ローカライズチームが感じた「Detroit: Become Human」の魅力とは―石立大介氏&谷口新菜氏インタビュー

ローカライズチームが感じた「Detroit: Become Human」の魅力とは―石立大介氏&谷口新菜氏インタビュー

担当:

PS4

ソニー・インタラクティブエンターテイメント(以下、SIE)より発売中のPlayStation 4(以下、PS4)専用ソフトウェア「Detroit: Become Human」。そのローカライズを担当した、石立大介氏と谷口新菜氏にインタビューを行った。

「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」や「BEYOND: Two Souls」など、世界的評価の高い斬新なアドベンチャーゲームを多数リリースしてきたフランスのデベロッパー、Quantic Dream(クアンティック・ドリーム)。その最新作となる「Detroit: Become Human」が5月25日にその発売を迎えた。

現在ゲームをプレイしているという読者も多いかと思うが、今回はその日本向けのローカライズを手がけた、SIEの石立大介氏と谷口新菜氏を直撃。Detroitの魅力や、ゲーム製作におけるローカライズとはどういった仕事なのかを伺うことができた。

ローカライズスタッフの視点から見た、「Detroit: Become Human」の魅力とは

――最初に、読者に向けて自己紹介をお願いします。

石立大介氏(以下、石立):ローカライズプロデューサーの石立です。SIEワールドワイドスタジオで、スケジュールや予算の管理、宣伝のサポートなどを担当しています。

谷口新菜氏(以下、谷口):ローカライズスペシャリストの谷口です。音声やゲーム内のテキストなどの翻訳を担当しています。

石立大介氏 谷口新菜氏

――お二人は、これまでどんなタイトルのローカライズ手がけられてきたのでしょうか?

石立:僕は「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」、「The Last of Us」、「ラチェット&クランク」、あとは9月7日に発売される「Marvel's Spider-Man」も担当しています。

谷口:私は「リトルビッグプラネット」シリーズや、「海賊王と最後の秘宝」以降の「アンチャーテッド」シリーズ、あとは「HEAVY RAIN -心の軋むとき-」(以下、「HEAVY RAIN」)など、基本的にSIEから発売されたクアンティック・ドリームの作品は全て担当していますね。

――本作のローカライズ担当に決まった時はどのような心境でしたか?

石立:SIEのローカライズ担当は、選ばれるというよりも、スケジュールの関係で自動的に決まったり、自分から手を挙げるということが多いので、あまり感慨的なものはなかったです。ただ、クアンティック・ドリームの作品って、すごく大胆でユニークなことをやっているんですよね、それを考えると、日本でももっと認知されていいよなという想いはずっと抱いていましたね。

谷口:私は「HEAVY RAIN」からの流れがありましたから、自分が担当するのが当然だと思っていたので。むしろ、自分以外の人にはできないだろうし、やらせたくないという想いが強かったです。

――その「HEAVY RAIN」の時はどんなことを感じられたのでしょうか?

谷口:弊社のゲームは、それまでは全年齢向けの印象が強かったので、最初のプレゼンで「いきなり子供が誘拐される」と話を聞いた時は、発売できるのかと戸惑ったのか正直な感想ですね。ただ、作品について知っていくにつれ、そうしたショッキングな内容だからこそ興味を惹かれる内容なんだという魅力も感じていました。

石立:僕はクアンティック・ドリーム作品を担当するのは「Detroit: Become Human」(以下、「Detroit」)が初めてなのですが、谷口の話を聞く限り、「Detroit」は他2作よりもローカライズ作業が大変だったようです。ただそれまで築いていた信頼関係もありましたし、日本市場に対しての理解や愛情も深く、日本だけのトレーラーや、世界初の大規模な展示を東京ゲームショウで出せたり、惜しみない協力をしていただけました。

ラッキーだったのは、「Detroit」の衣装デザインはファッションデザイナー出身の方が手がけられていて、現実に着られる前提で作られているんです。そこでゲーム中と同じアンドロイドの服を日本で作ってみたら、それがすごく好評で、リージョン間で取り合いになったり(笑)。我々の手元を離れて世界のいろいろなイベントを回り、現在はアメリカの「Detroit」にあると聞いています。

――お二人は、一般のプレイヤーよりも遥かに早い段階で「Detroit」のゲームをプレイされたのではないかと思うのですが、その際はどんな状態だったのでしょうか?

