エレクトロニック・アーツが2017年11月10日に発売したPS4/Xbox One/PC用ソフト「ニード・フォー・スピード ペイバック」のプレイインプレッションをお届けします。
「ニード・フォー・スピード」シリーズといえば、日本では最初「オーバードライビン」というタイトルで登場し、ボク自身は1994年発売の3DO版「オーバードライビン」と1996年発売のプレイステーション版「オーバードライビンDX」をプレイしているのですが、当時はレースゲームがめっぽう苦手だったため、全然勝てず、投げ出してしまっていました。
「オーバードライビン」のパッケージ裏面を見るとスピード違反の切符を切られている画面があり、「オーバードライビンDX」に収録されているムービーを改めて見てみると警察に捕まって逮捕されるシーンがあるため、ゲームがうまければあの頃から現状の「ニード・フォー・スピード」シリーズに通じる内容を経験できたのですが、下手だったため普通に負けるだけで、ワルを気取ることができませんでした。
日本で初めて「ニード・フォー・スピード」と名乗ったタイトルは、2003年に発売された「ニード・フォー・スピード アンダーグラウンド」なのですが、当時のボク自身はなかなかレースゲームに食指が動かず、アンダーなグラウンドに戻って来れたのは2011年に発売された「ニード・フォー・スピード ザ・ラン」でした。アメリカを縦断しながら繰り広げられるレースの中に、警察の追跡を逃れるシーンもちらほらとみられ、ドラマチックな演出の中で自然と「ニード・フォー・スピード」シリーズの魅力に入ることができました。
その後も多くの機種向けに発売されている「ニード・フォー・スピード」シリーズなのに、ボクの場合は主にプレイしたハードがバラバラで、Wii Uの「ニード・フォー・スピード モスト・ウォンテッドU」ではオープンワールドでやたらと警察に追い掛け回されてヘロヘロになり、Xbox Oneの「ニード・フォー・スピード ライバルズ」では、追跡してくる警察を吹っ飛ばしたり、逆に警察の立場で暴走車たちを追跡したりと、激しい戦いを繰り広げ、近年の「ニード・フォー・スピード」シリーズにおける、レース、オープンワールド、ドラマといったエッセンスを少しずつ吸収していき、プレイステーション4の「ニード・フォー・スピード」では、オープンワールドながら、会いに行く仲間によって違った形のレースを体験し、仲間とのドラマにどっぷりと入り込み、「ニード・フォー・スピード」の一つの完成形を見た気でいました。
さて、そのあとに登場した新作が「ニード・フォー・スピード ペイバック」なのですから、これは期待しないわけがないでしょう。というわけで、「ニード・フォー・スピード ペイバック」を早速プレイしていきましょう。
ペイバックに堕ちる
メインビジュアルによるタイトル画面はとてもかっこよく、今後のプレイを期待させてくれます。
前作「ニード・フォー・スピード」はオンライン専用だったため、プレイする前にオンラインの接続がありましたけど、今作は規約の確認と難易度の選択を終えるとすぐにゲームがはじまります。
ゲームを始めると並走する3台のクルマ。3人が和気あいあいと会話をしながらも、レースを繰り広げています。「エアフィールド」に向かう道、プレイヤーが担当するのは赤いクルマのタイラー・モーガン(通称:「タイ」)。
画面左下にはコースが表示されていて、進む道が水色ではっきりと表示されています。その水色のルートの上には時々青と白の丸があり、実際のコースにも青と白のサークルが表示されています。
このサークルがチェックポイント。ただやみくもにコースを走っていくわけではなく、このチェックポイントを通過していくことになります。チェックポイントを外れて走っても、いずれ戻されるかタイムアップ後にやり直しになるだけなので問題ありません。とりあえずチェックポイントをくぐっていきましょう。コースアウトするとかなり減速するので、無茶な走りをしなければ自然とチェックポイントを通過することになります。
ナイトロを使えば溜まっているゲージの分だけ加速でき、ナイトロの威力を確認していると、今度はコース外に飛び出す黄色いクルマにカメラは切り替わり、ジャンプ台からの大ジャンプを見せてくれます。
黄色のクルマを走らせているのはショーン・マカリスター(通称:「マック」)。プレイヤーの操作はこの「マック」の操作に切り替わります。
「タイ」がストリートレースを得意にしているのに対して、「マック」はオフロードを得意としているようで、このちょっとした時間のプレイだけでもその違いを認識できます。多少コースアウトしても快適に走るクルマ。目の前には突然、容赦なくジャンプ台が現れますが、何の躊躇もなく突っ込んで、巨大なジャンプを見せることになります。
ジャンプの着地先で合流したクルマと競ることになり、この青いクルマにカメラが切り替わります。青いクルマを走らせているのはジェシカ・ミラー(通称:「ジェス」)。
当然ながらプレイヤーの操作はこの「ジェス」に切り替わり、この時点で演出面ではちょっと無茶な運転をしそうなタイプに見えますが、基本的なスタイルは「タイ」と同じ系統に見えます。コースを走っていると、チェックポイントだけでなく、水色で表現された矢印によって、極端なカーブなどのナビをしてもらえます。
