発売以降、対応タイトルがあまり登場していなかったPlayStation VRシューティングコントローラー。このコントローラーでがっつりとプレイできるゲームを待ち望んでいたところ、ついに「Bravo Team」が発売されました。パッケージ版のソフトをお借りすることができたため、インプレッションをお届けします。
PlayStation VRが発売されてから2年弱。個人的には、2015年の東京ゲームショウでいくつかのタイトルを体験させていただき、2016年に「東京エンカウント弐」の収録現場で中村悠一さんと杉田智和さんがプレイしているのを見て早く購入したいと思ったモノの、発売後のあまりの人気で全く購入することができず、我が家にPlayStation VRがやってきたのは2017年になってからという、スローペースのVR体験となってしまっていました。
当時は「Farpoint」の発売時期だったため、ラッキーなことにPlayStation VRシューティングコントローラーも同時に購入することができ、大きな荷物を抱えてワクワクしながら家路についたのは大変いい想い出。それゆえに、PlayStation VR発売時のブームには完全に乗り遅れてしまっていたのですが、その後はハイペースでいろいろなタイトルをプレイさせていただいています。
若干ネガティブなことを書いておくと、通常の3Dのゲームと比べると、PlayStation VRのゲームは酔いやすい印象があります。そこで、参考までに個人的なPlayStation VRとVR酔いの関係を書くと、「PS VR WORLD」に収録されている、飛んだ先の地形に合わせて天地が常に変化するシューティングゲーム「Scavengers Odyssey」は3分くらいのプレイごとに休憩が必要で、360度をぐるぐると回りながら戦っていく全方位シューティングゲーム「スターブラッドアリーナ」は対戦中に目をつむる休憩タイムを作らないと戦い抜けない体たらくな状況。
おそらく、その場で見回すタイプのゲームは特に問題なく、横回転に対する適応能力もそこそこあるのですが、縦方向の回転にめっぽう弱いようで、結構頻繁に移動と見まわしが必要なゲームであっても「Farpoint」に関しては、特に酔うこともなく普通に楽しめています。
そんなPlayStation VR専用タイトルのプレイ状況の人間は「Bravo Team」を楽しめるのか。大きな期待を膨らませながら、早速プレイを開始して見ましょう。
「Bravo Team」は、PlayStation VR専用のシューティングゲーム。プロローグを始めると、国境検問所に向かう護送車の中。VRヘッドセットを装着している頭を動かせば車内を見回すことができ、手に持っているシューティングコントローラーを動かせば、ゲーム内で手に持っている銃が動きます。
「オズの魔法使い」をモチーフにしたコードネームに文句を言いながら通信でやり取りしている同僚のやり取りと手元の武器にギャップを感じながらも、ゲームの世界観に入っていきます。
プレイヤー自身は、後部座席に座っている1人の兵士。目の前には女性の要人がいます。この女性はモルデオという国の大統領で、現在、この大統領を護衛する任務についています。大統領が娘の写真を見せてくるなど和やかな雰囲気。
ところが、大統領が電話に出た後、ちょっと様子がおかしくなり、爆音とともにどうやら気絶した模様。再び視界が開けてくると襲撃犯の姿が見え、頭を動かせば周りの状況は見回すことができるのですが、コントローラーを持つ手を動かしても銃は反応してくれず、反撃することはできません。
何の抵抗もできないまま大統領がさらわれてしまい、その後、遠くから銃声が鳴り響きます。どうにか生き残った兵士は3人のみ。大統領が暗殺されたことを知り、これからこの場からの脱出を目指すことになりますが、突如1人が頭を撃ち抜かれてしまいます。
残りの2人による即席の「ブラボーチーム」による生き残りをかけた戦いが始まります。最初は国境を目指す橋の上という、移動方向がはっきりとわかり、基本的には車を物陰にするようなステージ構成。
続いて、橋から降りると裏通りを通って街を突き進んでいきます。
更に、舞台は警察署へと移っていき、屋上を伝って官邸へ……。
果たしてこの戦いの先に何が待ち構えているのか……。
「Bravo Team」は、ファーストパーソンシューティング(FPS)のスタイルをしたゲームですが、普通のFPSとはちょっと違います。
FPSといえば、常に主観的な視点で物事が進行していくイメージですが、今作でプレイヤーがやるべきことは、カバーアクション及びシューティング部分のみ。移動に関しては、移動先を指定するとオートで進行することになります。
例えば、このような状況で物陰に隠れているとします。
銃身を向けた方向に移動できる場所があれば、目印アイコンが表示されます。
隠れた状態で銃身を向けても移動できるところがない場合は、身を乗り出したり、銃だけを突き出すような体勢を取ることで、移動できる場所を探すことになります。
目印アイコンが表示されているときに×ボタンを押せば、その場まで移動することになるのですが、この移動シーンは客観視点で進行することになります。
