千葉・幕張メッセにて、9月12日より開催中の「東京ゲームショウ2019」。コーエーテクモゲームスブースにて、2020年初頭に発売予定のPS4ソフト「仁王2」のプロデューサー兼ディレクターを務める、Team NINJAの安田文彦氏へのインタビューを実施した。
アクションゲーム制作の豊富な経験があったからこそできた臨機応変な判断
――まず少し前作についてのお話からお聞きかせ下さい。本作はかなり長い間開発が行われたタイトルだと思うのですが、現在の「戦国×死にゲー」というコンセプトができたのは、いつ頃だったのでしょうか。
安田文彦氏:最初に「仁王」というタイトルが発表されたのは、2005年のPS3への参入が決定した時でしたが、その頃はまだ私は入社すらしていませんでした(笑)。
2014年頃に私が開発のディレクターになることになり、その頃フロム・ソフトウェアさんの「ソウルシリーズ」が非常に盛り上がっていたこと、加えて我々Team NINJAも「NINJA GAIDEN」といったアクションゲームを作っていたことを加味して、難易度の高いアクションRPGという方向性を固めました。
――その後、ユーザーの反応をみながらα、βテストを実施されていましたが、α時点で存在していた武器の耐久度が撤廃されるということもありましたよね。
安田氏:そうですね。最初にα体験版を配信した時、歯ごたえのあるゲームにしたかったのは確かだったのですが、ちょっと反応を見てやりすぎたなと。もちろん我々としても考えて実装したものであったのですが、プレイヤーに無理を強いるつもりはなかったので、すぐに違う方向に舵を切りました。
――Team NINJAさんといえば、アクションゲームの開発において物凄い実績をもつ開発スタジオじゃないですか。それが、一度出したものをすぐ切り替えられるのがすごいなと。
安田氏:よくいえば臨機応変、悪くいえばポリシーがないということですが(笑)。というのも、アクションゲームの開発において作りながら仕様を変えていくのは、プロセスとしてよくあることなんですね。
どれだけロジックが通ったシステムや仕様でも、実際に触ってみたら何か面白くないというのはままあることで、そこから実装を中止したり別の方向性を考えたりというのは、日常茶飯事なんです。これは「2」についても同じなのですが、その時のお客さんの反応も含めて、総合的にそれがベストだろうと判断しました。
――そうやって作られた「仁王」は、まさに“傑作”と呼ぶに相応しい完成度ゲームになったと思うのですが、プレイしていて感じたのは、「残身」というシステムの素晴らしさです。
安田氏:プレイヤーと敵と両方の行動をフェアな形である程度制限するルールとしてスタミナ的な要素は必要だろうと考えていたのですが、その上でもう一つ、手触りとしても本作独自のものがほしいなと、開発当初から考えていました。
実はイメージしていたのは「Gears of War」のアクティブリロード的なもので、レイヤーのやりこみ次第でショートカットができるシステムがあると、全体のゲームデザインの中に魅力を出せるのではないかなと。そのあたりの要素は、「2」でもしっかりと引き継いでいます。
「妖怪化」など多数の新要素が追加
――「仁王2」では、これまでの「戦国×死にゲー」に加えて、「妖怪」というコンセプトが発表されていましたが、これはどういった位置づけになるのでしょうか。
安田:前作では外国から来た主人公が侍になっていくまでを描いていたこともあり、侍のアクションにフォーカスしていました。そこから次の作品を作るとなった際、新しい軸が必要になるだろうなと、前作の時点でも登場していた「妖怪」の力を主人公にも持たせようと。
敵の妖怪もより強くなっているのですが、主人公も妖怪の力が使えるようになるというのは、進化の方向性としては正しいのかなと。
――その妖怪の力を使った新要素について教えてください。
安田氏:まず「妖怪化」はほぼ前作の「九十九武器」に代わる位置づけの要素ですが、それ以外の状態でも妖力ゲージを消費することで強力な「妖怪技」というものを使うことができます。この「妖怪技」というのは、敵の妖怪が落とす「魂代」によって変化し、これを装備することで、その妖怪の技が使えるようになるという仕組みになっています。
――新たなアクションとして「特技」も使用できるようになりました。
