2018年10月から放送され、全13話が放送されたTVアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」。ゲームとの関連性はないのですが、年末ということで特別企画としてその魅力を紹介します。

目次
  1. 「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」とは?
  2. 青ブタを語る上では欠かせない「思春期症候群」の持つテーマ
  3. アニメならではの注目ポイント
  4. 2019年には核心に迫るエピソードを描く劇場版も

2018年もいよいよ終わりを迎えようとしている中、Gamerでも年末年始に合わせた記事を考えなきゃなと思っていましたところ、たまにはアニメの話を真面目にしてもいいんじゃないか、という心の声(願望)が聞こえて来ました。その声を受け入れるがままに、2018年10月から12月にかけて放送されたTVアニメ「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」の魅力を、極力ネタバレを避けて紹介していきます。

ちなみに筆者は1クールに20~30本は見ていて、気がつくとアニメの話をし始めてしまうぐらいにはアニメ中毒。Gamer読者のみなさんには馴染みのない作品だとは思いますが、ぜひこの機会に知ってもらえれば幸いです!

「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」とは?

そもそも「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」とはなんぞや、という方もいるかとは思いますので、まずは原作となる「青春ブタ野郎」シリーズについて紹介していきましょう。

「青春ブタ野郎」シリーズは、電撃文庫より刊行されている著・鴨志田一氏、イラスト・溝口ケージ氏による青春ファンタジー小説です。このお二人といえば、TVアニメ化もしたゲーム、マンガなどのクリエイターを目指す少年少女たちを描いた「さくら荘のペットな彼女」でおなじみの二人ですが、今作では藤沢を舞台に、高校生という多感な年頃の心情を繊細な描写で描いていきます。

主人公の梓川咲太は、過去のとある出来事をきっかけに、携帯電話も持たずに特定の友人以外からは距離を置かれている、少し複雑な境遇を持っています。そんな彼が、さまざまな少女たちと出会い、彼女たちの悩みと向き合って一緒に解決していくのがおおよその流れになります。

これだけの要素ですと特段珍しくはないと思いますが、「青春ブタ野郎」シリーズの大きな特徴が、思春期ならではの不安定な精神状態によって引き起こされる“思春期症候群”というネットで噂の不思議現象の存在です。

例えば小説の第1巻にあたる「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」では、図書館で出会った野生のバニーガールこと桜島麻衣が、何故か咲太を除く周囲の人間の目に映っていないところから物語が始まります。なぜ姿が見えなくなってしまうのか、そこは子供の頃から女優として活動していた彼女がなぜ活動を休止しているのかなど、彼女自身を知ることで徐々にその原因が明らかになっています。

青ブタを語る上では欠かせない「思春期症候群」の持つテーマ

思春期症候群で起こる出来事は同じ日のループ、ドッペルゲンガー、人格の入れ替わりなど一見するとそのキャッチーさが印象的ですが、実はその裏にある少女たちの悩みが思春期ならではのテーマ性を持っています。

同じ日を繰り返してしまうエピソードで登場する後輩の女の子、古賀朋絵は周囲に合わせるために空気を読みすぎるきらいがあり、それが思春期症候群を発症させるきっかけにもなります。クラス内でグループに属すために自分自身を取り繕う中で、咲太と関わることが彼女を大きく変えていくのですが、「恥ずかしい」という言葉が出てくる場面はハッとさせられます。

咲太の友人で、思春期症候群で起こる事象についての相談相手にもなってくれる双葉理央は、自身の持つコンプレックスなどから相反する感情に悩まされ、2人の理央が現れるという現象に直面します。ここにも一面的でない感情が見え隠れしていて、もうひとりの友人である国見佑真の存在も含めて、その展開に目が離せません。

麻衣の異母妹であり、アイドルグループのメンバーとして活動する豊浜のどかは、母親との喧嘩で家出し、頼った麻衣と姿が入れ替わる現象に遭遇します。母親との関係はもちろんですが、母親が意識する麻衣の存在がそのまま彼女自身のコンプレックスにもなっていて、その感情とどう折り合いをつけていくかが一つのポイントになります。

思春期症候群という事象によってより認識しやすくなっていますが、作品を通じて描かれるのは、思春期を描く上では欠かせない普遍的なテーマの数々です。彼女たちがそれぞれの悩みと向き合い、乗り越えていく姿が感動を呼ぶのだと思います。

