プレイヤーの進化がヒトの進化である―「アンセスターズ:人類の旅」レビュー

プレイレビュー
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12月6日よりPS4/Xbox One版が配信された「Ancestors:The Humankind Odyssey」(アンセスターズ:人類の旅)をレビュー。

Ancestors:The Humankind Odyssey公式サイト
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多くのフィクションは、さまざまな出来事を擬似的に経験させてくれます。銃撃戦、恋人の死、未知との遭遇、時には犯罪まで……ゲームもその例に漏れないわけですが、コントローラーでの操作を伴うゆえ、経験というよりは「体験」と表現したほうが、その意味に近づく気がします。

ところで、皆さんは類人猿になったことがありますか? いえ、これを読める皆さんが「ヒト」なのは承知しているところです。フィクションを含めて、そんな経験をしたことがあるでしょうか。

おそらくですが、そうそうないかと思います。活字や映画といったメディアでは、我々が言葉と認識するものがない時代を、表現はできても体験させるのは難しいのではないでしょうか。

その領域は、ゲームが得意とするところであります。今回紹介する「アンセスターズ:人類の旅」は、1千万年~200万年前、新第三紀のアフリカで、初期人類となって進化を重ねていくオープンワールドアドベンチャーです。

進化とは発明である

率直に言いますと、このゲームは少々難易度が高くなっています。というのも、ゲーム中に与えられるヒントがほぼないのです。PC版から、ゲームシステムを理解しやすくなるアップデートこそ施されているものの、「~~なので~~しましょう」という指示はありません。

つまり、自分ですべてを見つけ出さないといけないのです。

プレイヤーは「感覚」「知性」といったアクションでジャングルにあるモノや生物を認識し、近くまで移動し、手に取り、把握していきます。繰り返しますが、我々は初期人類なのです。

ゲームは、弱肉強食を思わせるムービーからスタートします。魚を鳥が喰い、鳥をワニが喰う……最後に親猿が大きな鳥に殺され、逃げ延びた子猿がプレイヤーとなります。この時代、自然界の頂点は決して人類ではないのです。

※便宜上、この原稿では初期人類を猿と呼称します。

プレイヤーが操作することになった子猿の周辺は画面が青ざめ、今にも襲いかかってきそうな獣のシルエットが浮かんでは消えていきます。その中で「安全な場所を見つけてそこに身を隠しましょう」といった指示が出ます。

え? どうやって?

当然ながら子猿には周囲の脅威から身を守るような戦闘能力はなく、ただただ「感覚」を頼りに安全な場所を探すのみ。冒頭からして、自然の恐ろしさ、種として生きながらえることの難しさを痛感します。

このゲームに「主人公」は存在しません。物語が用意されたゲームなら、あの生き延びた子猿が成長し、主人公になりそうなものですが、本作では第1の目的をクリアすると、今度は群れをなしている初期人類たちの1匹となってゲームを続けていきます。

こうしていくつかの目的を達成していくのですが、その具体的な方法はまったく伝えられません。例えばこんな目的が提示されます。

「睡眠場所を建築しましょう」

え? どうやって?

とにかく手探りです。なんか定住地に草を集めたベッドみたいな場所があるけど、これは元からあるものだしなぁ……と、あちこち歩き回ったり、生えている草をちぎったりして、ようやく気づくのです。

あれと同じものを作ればいいのか!

