コーエーテクモゲームスの人気歴史シミュレーションゲーム最新作「信長の野望・大志」が、PS4/Nintendo Switch/PCで2017年11月30日にいよいよ発売となる。いち早く本作を体験する機会を得られたので、そのプレイレポートをお届けしよう。
まずは「信長の野望・大志」の内容を簡単に紹介しておこう。本作は戦国時代を舞台にした人気歴史シミュレーションゲーム「信長の野望」のシリーズ最新作だ。乱世の英雄・織田信長をはじめとする、さまざまな戦国大名たちを操作して天下統一を目指すというおなじみのコンセプトはそのままに、さまざまな新要素や新システムを導入。これまで以上の戦略性とボリュームを誇る作品になっているのだ。
ゲームを開始したらまずはシナリオを選択。今回も「厳島の戦い」「川中島の合戦」など年代順にさまざまなシナリオが用意されていて、そのシナリオの年代から始めることができる。例えば「厳島の戦い」を選ぶと青年時代の織田信長で開始となるが、「天下布武」を選んだ場合は勢力を美濃に広げて上洛をうかがう時期の織田信長でスタートとなるわけだ。もちろん、信長以外の大名を選択することも可能。武田、上杉、北条といった、ある程度の勢力を持つ大名を選んでもいいし、大河ドラマになった井伊家のようなほとんど領土を持たない小大名で始めるのもアリだ。
早期購入特典で手に入るシナリオ「次郎法師直虎」は井伊直虎が領主となったところからスタート。 勢力圏内に城はひとつだけで周囲はすべて強国という厳しい状態からの開始となるので、 大河ドラマで描かれた直虎の苦闘を追体験できる。 |
「河越夜戦」のシナリオも存在する。このシナリオは織田信長が家督を継承する前の出来事なので、 スタート時に選択できる武将に信長は含まれていない。 |
武将の特性を強く打ち出した「志」システム
ゲームの基本方針は従来の「信長の野望」とまったく同じだ。内政で金銭や兵糧を蓄え、兵を集めて軍事力を強化。合戦に勝利して領土を広げていく。当然、まずは内政に力を入れることになるのだが、序盤ですべきことは非常に限られていて、いたってシンプル。「農業」に関する指示は季節ごとに1回ずつ年4回で、さまざまな「方策」を実行できる「評定」も3カ月ごとなので、どんどん進めていくことができる。シミュレーションゲームはスタートからやることが多く、初心者には少し敷居が高いと思われがちだが、本作はそんなことはまったくなく、かなりとっつきやすいと言えるだろう。
筆者はシミュレーションゲームをプレイする場合、序盤を軽くプレイして大まかにコツを理解したところで再プレイすることが多いのだが、序盤からやることがやたら多いと、やはり少し面倒臭く感じられることがある。その点、本作は本当にサクサク進むので気軽にプレイすることができた。
とはいえ、「信長の野望」ならではの高い戦略性や奥の深さは健在。いろいろな新要素が取り入れられ、プレイの幅はさらに広くなっている。特に注目すべきは新システムの「志」システムだ。本作に登場する大名や武将たちには、それぞれの生き様や特性を表した「志」が設定されており、それらの特性を活かすことで、天下取りを有利に進められるようになっている。
例えば、織田信長の「志」である「天下布武」は軍事面において足軽や鉄砲隊を強化しやすく、経済面では後述する商圏から得られる利益が大きくなっているが、「農兵が納める兵糧が減る」「商圏の独占ができなくなる」という難点がある。このように選んだ大名の「志」によってそれぞれメリットとデメリットがあり、それらを踏まえた戦略が求められるというわけだ。
ちなみに、これらのメリット・デメリットの設定はなかなかに巧みで、「志」によるメリットを活かしたプレイをしていると北条氏康なら農業を中心とした内政重視になり、島津義弘なら好戦的な進め方になる。自ずと史実におけるその武将らしいプレイスタイルになるので、歴史ファンなら「おおっ」と思うことだろう。
「志」によるメリットは6つ、デメリットは2つで、条件をクリアするとオープンするものもある。 |
北条氏康は農兵を確保しやすいが、十分な兵糧収入が確保できないと「民忠」が下がりやすいなどのデメリットがある。 |
国力を左右する「商圏」と「評定」「方策」
「商圏」システムもなかなか面白い。「商圏」とは商業の拠点となっている経済圏のことで、各地に点在するこれらの「商圏」に進出することで収入を増やしていくことになるのだ。他勢力の商圏に進出することも可能だが、そのためにはその商圏を勢力下に置く大名と外交を通じて通商を結ぶ必要がある。つまり、経済と外交が密接に絡んでおり、商業を充実させるには隣国との外交関係にも気を配る必要があるというわけだ。
また、商圏には「資源」が存在するものがあり、たとえば「馬産地」のある商圏に多く進出すれば軍馬の相場が下がり、「商業港」や「貿易港」のある商圏に多く進出した場合は鉄砲や軍馬の購入量が増えるなどのメリットがある。自国の強化に欠かせない要素のひとつなので、各商圏から得られる収入はもちろんだが、資源にも注目する必要があるだろう。
