパシフィコ横浜にて開催されている「CEDEC 2017」。ここでは8月30日に実施されたセッション「『若手小規模プロジェクト』のススメ ~昨今の業界における若手育成の問題点とその解決方法の提案~」をレポートする。

左:奥田仁一郎氏/右:寺井瑞希氏
左:奥田仁一郎氏/右:寺井瑞希氏

このセッションでは、ヘキサドライブで若手育成の一環として行われた「若手小規模プロジェクト」を紹介。

実際にプロジェクトを受けた寺井瑞希氏(開発部 ディレクター)と、責任者を務めた奥田仁一郎氏(開発部 東京開発スタジオマネージャー)によって、実施内容や結果、注意点などが具体例を交えて解説された。

ヘキサドライブは、コンシューマーを中心にハイエンドな移植のタイトルなどもあつかう開発会社。今年10周年を迎え、プログラマー中心のエンジニア集団というイメージを持つ人も多いだろう。

同社では講演のメインとなる「若手小規模プロジェクト」のほかにも、他社と合同で行う新人研修や、新人に若手のメンターを1対1で配置するメンター制度など、若手が自身で成長できるような環境・制度を作っている。

しかし、こうした若手育成の中で、1つのプロジェクトを立ち上げからリリース・運営まで通して経験したことのない若手の増加や、プロジェクトの大規模化による責任の希薄化などの問題点が浮き彫りに。これらを業界全体の若手育成の問題と捉えた奥田氏は、若手が彼らだけでひとつのプロジェクトをやり遂げる「若手小規模プロジェクト」を提案、実施に至ったという。

「若手小規模プロジェクト」は、ヘキサドライブの作品として恥ずかしくないクオリティのものを制作して東京ゲームショウに出展することをミッションとして、寺井氏をはじめ4人の若手社員で開始。製作期間は3ヶ月間だが、東京ゲームショウへの出展が締切の明確化や人の目に触れることを意識させ、緊張感とモチベーションにも繋がったという。

プロジェクトの目的は「経験と成長」とし、責任感を持って問題を乗り越えリリースまでこぎつける一連の経験と、やり遂げた達成感を感じさせることが大きな狙いに。

奥田氏は、若手が自分たちで考え工夫できる環境作りの一環として、金銭的なプレッシャーを感じさせないように売上やダウンロード数などの具体的な目標は設けなかったという。また、チーム外の社員もアドバイスを求められたら一緒になって考えるなど、社内が1つになって若手育成に挑んだという印象を受けた。

この取組から完成した作品が、スマートフォン向けアプリ「アイテム代は経費で落ちない~no item, no quest~」。

寺井氏は短期間で制作したことを感じさせないよう、エフェクトや演出といった部分にこだわり、クオリティを高くみせることを意識したと解説。さらにリリース前後のPV制作やTwitterなどのプロモーションも自分たちで行い、プロジェクトは成功を収めたという。

仕様書をアナログ化することで作業時間を短縮できたことから、プロジェクトにあわせて最適な選択をすることの大事さを学んだという。
「ゲームが面白くない」という問題は、チーム外の第三者の意見をもらうことで気づけたようだ

寺井氏は、さまざまな壁にぶつかったが一つ一つの問題に全員で取り組み解決することで成長につなげることができたと振り返り、「問題にぶつかることがこの教育方法のミソ」と明言。とはいえ、問題を収拾できずプロジェクトが頓挫しては得られないものもあるので、それを回避するためのチーム内外、そして責任者の“心構え”を紹介してくれた。

新人に多く見られる「なぜか自身にあふれている」「とにかく自信がない」タイプは暴走・迷走しがちだとし、そんな時はチーム外に監督できる人物を作り調整してもらうのが良いという。しかしプロジェクトの目的からあくまで「若手だけのチーム」にしないと意味がないので、指示ではなくアドバイスに留めるのが効果的だとした。

そして責任者の注意点として、“責任の所在が不明確な部分を減らす”、“アドバイスかオーダーかはっきりさせる”という2点が挙げられた。承認が必要な箇所をあらかじめ共有することや、上の発言が持つ影響力を考慮して参考なのか指示出しなのかを明確にしておくことが求められたと奥田氏もコメントした。

これを受けて、寺井氏は若手側も上に言われたことを「必ず実行する」というマインドは捨て、アドバイスには「善処します」、オーダーには意図を理解して応えることが必要だったと振り返る。そのほかにも若手側には、当事者意識を持つことや、悲観的にならないこと、さらにセクションを越えて意見を言いやすい環境づくりを心がけるなど、自助努力があってこそ周囲の協力が得られるとまとめた。

「若手小規模プロジェクト」の結果、育成の目的を達成しただけでなく、会社の成果物が増え、取り組みを通じて新卒の応募が増えるなどの対外的な反応も上々だったという。さらにこの取組の一連のプロジェクトをブランド化、商業的な活用も予定されている。

最後にこれから「若手小規模プロジェクト」を行おうと検討している人に向けて、プロジェクトは同年代のチームで目的を明確に短期間で行うことを前提に、チーム外の理解とフォロー、そして若手自信がゲームを面白くしようという意識を持たせることで必ず成長できるとエールを送り、講演を締めくくった。

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