というわけで、ソテツを集めてあるアクションを繰り返していくと、睡眠場所ができました。もう本当に、自分自身が初期人類になった気分です。何もわからない。何もわからないところから物の意味を捉え、ひとつひとつを「発明」していきます。その時の喜びもひとしお。プレイしている自分自身まで進化していることが感じられるのです。クリエイティブなことが好きな方は、特に楽しめるのではないでしょうか。

生きろ

都度提示される目的の達成は、ゲームを進める上で大事ではありますが、そもそも生き延びなければなりません。つまり、空腹になったら食事が必要ですし、水分も睡眠も摂らないといけない。睡眠は安全な場所であれば「ねそべる」コマンドからできるのでまだ良いのですが、食べられるものと水場は自分で探さないといけません。ゆえに、安全な定住地から出ることは必然です。

ジャングルの中は危険がいっぱいです。まず迷います。マップなんてものはこのゲームには用意されていませんし、近くだと思ったポイントがやたら遠かったりします。迷った先で、ワニやヘビ、イボイノシシと遭遇したときの絶望感はハンパない。凄まじく怖いのです。

噛みつかれながら、命からがら逃げ出しても、「裂傷」というステータスになり、放っておけばそのまま死にます。あるものを採取して使えば治るのですが、当然それも説明されないので、自分で勘づく必要があります。「感性」で採取できるものの場所がわかったり、アイコンである程度の使用用途や効果が推測できるぶん、当時の初期人類よりはイージーモードかもしれません。

尽きる生命力が描くドラマ

例え穏便な場所で生き続けていたとしても、いつかは死んでしまいます。プレイヤーが操作する猿には年齢によって余命や生命力が設定されており、画面中央下部の丸型アイコンがそれです。これが消えたとき、プレイヤーが操作していた猿は息絶えてしまいます(ちなみに、死ぬと同じ氏族の別の猿に操作が移り、氏族の最後の猿が死ぬとゲームオーバーです。氏族の数が“残機”ということになります)。

この生命力が絶える瞬間が、何とも言えない感情を生み出してくれます。生命の終わりを描いた作品はゲームに限らず多々存在していますが、この作品は単に「1機減った」という気分にならないのです。

ある時、筆者はオスとつがいになったメス猿を操作しながら、とある目的でジャングルをさまよっていました。ですが、気づけば生命力がわずかになっていて、走ることもおぼつかなくなってしまいました。せっかくつがいになれたのに死んでしまうなんて……と思っていたら、本当に命が尽きる間際に、一本の滝を発見しました。その時に映し出された滝の景色がとても美しく、きゅうっと胸が締め付けられてしまったのです。

この時代、この世界で生き延びるためには、景色なんて何の役にも立たないけれど、最期にこの滝を見られて良かった……と思うのは、プレイヤーという「人間」の勝手なのかもしれません。ただ、現代から見れば数百年、数千年単位でしか把握できない時の流れを顕微鏡で覗けば、こんなドラマもあったのではないかとも思います。

昨今のゲームと比べると、確かに難しい部類の作品ではあります。しかし、ひとつひとつの発見を重ね、脅威と戦い、進化を続けていく過程で、人類の進化を描くゲームプレイの内側に強く惹きつけられていくことは確かです。下記に少しばかりのヒントを掲載しますので、ぜひ参考にしながら、猿たちとともに進化を重ねていってください。

ゲームプレイのヒント

自分のペースでプレイしよう

「アンセスターズ」は発見と旅をテーマにしたゲームです。一般的なゲームとは異なり、「アンセスターズ」ではプレイヤーが自ら目標を設定して、自分だけのストーリーを作り出すことができます。急いでクリアする必要はありません。

ほとんどのアクションは「長押ししてから離す」

ジャンプや木々の間のスイング、オブジェクトの識別など、ゲーム内のほとんどのアクションは対応するボタンを長押しする必要があり、その後、離すことでアクションが実行されます。

効果音に注意しよう

一部のアクション(戦闘、クラフト、毛繕いなど)はアクションボタンを離す適切なタイミングを音で教えてくれます。成功させるために、耳を澄ませて効果音に注意しましょう。

チュートリアルが利用可能

「アンセスターズ」では、自ら発見すべきものが多いとはいえ、アビリティや操作コマンドに関する情報について確認したいこともあるでしょう。これは「ヘルプ」メニュー内(ポーズ→オプション→ヘルプ)で確認できます。

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