「ロマンシング サガ」シリーズの楽曲をフルオーケストラで演奏するオフィシャルオーケストラコンサート「ロマンシング サガ オーケストラ祭(フェス)」が2020年2月16日に東京芸術劇場コンサートホールにて昼・夜の2公演で開催された。ここでは、その昼公演の模様をレポートしていく。

目次
  1. 公演終了後インタビュー
  2. セットリスト

「サガ」のオーケストラコンサート自体は2016年から開催されているが、今回のコンサートは「ロマンシング サガ」シリーズに特化したコンサート。「下水道」など、これまで演奏されなかった曲もチョイスされたほか、「ロマンシング サ・ガ」のリメイク作である「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」や「ロマンシング サ・ガ2」を題材にした舞台「SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~」、2018年から配信されている「ロマンシング サガ リ・ユニバース」からも曲がチョイスされ、バラエティあふれる曲目が楽しめた。

1曲目は「ロマンシング サ・ガ」からオーバーチュア~オープニングタイトル。コンサートのオープニングを飾るのにふさわしい壮大な曲で、会場にいた人たちのなかには激しい稲光と「まだ人間が、この世に生まれて間もないころ悪しき三柱の兄弟神がおりました」というゲームのプロローグシーンが頭によぎった人も多かったのではないだろうか。

1曲目が終わると作曲家の伊藤賢治氏とMCの結さんが登場。伊藤氏は「ロマンシング サ・ガ」の曲は20代前半のときに作った曲だったと当時を振り返った。また、結さんは「ロマンシング サガ」シリーズは難易度の高いシリーズなので冒険していて心細くなることもあるが、曲はそんな自分の心細さに寄り添ってくれた大事な存在であったと打ち明けた。

2曲目は幻想的な曲である「迷いの森」と激しい曲である「下水道」のメドレー。迷いの森から下水道の曲に自然につながっていく様子はコンサートならではの迫力や新鮮さがあった。

ふたたび登場した結さんは「世界一格好いい下水道」と感想を伝え、伊藤氏はインターネットなどで「抱かれたい下水道」などと言われることがあり、ひっくり返ってしまったと笑いを誘った。

3曲目はバトルのメドレー。もともと、ギターとドラムがビートを刻み、トランペットが高らかに旋律するいわゆる「イトケン節」が炸裂する曲だが、オーケストラになったことによりさらに迫力の増す曲となった。

4曲目からは「ロマンシング サ・ガ2」へ。プロローグである「遥なる戦いの詩」から「帝都アバロン~皇帝出陣メドレー」と実際のゲームの流れを感じるような構成だ。6曲目は「バトル1~七英雄バトルメドレー」。迫力を感じるのは「ロマンシング サ・ガ」のバトルと同様だが、「バトル1」はオーケストラ用によりアレンジされており、さらに聴き応えのある曲になっていた。

ここで伊藤氏がじつはバトル曲を作るのがニガテであることが打ち明けられた。もともとバラードばかり聴いていたことは入社当初から会社に伝えていたが、植松伸夫氏に「修行だと思ってがんばれ」と伝えられたそうだ。またバトル曲のような“たぎる”曲は自分自身もたぎらないと作れないらしく、完成したときにはヘトヘトになっているとのこと。

7曲目はHDリマスター版の記憶も新しい「ロマンシング サ・ガ3」から「プロローグ~死食の脅異~」。8曲目が「フィールド~バトル1メドレー」、9曲目が「アビスゲート~四魔貴族バトル1~四魔貴族バトル2メドレー」で、曲が進むごとにどんどん盛り上がっていき、最高潮の盛り上がりのまま第1部は終了となった。

第2部は「ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング」より「オーバーチュア」からスタート。こちらは編曲も伊藤氏が担当しており、第1部の「オーバーチュア」と比べるおもしろさもあった。

また、伊藤氏は「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」の曲はフリーランスになってはじめての曲ということもあり、リメイクを超えてリニューアルのような気持ちで挑んだそうだ。

続いては「巨人の里~邪聖の旋律メドレー」で、「邪聖の旋律」は会場のパイプオルガンを使用した壮大な曲となった。3曲目は「最終試練~死への招待状メドレー」。「死への招待状」は原曲もオーケストラだが、生の演奏にとってさらに迫力のある曲に進化していた。

4曲目からは「SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~」から選ばれた曲に。「クイーン誕生~オープニングアクト」が終わると「テンプテーション♥ -RS Version-」「愛の歌~満ち足りた二人:ノエルとオアイーブ」を披露することになり、ヴァイオリンソリストの真部裕さんも登壇して曲を演奏した。

結さんに舞台の感想を聞かれた伊藤氏は俳優さんや女優さんの演技が素晴らしくて感動したことを伝え、曲作りのスケジュールはハードだったが、スイッチャーの方々のプロの仕事に助けられたことを明かした。