安田氏:“猛”、“幻”、“迅”の3種類の妖怪の属性があるのですが、その属性に応じた技を使用できるのが「特技」で、敵のボスなどが使用する大技のタイミングに合わせて使用することで、攻撃のスキを作ったり、大幅に妖力を回復したりというメリットを得られます。
――自分も実際にプレイさせていただいたのですが、自分は前作からヒット&アウェイ的な立ち回りを主軸にしていて、つい敵から離れてしまう癖があるので、なかなか大技に合わせるのが難しいなと。
安田氏:そうですね、ボス戦では実際それだけを狙っているわけにはいきませんから、敵の攻撃のクセをしっかりと覚えてもらわないと、なかなか使いこなすのは難しい要素だと思います。ただ、慣れてくると、かなり有利に立ち回れるようになります。
――もうひとつの新要素として「常闇」というエリアも追加されるようですが、こちらはどういった場所になっているのでしょうか。
安田氏:現実が人間の世界であるのに対して、妖怪の世界となるのが「常闇」と呼ばれる場所で、人間は弱体化し、反対に妖怪は強化されるというギミックになっています。ただ、プレイヤーが一方的に不利になるわけではなく、妖怪技をより積極的に使用できるようになるなど、プレイヤーにとってのメリットもあり、少し立ち回りが変わってきます。
ボス戦などでは、バトルエリア全体が「常闇」となっていることが多いですが、通常のフィールドでも、一部のエリアが「常闇」化していることもあります。
――前作から操作周りが少しだけ変わっていますよね。前作ではアイテムの切り替えがワンボタンだったのが、武器の切り替えとかと同じ操作にまとめられていて。
安田氏:本作から妖怪技や特技といったコマンドが増えたこともあり、そのような形式になりました。ただ、前作と同じ方式がいいという方も、オプションで変更が可能になっているのでご安心ください。
追加される新武器は変わり種の性能に
――本作は前作のウィリアムから変更となっていますが、ストーリー的なつながりというのはあるのでしょうか?
安田氏:前作は関ヶ原あたりの時代を描いていたのですが、本作では織田信長たちが活躍する安土・桃山時代を描いているので、時系列的には前作よりも前になります。
加えて「仁王2」では、竹中直人さん演じる木下藤吉郎と本作の主人公が、二人で豊臣秀吉だったという設定になって、秀吉が成り上がっていく様を主人公の視点から体験できるようになっています。あの竹中直人さんに藤吉郎を演じてもらえるというのもそうですし、日本の歴史の中でも特に人気の高い時代ですから、物語の方も見どころが多く、期待していただければと思っています。
――今回の主人公はキャラクタークリエイトで作成する方式となっていますが、前作のウィリアムのように、ストーリー中で喋ったりはしないのでしょうか?
安田氏:そうですね。基本的に本作の主人公はほぼ喋らないようになっていいます。前作のウィリアムの時点でも、一般的な主人公として口数が多い方ではなかったのですが、今回はよりプレイヤーが感情移入しやすい形にしようと。性別や見た目なども、プレイヤーの好みで自由にカスタマイズしていただければと思っています。
――性別によって、パラメーターの数値が微妙に異なるということはないのでしょうか?
安田氏:そこは男女平等に、まったく同じパラメーターとなっているのでご安心ください。
――パラメーターでいうと、「霊」の項目がなくなっていたなと。
安田氏:そうですね、その代わりに新たに「勇」という項目が追加されています。ここはRPG的な要素と、妖怪技や装備品との兼ね合いで調整した部分になります。
――新しい武器については、現段階でお話できることはありますか。
安田氏:これについては、まだまだ開発中の段階でして。ただ、ある程度オーソドックスな武器はもう前作の時点で揃っているので、追加するのは少し変わり種のものになると思います。
今回TGSに出展したバージョンでは、その一つである「手斧」を使用できますが、こちらも中距離から無限に投擲ができるという一風変わった性能になっているので、是非会場でお試しいただきたいですね。武器以外にも新要素が多いのもあり、劇的に数が増えるということはありませんが、今回公開した「手斧」以外にも新しい武器種は実装する予定です。
――前作までの武器種も、少し使い勝手が変わっていたりするのでしょうか?
