スクウェア・エニックスより2018年8月2日に発売となる「サガ スカーレット グレイス 緋色の野望」(以下、「緋色の野望」)の先行プレイレビューをお届けする。
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なお筆者はこれまでの「サガ」シリーズはプレイ済みなものの、オリジナル版の「サガ スカーレット グレイス」(以下、「SSG」)は未プレイのため、本レビューも本作に触れたことがない読者に沿う内容となっている。あらかじめご了承願いたい。また、このレビューでは、PS4版を使用している。
主人公を選んで、いざ冒険スタート!バトルボイスは新規収録!
ゲームをスタートすると、いくつかの質問に回答していくことになる。すべての質問に回答すると、その答えに応じた主人公が選択される。筆者はレオナルドになったが、選ばれた主人公が気に入らない場合は選びなおすこともできる。今回は全くの初体験ということで特にこだわりがなかったため、レオナルドのままでプレイすることにしてみた。
また、主人公を決定すると、バトルボイスを「デフォルト」にするか、「アレンジ」にするか、選ぶことができる。サンプルで聞けるボイスはどちらも同じセリフをしゃべっているため、具体的にゲーム内でどう変わるのかという比較は出来ないものの、少なくともサンプルを聞く限りでは、アレンジ版のほうがよりキャラクターの特徴を色濃くし、感情豊かになっているように感じた。どちらを選んでも大きく差が出るところではないと思うが、声にこだわりのある人はサンプルを聞き比べて決めてほしい。
ゲームスタート時には、オリジナル版「SSG」で既にクリアした主人公のルートがあればそれを「クリア済み」に設定することで、本来ならば周回しないと見られないイベントなどが見られる機能も搭載。オリジナル版で全主人公を遊ばないでやめてしまった人や周回まではしなかったという人には、嬉しい仕様だ。
レオナルドの物語は、ひたすら「アイ・ハヌム」を目指す
謎の女性から「緋の欠片」と「それをアイ・ハヌムに沈めて」という言葉を託されるところからレオナルド編はスタートする。実はレオナルド自身、生まれた時にこの女性から託されたものとそっくりな「緋の欠片」を握って生まれてきた、という逸話をもつ。
レオナルド自身はその話を信じていないようだが、少なくとも緋の欠片を所持している事実はあるため、その女性の願いを聞き入れようとアイ・ハヌムを目指す旅に出ることを決意する。
しかし、アイ・ハヌムというのは、この世界では絵本に出てくるおとぎの国のような場所で、誰も本当に実在する場所だとは信じていないようだ。
それでもアイ・ハヌムを目指すというレオナルドに、「帝国図書館へ行け」とアドバイスをする人々。
なお、この「帝国図書館へ行け」というのは物語の最初からあちらこちらで言われるため、てっきり最初の村から出てすぐのところにあるのかと思っていたのだが、レオナルドの旅というのはこの「帝国図書館にたどり着く」までがひとつの大きな目的となっており、それ以外にはほぼ何も道しるべとなるものはない。
とはいえど、イベント自体は行く先々に散りばめられており、なかでもレオナルドの前に何度も現れる謎の赤い大蛇や、火の鳥などは印象的。火の鳥はほぼイベント的に登場するだけだったが、大蛇は近づけばバトルをするかどうか選ぶことが可能で、絶対に戦わなければならないというわけではないようだ。実際何体かは倒したものの、倒さずに別のエリアに進むこともできた。
また、レオナルドが持つ緋の欠片が反応を示すイベントなどもあり、これも少なくともレオナルド編では「やってもやらなくてもいい」という風なイベントだった。
「SSG」のパッケージのキャラクターである「ファイアブリンガー」とは一体どのような存在なのかが語られるワンシーンも。人々の間では「間抜けな邪神」と伝えられているようだが、真実はわからない。ただ、レオナルドが目指すアイ・ハヌムとファイアブリンガーは何らかの関係があるようだ。
これは後から知ったのだが、レオナルドの物語は一番自由度が高く、シナリオクリアまでの大きな目的は、「アイ・ハヌムを目指す」のみのようだ。そのため、「SSG」を初めてプレイする人には、少々ハードルの高い主人公だったかもしれない。
実際筆者も、「何時間プレイしてもあまりメインストーリーが進んでいる感じがしない」と思いながらプレイしていたのだが、逆に「最初からどこにでもいけるし、何をするのも自由」という利点もあるため、ついついアイ・ハヌムを目指すことよりも、大蛇と戦ったり、クエスト的なイベントバトルをこなしたりすることばかり優先してしまった。
いわゆるオープンワールドのような自由度の高いゲームが好きな人にとっては、レオナルド編はぴったりと言えるだろう。
他の三名の主人公だと、もっとストーリー性のあるシナリオも楽しめるとのこと。まずはそういった好みで最初の主人公を選んでみるのも、良いのではないだろうか。
「サガ」シリーズの魅力はやはりバトル!気になるシステムを色々試してみた
今作のバトルは、基本的にフィールドで敵にエンカウントすることはなく、敵や洞窟など、バトルが行えるシンボルに触れた状態で「バトルをする」を選ぶことによって発生するバトルがほとんどだ。そのため、ほぼすべてのバトルを無視して進むことも可能となっている。
陣形も健在で、陣形によってBP(いわゆるコスト)や攻撃力、防御力、戦術にも影響を与える。バトルの度にこれら陣形などの設定を選び直すこともできるが、オプションで戦闘準備シーンを飛ばすこともできる(これは「緋色の野望」からの新機能ということだ)。