7曲目からは「ロマンシング サガ リ・ユニバース」の曲へ。筆者も毎日プレイしている作品だが、普段スマートフォン越しに聴いている曲が生のオーケストラで聴くことができるのは迫力が違って感慨深かった。ゲームを起動すると流れる曲のため耳に馴染みの深い「候国の旗のもとに」からはじまり、続いて「頂を目指して~Grave Battle メドレー」「再生の絆~Re:univerSe~」が披露された。

鳴り止まぬ拍手で迎えたアンコールは「ロマサガ1、2、3ラストバトルメドレー」で最高の盛り上がりを見せることに。会場にいた人たちもそれぞれゲームで最終決戦に挑んだときのパーティ編成や熱いバトルを思い浮かべたのではないだろうか。

ここで「サガ」シリーズの総合ディレクターを務める河津秋敏氏が登場。「ロマンシング サガ」シリーズ舞台化第3弾の「SaGa THE STAGE ~約束のマルディアス~」を発表した。河津氏が「『ロマンシング サガ』『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』をベースにした物語になります」と説明すると、結さんから「ちなみに曲の発注は?」と質問が。河津さんが伊藤氏に「やってくれるよね?」と呼びかけると、「家でしっかり仕事をしろということですね」と快諾した。

また、シリーズ30周年ということもあり、河津さんからは今後の展開にも含みを持たせた発言も。次に発表されるであろうなにかしらのサプライズにも期待したいところだ。

ラストは「ロマンシング サ・ガ3」の「エンドタイトル」を伊藤氏自身もピアノを弾くというサプライズもあり、この曲の演奏によってコンサートは幕を閉じた。

公演終了後インタビュー

公演後には伊藤賢治氏と河津秋敏氏、さらに「サガ スカーレット グレイス」などでプロデューサーを務める市川雅統氏の3名がインタビューに応じてくれたので、その模様をお届けしよう。

――今回のコンサートの感想をお聞かせください。

市川:今回のコンサートは30周年の第1弾として発表させていただきましたが、今までの「サガオケ!」では演奏しなかった曲も多かったです。また、今回はメドレーが少なかった分、ひとつひとつの曲をしっかりお聴かせすることができたのではないかと思っています。また、改めてオーケストラの奥深さを感じることが出来ました。前回のコンサートからガラリと曲が変わっているのに、しっかり「ロマサガ」の世界を体現できていて驚きました。

河津:今回は聴きやすかった印象があります。「サガ」シリーズのバトル曲は激しいので圧迫感がありますが、オーケストラの演奏によって和らいだのではないかなと思っています。

伊藤:みっちりスケジュールが詰まったプログラムだったので幕間でしゃべり足りませんでした(笑)。それが唯一の心残りですが、4時間や5時間のコンサートにするわけにもいかないので……。今回のコンサートですが、ショーマン的な部分など今後にも生かせるいい例が残せたのではないかと思います。

――伊藤氏は最後にオーケストラをバックにピアノを演奏されましたがいかがでしたか?

伊藤:久々でした。以前、植松さんのコンサートに出たときもトリだったのですが、やはりトリは緊張しますね。ただ指揮者の内藤さんやオーケストラのみなさんが自分に合わせてくれたのでとてもやりやすかったです。

――今回、みなさんがとくに印象深かった曲をお聞かせください。

市川:最近は自分が「サガ」シリーズのプロデューサーをさせてもらっていますが、去年発売したHDリマスター版の「ロマンシング サガ3」は開発期間が長かったこともあり、今回のコンサートで「アビスゲート」を聴いたときは感動で泣きそうになりました。「アビスゲート」は元々の曲もすごく好きですが、アレンジャーさんのアレンジが入ったことですごく迫力がありました。HDリマスター版の「ロマンシング サガ3」は原曲そのままにしているのですが、今回のコンサートを聴いて「変えても良かったのかな」と思いました。あとは「ロマンシング サガ リ・ユニバース」はいつもプレイしている曲なので、「いつも聴いている曲がオーケストラですごいことになっている!」とファンのように喜んでしまいました(笑)。

河津:たしかに「アビスゲート」は普段コンサートでは選ばれない曲なので新鮮でしたね。オーケストラ映えもしますし。一方で普段オーケストラで聴いているおなじみの曲もやっぱりよかったですね。

伊藤:舞台での思い出も重なって「愛の歌」は自分の作った曲ながら心に来ました。あと「ロマンシング サガ リ・ユニバース」のオープニングも、ようやくほかのタイトルのオープニングに並ぶような曲になり、独り立ちできたのかなとうれしくなりましたね。

――伊藤氏はシリーズが難しくてプレイを断念していたものの、「ロマンシング サ・ガ リ・ユニバース」はプレイされているそうですが、お気に入りで使っているキャラクターやガチャで手に入ってうれしかったキャラクターがいたら教えてください。

伊藤:……聞いてくれますか! どうしてもロックブーケが手に入らないんです!! 自分は七英雄のキャラクターをメインで使っているのですが、ロックブーケがいないので回復役がいないんですよ……。今はウンディーネを使っていますが、いつかはロックブーケを手に入れたいです。

河津:自分は先日の「SPECIALピックアップガチャ」を回したらクーンが3体も出ました。こんなことがあるのかと思いましたが、欲を言えばほかのキャラクターも欲しかったです(苦笑)。