石立:僕たちがプレイした時というのは最終版の製品とは全然違う、まだまだ完成には程遠い状態でした。ただ、その時点でも基本となるゲームの質の良さというのは感じられましたね。

谷口:クアンティック・ドリームは全てのキャラクターの動きをモーション・キャプチャーするので、ゲームを形にするのがかなり早いんです。割と初期の段階からキャラクターの動きがついていることが多く、翻訳する側としてはやりやすいですね。

石立:数年くらい前のタイトルって、キャラクターモデルを作ってからアニメーションをつけるという工程が一般的だったので、初期の段階ではT字ポーズの状態で空中を平行移動するようなものが多かったです。最近はモーション・キャプチャーの普及で、初期から動きがついているタイトルが増えている印象を受けますね。

――初めてゲームの映像を見た時には、どんな感想を抱かれましたか?

石立:ゲームを初めて見たのはクアンティック・ドリームを訪問した時だったのですが、その時に見たダンテの神曲のようなシーンに衝撃を受けて。「これはすごいゲームになる」ということは感じていました。

グラフィックがすごいというだけではなく、感性に直接訴えてきてゾクゾクした感情が沸き起こってくるというか……。その1シーンの映像を見ただけで、ゲームのトーンやキャラクターの置かれた環境の凄まじさというのが伝わってきたんです。これが表現できるならすごいことになるなと。

――私も先日のメディアプレゼンテーションでプレイさせていただいたのですが、分かる気がします。芸術や文学作品にも通じる、深いテーマ性を感じたというか。

石立:そうなんです。これはどちらが優れているという話ではないのですが、超大作ゲームの面白さってどちらかというとエンタメ的で、文学や映画の面白さとは質が違うんですよね。それがゲームの良さでもあるのですが、「Detroit」に関していえば、ゲーム的な興奮もありながら、後からじわりと来る、映画や文学に通じる奥深いテーマやメッセージ性が存在しているということを、初めてみた時からずっと感じています。

――プレイヤーのちょっとした行動によって、ストーリーの展開にさまざまな変化が起きるというのも本作の特徴的な部分です。

石立:プレイヤーの行動でストーリーが変わるという構造自体は、アドベンチャーゲームというジャンルに共通した要素ですが、クアンティック・ドリームの作品が凄いのは、ただエンディングが変化するだけではなく、「こんなに使い回さなくていいの?」と心配になるくらい、ぜいたくに作られていることです。ゲーム開発のセオリーからすると、作ったアセットというのは極力使いたくなるものなんですが、本作ではゲームクリアまで遊んだプレイヤーでも、まったく見ないまま終わる展開が膨大に用意されている。

あと面白いのが、選択肢を選んだり、独特な操作性でキャラクターを行動させたりしている内に、キャラクターへの愛着が沸き、だんだんと自分自身に近いものになっていくんです。

人によっては、他のプレイヤーと近いルートを通ることもあるかもしれませんが、たとえば1章で、人質とともに立てこもった犯人とコナーが共にビルから落ちてしまう結末を迎えた時、その時のコナーが意図してその展開を作り出したのか、ただ流されるままにそうなってしまったのか、プレイヤーが何を考えて行動をさせいていたかによって、キャラクターやストーリーから受ける印象も変わって来ますよね。そうした自分だけのストーリー体験というのは、今までのアドベンチャーゲームにはない、本作ならではの要素だと思っています。

