カプコンが2019年1月25日に発売予定の「バイオハザード RE:2」。今回は、発売に先駆けソフトの実機プレイと、竹内潤氏ら開発を手がけたカプコンのCS第一開発部のキーマンたちにインタビューを行った。
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累計販売本数496万本超の大ヒット作「バイオハザード2」。
その登場から約20年、緻密な再考証の末、新たに構築されたのが、2019年1月25日発売予定の「バイオハザード RE:2(以下、BH RE2)」だ。
日本のファンはもちろん、海外からの注目度も非常に高いこちらの話題作。その発売に先駆け、今回はカプコン本社にて試遊をさせていただけることに。また、最新版のプレインプレッションとあわせて開発陣にインタビューを敢行。ここで聞くことができた、現場の生の声をお届けしていこう!
徹底されたリアリティの追求から生まれるゲームへの没入感!五感を研ぎ澄まし、迫り来る恐怖から脱せよ!!
まずは、「BH RE2」のインプレッションから。今回は、ストーリーモードの中からレオン編とクレア編の一部をプレイ。その中でまず何よりも先にお伝えしたいのが、ゲームを通じて伝わってきた臨場感である。
個人的にオリジナル版の「バイオハザード2」もプレイした上で参加。両者を比べると、20年前に比べ映像技術の進化はもちろん、細やかな仕草や物音、攻撃を加えたゾンビのビジュアルの変化など、臨場感が大幅にアップされている。
特に必見なのが戦闘シーン。今回採用されている三人称視点のシステム“ビハインドビュー”にて、ゾンンビに襲われているプレイヤーの姿を、その背後の視点からも俯瞰的に見ることが可能になっている。
本作で描かれているのはSF的な世界観――ではあるのだが、実際に人を喰らうゾンビがいたらと考えた場合、「BH RE2」では腹を空かせたゾンビたちの鬼気迫る表情、そしてそんな彼らが人の血肉にありつけた際の夢中になって食べようとする姿が、本当にリアルに描かれている。ゾンビたちが本能のまま歯を突きたて、引き裂き、貪り喰らう姿を、本作ではこれまでとまた違った形で見ることができるだろう。
また、「BH RE2」が持つ重厚なストーリー性からも、リアリティが追求されていることを感じられた。例えば、レオンとエイダの関係性について。
オリジナル版の「バイオハザード2」でも両者は親密度を増していくが、今作ではゲームの進行、物語の展開を通じて、よりプレイヤーが感情移入しやすい構成となっている。迫り来るゾンビやクリーチャーの脅威を退けつつ、ドラマティックな人間模様にもぜひ注目してほしい。
もちろん、クレアの視点での展開も必見だ。前作の主人公クリス・レッドフィールドの妹のクレア。レオンとは違い、大学生である彼女の視点から見るラクーンシティはまた違っている。恐怖の街と化した街で、ゾンビだけではなく人間の醜さにも直面。極限状態の中、己の信念を崩すことなくこと突き進む姿はとても共感できる仕上がり。プレイヤーにより近い立場という観点から見れば、レオンよりも彼女のほうがより親近感を感じられるかもしれない。
またクレアの場合、レオンと比べてその服装は戦闘に適したものではない。
クレアのプレイでは比較的序盤に近いパートのプレイであったこともあり、所有できるアイテムの数は多くはなかった。攻略に必要なキーアイテムを持ちつつ、武器や回復アイテムの確保を行うことには頭を悩ませた。ゾンビたちに対処しつつ、ゲームを進行するためにフィールドでの謎解きも見所の本作。様々な場面で、頭脳をフル回転させ攻略を進めるやり応えを十二分に感じさせてくれるだろう。
前述した3人以外にも、「BH RE2」では多数のキャラが登場。新構築されたラクーンシティにて、彼ら彼女らのどんなストーリーを織りなしていくのか、ここからは本作のよりコアな部分について開発陣にインタビューを敢行した模様をお届けしていこう!
「BH RE2」の製作に込められた思いとは!?本作の魅力について、開発キーマンたちに聞く!!
