「Caligula -カリギュラ-」シリーズなどで知られるゲームクリエイターの山中拓也氏による、ゲームインタビュー企画「山中拓也のGamer交遊録」。第1回は自身も親交のある声優の仲村宗悟さんに、これまで触れてきたゲームなどを語ってもらいました。後編では期待の新作をはじめ、声優視点でのゲーム体験について迫ります。
仲村宗悟
アクロスエンタテインメント所属
誕生日:7月28日
出身:沖縄県
主な出演作品:「アイドルマスター SideM」天道輝 役、 「TSUKIPRO THE ANIMATION」久我壱星 役、「オンエア!」天神陽人役、 「Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ」Stork役など
インタビュー:山中拓也
文・構成:近藤智子
ゲームを選ぶ基準は“直感”!「新サクラ大戦」に期待大
山中:昔のソフトって1万円以上するものも多くて、子供が簡単に買えるような価格じゃなかったよね。だからこそ、どの1本を買うか……ってのは、もう人生を賭けるってレベルだった。
仲村:今でこそゲームが出たらぽんっと買えちゃいますけど、あの頃は悩みましたね。それで好みと合わなかった時の悲しみったらもう……(苦笑)。
山中:誕生日に買ってもらえる1本でそこから1年を過ごしてから、昔のゲームって印象に残ってるんだろうね。
仲村:昔のゲームって思い出深いですよね。「スーパーマリオRPG」とか「クロノ・トリガー」とか「ドラゴンクエスト(DQ)」とか、有名どころはほぼ遊んでましたし。「ファイナルファンタジー(FF)」シリーズもスーパーファミコン(以下、SFC)のタイトルは全部遊びました。
クロノ・トリガー(画像はSteam版) https://www.jp.square-enix.com/chronotrigger/ |
山中:僕らはそんな感じで、それこそ1年遊ぶ1本を厳選するような感じだったじゃないですか。その時、重要視していた要素ってあったりします?
仲村:SFCでは、それこそ「DQ」のようなビッグタイトルとか、皆が「絶対これは面白い!!」って思う作品を選ぶのが多かったですね。これがプレイステーション(以下、PS)になるとまた変わってくるんですけど。
山中:PSだとまた更にジャンルが広がっていくからね。今は大人になって、年に数本ゲームを買えるようになってるじゃないですか。こういう状態で重視するのはどんなところ?
仲村:うーん、今だと……発売前にたくさん情報が出るし、もちろん評価も目にするんですけど……直感かもしれないですね。気になるタイトルの映像は絶対見るんですけど、その時に「これはいいな」って自分の中でマッチングするものがあったら買います。
山中:じゃあ今、発売を待ち望んでいるタイトルは?
仲村:それはもう「新サクラ大戦」ですね。もともと好きな作品だったので。
山中:分かる!! 僕たちの青春×青春みたいな感じだよね。
仲村:キャラクターデザインが久保帯人先生になられて、ゲームシステムとかもどうなるんだろうって気になってます。「サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~」まで全部遊んでいて、僕はとくに「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」が好きだったんですよ。
山中:「サクラ大戦3」はオープニングがよかったよね。
仲村:曲も映像も素晴らしかったです!! もちろんアプリにもたくさん素敵な作品はありますが、僕はコンシューマに頑張ってほしい気持ちも強いので「新サクラ大戦」への期待は人一倍ありますね。冬ぐらいの発売って言われてますけど、本当に楽しみです。
山中:ストーリー構成がイシイジロウさんで、僕らの世代じゃ「428 ~封鎖された渋谷で~」を遊んでる人も多いよね。
仲村:「428」は最高でした!! だからもう、シナリオにも期待が高まりますよね。絶対買いますよ!! あとは、もうすぐ発売(※インタビューは4月中旬に収録)になる「Days Gone」も気になってます。オープンワールドでのサバイバルアクション!