市川:自分は1周年イベントで登場したポルカとリズが印象深いです。育っていく様子を追いかけていたキャラクターが1周年で登場するというのは感慨深かったです。これから登場するキャラクターたちもいるので、今後お客さんがどういった反応をするのか見るのも楽しみです。

――初代のキャラクターをぜひ登場させてほしいです(笑)。

市川:自分が発言するとオフィシャルになってしまうので言及は避けますが、自分も初代には思い入れがあるので出てくれたらすごくうれしいです。

河津:ドットのままにするのか、白黒だったものをカラーにするのか、あえて白黒にするのか。実装するとしたら悩むところはたくさんありますね。

――伊藤氏はドラムやエレキギターを使ったライブも積極的におこなっていますが、今回のようなオーケストラとライブが合体したようなコンサートの構想はありますか?

伊藤:そういったものは今のところはないですが、来月から自分の音楽活動30周年がはじまるので、そちらは自分なりの演出でやってみようかと思っています。

市川:オーケストラとライブをいっしょにやるのはホールの都合もあって難しいのですが、自分もイトケンさんのライブに参加させてもらって感動した人間なので、なにかしらの形で実現できないか探ってみたいですね。

河津:「ファイナルファンタジー」で似たようなことをやったことはあるのですが、やっぱり違うふたつのことを同時にやるのは難しいんですよね。

市川:今回のコンサートはPA(拡声装置)を使わずにすべて生の音でお届けしました。それがすごくよかったので、今後もホールの良さを生かしたものをお届けしたいですね。

――舞台は「ロマンシング サガ -ミンストレルソング-」がベースということですが、公式サイトのイラストは「ロマンシング サガ」のものになっています。ふたつの要素を合わせたハイブリッドのような作品になるのでしょうか。

河津:オリジナルの8人が登場するストーリーですが、「ミンサガ」で広げた設定やキャラクターも登場する形になっています。

市川:「ロマンシング サガ」をベースに「ミンサガ」からダークなども登場します。また、「ロマンシング サ・ガ リ・ユニバース」から「ロマンシング サガ」を知ったという方も多いと思うので、そういった方々にも楽しめる舞台にしたいと思っています。

――曲に関してはこれからになるのでしょうか?

伊藤:そうですね。舞台のことは大雑把にしか聞いていなかったので、今、「ミンサガ」の要素もあると聞いて驚いているぐらいです。個人的にはガラハドの扱いがどうなるのか気になるところですね(笑)。

河津:自分だったらリメイク前のハゲていないほうのデザインを選びます(笑)。

セットリスト

<第一部>
01.オーバーチュア ~ オープニングタイトル/編曲:山下康介【ロマンシング サ・ガ】
02.迷いの森 ~ 下水道メドレー/編曲:岩城直也【ロマンシング サ・ガ】
03.バトル1 ~ バトル2メドレー/編曲:山下康介【ロマンシング サ・ガ】
04.遥かなる戦いの詩/編曲:亀岡夏海【ロマンシング サ・ガ2】
05.帝都アバロン ~ 皇帝出陣メドレー/編曲:タカノユウヤ【ロマンシング サ・ガ2】
06.バトル1 ~ 七英雄バトルメドレー/編曲:タカノユウヤ【ロマンシング サ・ガ2】
07.プロローグ ~死食の驚異~/編曲:山下康介【ロマンシング サ・ガ3】
08.フィールド ~ バトル1メドレー/編曲:岩城直也【ロマンシング サ・ガ3】
09.アビスゲート ~ 四魔貴族バトル1 ~ 四魔貴族バトル2メドレー/編曲:亀岡夏海【ロマンシング サ・ガ3】

<第二部>
01.オーバーチュア/編曲:伊藤賢治【ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング】
02.巨人の里 ~ 邪聖の旋律メドレー/編曲:タカノユウヤ【ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング】
03.最終試練 ~ 死への招待状メドレー/編曲:真部裕【ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング】
04.クイーン誕生 ~ オープニングアクト/編曲:山下康介【SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~】
05.テンプテーション♥ -RS Version-/編曲:タカノユウヤ【SaGa THE STAGE ~七英雄の帰還~】
05.愛の歌~満ち足りた二人:ノエルとオアイーブ/編曲:岩城直也【SaGa THE STAGE~七英雄の帰還~】
06.候国の旗のもとに/編曲:山下康介【ロマンシング サ・ガ リ・ユニバース】
07.頂を目指して ~ Grave Battle メドレー/編曲:真部裕【ロマンシング サ・ガ リ・ユニバース】
08.再生の絆 ~ Re:univerSe~/編曲:亀岡夏海【ロマンシング サ・ガ リ・ユニバース】

<アンコール>
01.最終決戦! -ラストバトルメドレー from ロマンシング サ・ガ 1~3-/編曲:山下康介【ロマンシング サ・ガ 1、2、3】
02.エンドタイトル/編曲:真部裕【ロマンシング サ・ガ3】

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー