発表された当初から、どんなゲームなのかふんわりとした情報しか伝わってこなかったため、逆に興味を持ってしまった「がるメタる!」。今回、DMMGAMESさんからパッケージ版のソフトをご提供いただきまして、そのインプレッションをお届けします。
メタルといえば、ヘヴィメタルの略語。ヘヴィメタルといえば、かつては厳つい男たちの迫力のある激しい音楽のイメージが強かったのですが、最近はBABYMETALの登場もあり、カジュアルに楽しめるようになったように思います。
かつては異常な興奮状態なのではないかと思っていた頭を上下に振るヘドバンという行為も、ボクの中では音楽を楽しむ一つのアクションとして定着しつつあり、厳つい男だけではなくどんな人でもヘドバンをやってもいいのだと、認識しつつあります。
BABYMETALの延長線上には、女性同士のゆるふわなビジュアルの女性たちのバンド活動も容易にイメージできるため、今作のパッケージのキャラクターを見ても、容易に受け入れることができました。
とはいえ、やっぱりメタルはサウンドが重要なので、ゲームを始めるともっと違ったイメージがあるのでしょう。外から様子をうかがっていても、何もわかりません。それだったら、ゲームの世界に飛び込んでしまえば、きっと何かがわかることでしょう。
というわけで、早速、「がるメタる!」をプレイしてみることにします。
「がるメタる!」は、Nintendo Switch向けに発売された、メタルドラム×ジュヴナイルSFコミック。これまでに聞いたことがないジャンルに若干戸惑うところはありますが、ゲームを始めるといきなり漫画によってストーリーが進んでいきます。
舞台は東京……
武蔵野市吉祥寺。東京の方からすると、ちょっと都心から離れた表現なのでしょうけど、横浜人のボクからしたらかなりの都会の出来事に見えます。
ストーリーを要約すると、東京都武蔵野市吉祥寺なので、異星人だってやってくるじゃないですか。
そんでもって、異星人にとってメタルの音楽って正気を失う大変な音楽なんですよ。
これ、ちょっと地球人ムリー、って感じなので地球侵略をするから、そこの男子高生と女子高生は地球の代表として挑戦を受けてもらうけど、代表は一人なのでよろしく。
という感じで、女子高生の体の中に男子高生の精神が入り込んで、しかし女子高生の精神もその体の中にあるけど、体をコントロールできるのは男子高生だけ、という複雑な状況での生活が始まるわけです。なんか、吉祥寺ならば納得です。
この学校生活をそつなくこなすのはコミックの中の主人公なので、プレイヤー自身は何の心配もありません。そのあたりのドタバタはしっかりとコミックでお楽しみください。プレイヤーがやるべきことは、スマホのやり取りと放課後の生活、そしてドラムの演奏になります。
一応、キャラクター紹介をしておくと、男子高生は……誰だっけ? 名前はともかく、女子高生の中に入り込んでしまうので、ビジュアルは特に覚えておかなくても問題ありませんけど、こんな人物になります。
そして、女子高生の名前は星乃凛子。メタル部の部長でドラム担当。ゲームの大半の部分で主人公のビジュアルはこの子が担当していて、自分の体の中に存在する精神なのに、体を動かすことができないという立場にあります。
バンドメンバーも個性的で、シンセ担当の潘水キアは、ネトゲとSF映画鑑賞が趣味で、マッドサイエンティスト的な側面があって、彼女がしゃべり始めるとスルー案件と化します。
ベース担当の黒薔薇院摩丹は、黒薔薇院コンツェルンの令嬢のため、かなり世間知らずなイメージがある反面、ジャンクフードにハマる側面もあるようです。
サイドギター担当の倉太恵理依は、身長180cmの長身で無口。対人恐怖症があり、普段はメガネを掛けているけど、ライブ中のみメガネなしの素顔を見ることができます。
リードギター担当の新取椎美は、見るからに素行不良で、クラスの優等生・久米田里香からいつも注意を受けていますが、ビジュアル的にもメタルに一番熱い人のようです。
この5人のバンドの力で異星人から地球を守ることになりますが、ちなみにその異星人はこんなビジュアルになります。
まぁ、異星人に関しては、いろいろな異星人が出てきますけどね。
地球侵略を狙う異星人と戦うバンドメンバーは一クセも二クセもあるヤツばかり。その中で、プレイヤー自身は星乃凛子の中に入っている高校生となり、自らも名ドラマーになるべく頑張らなくてはなりません。
しかし、そんなにのんびりしてはいられません。数日のうちにやってくる異星人と対抗すべく、ドラムの練習をするのは放課後のみ。当然ながら、部室で練習をすることはできますけど、それだけではありません。
星乃凛子ならば音楽の感性もバッチリですけど、主人公及びプレイヤーには音楽の感性はありません。また、星乃凛子ならば他のメンバーと友好的ですけど、主人公及びプレイヤーはまだメンバーとの間に深い溝があります。そのため、数日のうちに、ドラムのテクニックだけでなく、音楽の感性を磨き、メンバーとの友好度を高めていかなければなりません。
とりあえず女子高生の本分ともいえる授業部分はざっくりと割愛し、授業中にこっそりと行われるスマホによるSNSのやりとりでその日の行動が始まります。
このやり取りでは、必ず2択が一つ存在し、その選択に合わせて、この後の行動の際にイベントが一つ発生するようになっています。
続いて、放課後になると、スタミナを使って行動をして、感性を伸ばしていくことになります。
用意されている感性は5種類あります。「モラル」はリズムの正確さ、「カルト」は隠れた裏譜面を叩けば加点、「ガッツ」と「パッション」は異星人の攻撃頻度を減らし、「アクティブ」は異なるリズムを組み合わせてコンボを出せば加点されます。
ただ上げたい感性を上げるだけであれば何の問題もありませんけど、何をこなしていくかも重要になります。どうせ感性を上げるのであれば、同時にメンバーとの友好度も高められればラッキーです。
放課後の行動にはスタミナが設定されていて、主人公のスタミナがなくなるとその日の行動が終わりになります。行える行動は、「部活」「バイト」「遊び」「その他」の4種類。それぞれの行動の中に、さらに細分化された行動があるのですが、どの行動も複数の感性に影響を与え、時には減る感性もあるため、悩むことになります。
「部活」には、一人でいろいろなリズムを試す「個人練習」と、異星人と戦う曲のバンドメンバーと一緒に練習する「合同練習」があるのですが、1回演奏するごとにスタミナを消費するので、緊張感が半端ありません。
一方、「バイト」「遊び」「その他」はそれぞれ感性の変動があるのですが、できるだけメンバーとの友好度を上げたいため、メンバーがいる場所を狙ってこなしていきます。友好度が上がるとそのメンバーのイベントが発生するので、イベントが出たら逃さず見ておきましょう。
しかし、放課後の行動はスタミナだけで決めてしまってはいけません。イベントを実行する際に「残り時間」というパラメータがあることをしっかりと覚えておきましょう。通常の行動のスタミナ消費量は5~10で、スタミナのフルの状態が40なので、スタミナを消費する行動を繰り返していくと8回以内の行動ですべてのスタミナを使い切ってしまいます。しかし、「残り時間」の初期状態は11(単位は時間)になっています。さて、これはどういうことでしょう?
放課後のバンドメンバーの行動は、友好度によって変化することはあるのですが、基本的にはタイムテーブルに沿って変化していきます。そこで、「その他」の行動にある「ぼーっとする」を選ぶと、スタミナを消費せずに時間を1つだけ進めることができます。
これに気付かないと、早い時間で行動を切り上げて次の日もしくはライブへと突入してしまいます。適度に「ぼーっとする」を活用すると、いつもは見なかった場所とメンバーの組み合わせが発生することがあるかもしれません。
コミック部分の演出の中で、異星人からライブの日程が通知されますが、その日程は放課後マップでは画面右上に表示されます。
この日数が経過すると、ついにライブの開催となります。とはいっても、観客のいるライブではなく、異星人を撃退するためのライブ活動ですが、ここでは本当にフリーで演奏することになります。
ライブではしっかりとしたドラムの演奏が必要ですが、それほど厳密な演奏は求められていません。Joy-Conを振るだけなので、演奏自体はドラム演奏の経験がなくても簡単にできます。右手を振るとキックドラム、左手を振るとスネアドラム、両手を同時に振るとシンバルの音が鳴り響くため、タイミングよくそれぞれの音を鳴り響かせて、リズムを刻んでいきます。
一応、ドラムの演奏はプレイヤー自身の感性に任されているので、適当に演奏していればそれなりにメタルゴンを稼ぐことができます。このメタルゴンが既定の数値を突破すると異星人が画面に向かって吹っ飛び、ストーリーを先に進めることができます。
実際にプレイしてみると、むやみやたらとJoy-Conを振るだけではどうにもなりませんし、ときには異星人の妨害にあって、演奏ができなくなることもあります。
少なくとも、リズムだけは意識してJoy-Conを振らないとメタルゴンを稼ぐことができず、逆に演奏中に何度か正しいリズムを刻むことができれば、それだけでクリアすることができます。
さて、ここでポイントとなるのが、どこで正しいリズムパターンを学んでいくか、ということになりますが、このリズムパターンの学習も放課後の行動に掛かっています。
放課後の行動の中に「部活」があり、「部活」にはいろいろなリズムパターンを学ぶ「個人練習」と、メンバー全員でライブの曲を練習する「合同練習」があります。「個人授業」はスタミナを5消費し、「合同練習」はスタミナを10消費するため、各メンバーとの友好度やイベントの発生を考えると、何度も実行するのが厳しいですし、そもそも練習とはいっても曲を1回通しで練習すると、それだけでその回の行動が終了してしまうので、なかなか実行しにくいのですよ。
そこで、楽してクリアできる方法をお教えします。ストーリーのクリアに必要なメタルゴンはそれほど大きくないので、とりあえず1つのリズムパターンを実行できれば、最低限のメタルゴンを稼げます。そこで、ライブ当日の行動でスタミナを5だけ残した状態で、最後に「個人練習」を実行し、その回のライブに適したリズムパターンを把握しましょう。
