セガゲームスが2018年2月15日に発売を予定しているPS4/PS Vita用ソフト「電脳戦機バーチャロン×とある魔術の禁書目録 とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」。東京ゲームショウ2017の会場で、プロデューサーの亙重郎氏にインタビューを実施した。
――先日のステージでも話されていましたが、改めて今作を発売するに至った経緯をお聞かせいただけますか?
亙氏:昨年電撃文庫さんから「とある魔術の電脳戦機」という鎌池和馬さんによる小説を、「とある魔術の禁書目録」(以下、禁書)シリーズの一編として出していただいたのですが、これが好評でして、禁書シリーズファン、バーチャロンファンのいずれかであっても純粋にお話が楽しめる良い作品になっていました。
小説が先に出たことを受けて、ゲームも何らかのかたちでお応えしなければいかんだろう、という思いに駆られまして、今回ゲームを開発するに至りました。
――小説の企画が進行している頃は、まだゲームにするというところまでは決まってなかったのでしょうか?
亙氏:もちろんゲームにしたいというお話もあったのですが、ゲームの企画を立ち上げるのは小説以上に大変なので、(発表に至るまでに)時間がかかりました。
――ゲーム版のストーリーも鎌池和馬氏の書きおろしで小説版からの続きになるということですが、ゲームをプレイされる上で小説を知らなくても問題ないのでしょうか?
亙氏:お話の部分は前後を知らなくても楽しめるようになっています。また、アクションの部分については、実際に東京ゲームショウで触っていただいた方であれば一目瞭然だと思うのですが、ガチなバーチャロンになっているので、特にファンの方が不安になる要素はないと思っています。むしろ今回のコラボという試みが今までのバーチャロンに加えて新たな楽しみを増して、お得なソフトになった! みたいな感覚で接してもらえればと。
禁書ファンの方にとっては、鎌池さん自身が自分が書かなければということでオリジナルのシナリオを書き下ろしていただいているので、禁書の世界を新しいゲームの形で楽しめる、そういうものが出てきたと受け止めてもらえるとありがたいです。
――鎌池さん自身は当初からバーチャロンについて詳しい方だったんでしょうか?
亙氏:鎌池さんは当初バーチャロンのことを全然知りませんでした。でも、ご本人がすごく勉強熱心で、気がついたらやたらと詳しくなっていて。恥ずかしながら私が「そんな設定あったっけ?」と驚くようなことをどんどん小説に織り込んできて、舌を巻くような感じでした。また、ゲーム自体もすごく勉強されていて、バーチャロンはこういうゲームというエッセンスを上手くお話に織り込んでくるところはさすがだなと思いました。
――現時点で6人のキャラクターが発表されていますが、禁書シリーズには多数のキャラクターが登場しています。今回は舞台が学園都市ということもあり、基本的には学園都市内のキャラクターを中心に登場することになるのでしょうか?
亙氏:小説版を経て続きのお話を書いていこうという時に、我々がテーマとして持っていたのは、禁書の原作に忠実でありたいという点です。そうなると、魔術側の人間が出てこないのはおかしいだろうということになります。この辺のバランスをきちんとっていかないと、禁書ファンにとって納得のいくものにならないだろうと思っています。
――確かに魔術側のキャラクターが出るかどうかはファンにとって気になるところだろうと思います。
亙氏:鎌池さん曰く、「魔術側の人間が出ると話がこんがらがって量が膨大になりますよ」というお話だったのですが、そこがないとファンが納得しないだろうと思い、覚悟の上で登場させてもらっています。
――そう聞くとどのキャラクターが登場するのか期待が高まるのですが、アニメではまだ描かれていない、比較的最近登場したキャラクターたちが参戦する可能性も…?
亙氏:現時点で「新約 とある魔術の禁書目録」の19巻がそろそろ刊行というところですが、ここまでの中で際立って特徴的なキャラクターに出てきて活躍してもらえると話がアクティブになるだろうと思い、そのあたりも頑張っていただいています。
――登場するバーチャロイドもキャラクターの特性を反映したものになっていると思いますが、機体のデザインや特徴の付け方などで意識しているポイントはありますか?