山中:そういうジャンルも遊ぶんだね。
仲村:RPGは好きですけど、アクションRPGも好きなので。とくにPS3やPS4になると、こうしたオープンワールドでのTPS(サードパーソン・シューティング)とか、FPS(ファーストパーソン・シューティング)といったジャンルが流行り出したじゃないですか。
山中:オープンワールドだと「The Elder Scrolls V: Skyrim」も人気だったよね。
仲村:そういうのも結構遊びますよ。今は少し前に発売された、TPS視点のアクションゲーム「地球防衛軍5」を遊んでます。
山中:シリーズ新作の「EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN」が発売したばかりの今に!?
EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN https://www.d3p.co.jp/edfir/jp/ |
仲村:「地球防衛軍」の面白いところって、ものすごい数の武器があるところなんですよ。「これ、どこで使うんだ?!」って性能のものもあるんですけど、ステージもすごい膨大だから、それにバチッとハマる「このために作られたのか!!」っていう武器があるんです。お気に入りの武器で全然クリアできなくて悩んでいた時、違う武器に変えたらあっさりクリアできたとか、そういうのを考えながら装備を組み替えていくのが楽しいです。
山中:ちなみに、好きな武器種は?
仲村:今は一撃でも攻撃を受けたら負けるくらいの、もっとも難易度が高い「インフェルノ」でミッション101「崩れゆく街」をずっと周回していて。ここって素早くて攻撃力も高いけど、すごく耐久が脆い緑アリしかでないんです。僕は飛行兵のウイングダイバーを使っているんですが、ここでホーミング系の武器「ミラージュ5WAY」を使っています。あとは「グレイプニールα」で撃ち続けると勝手にアリを倒せるので、それがすごく気持ち良くて延々周回しています(笑)。
山中:僕は以前ユークスさんに勤めていた縁もあったし「EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN」を買ったよ。
仲村:えっ、どうですか? ワイヤーで立体的に移動できるようになったんですよね。
山中:ナンバリングの「地球防衛軍」とは少し違う遊び方になっていて、タイトル名からも海外を意識した戦略なのかなって思った。どっちかっていうと友達と一緒に遊ぶほうが楽しいかも。
仲村:開発会社も違うので「地球防衛軍」とだいぶカラーが変わったと聞きましたから(※「地球防衛軍」シリーズはサンドロット、「EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN」はユークスが開発)、そこでどうしようかなって悩んでいるところだったんですよ。じゃあ買ったら一緒に遊んでください!
究極の選択!仲村さんはビアンカ&ティファ派
山中:我々の世代に限った話ではないけど、やっぱり2大RPGといえば「ドラゴンクエスト(DQ)」と「ファイナルファンタジー(FF)」じゃないですか。世代的にある程度ナンバリングも通っているということで、まず1番好きな「DQ」は?!
仲村:うーーーーん……それぞれに良さがあるから、難しいですよね。でも本当にあえて今、挙げるなら……映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」が発表になったのもあるし「ドラゴンクエストV 天空の花嫁(以下、DQ5)」ですかね。
ドラゴンクエストV 天空の花嫁 (画像はスマートフォン版) http://www.jp.square-enix.com/dqsp/dq5/ |
山中:「DQ5」のストーリーは斬新だったよね。こんなに父と子というか、家族の物語になるとは。こんなベタなことを聞くのもちょっと気が引けるんだけど、ビアンカ派かフローラ派か聞いてもいい?
仲村:僕は完全にビアンカですよ!!
山中:僕はフローラ派。
仲村:フローラ派っていう性格してる!! 僕とは相容れないですね……だって主人公もフローラも、出会ったばかりじゃないですか。一時の感情に流されて結婚しても、きっと後悔しますよ。
山中:でもフローラは、お金持ちの富豪の娘なんですよ?!