「BH RE2」の製作を手がけた、カプコンのCS第一開発統括。まずは、同部署の神田剛プロデューサー、門井一憲ディレクター、安保康弘ディレクターのお三方からお話をうかがえた。
――今回の「BH RE2」は、オリジナル版の「バイオハザード2」の世界観を再考証されたと伺っております。改めてストーリーを構築する中で、注力された点についてお聞かせください。
門井氏:原作の「バイオハザード2」よりも、よりストーリーを掘り下げて制作しているところですね。各々のキャラクターが持つ背景、ドラマ性をしっかりとメインストーリーに落とし込み、レオンやクレアの成長に繋がるよう構成しています。納得がいく仕上がりになるまで、製作の過程で何度もリトライを重ねています。
安保氏:原作よりもストーリーがドラマティックになるように、キャラクターの行動にしっかりと理由付けを行って、説得力がでるようにアレンジしています。
――ストーリーを進める上で、ユーザーも思わず感情移入してしまうヒューマンドラマが描かれているわけですね。
神田氏:はい。「BH RE2」にはたくさんの新しい設定が加わっています。オリジナル版をプレイされた方にも、そうじゃない方にも、「あのシーンが良かったね」というようなお声をいただけると嬉しいですね。
――ユーザーにとっても、たくさんの見所が詰まった作品になっているのですね。ただオリジナル版から約20年の時が経過したことで、ニーズの変化もあったのでは?
門井氏:作品のリアリティ性が、より求められる時代になっていると思います。「バイオハザード」シリーズは元々リアリティを追求した作品ではありますが、より現実に近い世界観を創り出し満足してもらえるよう、試行錯誤を繰り返しながら製作を進めました。
――本当に、様々な箇所を再考証されているのですね。
神田氏:はい。リアリティを求める上で、特に表現の仕方には注意しました。過度に現実離れした展開を避け、プレイした際の没入感が削がれてしまわぬよう製作を進めています。ユーザーさんにとって違和感の少ない世界観を構成することは、本作でも非常にこだわっている点です。
安保氏:改めて「バイオハザード2」を新作として製作する上で、現代の眼で見るとちょっと違和感を感じる展開があったんですよ(笑)。レオンとエイダの関係性の変化もはじめ、より自然な描き方となるように、ストーリーの展開はしっかりと見直しました。
――なるほど。ここまで表現の仕方についてお話いただきましたが、今回も「バイオハザード7」に続き、表現の異なる箇所があるCERO違いのバージョンの販売が予定されています。こちら2バージョンを販売するに至った経緯をお聞かせください。
神田氏:「バイオハザード」シリーズは「恐怖」がテーマであり、日本国内の家庭用ゲームとして発売できる最大限の表現でお届けしております。ホラーゲームとしてマックスまで踏み込んだ内容を体験したいというニーズがある一方、刺激的な表現は少し抑えてほしいというお声もあります。そのどちらの方々にもお楽しみいただけるよう、今回も選択肢を設けています。
安保氏:ありがたいことに、「バイオハザード」シリーズは幅広い層のユーザーさんにご支持をいただいております。SNSなどを通じ寄せられた過去作へのご意見に目を通させていただく中で、今回もお好みのほうを選んでもらえるようにしました。
神田氏:そうですね。アクションだけではなく、キャラの人となりに魅力を感じて下さっているファンもたくさんいらっしゃいます。1人でも多くの方々が楽しめるように、表現を少し抑えることで、ホラー表現が苦手な方にも入り込みやすい「バイオハザード」も提供させていただいております。
門井氏:「『バイオハザード2』をリメイクしてほしい」というお声をたくさん頂いたことも、本作の製作に踏み切った大きな要因です。世界観の再考証を進める上でも、印象に残ったというお声が多いシーンは残すようにし、また「バイオハザード2」を遊んでいるんだ! という印象持っていただけるよう注力しています。
――ユーザーのニーズに真摯に向き合っていることが窺えるお話です。ただ「バイオハザード」はホラーアクションゲーム。ゾンビに対するこだわりもお強いのでは?