そして、移動が終わると、改めてカメラは主観視点に戻ります。
移動先の近くに敵がいて、移動先のアイコンにナイフが表示されているときは、ステルス攻撃をすることができます。
ステルス攻撃が成功すれば、周辺に気付かれずに敵を倒すことができるため、無駄な銃撃戦を避けることができます。
移動がオートなので安全な場所を指定していれば、常に安全な状態で移動することができますが、戦場は常に安全であるわけがありません。さんざん移動できる場所を探した結果、敵に囲まれてしまうような場所にうっかり移動してしまうようなこともあります。そんな時は、移動処理が終わった瞬間にプレイヤー自身が瞬時に後ろを向いてもいいのですが、右スティックを下に入れるだけで視点を180度回転できるようになっているので、戦いが激化してくると大事な操作になってきます。
マップ内には適度に弾の補充ができる場所があり、ステージが進めば新しい武器も用意されています。
ブラボーチームは常に2人で戦うため、オンラインのプレイヤーかCOMがパートナーとして一緒に戦ってくれます。その仲間に対しては、左スティックの操作一つで指示を与えられるようになっています。また、プレイヤー自身が銃弾を受けて倒れてしまっても、一定時間以内に仲間が助けに来てくれたら復帰することができます。
この、倒れてから仲間が助けに来るまでの間は、移動ができなくなるのですが、拳銃による攻撃はできるため、助けに来る仲間の援護をするなど、多少は貢献ができるようになっています。
当然ながら、プレイヤーがCOMの体力を回復させることもできますが、今回のプレイではあまりにもプレイヤーが下手なため、そのようなシチュエーションは皆無でした。ちなみに、二人ともやられてしまうと全滅になり、最終チェックポイントからの再開になります。
ゲームの概要は何となく伝わったかと思いますが、実のところ、このゲームの一番のポイントは、プレイヤー自身の動作がゲームにしっかりと反映されるところにあります。
物陰に隠れてカバーアクションをする際、周りに敵がいないか物陰から慎重に周りを確認してみたり、立ち上がって大胆に攻撃をしてみたり、身を屈めて体勢を低くしながら手だけを出して攻撃してみたりと、カメラの範囲内であればプレイヤー自身の動きはかなり自由で、実際に体を動かさないとうまいことゲームが進みません。
スナイパーに遠くから命を狙われることもあるので、スコープを使ってしっかりと狙いを定めてこちらもスナイパーになり切って対抗することもできます。
先にスティック操作で視点を180度回転できることは触れましたけど、当然ながらプレイヤー自身がその方向に向くこともできるため、プレイヤーが激しく動けば動くほど、ゲームの中でもプレイヤーの視界が開けてきます。
家庭用のVR専用ゲームというと、VR系施設のアトラクションに比べると、視覚を重視する傾向にありますが、「Bravo Team」に関しては、体を動かすことが重要で、PlayStation VRでより高度なVR体験ができるモノと確信が持てました。
これまでPlayStation VRのゲームは座ってプレイすることが多かったのですが、「Bravo Team」に関しては、身を屈めたり、物陰から向こうを見たりする際に、プレイヤー自身が上下左右に頻繁に移動しないとうまく立ち回れないため、試行錯誤をした結果、片膝をついた状態でプレイを始め、臨機応変に体を動かすようなスタイルでプレイするに至りました。
当然ながら、DUALSHOCK 4やPS Move2本持ちでのプレイにも対応しているのですが、やはりPlayStation VRシューティングコントローラーでのプレイが最適で、銃を構えて撃ちまくる操作が体を動かすプレイにマッチしています。しかし、PlayStation VRシューティングコントローラーを360度振り回すようなスタイルのプレイになるため、他のVR系のゲームと比べると部屋をしっかりと片づけて安全領域を広めにとっておいた方がよさそうです。
エイムの補正がなく、PlayStation VRシューティングコントローラーの方向がいまいち安定しないのがちょっと気になりましたけど、おおらかに体を動かす体感ゲームとして、十分に楽しむことができました。
一人でプレイしているとあまり気にならないのですが、障害物に隠れるようにしゃがみながら、その障害物の上に銃を突き出して撃ちまくる姿は、きっとSNS映えしそうな面白い動作になっているはずなので、プレイ状況を写真撮影、もしくは映像として撮影してくれる相棒を見つけて即席ブラボーチームでプレイに臨むのもよさそうですよ。
プロフィール酒缶(さけかん)/ゲームコレクター15000種類以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。「東京エンカウント弐」にゲームアドバイザーとして協力。関わったゲームソフトは3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」「謎解きメイズからの脱出」など多数。価格コムでは、ゲームソフトのプロフェッショナルレビュアーを担当している。
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