アニメならではの注目ポイント

ここまでは原作となる小説をベースとした説明となりましたが、アニメならではの魅力についても触れておきます。

CloverWorksがアニメーション制作を担当し、監督の増井壮一氏、構成・脚本の横谷昌宏氏、キャラクターデザイン・総作画監督の田村里美氏(総作画監督は高田晃氏と連名)などのスタッフが揃って手がけられているアニメは、原作の持つ魅力を活かしながら、アニメならではの表現がしっかりとなされている点にも注目です。

まず、原作ファン目線で特筆したいのは、原作で組み込まれていた各エピソード間のつながりを、限られた尺の中でしっかりと再構築しているという点です。

キャラクター同士のちょっとした掛け合いのバリエーションが原作では確かに面白いのですが、アニメ化にあたってはその部分はある程度絞り込んでいます。その代わりに、次回以降のエピソードにつなげていく上では欠かせない会話やシーンが入っていて、そこが後々の伏線になっていくのです。原作小説では地の文から補完できるようなキャラクターの心情も、そういったつなぎの要素がしっかりしていることで思った以上に感じ取りやすい作りになっています。

また、アニメを通じて描かれる藤沢周辺の情景や、原作でインパクトのあるシーンの数々の表現なども非常に丁寧です。心情の揺れ動きを感じながら見ていくと、そのシーンのひとつひとつが印象に残っていくのではないでしょうか。

fox capture planによる劇伴と、石川界人さん(梓川咲太役)、瀬戸麻沙美さん(桜島麻衣役)、東山奈央さん(古賀朋絵役)、種﨑敦美さん(双葉理央役)、内田真礼さん(豊浜のどか役)、久保ユリカさん(梓川かえで役)、水瀬いのりさん(牧之原翔子役)といったキャスト陣による演技も、アニメの魅力をさらに高めています。また、話数ごとに歌うキャラクターが変わっていくエンディング曲「不可思議のカルテ」も、アニメの持つ世界観を表現していると思います。

2019年には核心に迫るエピソードを描く劇場版も

記事の掲載時点ではTVアニメの最終話に当たる第13話もすでに各局で放送されている頃だとは思いますが、第11話から続く、咲太の妹である梓川かえでのエピソード(原作小説の第5弾「青春ブタ野郎はおるすばん妹の夢を見ない」)は、シリーズでも屈指の感動エピソードになっています。原作ですでに泣いた筆者も、また泣いてしまうんじゃないかとドキドキしつつ、放送を見守っていることでしょう。

さらに、2019年初夏には原作小説第6弾「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」、 第7弾「青春ブタ野郎はハツコイ少女の夢を見ない」を描く、「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」の劇場上映も決定しています。

こちらは謎の多い少女・牧之原翔子をキーパーソンに、咲太自身に起きた出来事にもつながる、怒涛の展開が待ち受けています。「青春ブタ野郎」シリーズ自体は今も刊行が続いていますが、このエピソードで一つの区切りがつきますので、TVアニメをすでに見た人も注目です。もちろんアニメでどう表現されるのかは見てみないことにはわからないのですが、原作ファンとして一つ伝えておきたいのは、これまで以上に心を抉ってくるので、ハンカチの準備をお忘れなく。

咲太にとって恩人である女性と同姓同名、容姿も瓜二つな中学生の少女・牧之原翔子。
彼女の存在が物語の大きな鍵を握ります。

電撃文庫「青春ブタ野郎」シリーズはそのタイトル名や、一見すると難しそうなテーマ性から敬遠しがちな人も多いかもしれません。ただ、今回のアニメが多くの人に伝わるきっかけになっていたら一ファンとして嬉しく思いますし、微々たるものではあっても応援したいという気持ちから紹介させていただきました。

放送はすでに終了してしまいましたが、AbemaTVにて12月31日(月)15:00~21:00にかけて第1話~第13話の振り返り一挙上映が決定(https://abema.tv/channels/abema-anime-2/slots/FFtVUanVgynudZ)。そして2019年1月からはBS11(1月2日より毎週水曜24:30~)、TOKYO MX(1月5日より毎週土曜21:00~)で再放送も決定しています。これから見たいという方はこちらもぜひチェックしてもらえればと思います。

ちなみに筆者のお気に入りは古賀朋絵ちゃんです。咲太との掛け合いが軽妙で可愛らしいんですよ。
時折出てくる福岡弁も要チェックです!

「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」公式サイト
http://ao-buta.com/

「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」公式Twitter
https://twitter.com/aobuta_anime

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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