千葉県の幕張メッセで開催された「ジャパン アミューズメント エキスポ2020(JAEPO2020)」の2日目である2月8日に、セガ・インタラクティブ ブースで「GUILTY GEAR -STRIVE-」のスペシャルスページが開催された。こちらでは、その模様をレポートする。
まず、オープニングで登壇した「GUILTY GEAR -STRIVE-」ゼネラルディレクターの石渡太輔氏とディレクターの片野アキラ氏から、同シリーズの紹介が行われた。この「GUILTY GEAR」は、2D格闘ゲームの代名詞として20周年を迎えた人気シリーズだ。その魅力は、洗練されたゲームシステムから生み出される高い競技性と、スピード感にある。
そのシリーズ最新作として現在開発中の「GUILTY GEAR -STRIVE-」では、大迫力のアニメーション演出や手描きアニメのような質感を持つ3Dビジュアルを実現。アークシステムワークス渾身の一作として、今年の秋以降にリリースされる予定だ。
トッププレイヤー4名がエキシビジョンマッチで腕試し
ここでゲストとして、「GUILTY GEAR」プレイヤーであるFAB選手、ロイ選手、あいん選手、サミット選手の4名が登壇。ALL.Net P-ras MULTI バージョン3(AMP3)版の「GUILTY GEAR -STRIVE-」を使って、エキシビジョンマッチが行われた。
ちなみに、今回イベントに出場した選手たちには、それほど多くの時間ではなかったようだがこの試合に先駆けて事前に2日間だけ試遊できる機会が与えられていたそうだ。
ルールは1試合2ラウンド制2試合先取方式で実施。まずは、FAB選手と「打倒FAB」を掲げているロイ選手という因縁の組み合わせに。FAB選手がポチョムキン、ロイ選手がソル=バッドガイという戦いだったが、FAB選手がロイ選手を退け決勝に進出。
2試合目はあいん選手のカイ=キスクとサミット選手のチップ=ザナフという戦いに。こちらは、先にあいん選手がリーチをかけたがサミット選手が取り返しダブルリーチに持っていく。プレイ中、お互いに調子が上がってきたのか動きが良くなっていったが、最後はあいん選手が押し切り決勝に進出を決めた。
決勝は、FAB選手のポチョムキンとあいん選手のカイ=キスクの戦い。取ったら取り返すという攻防が続く中、1本目を取ったのはあいん選手。2本目はFAB選手が「ポチョムキンバスター」を決め1対1のタイに。
FAB選手が得意の「ポチョムキンバスター」で追いつくも、あいん選手がDUEL1を制す。そのままの勢いで押し切った形で、あいん選手が優勝を決めていた。
トップ選手と開発陣によるざっくばらんなトークセッションも開催
続いて、今回のゲストを含む登壇者によるトークセッションが行われた。ちなみにこのイベントは本来13時10分頃で終了する予定だったが、このトークセッションが白熱しなんと14時近くまで延長されることに。こちらでは、その一部を抜粋してお届けする。
まずは、実際に「GUILTY GEAR -STRIVE-」を触ってみた感想を聞かれた選手たち。サミット選手は、事前の情報では出来ることが少なくなったと言われていたが、触ってみるとできることが残っていると語り、あいん選手は掘り下げる要素もあるため期待できると述べた。ロイ選手は、自身のメインキャラであるソルについて、2日間触った中でやり込めばコンボが見つかる奥深いモノになっていたという。
FAB選手は、本作について「完全新作の『GUILTY GEAR』というのが感想だ」と前置き。これは、一見当たり前のことを述べているように思えるが、従来までのシリーズ作品では共通のシステムがあり、それを流用することができた。しかし、今作では細かい部分が変わっており流用することができない。
つまり、従来までの定石が通用せず、完全に新規を作っていく力や格ゲー力のようなものが問われることになるという。しかし、元々シリーズをプレイしてきた人たちにとっては、技自体の知識は運用することができ同じような流れで使うことができる。そのため、新規で始めるプレイヤーと従来までのプレイヤーがちょうどいい形でスタートすることができるのだという。
中でも重要なのが、「GUILTY GEARらしさ」が失われていないところであるとFAB選手は語る。これは、テンションバランスとR.I.S.C.レベルゲージの攻め幅の大きさと、新しくなった空中戦の攻防、新ロマンキャンセルの戦略性を高速で判断していくカタルシスが、「GUILTY GEARをやっているな」と感じさせてくれる部分だからだ。
これはプレイヤー側の意見だが、「GUILTY GEARらしさ」の例として、開発陣の間で一番多く出てくるワードが「悪さ」だと、シリーズの生みの親でもある石渡氏は語る。
プレイヤーが、その「悪さ」を発見したときに楽しく感じたり、突き詰めていったりする。それが通常のプレイではなかなか見えてこないところに面白みがある。そして、それをどれだけ入れることができるかという部分が他社の格闘ゲームと比較しても多く、これこそが開発陣が考える「GUILTY GEARらしさ」となっているのだ。