亙氏:何かルールを作るというよりも、このキャラクターがこの機体に乗ると面白くなるよねという基準でチョイスしています。我々としては禁書側からもバーチャロン側からも、手持ちのキャラクターや世界観を惜しみなく全て出し合って、それをどうぶつけ合えば、あるいはかみ合わせれば面白くなるのか追及する、という攻めの姿勢でやっています。この辺、単なるキャラの貸し借りを前提としたスタンスで作ろうとしても良いものになりませんので。
そもそも実際にいじってみて「面白い!」と思ってもらえるのが、ゲームとしてのあるべき姿です。前知識としてのキャラクターを知らなくても、ゲームであれば、触りながら得られる体験が、プレイヤーに感動をもたらすわけで、これこそが、我々の目指しているコラボレーションによる化学変化だと思っています。
――それは新たに追加されるブーストウェポンなどの要素にも表れているのでしょうか?
亙氏:あれが一番シンボリックなフィーチャーだとは思うのですが、それに留まらずひとつひとつの動きや性能、細かいところまで気を配っています。
――そうなると、双方のファンそれぞれの目線で、機体に対する感じ方は変わってくるかもしれませんね。
亙氏:小説もそうでしたが、バーチャロンを知らない禁書ファンも、禁書を知らないバーチャロンファンも楽しめるものにしようというのが今回のコラボレーションの核となる部分です。バーチャロンを知らなくても「これは禁書キャラっぽい」と思えるかもしれませんし、バーチャロンファンにとっても「今まで触ったバーチャロンとは違うけれど、これは面白いな」と思ってもらえるかもしれません。それぞれにとって見える真実の姿は違うと思うのですが、別に間違ったことではなく、今相対しているゲームを確実に楽しめる、そういうものを作るというのが我々のやるべきことなのかなと思います。
――シリーズとしてはこれまでアーケードゲームとしての展開が主でしたが、今作ではコンシューマからの展開になります。操作性で気にされた部分があればお聞かせください。
亙氏:昔のアーケードではツインスティックというインターフェースがあって、そこに根ざした操作性を心がけていたんですが、今回はコンシューマですし、パッド主体で手軽に遊んでもらえるようにしていきたいと思っています。
――バーチャロンファンですと、CPU戦はもちろん、対人戦も気になるところですが、その調整についてはいかがでしょうか?
亙氏:対人対戦が一番デリケートで難しいところなので、気を遣っています。そこで積み上げられたもろもろの調整を踏まえてCPU戦がアップデートされていくという作り方になると思います。対戦は、人と人のやり取りなので疎かにできません。細かいところで結構気を使いますね。
――対人戦についてはランキングやランクマッチなどの要素は用意されるのでしょうか?
亙氏:はい、いわゆるガワの部分は普通に用意すると思います。とはいえ、やっぱり大切なのは中身の部分であり、ここが残念なことになるとユーザーの方からも叱られてしまうので、気をつけていきたいです。
――今回、PS4とPS Vitaでそれぞれ異なる初回限定版を用意されていますが、このような構成にした経緯などあればお聞かせください。
亙氏:そもそも限定版というのは、少し尖った方々が買うアイテムだと思うんです。たとえばバーチャロンが大好きな人、禁書が好きで好きでしょうがない人、がそれぞれいると思うのですが、彼らはそれぞれのジャンルで振り切れた人。一方で、両方が好きで好きでしょうがない人って、最初の2つに比べたらやっぱり少ないんじゃないかと。
だとしたら、バーチャロンに特化したパッケージ、禁書に特化したパッケージにまとめ上げたほうが、やはり内容としても一貫性がありますし、それぞれのファンにとっても分かりやすいのではないかと思い、限定版は分けることにしました。
――その中で、PS4の初回限定版[Discipline 55]に関しては500ページに及ぶ冊子を用意されるということで、それだけのボリュームにしようと考えた理由についてお聞かせください。
亙氏:バーチャロンで新作が出るのは15年ぶりで、その間、バーチャロンがいつかまた新作を出してくれると信じてくれた人たちが確実にいると思います。そういう人たちにとってこの15年はすごく長い時間だったと思いますし、その想いってすごく重いものではないかと思うので、我々も物理的にずっしりとしたもので応えていきたいんです。