しかしバトルの度に陣形を選ぶことができるというのは、ひとつひとつのバトルがボス戦のような緊張感のあるバトルとなっているということでもある。慣れないうちは戦闘準備は飛ばさず、様々な陣形の使い勝手やキャラクターの攻撃の特性などの感触を掴んだほうが良いだろう。
バトル終了時にHPは全回復するため、一戦ごとに全力で戦いたいところだが、LP(ライフポイント)と呼ばれる値には注意しておくこと。LPはキャラクターによって最大数が違っており、一度死ぬごとにLPが1減り、LPが0になるとしばらくの間戦闘に出撃できなくなってしまうのだ。LPは戦闘時にスタメンにいれずリザーブに置いておくと一戦ごとに回復していくので、戦闘に出すメンバーは頻繁に入れ替えるような戦術も必要になる。
バトルの難易度は「EASY」「NORMAL」「HARD」などあらかじめ表示されているが、 このゲームにはキャラクターレベルが存在するわけではないので、 どの程度育てば「NORMAL」や「HARD」に挑めるのかというのはわかりにくい。 |
バトルは「EASY」から挑みつつ手探りで徐々にチャレンジしていくような形を取るしかないため、バトルに入る前はできるだけセーブを行っておきたい(初期設定ではオートセーブされるようになっている)。ただし、ほぼすべてのバトルで、敗北した場合に再挑戦が可能となっている。
明らかに戦力不足などで負けた場合はともかく、使用する技などで切り抜けられそうな時は再挑戦してみてほしい。メンバーや陣形をまったく変えずとも、使う技を変えてみるだけで突破できることはあった。
バトルは、PTで共通で持つBP(ブレイブポイント)を使用する。BPが5で、一人がBP5を消費する技を使用した場合、残りのメンバーはそのターン防御をして、他の行動はできなくなる。
BPの初期値と最大所持数は陣形で決まり、BPは通常1ターンごとに1つずつ増えていく。つまり、BPの初期値が4でBPの最大数が7の陣形の場合、1ターン目のBPは4、2ターン目は5、3ターン目は6、4ターン目以降はずっと7、というふうになる。
BPの消費が多い技は全体攻撃や強力なダメージを与えられるかわりに、使用すると次の行動ターンで自分の行動順が遅くなる、というようなデメリットもある。パーティメンバーや敵の取る行動はターンを開始する前に確認できるため、それらを見直してターンごとにじっくりと考えることが重要だと感じた。
また、味方の行動順次第で発生する「連撃」は非常に強力。「連撃」は理解するまで少々わかりにくいシステムだが、バトル画面の下部に表示されている行動順序のタイムラインを確認してほしい。
現在のタイムラインでは、敵Aと敵Cの行動順がそれぞれ味方の行動順に挟まれている状態だ。この状態で敵Aを倒した場合は左の4人の味方のタイムラインが並び、「連撃」が発生する。敵Cを倒した場合は、右側2人の味方のタイムラインが並ぶため、やはり「連撃」が発生する。
連撃の法則については慣れるまで少々難しいが、狙っていけば圧倒的にバトルが楽になるので、早めに理解したい。逆に味方も同じ法則で敵から連撃を受けてしまうので、行動順で味方が連撃を受けてしまいそうな時は、敵の行動順を乱す技を使用することや、連撃を発生させそうなタイムライン上にいる敵を集中的に攻撃する必要がある。
成長システムはこれまでの「サガ」シリーズと変わらないため、技などは使えば使うほど熟練度が上がっていき、そして新たな技を閃くようになっている。HPや各種ステータスもバトルを積み重ねていくことで成長するので、ゲームシステム上バトルをほぼスルーできる仕様であっても、後のことを考えればバトルは適度にこなしておきたい。
余談ではあるが、フライパンを片手に敵相手にぶん回して地面すら叩き割るエリザベートがすごい。今作のレビューを書くにあたりバトルで一番重宝したキャラクターで、とても強いので仲間にいると心強い。
スムーズな動作、シンプルなイベント、それでいてやり応え要素もバッチリ!
「緋色の野望」では、「SSG」にはなかった様々な追加要素がある。イベントの追加やBGM、キャラクターボイスといった部分はもちろんのこと、PS Vita版で多く聞かれたロードが長い点については、今作ではまったくそれを感じなかったので、ほぼ改善されたと言っていいだろう。
また、本作はスマートフォンで遊ぶこともできる。筆者はPS4版をプレイしたものの、スマートフォン版でもかなりストレスなく遊べそうだとも感じた。逆にインチ数の大きいテレビだと、文字などの各種UIは少し大きめに感じるくらいではないだろうか。
これはあくまで個人的な感想だが、グラフィック、画面の大きさ、持ち歩きが可能であることなど、さまざまな点を考慮したうえで、恐らく本作品と一番親和性の高いハードはSwitchではないだろうか。Switch本体を持っている人は、ぜひSwitch版を検討してみてほしい。
バトルについては覚えることが多く、かつて「サガ」チームが作成した「ラストレムナント」をどことなく彷彿させるクセのあるものとなっている。なお、「ラストレムナント」と聞いてピンとくるファンならば、今作のバトルはかなり楽しめるものとなっているはずだ。小隊VS小隊だった戦いが個人戦になっているものに近い、といえば、伝わる層もいるのではないだろうか。
まさに「ラストレムナント」を彷彿とさせるバトルの一幕。 技によっては攻撃の合間に割り込んで先手を取ることが出来るが、当然、敵にも割り込まれる。 むしろ序盤のうちは、敵に割り込まれることのほうが多いだろう。 |
システムを完璧に理解するまでの時間は少々かかるものの、「サガ」らしい作品であることは間違いない。シミュレーションのような、熟考して一手を決めるバトルが好きな人には、特におすすめしたい作品となっているので、ぜひこの機会に触れてみてほしい。