――ストーリー部分も、すごく続きが気になるような作りになっていて、つい止め時を失いそうになりそうだなと。

石立:今までのアドベンチャーゲームの物語って映画的で、最後に大きなヤマが来るような作品が多かったと思うのですが、本作のストーリーは良質な海外ドラマのようで、チャプターごとにオチやクライマックスが用意されていながら、全体のクライマックスもあるのも特徴です。そうして何度も苦楽を共にしていると、キャラクター達にもっといい結末を迎えさせてあげたいという感情が生まれ、再プレイのモチベーションが自然と湧いてくるんです。「魔法少女まどか☆マギカ」の暁美ほむらさん的な視点をイメージすると分かりやすいかもしれません(笑)。

――クアンティック・ドリームの面々との打ち合わせの際などで、印象的なエピソードや会話はありましたか?

石立:クアンティック・ドリームの社内に、「自分たちはギリシャ悲劇を作っている」という標語が掲げられていて、言葉としてかっこよくて印象に残りましたね。ギリシャ悲劇というのは、純粋な善と悪ではなく、どちらもある程度の善悪を内包した人々がぶつかり合う、悪人というものがいない悲劇なんです。彼らはそれと同じところを目指そうとしているんだなと。

あとはデヴィッド(※本作のディレクターを務めるデヴィッド・ケイジ氏)が来日したとき「こういうゲームを作っていて一番楽しいのは、プレイヤーが我々が考えてもみないストーリーの補完をしてくれた時だ」といっていたのも印象深いです。なのでプレイされた方は、「あのシーンは実はああだったんじゃないか」と想像で補完して、それぞれ自分の中の「Detroit」というものを作っていってもらえれば嬉しいですね。

――本作には、日本版と海外版の違いというのはあるのでしょうか?

石立:日本語の字幕と音声が入っている以外の変更点は一切ありません。これは谷口が担当した「BEYOND: Two Souls」の時から全リージョンでアセットを統一しようとこだわっているポイントです。リージョンにあわせて修正するのではなく、大本のコンテンツからどの国に出しても問題ない形にしようと、話し合いながら作っています。

谷口:まず、リージョンに合わせて変更するというのは、開発にとっても手間なんですよね。必要な工程が増えてスケジュールがさらにきつくなるのは、彼らにとっても望ましくないでしょうし、ユーザーも同じものが提供される方が嬉しいと思いますから。

――前から気になっていたのですが、ゲームによってはリージョンによって大幅に内容や仕様が変わるタイトルがありますよね。ああした修正の判断は、ローカライズする側が下すものなのでしょうか?

石立:基本的にCEROさんの判断になります。我々から自主的に「この内容はまずいから変えよう」と提案することはほとんどありません。プラットフォーマーとして、この作品・内容を日本でリリースすること自体が難しいと判断することはごく稀にありますが……。

ここは誤解されている部分もあると思うのですが、例えばローカライズする側が頑張ってCEROと交渉すればオリジナルに近いものを出せるようになる……というわけでもないんです。もしそんなことが起こったらCEROさんの中立性が失われてしまう。ゲーム業界としては、CEROさんが第三者的な組織として機能していると言えるからこそ、政府や自治体からの介入を防げられている面もあるんです。

――ユーザーとしては、海外と同じものが提供されるのが当然だと考える人も多いと思いますが、その規制をなくしてしまうとそもそもの発売が難しくなると。

石立:結局は、ゲーム業界の外にある「一般の」日本社会がそのコンテンツを受け入れてくれるのかどうかという問題だと思います。また、修正が必要になった場合の対応については、開発会社にもよると思います。開発会社に余裕があれば、問題のシーンのカメラアングルを変えたり素材を変更するといったこともできますが、スケジュールなどの問題でそうできない場合もありますね。ローカライズ側が「ごまかす」方法もなくはないのかもしれませんが……それは本来はあってはならないことですし、プラットフォーマーとしても許されることではないと思います。難しい問題ですね。

プレイヤーが知らない、ローカライズという仕事の裏側

――ここからは、ローカライズという仕事そのものについてもお聞きしたいと思っています。関わられてきたタイトルの中で、特に苦労したというものはありますか?