安田氏:基本的なモーションなどのアクションは前作を踏襲してはいるのですが、既存の武器にも武器固有のスキルである武技に新しいものを追加していますので、使い勝手が変わってくるものもあるかと思います。
――主人公に同行して妖力を自動回復してくれる妖怪「すねこすり」も登場しますが、「すねこすり」は自分が倒されなければ、ステージの最後までついてきてくれるのでしょうか?
安田氏:「すねこすり」が同行してくれるのは一定時間の間になります。強力な敵が出現すると、隠れて見えなくなってしまうこともありますが、その間も回復効果は継続して発揮されます。敵の攻撃を受けて倒されたりすることはないので、ご安心ください。
気兼ねなく共闘を楽しめる「義刃塚」も追加
――オンラインマルチプレイについても変更点が多いですよね。
安田氏:一番変わるのは、人数が2人から3人に増えたことですが、それ以外にも非同期のオンライン要素として、「義刃塚」が追加されます。こちらは敵として出現する「血刀塚」とは反対に、他のプレイヤーを模したNPCが同行してプレイヤーを助けてくれます。
やっぱりリアルタイムでの協力プレイって、尻込みをしてしまうという方もおられると思うんですが、非同期の「義刃塚」にはそういう気を使う必要がないので、ボス戦などで困った際に気軽に活用していただければと思っています。
自分の「義刃塚」が表示される地点は、アイテムを使用して指定できるのですが、他のプレイヤーに多く使われると、報酬が手に入るようになっているので、自分で苦労したと感じたポイントに設置していただくのがいいのかなと。
ただ、ボス戦の前など、明らかに誰もが配置するであろう競争率の高い場所では、使われる回数が減ってしまう可能性もあるので、穴場みたいな場所を見つけ出してもらうのも面白いかもしれません(笑)。
――「義刃塚」はオフラインでも利用できるのでしょうか?
安田氏:オンラインと比べると数は少なくなりますが、いくつかの「義刃塚」は予めプリセットで設定されているので、オフラインでも利用できます。実は「義刃塚」の中には、戦国時代の有名な武将が隠されていたりもするので、それを見つけ出してもらうという楽しみ方もあります。
――すでにαテストは一度実施されていますが、その時に得られたフィードバックとしては、どんな要素があったのでしょうか。
安田氏:基本的な楽しさは「2」にも引き継がれていることを評価していただく声が多い一方で、もう少し「2」ならではの要素が足りていなかったのかなと感じました。実はαの段階では、特技などの新要素は入っていなくて、今回のバージョンで追加したものなんです。
死にゲーの面白さって、「どうなるか分からない手探り感」にもあると思っていて、あまり前作のバランスを引き継ぎすぎると、前作からのプレイヤーの楽しみが少なくなってしまうだろうなと考え、新要素を多めに追加することにしました。
――前作は、αテストの後にもβ、完全体験版といった形でゲームを体験できる機会が用意されていましたが、今回もそういった施策は予定されているのでしょうか?
安田氏:そうですね。「2」でもそういった機会は予定していますし、DLCの計画もありますので、発売後もこまめなアップデートで完成度をより高めていきたいと思っています。
すでに発表しているリリースのタイミングには、できるだけ完成したものを皆さんにお届けしたいとは思っているのですが、要素自体が非常に多いボリュームのあるゲームでもあるので、やはり至らない部分というのも出てきてしまうと思います。そういった箇所も含めて、プレイヤーの皆さんと長期的なコミュニケーションを取りながら、ゲームの完成度を高めていければと考えています。
――最後に、発売を待つプレイヤーへのメッセージをお願いします。
安田氏:「仁王」が非常に好評をいただいたおかげで、続編が作れるようになりました。前作を遊んでいただいた方はもちろん、「2」から「仁王」をプレイする方にもしっかりと楽しんでいただけるゲームに仕上げていくつもりです。2020年初頭の発売に向け、今後発表される続報も含め、楽しみにお待ちいただければと思います。
――ありがとうございました。