仲村:いやいや、だって幼馴染にアンディっていうすごいイイ奴がいるのに。好きになる要素がいっぱいある彼を差し置いて、どうして出会ったばかりの主人公と結婚できるんですか?! 主人公も、幼い頃に一緒に冒険したビアンカと一緒になるべきですよ(※移植のバージョンにより、出会いの演出が異なる場合もある)。
山中:うん、ビアンカとくっつくのが王道だよね。そういうストーリーだからこそ、ひねくれた僕はフローラを選んでしまう。「スターオーシャン セカンドストーリー(以下、SO2)」でも仲間にするなら普通に選ばれるアシュトンじゃなくて、オペラとエルネストを選ぶタイプ。
スターオーシャン2 セカンドエヴォリューション (スターオーシャン セカンドストーリーのアップグレード版) http://www.jp.square-enix.com/Ocean2DL/ |
仲村:あー。僕はどちらかというと、PSも遊んだけどSFCの「スターオーシャン(SO1)」が好きでしたね。
山中:これもやり込みとか縛りプレイが好きな人にはたまらないタイトルでしたね。
仲村:「SO1」の一番強い武器に「オーラブレード」があったんですけど、それを自分の手で合成して作るんですよ。そういう部分が好きでした。
山中:僕の思い出も話しちゃうけど「SO2」にアイテムを盗む「ピックポケット」っていう技があって、中盤に最強の防具を手に入れる方法が、クロードで進めて宇宙艦「カルナス」で盗むしかできないっていうのがすごい格好良かったんだよね。
仲村:そういうの「SO1」でもありましたよ。明らかに敵のレベルが違う洞窟で、うまく逃げられる敵に当たってかわせると奥の宝箱が手に入るとか。
山中:って「DQ」の話どこいった?!
仲村:そうですよ! ビアンカだと息子の髪の色が金髪で格好よかったのも決め手ですね。キャラクターデザインが鳥山明先生ですから“超サイヤ人”(※鳥山明氏のコミック「ドラゴンボール」に登場)みたいだって。
山中:じゃあ「FF」ではどのナンバリングが印象的ですか?
仲村:「FF」もなあ……どれも好きだから1つに絞るのはすごく難しいんですが……たくさん派生している「FF7」でしょうか。映像作品の「アドベントチルドレン」も買ったし、ヴィンセントが主役の「ダージュオブケルベロス」も、ザックスがメインの「クライシス コア」も遊びました。
ファイナルファンタジーVII http://www.jp.square-enix.com/ff7sp/ |
山中:「FF7」なんだ。そうすると、さっきと同じ質問になるんですけどエアリス・ティファ・ユフィの中では誰が好き?
仲村:うーん、ユフィは可愛いと思うんですけど、盗みはよくないじゃないですか(笑)。
山中:突然の現実の倫理観! 「ぬすむ」のコマンド絶対使っただろ!!
仲村:それはめちゃめちゃ使いましたけど、やっぱりティファですよ。エアリスも好きなんですけど、どうしても悲しくなっちゃうじゃないですか……。
山中:ビアンカときてティファとくると、強気というかアッパーな女性が好きなの?
仲村:現実では落ち着いた、例えるなら休日に図書館に通ってそうな子というか、図書委員みたいなタイプがめちゃめちゃ気になりますね。
山中:そこは同じなのに、僕はユフィが好きだから好みが全然合わないね。「FF7」ってストーリーに重みがあるから、本筋とは少しずれたところでの明るさが癒しになったんですよ。
仲村:ユフィが可愛くて人気なのも分かるんですけど、でもやっぱり盗みはダメですよ!!
山中:どれだけ盗みが許せないんだ(笑)。「FF9」とか「FF6」とか、どうするの?
仲村:いや、それはそれですよ。「ぬすむ」はめちゃめちゃ使いますし、かなりいい武器が手に入るじゃないですか(笑)。
必要じゃないけど、必要――ゲームは“人生のプラスアルファ”
山中:せっかくだから、声優ならではのお話も聞いていきたいと思います。もう色々なゲームのキャラクターに声をあててきたと思うんですけど、アニメやドラマCDなどと違う、ゲームならではの心がけってあるんですか?