石立:やっぱり直近の記憶が一番印象深いこともあって、僕は「Detroit」ですね。

――テキストの物量についてはクアンティック・ドリームの作品についてもかなり多そうなイメージがあります。

谷口:もちろんAAAクラス(多くの予算を費やし作られるゲーム)なのである程度の量はありますが、純粋な物量で比べるとそこまでではないです。ジャンルでいうと、やはりオープンワールドタイプのRPGというのは圧倒的ですね。

石立:本作が大変だったのは、翻訳を下訳なしでゼロから谷口がほぼ一人で行うという、本来はAAA作品ではありえないような手法を採っていることですね。

あとはキャラクターがクローズアップされるカットが多いので、尺に対する音声の合わせ方がより厳密になります。例えばTPSやFPSではキャラクターの顔がよく見えないカットが多く、そうしたシーンでは最初と最後の口の動きさえあっていればいいことが多いんです。対して本作のようなタイトルだと、キャラクターが口を開いている時に音が出ていなかったり、口を閉じているのに声が出たりしていると違和感が大きいので、息継ぎのタイミングまで合わせないといけない。

谷口:いわゆるリップ・シンクですね。あとは日本語だと、否定的なニュアンスでも「はい」と答えることがありますが、その場合も英語では「NO」と書かれていることが多いです。なので台本を見て機械的に翻訳するのではなく、キャラクターの動きや表情も把握しておく必要があります。

――そうしたケースの場合、実際にゲームをプレイして確認するのでしょうか?

谷口:場合によりけりです。もちろんゲームができているならゲームの映像を見ながら翻訳しますが、実際にはそんなことはめったにないですね(笑)。その場合は台本を基準に翻訳していきますが、やはりそれだけでは正しい翻訳は難しいので、後で実際にプレイして全てのシーンの台詞をチェックし、違和感のある部分を一つ一つ修正していくという方法をとっています。

――谷口さんが1人で翻訳を担当されているというお話がありましたが、普段は複数人で受け持つことが多いのでしょうか?

谷口:通常は素材が来た段階で、まず外部に下訳を発注し、戻ってきたものを二人以上で編集・脚色するという形が多いです。

石立:人数については製作期間にもよるとは思いますが、おそらく下訳に関しては、外部の翻訳者にお願いすることがほとんどだと思います。

――本作ではその下訳の部分から、谷口さんが担当されていると。

石立:あとは、収録の台本作成もやってもらっています。例えば開発会社から送られてくる収録用の台本って、必ずしもストーリーの順番通りに来るわけではなくて、完成した部分のシーンから送られてくることが多いんです。

谷口:そういう意味では、「Detroit」は比較的ストーリーの順番通りに台本が来ていましたね。ただ、ストーリーの分岐が最後にまとめられていて、声優さんに台詞の流れが分かりにくくなってしまっていたので、ゲームの進行通りに選択肢と回答を並べ替えて、ストーリーの流れを分かるようにするという作業もやっていました。

――本作の複雑な分岐構造を考えると、それだけでも結構な作業量になりそうです。

谷口:確かに、最初に見た時はどうしようかと思いましたが、クアンティック・ドリームの作品はこれまでも担当してきて、同じようなことをやっていたので、大分慣れました(笑)。

石立:基本的にAAAクラスのタイトルとなると、全部が完成してから収録したのではとても間に合わないので、台本が来る度に分割して収録していくスタイルが多いです。ただ本作に関しては全ての台本が揃って、役者さんにもストーリーの全貌を把握していただいた状態で演じていただきました。

――少し話題は変わるのですが、お二人とも普段からゲームはプレイされるのでしょうか?