リズムパターンを選んでしまうと、あとは楽曲を練習してそのままライブに突入してしまうため、いくつかのリズムパターンにカーソルを合わせた状態でエア練習。なんとなくパターンを把握した状態で、リズムパターンを1つだけ練習した上で、そのままライブに突入します。
ライブでは正しいタイミングでリズムパターンを繰り返していけば、とりあえずクリアをすることができることでしょう。まぁ、この場合は、厳しいコメントをいただいてしまうことになりますが。
ちょっと断定してしまうのは危険なのですが、とりあえずクリアしてしまえ、というのがこのゲームの正しい楽しみ方。なぜならば、クリアすると「Free Play」にその楽曲が解放され、さらなる高メタルゴンを目指した演奏を楽しめるようになるからです。
ストーリーを終了させた後もまだまだメタル魂を見せつけるチャンスがあるので、ひとまず地球を守るために、今ある力と知恵を振り絞って、メタルを夜空に鳴り響かせましょう。
女子高生の体の中に男子高生の精神が入り込むことが常識であれば、「がるメタる!」に更新データが入り込んで、より遊びやすくなるのも常識とさせていただきましょう。
ソフトを起動するとこんなタイトル画面だったのですが……。
更新するとタイトル画面がこんな感じになりました。
2018年3月9日のアップデートによって、Joy-Conを振った時の判定方法が2つに分けられ、従来の判定方法を「ドラムモード」としたうえで、ゲーム内の初期モードとして、新しく採用された「ふりふりモード」が設定されるようになりました。
「がるメタる!」はドラムを模したリズムゲームのため、Joy-Conを振り下ろすタイミングではなく、エアドラムがあると想定して、Joy-Conを振り下ろして停止したタイミングで判定されているようでした。リズムゲームというと、大半はタイミングよくボタンを押したり、想定する楽器の操作をするため、とにかく触れるタイミングに集中すればよかったのですが、「がるメタる!」では、Joy-Conがドラムに当たったタイミングを自らのアクションで作り出さないといけない分、感覚をつかむのがちょっと難しい印象でした。
それが、「ふりふりモード」にすると、何がどうなったか具体的な理由は説明できないのですが、個人的にはよりしっくりといく操作になりました。発売当時に「がるメタる!」をプレイして、タイミングの取り方が難しいと感じた方は、ぜひ再プレイしてみることをお勧めします。
また、ストーリーをクリアしていくと、クリアした範囲の楽曲を「Free Play」で自由に演奏することができますが、更新によってタイトルメニューに「Practice」が追加され、リズムパターンの練習ができるようになっています。ここでは、ストーリー内の行動で実行していた「個人練習」や「合同練習」と違って、スタミナを消費しなくてもプレイできるため、ここでしっかりと練習した上で「Free Play」での高メタルゴンを目指しましょう。まぁ、ゲーム内のスタミナを消費しなくても、プレイする本人はかなりスタミナを消費しますけどね。
ここまでJoy-Conを振るゲームという印象付けをしてしまいましたけど、ボタン操作にも対応していて、ボタン操作で演奏すると、このような画面での演奏になります。
Joy-Conを振る操作に比べると、より自由にドラムの演奏ができますが、操作するボタンの数が増えているため、単純に難しくなっています。また、携帯モードでは画面を直接タッチする操作にも対応していて、その際には上の写真のボタン表記部分がないような画面をタッチして演奏することになります。
収録楽曲はクラシック曲のアレンジの様で、どこかで聴いたことがあるような気がするけど、それでもメタル魂を感じることができる、素敵な楽曲に仕上がっています。
リズムゲームというと、正確な演奏をしなくてはならない呪縛に囚われてしまい、高レベルプレイヤーの見せるプレイに圧倒されながら、自分にはどうしても無理と諦めがちでしたけど、「がるメタる!」は、楽器を演奏するのは楽しい、というレベルから徐々にリズムパターンを覚えていくことで、音楽の楽しさを実感できました。
最初の勘所を掴めないでいると、ストーリーを進めることができなくて困ることがあるかもしれませんけど、その際には先に書いたような(ちょっとズルい)攻略法を使いつつ、まずはストーリーをクリアしちゃいましょう。クリアしてからがメタラーにとっての本当の勝負ですから。
プロフィール酒缶(さけかん)/ゲームコレクター15000種類以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。「東京エンカウント弐」にゲームアドバイザーとして協力。関わったゲームソフトは3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」「謎解きメイズからの脱出」など多数。価格コムでは、ゲームソフトのプロフェッショナルレビュアーを担当している。
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