門井氏:はい。今回は、昔ながらのゆっくりと迫り来るゾンビを多数登場させ、恐怖の臨場感をつくりあげることにもこだわっています。動きがスローだと、その分だけゾンビの姿を観察しやすくなります。銃で撃った際の細かなリアクションや、ダメージを負った後の地を這う姿など、じっくりご覧いただいても違和感がないよう、大量のモーションを用意して、様々な動きのバージョンを実現しています。
安保氏:オリジナル版と比較すると、ゾンビたちがプレイヤーを襲ってくる怖さは物凄くパワーアップしていると思います。ゾンビの襲ってくる姿を、我々は“喰いたい感”と呼んでおりまして(笑)。
「ソンビたちは人間を喰いたくて仕方がない!」、その姿をしっかりと強調できるように、グラフィックやアニメーションをかなり強化しています。
――まさに現代に進化した「バイオハザード2」を楽しめるわけですね。それでは最後に、一言ずつファンへのメッセージをいただけますでしょうか。
神田氏:懐かしさと新しさの両方を感じていただける仕上がりとなっております。ゾンビの怖さにこだわりつつ、それだけではないヒューマンドラマも描いたホラーエンターテイメント「BH RE2」。
やり込むほどに楽しみが広がる要素も盛り込んでおりますので、我々が自信を持ってお届けする本作を、ぜひ発売日当日からガッツリとプレーしてください。
門井氏:本作はシリーズ最新作であり、原作となるゲームがある再:新作でもあります。初めて「バイオハザード」を遊ぶ方にとっても、入り込みやすい構成にしています。ぜひお楽しみください。
安保氏:オリジナル版を遊びつくした方でも、新鮮に「バイオハザード2」をもう一度楽しめる事にこだわりを持って製作を進めました。新しく始められる方々と原作をお楽しみいただいた方々、その両方にぜひプレイしていただきたい作品となっております。
神田プロデューサーの述べたやり込み要素とは、「PlayStation E3 2018 Showcase」でも発表された、「The 豆腐 Survivor」と「The 4th Survivor」のことだろうか。兎にも角にも、懐かしくも新しい「バイオハザード2」の登場への期待感が、より一層大きくなったインタビューだった。
竹内潤第1開発統括に聞く、ゲーム開発に込められた思いとは!?
今回の「BH RE2」、そして「バイオハザード7」に加え、「デビル メイ クライ5」「囚われのパルマ」など数々のヒット作を生み出してきたカプコン第1開発。その統括を務める竹内潤氏にも、ゲーム開発にかける思いを伺うことができた。
――早速ではございますが、第1開発のお仕事の内容について、お聞かせ願います。
竹内氏:第1開発は、「バイオハザード」や「デビル メイ クライ」などのIPを活用し、ワールドワイドな商品展開を目指している部署です。そんな我々のモットーは、「一見の価値あるゲームを作っていこう」ということ。ユーザーの皆さんが、「あのゲームは一度プレイしておかないと!」と、思っていただけるゲームの開発を目指し、日々努力をしております。
――広い視野を持ちつつ、日々のお仕事に従事されているのですね。ちなみに、これまで竹内統括が携わった代表作品を改めて伺っても?
竹内氏:そうですね。「BH RE2」の原作である「バイオハザード2」にも、スタッフとして開発に携わりました。その後、「鬼武者」にもディレクターとして参加。以降はプロデューサーとして、「ロストプラネット」シリーズ、また「バイオハザード5」「バイオハザード7」にも担当させていただくに至りました。社内で「お前は奇数担当か?」と声をかけられることもあるんですよ(笑)。
――数々の大作に携わってこられているのですね。ただビッグタイトルを任せられている分、コスト面をはじめ様々な課題に直面することもあったのでは?
竹内氏:確かに、難しい問題はその都度出してきます。ただ、たくさんの根強いファンの皆様がいて下さることで、我々は愚直に良いものを作りお届けしていこう、一見の価値あるものを開発しようと、素直な気持ちを持って日々の仕事と向き合うことができております。市場の流れ、移り変わりを意識しつつも、やはり1番はファンの皆様が遊びたいと感じておられるゲームを提供できることを考えていますね。
――確かに市場での流行りと実際のファンのニーズの間で、ズレが生じていることもありますものね。
竹内氏:はい。例えば「デビル メイ クライ」。こちらのタイトルのファンの皆様は、「純粋なアクションをやりたい」と、考えている方が多いのではと意識し開発を進めました。E3 2018で「デビル メイ クライ5」のトレーラーを発表した際、お客様の反応を見てやはり需要はそこにあったのだと改めて実感できましたね。
――開発者としてはもちろん、ファンと同じゲーム好きとしての目線からも、しっかりとニーズを把握していらっしゃるのですね。これからもファンの思いに寄り添った開発を進める上で、求める人物像があればお聞かせいただけますか?