目的地に到着すると、リナ・ナヴァロが登場し、続いてメカニックのラヴィンドラ・チョードリー(通称:「ラヴ」)が現れます。
このチームでレースに参加するのかと思えば、どうやら普通にレースをするのではない模様。マーカス・ウィアー(通称:「ギャンブラー」)の扱うクルマでレースに参戦し、途中で強奪してしまおうという計画のようです。
この辺りは自然な流れで行われる行為なので、プレイヤーは自然とアンダーグラウンドな世界に足を踏み入れていくことになります。レースに参加するのは「タイ」。途中までは普通のレースのようにクルマを走らせますが、ジャンプ台で巨大なジャンプを見せた後は逃走劇へと変化します。
ナビを参考にクルマを走らせ、目的地に向かいます。しかし、このまま「タイ」の操作を続けるのかと思えば、パトカーにサイドから激突する激しい演出と共に「ジェス」が登場します。
当然ながら、ここでプレイヤーの操作も「ジェス」に切り替わり、「ニード・フォー・スピード」の醍醐味ともいえる警察とのチェイスを繰り広げることになります。パトカーをよく見るとゲージが表示されていて、クルマをぶつけることでゲージを削ることができます。パトカーの無線によると、「ジェス」のクルマは車輌破壊と追跡妨害に特化したクルマとのこと。某弱無人なふるまいで、パトカーをひっくり返しながら目的地を目指して進んでいきます。
警察の追跡をかわし、バリケードを突き破り、警察を巻いたところで再び「タイ」に操作が戻り、盗んだマシンを目的地へと運ぶと……。
メカニックの「ラヴ」が倒されていて、リナ・ナヴァロの裏切りにより、クルマを奪われてしまいます。これでチームは分解。各自逃げることになりますが、「タイ」は「ギャンブラー」の元で働かされることになり、それから6か月後、ついにオープンワールドが始まります。
ペイバックに慣れる
さて、オープンワールドに突入し、これから自由にドライブを……というのはちょっと早く、しばらくは「タイ」の立場で「ギャンブラー」の仕事を続けることになります。
ここからは極力ストーリーを省いて紹介していきますが、先のストーリーを経験することで、プレイヤーと「タイ」は自然と復讐に燃えるレーサーとして感情も操作もリンクしていきます。
「ギャンブラー」の指示により、クルマを届ける仕事をしつつも、制限時間に余裕がないわけではないので、ここらで自分にとって遊びやすいカメラを見つけておくといいかもしれません。シャイが全く画面にないドライバー視点、ボンネットが見えるドライバー視点、車体の後ろからのカメラ視点が用意されているので、方向キーの上で切り替えて一通り確認しておきましょう。
配達の依頼で走らせているクルマはかなり見栄えのいいマシンなので、車体がはっきりと見えるカメラがいいのかもしれませんけど、運転が下手でフェンスや対向車にクルマをガンガンぶつけるようだとドライバー視点の方が気にならなくていいかもしれません。個人的にはボンネットの見えるドライバー視点が好きなのですが、いずれにしても配達が終わるとそれまで運転していたのとは違ったクルマになるので、この辺りは好みにお任せします。
あとは家に戻ればこの日の仕事は終わりなのですが、実のところこのあたりからオープンワールドを自由に確認することができます。とはいえ、拠点に戻るというミッションになっているので時間に制限がありますし、コース取りによっては「逆走」表示が出てきてしまうので、普通に目標を目指した方がよさそうです。
無事家に戻って次の日になると、ついにオープンワールドでの生活が始まります。一応、「ギャンブラー」の元で仕事をするという名目があるモノの、レースに参加できるようになり、しばらくストーリーを進めると、再び「タイ」の元へドライバーの「ジェス」と「マック」、メカニックの「ラヴ」が集結し、チームを再結成。ストーリーに応じて様々なミッションをこなしていくことになります。
最初はストーリー進行に必要なミッションだけがマップにぽつんと現れるのですが、適当にクルマを走らせていくうちに、通過した道路の周辺にあるモノが追加されていきます。スタンドに入ればボコボコになったクルマを元に戻せますし、チューニングショップに入ればパーツを購入できますし、ディーラーに入れば新しいクルマを購入できますし、ガレージを購入すればキープできるクルマの数を増やした上で乗り換えられるポイントを増やすことができます。
また、適当に走っていると、マップにスピードランやジャンプポイント、看板が登録されていくので、やれることが増えていきます。スピードランでは速度、ジャンプでは飛距離に応じて星3つで評価が下り、看板は車で突き破って目的を達成していくことになります。
オープンワールド内をウロウロしているとそれなりに目的を作ることができるのですが、それでもやっぱりポイントを稼がないとクルマをカスタマイズできないため、メインとなるミッションをこなしていくことが基本になります。レースで負けてもポイントが入り、ポイントを使ってカスタマイズをできるようになるため、下手でもクルマのスペックはどんどん向上していき、あとはプレイヤーのスキルというエッセンスを少し向上させれば先に進めるようになります。
最初は「タイ」でストリートレース、「マック」でオフロードレースに挑戦していくのですが、大きな山場を一つ越えた先では、それぞれ違ったレースに挑戦していきます。