石立:熱心なユーザーさんには敵いませんが、普通の人に比べたら遊んでいる方だと思います。ちょっと前は「Dead by Daylight」にハマって、あの非対称のゲームデザインのうまさには感心させられました。他にも「PUBG」や「フォートナイト」とか、流行っているゲームはなるべくチェックするようにしています。あとは、「FIREWATCH」「Night in the Woods」のような個人的に追いかけていたゲームとか。ただ最近は時間がなくて、「ゴッド・オブ・ウォー」もまだプレイできてないですね……。

谷口:私は本当に最近プレイできてなくて……買ったはいいものの、忙しすぎて封すら開けられてないものが溜まっているような状態で。ただ、「レッド・デッド・リデンプション2」は発売されたらなんとしても遊びたいなと思っています。

――やはり、お二人とも海外のゲームをプレイされることが多いのですね。

谷口:いや、そんなことはないです。むしろ私は日本のタイトルの方が断然多いですね。最近なら「モンスターハンター:ワールド」はかなり熱中してプレイしていました。

――個人的に聞いてみたかったのですが、例えば海外からローカライズされたゲームをプレイされる時、翻訳の出来が気になったりということはあるのでしょうか?

谷口:大いにあります。だからこそあまりやらないようにしているんです(笑)。「ここはこうした方が良かったんじゃないかな」という部分が、どうしても目に入ってきてしまうので。

石立:確かに自然と代替案が頭の中に浮かんでしまうことはあります(笑)。僕の場合は純粋に海外のゲームが好きだということと、ローカライズされたゲームをプレイするユーザーさんは、普段から海外のゲームを遊ぶ方の割合が高いと考えていますから、その好みをできるだけ把握しておきたいという目的もありますね。

谷口:私は逆に、日本語にすることが仕事なので、日本のゲームでは何が自然なのかということを知っておきたいと思っていて。例えば、「これって海外のゲームだったんだ」と、プレイした人が後で驚くような、”ローカライズだと気づかせない”ことが最終目標なんです。

それもあって、海外のゲームを遊ばなければ!という風には考えていません。まぁ、実際にはそこまで仕事を考えてプレイはしていなくて、日本のゲームが好きだというのが一番の理由なんですけどね(笑)。

――なかなか熱いゲームトークが出てきましたが、お二人ともこの業界を志望されたのは、ゲームが好きだったからなのでしょうか?

石立:僕の場合は完全に偶然です。友達がSIEに応募したいと言っていて、社員の方と会う機会をセッティングしたのですが、いざ面談が始まるとその友達が全然質問しなくて(笑)。気まずくなって自分の方からいろいろと話を聞いていく内に、興味を持ったという感じでしたね。

谷口:私は大学を卒業したあとにやりたいことがなかなか見つからなくて、映画業界に行きたいということをぼんやりと思っていたんです。それでとりあえず海外に留学して勉強して、日本に帰ってきた後、「とりあえず翻訳やってみるか」という軽い気持ちではじめましたね。とくに翻訳の学校とかにも行きませんでしたし。

――そこからどのようにゲーム業界に?

谷口:その一年後くらいに、弊社のQAテストチーム(バグの中身を英訳して開発に伝えるチーム)の仕事をやるようになったんです。その時に出会ったプロデューサーの方に、ローカライズの仕事に誘われたのがきっかけですね。それからもう11年くらい経ちましたが、世の中何が起こるかわからないとつくづく思います(笑)。

――ローカライズにおいて、意外とこの部分が大変だという、ユーザーから見えにくい部分というのはありますか?

石立:開発会社によって、ローカライズへの習熟や経験、準備がまったく違うという部分でしょうか。例えばシステムの似たアクションゲームがふたつあったら、どちらのローカライズも同じ程度の大変さだと思われるかもしれません。ところが実際には開発会社が違うと、ローカライズ用のアセットや、台本の作り方、吹き替えした音声の処理などもまったく違ってくるので、ゲームとしては似ていても、ローカライズの手間や苦労は比べ物にならないということも起こります。

――最近はインディーズのタイトルでも日本語に対応するといったものも増えてきましたよね。

石立:インディーズはAAAクラスのタイトルと比べると、開発時にはローカライズを前提にしていないものがほとんどなので、素材の準備は大変なものが多いと思います。ただ、インディーズのいいところは、圧倒的に物量が少ないことですね。