竹内氏:そうですね、以前に同じようなご質問を頂戴した際、色々な経験をして業界に飛び込んできて下さいとお答えさせていただいたことがあります。ただ、時代の流れと共に求められる人材にも変化が生じてきていて、今は何よりも「ゲームの世界を愛している人」が必要かなと考えています。例えばゲームが大好きでそれ以外には目もくれず過ごしてきた、みたいな。
――熱い情熱を持ったスタッフさんのお力を必要とされているのですね。現在は海外出身のスタッフさんともお仕事をご一緒することは多いかと存じます。海外出身の方と日本のスタッフさんとで、考え方の違いを感じることはございますか。
竹内氏:ありますね。海外の方は、目の前の課題を解決するにあたり、いかに苦労を重ねるかではなく、ツールやシステムを組むことで円滑に進めていくことを重視する傾向があります。
特にそのことを感じたのが「バイオハザード7」の製作。その際に参加してくれた海外出身のスタッフが、当時浮上した課題に対してそれを解決するツールを作ってくれたことがあったのです。問題解決に向けて努力を重ねることだけを美徳に感じるのではなく、いかにスムーズに仕事を進められるかを考えること、それは我々日本人が海外と競う上でとても重要な思考だったんですね。従来の考えに固執することなく海外の文化を取り入れることは、素晴らしいシナジー効果を発揮してくれています。
――より良いものを製作していくため、変化と進化、その両方を積極的に取り入れておられるのですね。
竹内氏:はい。その他に、我が部署では「自分で実際に体験すること」にも重きを置いています。例えば、「バイオハザード」におけるテーマのひとつ“怖い”ということ。それをしっかり表現するためには、製作陣もその真意を理解していなくてはいけません。そのために、夜に心霊スポットへと取材に出向いたこともあるんですよ(笑)。その際のスタッフはとても怖がっていましたが、実際にその身で恐怖体験をすることで「あ、怖いってこういうことだよね」と、皆での共有が出来たんです。
他にも射撃を行う難しさを実際に学んだり、イベントシーンを実際に演技してみて、どんな仕上がりを目指すのかを体現してみたりと、自分たちで体験することの重要性は大切にしています。
――第一開発部の皆様の、ゲームにかける情熱が伝わってきます。問題に直面することがあっても、チームワークと信念で以って乗り越えられてこられているのですね。
竹内氏:はい。第一開発部を立ち上げた際も、自分たちがどのあるべきなのかをしっかりと話し合いました。特に「バイオハザード7」の製作を任された際は、自分たちがどのようなゲームを世に送り出したいのかを熟考しましたね。
先ほど申し上げました、「一見の価値あるゲームを作る」に加え、「日本だけでなく、世界中の人たちが面白いと言えるゲームを作る」、そして「自分たちが作りたいと思うゲームに対しては、自分たちで節約しつつしっかりと生み出していこう」ということです。この3つを組み立て、スタッフたちと共有し同じ思いで進んでいくことはとても大切で、それでいて現部署を最初に立ち上げた際に苦労したことでもあります。
――様々思いや経験が糧になっているのですね。お話はつきませんが、最後に今後の開発の展開について、お聞かせ願います。
竹内氏:現在は、ゲームというメディアそのものが一般化していて、生活の中に存在して当然のものとなっていると思います。ゲームがどこでも誰も触れられる身近な存在であること、それは我々にとって非常に嬉しい環境で、その中で今後はよりカプコンならではの特色を持っていかなくてはいけないと考えております。
ただその一方で、特に日本では安価な価格、あるいは無料で提供していくことが当然のような風潮も進んでいますよね。良いものを作りつつ、当然仕事としても行なっている人がいる以上、それはちょっと違うのでは、とも考えているんです。時代の変化を考慮しつつ、カプコンならではのゲームをご提供できるよう、しっかりとビジネスモデルを考えていかなくてはいけないと感じています。
――本日は、お忙しい中ありがとうございました。
「バイオハザード」シリーズに加え、カプコンとして、そしてゲーム開発者としての様々な考えを聞くことができた。今後、竹内氏がどんなゲームを手がけていくのか、1人のプレイヤーとして今後の展開が楽しみでならない。