これまでの時の流れをきちんとアーカイブできるようなまとまった資料を、500ページの重みでみなさんと共有できれば盛り上がると思いますし、そもそもこれまで待っていてくれたユーザーと我々が共感できるアイテムこそが限定版の中身であるべきだという想いがあります。バーチャロンはそれだけのファンの気持ちを背負ってきていることを再確認し、その想いを新たにできるのが、今回の限定版だと思います。
――禁書側の特典をまとめたPS Vitaの初回限定版[とある魔術の電脳紀要]も、そのボリュームに負けないアイテムを揃えていてその充実度が伺えます。
亙氏:最初に出てきた案は非常にふんわりとしたものだったので、私の方で注文を出し止めてくれと言いました。そもそも禁書の世界ってキャラも多いし、勢力関係も複雑じゃないですか。なので、その実態が把握できるような内容がほしかった。でも、Wikiに載っているようなのがコピペされているだけだったりするとがっかりでしょう。「これさえあれば、俺らは鎌池さんの頭の中が分かるんだ!」というようなものでないと、手に入れたくはならないよと。
これだけたくさんの小説を書かれていて、読者的にも全体を把握しかねている禁書の世界を、それこそ鎌池さんに直接インタビューして、そこで引き出したことを全部しっかりまとめあげれば、それを紙に刷ってみんなで共有するのは意味があると思う。
そういうものであれば僕も欲しいし、みんなだって欲しいでしょうという話をして、今回の限定版として検討することになりました。限定版は価格がかさみますけれども、その価格を払うだけの価値のあるものであれば買う人は買いますし、それは何かと言えば、これはもう鎌池さんの頭の中しかないだろう、と。
――それは確かに一人の禁書ファンとして欲しいですね。今までみなさんが鎌池さんの頭の中を覗こうとして中々できなかったものが、ひとつのかたちになるだけでも気になります。
亙氏:禁書×バーチャロンという、この企画が最初にお披露目された時に、「これって誰得なの?」と散々言われてきているのですが、僕らは禁書の一読者として、禁書を盛り上げるためのお役に立ちたいんです。ですから、限定版を作るということになった時でも、なんとなくな作りで手を抜いてほしくないんですね。それこそ、禁書ファンが一番欲しいものが出るようなな流れをつくることがご奉公だと思うんですよ。禁書側の人たちにとって、我々は変な闖入者というわけではなく、禁書を盛り上げていくお手伝いをすべく名乗りを上げた者であり、責任を負っているつもりです。怖がらずに付き合ってください。
――24日にもステージも予定されていますが、そちらについての見どころなどあればお聞かせください。
亙氏:井口裕香さん(インデックス役)、佐藤利奈さん(御坂美琴役)を迎えたステージになりますが、21日のステージがどちらかと言えばバーチャロン側だったので、24日は禁書側から見た時に、このゲームのどういう点が面白いのかを紹介したいと思います。一番分かりやすいのは、鎌池さんの書き下ろしのシナリオが、おなじみの声優の皆様によって演じられ、フルボイスで楽しめるというところですね。そのあたりがどうなっているのか、期待していただきたいです。
この辺の片鱗をうかがわせる要素として、今回試遊できるチュートリアルモードでは小萌先生が手取り足取りくれています。小萌先生はまったく容赦がなくて、執拗に喋りまくり教えまくってくれています。ストーリーモードでもそんな感じで攻めていきたいと思っているので、ご注目いただければと思います。
――最後にバーチャロンファン、禁書ファンそれぞれに向けて一言お願いします。
亙氏:まず禁書ファンのみなさんに申し上げたいことは、禁書を盛り上げるために何かお役に立ちたいと思ってお仕事させてもらっているということです。先ほどの限定版の話にも代表されるように、基本はユーザー目線で、「これが楽しめないと禁書じゃないだろう」というところを愚直にやろうと心掛けています。期待していただけるとありがたいです。
バーチャロンファンの方々にとっては15年ぶりの新作ということで、全く新しいバーチャロンとして帰ってきました。正直、なかなかのものだと思いますので、無視しないで、ぜひ触ってみてください。
――ありがとうございました。