谷口:AAAタイトルと比べるなら、何十分の1くらいの差はあります。

石立:音声吹き替えが少ない部分もそうですね。ローカライズで一番コストがかかるのは音声吹き替えなので。

――言われてみると、確かに日本語に対応したインディーズでも、吹き替えまでやっているというのはあまり見ないですね。

石立:基本的に、インディーズは海外で人気が出たから日本語に対応するといった流れが多いので、すでに完成版のゲームが存在しているのも大きいです。プレイさえすればストーリーの文脈もわかりますし、海外で発売もされているので、締切についてもそこまで厳しくないものが多いですし。

逆にインディーズが難しいのは、独特の空気感をもっている作品が多いということでしょうか。例えば今は海外でも日本の学園モノや異世界モノをリスペクトしたようなゲームが発売されていますが、そうした個性的な作品や唯一無二の作風を持った作品をローカライズするとなると、やっぱりそのジャンルに精通した方、熱意と経験を持った方じゃないとうまくいかないんですよね。AAAタイトルだと、少しでも多くの人に楽しんでもらえるよう、翻訳も一般的なテイストになることが多いので、特にその差が顕著だと思います。

谷口:究極的には100人いる中の100人全員に納得してもらえる翻訳が目標ですけど、やっぱり現実問題としてそれは難しいので。できるだけ多くの人に喜んでもらえる方向を目指して、ある程度割り切ってやるようにしています。

――本作は、これまであまりゲームでは描かれないことのない、複雑な問題をテーマにした作品だと思っています。最後に、そんな本作のテーマについてお二人が感じられたことを教えてください。

谷口:私は、「Detroit」で描かれているテーマは決して難しいものではないと思っていて。私たちとしても「それは命か、それともモノか」というキャッチコピーを出していますけど、私自身は本作はアンドロイドではなく、あくまでも人間の物語だと思っています。人それぞれ感じ方は違うし、哲学的な側面もあるので、確かに難しく見える部分もあるかもしれませんが、私はすごくシンプルなテーマとして解釈しましたね。

石立:本作の物語はいろいろなレイヤーで作ってあって、響くところが人それぞれなんです。例えばAIに興味がある人はその部分にすごく惹かれるかもしれないし、逆に人間ドラマが好きな方は、アンドロイドって表現を使っているけど、本質は人間の話だと感じられるかもしれない。それはどちらが正しいとかではなく、開発側もさまざまな見方ができるように作っています。なので、プレイしていて自分が一番ピンときた要素が、その人にとっての本作のテーマになると思うので、そこを純粋に楽しんでいただければ嬉しいですね。

――ありがとうございました。

「Detroit: Become Human」についての話題を中心に、ローカライズという仕事の裏側まで、多岐に渡る話を伺うことができたが、個人的にはっとさせられたのは、「ローカライズの究極的な目標はローカライズと思わせないこと」だという谷口氏の発言だ。

今回のインタビューでも、筆者は無意識の内に、日本と海外のゲームをカテゴリ分けして考えていたのだが、多くのゲーマーにとって海外製のゲームをプレイすることが当たり前になりつつある現状を考えると、その認識はもう時代遅れと言えるのかもしれない。グローバル化が進むゲーム業界は、今後はさらにローカライズという仕事の需要が高まっていくことが予想されるが、やがてはローカライズという言葉すらもなくなり、誰もがさまざまな国のゲームをごく当たり前にプレイする時代が来るのではないだろうか。

そんなゲーム業界を支える人々が渾身の想いを込めてリリースした「Detroit: Become Human」は、現在好評発売中。是非自分の手でプレイして、インタビューでも語られた「本作のテーマ」とは何なのかを考えてみてほしい。

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  • 発売日:2018年5月25日
  • 価格:7,980円(税抜)
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  • 17歳以上対象
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※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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