仲村:ゲームって“キメ台詞”みたいなものを収録するじゃないですか。アニメやドラマCDとかの会話ではさらっと言うような台詞でも、キメとなるとまた違うので、そういうところは意識してますね。
山中:芝居自体もだけど“アクションと重なった時にうまく聞こえるかどうか”みたいなのは演技と少し違う話だよね。
仲村:台詞と一緒に効果音もつく場合があるじゃないですか。そういう中で喋りますからね。
山中:アクションのボイスって、いわばSEの1つみたいなところがあるよね。僕も声優さんとゲームの収録をしていて、ゲームの収録が好きっていう方が多かったんですけど、それって尺の制限がないからなのかなと。ゲームってボタンを押せば台詞やテキストが進むってタイプが多いだろうけど、アニメって自分の間よりも、その場の空気の間みたいなものが優先になるよね。
仲村:確かにゲームだと尺の制限がないから、自由な芝居ができるっていうのはありがたいですね。もちろん、今お話しした技名のように制限がある場合もありますけど。
山中:出演してもらった「Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-」は自由だったよね。
仲村:あまりプレイアブルキャラクターでの出番がなかったので、そういう意味でStorkというキャラクターは嬉しかったですね。しかも今までやったことのない路線のお芝居でしたから、収録の時はどんなキャラクターで演じようかすごく考えました。山中さんの思っていたイメージとは違っていたみたいですけど「これでいこう」とありがたい後押しをいただいて。結果、世に出た時に皆さんからの評判がすごく良くて、僕の中で役者としての道の可能性を示してくれたキャラクターですね。
山中:すごく愛されるキャラクターになったよね。「イケメンばかりじゃなくて、こういうキャラクターもやってみない?」ってお願いしたっけ。
仲村:「イケメンばっか演じてるから、すごい変態のキャラクターを演じてもらいたかった」って言われましたね(笑)。
山中:宗悟とはお仕事でご一緒する前に知り合っているので、プライベートで「こういう面もあるのにな」と思う部分があって。それが、ちょうど作っていたキャラクターとハマって面白くなりそうだなと考えたのがお願いしたきっかけですね。それを真っ直ぐ伝えるのが恥ずかしくて出た言葉が「イケメンばっかり演じてんじゃねぇ!」っていう(笑)。
仲村:これがきっかけだったのか分かりませんけど、きわどいキャラクターを演じることが増えましたよ。お芝居の中で、真剣にふざけられるキャラクターみたいな。ありがたいことですね。収録も面白かったです。
山中:あと、これを聞いておきたかったんだけど、完全に妄想でいいので「俺の考えた面白いゲーム」みたいなものってあります?
仲村:例えば「ソードアート・オンライン」とか「レディ・プレイヤー1」とか、ああいう仮想現実のゲームって皆が夢見ていることだと思うんです。僕も映画を見てめちゃくちゃ興奮しましたし。これくらいのクオリティのゲームが遊べる時代って、いつくるんだろうと夢見てますね。あれが本当になったら現実に戻ってこれないですよ。VRのゲームはまだそこまで触れられていないんですけど、すごく興味がありますね。
山中:では時間も迫ってきたので……ズバリ、仲村くんにとってゲームとは?
仲村:うわ、なんかテレビ番組っぽい(笑)。僕にとって……ゲームは“人生のプラスアルファ”ですかね。
山中:ちゃんと1ワードにまとめるってあたり、さすがだね。
仲村:ゲームって、やっぱり娯楽じゃないですか。
山中:生きる上で必要不可欠なものではないよね。
仲村:必要ないけど、でも絶対に必要なんですよ。生きていく上で潤いを与えてくれる、その上乗せの楽しさがある“プラスアルファ”だと思います。
山中:心の栄養ですよね。じゃあ最後に、この場を借りて読者の方に一言あれば。
仲村:僕があまりゲームを遊んでいないように思われている方も多いかもしれませんが、実は人生の中でゲームの占める比重はとても大きいんです。これからもゲームと関わって生きていきたいと思っていますので、こんなゲーム好きもいるんだよと覚えていただけたら嬉しいです。一緒に楽しいゲームライフを満喫しましょう!
山中:あまり照れながら言わないように(笑)。
仲村:あはは(笑)。声優・仲村宗悟としてもどうぞよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました!
山中 拓也
ゲームの企画,脚本,プロデュース,ディレクションなどで活動中。代表作はアニメ化も果たした「Caligula -カリギュラ-」シリーズで、直近の仕事は機動戦士ガンダム40周年プロジェクト「SDガンダムワールド 三国創傑伝」の脚本。元カウンセラー志望で心理士資格を取得している。