プレイヤー側から、今回の「GUILTY GEAR -STRIVE-」ではどのような方向性で調整をしていくのか聞かれた石渡氏。「GUILTY GEAR」シリーズに20年間携わってきた中で、バランス調整で一貫しているのが「マイルド調整よりもワイルド調整」である。
マイルド調整とは、バランスは取れているがゲームとしての面白みに欠けていたり“毒”がなかったりするような状態だ。それに対してワイルド調整では、多少バランスが崩れていても“毒”を与えてやりたいのだという。そして、その“毒”が非常に美味しいと感じるようなバランス調整を目指している。しかし、実際のところは現場でバランス調整を行っている人の影響が大きくなっているそうだ。
これは、「eスポーツ」というワードと開発陣がどう向き合っていくのかという話にもなると片野氏。根っこの部分では、平等なゲームよりも尖っている部分があるほうが、「GUILTY GEAR」らしさが出ると考えている。しかし、全国大会や世界大会、プロゲーマーが登場して家族を養っている人も出てきているという状況の中、ゲームと競技についてどう向き合っていくのかという部分についても、常に議論が行われている。
これまでよりも、空中ダッシュがやりにくくなり、防御側が運ゲーになってしまうという意見については、空中ダッシュが成立した時点で攻め側が有利になっていると片野氏は説明。こちらは昨年のバージョンにはなかったもので、まだまだ手探りといった状況のようだ。
海外では空中ダッシュがあるゲームは「エアダッシュゲー」と言われるぐらいに、格闘ゲームにおいてそれがあるかないかでは別のジャンルとして扱われるような風潮がある。それについて石渡氏は、「従来までは単純にシンプルで自由度」を求めて作ったものだと語る。極力直感的にしたかったため、これまでは入力すればすぐに反応し、思い描いた形で操作が行えた。
しかし、このシステムの弱点として、見ている側が何が起きているのかわからないということがあった。また、ゲームを始めたばかりの人がそれをやられてしまうと、どう対処すればよかったのかが分かりずらい。そこで、見ている時点で相手が何をしているのか分かるようにしたというのが、現在のバージョンだ。さらに、単純に飛ぶということに対するリスクを上げたいという思いも含まれている。
開発意図としては、ハイリスク・ハイリターンという重みを持たせたものとなっているようだ。
サミット選手からは、昨今の格闘ゲームはライトゲーマーでも遊べるように配慮されているが、「GUILTY GEAR -STRIVE-」はターゲットをどこに置いて開発しているのかという質問が出た。
開発陣側からは、ターゲット自体はこの場では言えないが、これは「難しい」か「簡単」かという定義になるという。従来の製品でもスタイリッシュコンボのようなものは取り入れられてきたが、今回はこれまで良しと思ってきたこともすべて変えて新しく変えようということをスローガンに作られている。
石渡氏は、自身の中で「コンボが簡単にできる=簡単」ということに疑問を持つようになった。あくまでもマニュアル操作でしっかりやらないと上手くならないという、意識のハードルが高いのではないかと考えるようになったという。
そこで、覚えなければいけない下地に関しては全員が同じラインに立っていると思えるようなシンプルなシステムにしようとしているそうだ。
これまでのシリーズでは、UIはロックな感じだったが、今回はポップなものに仕上がっている。これに関しては、失敗でまだまだ作りかけだと石渡氏は説明。ただ、これまでの重苦しい空気よりは入りやすさを意識して開発が進められているそうだ。
UIがポップになっただけではなくR.I.S.C.レベルゲージも見えにくくなっているが、こちらは意図的にそういう風に作られている。世の中に無数にある格闘ゲームだが、単純にゲージがたくさん並んでいるとこれから遊んでみようと思っている人は、それを見た瞬間に尻込みしてしまう。こんなに考えなければ遊べないのかと思われてしまう要素を、極力画面から排除していきたいということから、目立たないようにしているのである。
わかる人だけわかることを目指しているそうだが、現状はわかるはずのプレイヤー側からわからないという意見が出ているので、そちらに関してはなんとか改善していきたいとのこと。
今年の春には、オンラインベータテストの実施も予定されているという本作。最後に石渡氏からは、「巷ではeスポーツが話題になっていますが、僕個人の捉えかたではこれが人の輪を広げたり繋げたりするものに持っていけたらいいなと思い、この作品を作っていくつもりです。面白いだけではなく、ひとつのコミュニティを形成するための作品としても興味を持っていただけると嬉しいです」と語り、イベントを締めくくった。
気になるアーケード版が稼働するのは、家庭用版のリリースとほぼ同時期目標だという。今後の続報に関しても、注目していこう。