千葉・幕張メッセにて9月20日より開催中の東京ゲームショウ2018。ここでは「Monkey King:The Hero is Back(仮題)」のメディア向けセッションの模様をレポートする。
今回のセッションではプロデューサーであるソニー・インタラクティブエンタテインメントの北川竜大氏とディレクターであるヘキサドライブの服部達也氏が「Monkey King:The Hero is Back(仮題)」のプレゼンを行った。
本作は2015年に公開された映画「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」(日本公開は2018年1月)を原作としているアクションアドベンチャーだ。興行収益180億円以上という中国アニメ映画歴代興収の新記録を打ち出した超人気作で、総動員数3000万人以上、総上演数80万回を記録。さらに、大手ストリーミングチャンネルの再生回数が5.2憶回に達するなど、中国ではビッグIPになっているという。
それだけに、2018年8月に行なわれた中国最大のゲームショウ「ChinaJoy 2018」では数多くのファンが殺到。SIE上海が配信したライブストリーミングを50~60万人が視聴するなど非常に注目度の高いコンテンツになっていることが改めて説明された。
中国市場におけるプレイステーションの中長期的成長のためには、海外の有力なコンテンツ(Oversea Content)が重要になってくる。とはいえ、中国には強い検閲体制があり、持ってこられるコンテンツは限られているだけに、中国のローカルコンテンツが重要になってくると北川氏は解説。中国のゲームクリエイターが作るコンテンツ(Game Driven Content)はもちろんのことだが、さらに中国の人たちがすでによく知っているIPをプレイステーションに持ってくる(IP Driven Content)ことが非常に重要な戦略になるという。その意味で、本作は非常に大きな意味を持つコンテンツというわけだ。
ただ、中国と日本では「西遊記」というものの捉え方に大きなギャップがある。日本で「西遊記」というと「孫悟空と三蔵法師がパーティーとなって天竺にお経を取りに行く話」というイメージが強いが、それはあくまで全体の一部分であり、実際はその前後に多くのエピソードがある長大な伝奇物語になっている。中国の人たちにとって非常になじみの深い、よく知られた題材で、現在も多くの人に愛されているものであるのだと北川氏は説明した。
そのため、開発にあたって中国全土でロケハンを敢行。資料も数多く取り寄せ、専門家からの助言も得るなど、ハリウッドなどによくある「これじゃない映画」にならないよう、中国の人たちに「この人たちは分かっているんだな」と思ってもらえる作品になるよう心がけているとディレクターの服部氏は述べた。
それでも中国側のスタッフとケンカになることがたびたびあったという。たとえば、沙悟浄が首にかけているドクロの首飾りは三蔵法師の前世のもので、これは中国では当たり前に知られていることらしい。だが、北川さんたちはそうしたことを知らなかったようで、「(そんなことも)知らないの?」と中国側のスタッフに言われたことがあったそうだ。前提条件となる知識が違いすぎて中国側が常識と思っていても、日本側が知らないということが多々あり、そうした部分での差異を改めて実感したと北川氏は振り返った。
原作の映画で描かれたコミカルな部分の再現にも注力した服部氏は語る。服部氏は原作の映画に「ドラゴンボール」のようなコミックやジャッキー・チェンの映画作品に似たイメージを持ったそうで、そうしたファミリー層も楽しめるスタイルのゲームを模索。ジャッキー映画でおなじみの椅子を使ったアクションができるようになっていて、原作の「西遊記」にもある「方術」という魔法のようなものも使えるようにしたと服部氏は述べた。
特にアクションの部分へのこだわりは強く、ジャッキー・チェンの下でスタントアクションをしていた谷垣健治さんにアクションの演出を依頼。ジャッキー映画にあるようなコミカルなアクションを再現してもらったという。谷垣さんもノリノリでやってくれたそうで、そうしたアクションも見どころのひとつと言えそうだ。
今回のセッションではゲームのシステムや詳しい内容は明かされなかったが、中国本土で動きがあったタイミングで、また詳しい情報を出していきたいとのこと。はたして、どのようなゲームで、どんなアクションを楽しめるのか。続報に期待しよう。