「タイ」はちょっと特殊な操作の必要なドラックレース。スタートラインでエンジンの回転数を上げてメーターを調整し、スタートしたらタイミングよくシフトチェンジをしてゴールを目指します。先に2勝すると勝利になるのですが、テクニックと共にマシンスペックがかなり重要になるため、できるだけいいクルマを用意する必要があります。
「マック」は、ドリフトでポイントを稼ぐドリフトレース。ドリフトを続けていくとポイントの倍率が上がっていくけど、ドリフトをしていないときには倍率が下がってしまうため、ナイトロで倍率をキープしながらポイントを稼いでいきます。破壊できるモノに激突する分には問題なさそうですが、壁にぶつかると倍率がリセットされてしまうため、ドリフトと同時にドライビングテクニックが必要になってきます。
「ジェス」は、制限時間内に目標を達成する運び屋のミッション。常に制限時間が付きまとい、1つ目標を達成するたびに制限時間が加算されるので、効率よく目標をこなしていくことになります。
街中を走る分には大したテクニックは必要なく、ストリートレースやオフロードレースではある程度マシンスペックを上げれば勝てるのですが、ドラッグレースやドリフトレースはかなりテクニカルな要素が重要になり、運び屋はより効率の良いコース選びが必要になるため、よりハイレベルなドライビングテクニックが要求されるようになっていきます。
ペイバックに嵌まる
「ニード・フォー・スピード」では、ドライバーが固定で、どの仲間に会いに行くかでこなすミッションが変わっていきましたけど、「ニード・フォー・スピード ペイバック」では挑戦するミッションや乗るクルマに応じて自動でキャラクターが変わるようになっています。しかし、キャラクターが変わっていることをプレイヤーは特に意識することはなく、ストーリー部分に関してはチーム全体を見る監督のような視点で目的を達成していくため、次に何をすべきか考えながらミッションに挑戦していくことになります。
全てにおいてプレイヤーのスキルが問われているし、持っているポイントを何に振り分けるかは自由なので、目標は同じでもプレイヤーによって遊び方はだいぶ変化していきます。
レースで勝った時にもらえるパーツやショップで購入するパーツはカード化されていて、あまり車の知識がなくても問題なく、大きな数値で同じマークのカードを揃えていけば、よりスペックの高いクルマにカスタマイズできます。ただ速く走りたいだけならば、クルマの構造を知らなくても大丈夫なのは大変助かります。
オープンワールドをある程度走らせていると、たくさんの看板の位置を把握していくことになりますが、この看板を突き抜けるための試行錯誤も楽しく、本当に看板を突き抜けるシーンはかなりの爽快感を味わうことができます。
そして、パーツ探しでは、マップにない道を突き進む楽しさがさらにグレードアップ。与えられたマップと全体マップを見比べて、目的地と思われる場所に印をつけてその場に近づくも、どうやったらその場にたどり着けるのかわからないときの試行錯誤は、ドライビングテクニックでもカスタマイズでもたどり着かない、地形を想像する謎解きが要求されます。
そんなわけで、「ニード・フォー・スピード ペイバック」は、オープンワールドの楽しさと、レースの爽快さと、カスタマイズの快適さと、ドラマチックな展開と、アンダーグラウンドな雰囲気を併せ持つゲームだということを十分に確認できました。
前作にあたる「ニード・フォー・スピード」では油断するとすぐにパトカーとの追跡劇が始まってしまい、逃げ回るのに一苦労したのですが、今作ではアンダーグラウンドな追跡劇は主に「ジェス」のミッションに集約されているため、オープンワールドをわりと自由に走り回れます。
また、レースで負けてもポイントを貰うことができるため、ある程度はカスタマイズを進めることも、ディーラーで新しいクルマを購入することもできます。下手でもオープンワールドを満喫していれば、いつかはストーリーが進めるはずだし、難易度を落とす決断をすれば、さらに目的を達成できる可能性は上がります。これまで「ニード・フォー・スピード」シリーズの世界観に浸りたいけど難しそうに感じていた人にとっては、きっと丁度いいスタート地点になるゲームだと感じました。
「ペイバック」を「報復」や「復讐」と捉えると考えるとちょっと怖く感じるかもしれませんけど、「タイ」たちのチームは大変魅力的なので、ぜひたくさんのミッションをこなした先にある「ペイバック」、「見返り」や「報酬」を目指してオープンワールドを走り回りましょう。当面はヤツが悔しがる姿が「報酬」だったりしますけど。あれっ? これは「報復」だったかな??
プロフィール
酒缶(さけかん)/ゲームコレクター
15000種類以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。「東京エンカウント弐」にゲームアドバイザーとして協力。関わったゲームソフトは3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」「謎解きメイズからの脱出」など多数。価格コムでは、ゲームソフトのプロフェッショナルレビュアーを担当している。
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