内政において、もうひとつ重要になるのが3カ月ごとに行われる「評定」だ。評定では家臣の意見を3つ採用する。採用した意見に応じて「施策力」がポイントとして追加される。得られるポイントは農業、商業、軍事、論議の4種類で、これらのポイントは後述する「方策」の実行に使用できる。また、一部の意見には「施策力」は多少劣るが「部隊士気向上」「親善効果上昇」といった「意見効果」が付いている場合がある。この効果は次の評定まで持続されるので、内政重視のときは内政に効果のある意見が付いているもの、合戦を行うときには軍事に効果のある意見が付いているものを選ぶといい。
「方策」は評定で獲得した「施策力」を消費することで実行できる政策のようなもので永続的な効果が得られる。「施策力」と同じく農業、商業、軍事、論議の4種類に分かれていて、兵糧消費量を抑える「小荷駄隊」や外交交渉有利にする「交渉術」など種類や効果はさまざま。どれを実行するかはまったくの自由だが、やはり4種類をバランスよく実行していくのがセオリーになるだろう。
他にも各拠点から兵を集めて兵力を増やす「募兵」のほか、城の改修・築城や武将の配置転換、取引による軍馬や鉄砲の購入など、年月を進めていくにつれて、やるべきことはどんどん増えていく。このあたりはいつもの「信長の野望」と同じだが、序盤がシンプルでじょじょに操作に慣れていくことができるので、ほとんど苦にはならないはず。むしろ、いろいろなことができるようになって、さらに楽しくなっていくことだろう。
戦い方次第で数の不利も覆せる戦術性あふれる合戦
こうした内政も面白いが、「信長の野望」の最大の醍醐味といえばやはり「合戦」に尽きるだろう。「大志」では全国のマップが細かな「郡」に分かれていて、これらの郡が戦場になる。まず、部隊の行軍ルートを決め、目標の「郡」に向かって進軍を開始。行軍中に敵軍とぶつかると、その「郡」で合戦となる仕組みだ。
各郡にはそれぞれ「属性」や「地形」などが設定されているが、もっとも重要になるのが「広さ」だ。「郡」はそれぞれ「広さ」によって兵力の上限が設定されていて、開戦時にこれを超える兵力を投入することはできない。例えば、自軍が8千で敵軍が2万だとしても、上限が8千の「郡」に誘い込むことができれば、ほぼ同数での合戦に持ち込めるわけだ。
実際、今回のプレイで敵主力が上限6200の守備側有利の郡にこもってしまっため、こちらは大軍を展開することができず、かなり手を焼かされたことがあった。逆に言うと自軍が国力の劣る側でも、戦い方次第で十分に逆転が狙えるということ。それだけに「どこで戦うか」が重要になると言えるだろう。
では、大軍を擁してもあまり意味はないのかと言えば決してそんなことはない。ほぼ同数で戦った場合、よほどまずい戦い方さえしなければ、たとえ敗退したとしても相手の兵力をある程度は減らせる。そこに新たな部隊を投入すれば、今度はこちらが多勢になるので、一気に勝利を狙うことができる。従来のシリーズと同じく、より多くの兵力を用意することが勝利の近道であることに変わりはないのだ。やはり「戦いは数」なのである。
部隊同士がぶつかると「決戦」画面へと以降する。「決戦」では各部隊に命令を出す「命令フェイズ」と、命令に従って部隊がオートで動く「進行フェイズ」の2フェイズを交互に行っていくことになる。画面の左上には「戦況」ゲージが表示されていて、このゲージを青一色にするか、敵の総大将部隊を撤退させれば勝利だ。
面白いのが開戦時点では敵部隊が未発見状態であるというところ。敵に見つかっていない部隊で攻撃を仕掛けると「奇襲」成功となるので、奇襲用の伏兵部隊などを用意しておきたいところだ。もちろん、こちらが奇襲をかけられる場合もあるので、合戦が始まったら全方位に気を配っていち早く敵を見つけるようにしたい。
「いかに敵の“士気”を削るか」も重要な要素だ。各部隊にはそれぞれ「士気」を表すゲージが表示されていて、これがゼロになると「潰走」状態となって部隊を立て直すまで一定時間操作不能になる。この状態の部隊がいると、かなり戦いが不利になるので、士気が減ってきた部隊はいったん後退させて回復をはかるなどの処置が必要になるのだ。
実際、筆者は初めての合戦において兵力で圧倒的に勝っていながら、この「士気」にほとんど気を配っていなかったため潰走状態になる部隊が続出し、最後は何とか勝利できたものの、あわや敗北というところまで追い込まれた。勝敗を分ける大きなポイントになるので覚えておくといい。
「挟撃」もかなり有効。たとえ個々の部隊を少数でも 前後左右から挟み撃ちにすることで、かなり相手の士気と兵数を減らせる。 |
決戦中には武将たちのさまざまな提案を実行することも可能。 これらの提案を駆使することで戦況を覆すことも可能だ。 |
もうひとつ合戦時に気をつけたいのが兵糧だ。合戦における兵糧の消費量はかなり多く、大軍を動かすとあっという間に使い切ってしまう。戦いが長引くと民の忠誠度を表す「民忠」も下がっていき、一揆などが起きる危険もあるので、相手の拠点をある程度奪ったら、いったん和睦して時期を見て再び攻めるといった柔軟な対応が求められるだろう。
実は筆者は「信長の野望」をじっくりプレイするのは久々で、今年の東京ゲームショウで試遊版をプレイした際に「ずいぶん変わったなあ」と、ちょっと驚いてしまったのだが、それでもシリーズの本質はしっかり踏襲されていると感じられた。ことに合戦の部分は戦略性が高く、「信長の野望」のファンなら大いに楽しめるのではないだろうか。もちろん、史実を踏まえたイベントもふんだんに盛り込まれており、歴史ファンもハマること間違いなしだ。1週間後に迫った発売日を期待して待とう。