スクウェア・エニックスの作曲家・鈴木光人氏が取り組む「働き方改革」について、インタビューを行った。

鈴木氏は、新型コロナウイルスの対策前から、「働き方改革」を自身で積極的に実践してきていたという。「ファイナルファンタジーVII リメイク」では「陥没道路」や「ヘルハウス」、ローチェ戦やアニヤンとのダンスシーンなど、プレイヤーにも印象深い楽曲を多数担当。

鈴木氏が語る、スクウェア・エニックスという会社だからこそ出来る少し変わった働き方についてリモートインタビューを行ったので、その模様をお届けしよう。

鈴木光人氏
鈴木光人氏
現在の在宅での勤務状況などは?

――まずは会社としての取り組みについて、伺いたいと思います。特に今、情勢的にも在宅での仕事を推奨されていますが、スクウェア・エニックスさんの在宅勤務状況を教えていただけますか?

鈴木氏:弊社は緊急事態宣言が出される1ヶ月ほど前の2020年2月半ば頃から、在宅勤務可能の人から対応する形で開始しました。

サウンド部では、元々個々の事情等から在宅ワークの在り方や活用は試行錯誤して来ていましたがここまで大規模な移行は初めてのことです。

――在宅でのお仕事で、これまでと変わった部分ってありますか?

鈴木氏:ゲームの開発は、開発機の問題があったりするので、そこでの課題はやはりあります。

あとは、会社だったら、隣の人のところに行って話せばいいだけのことを今だとZoomとかで接続して……って最初のころは不便さを感じましたが、慣れてくれば意外と気にならなくなってきました。今は逆に時間の節約にもなってます。音楽を作ること自体については、僕の場合は在宅でもほとんど問題はないですね。何か録ろうって時はまた別問題にはなるのですけど、それは会社でも同じ事なので。

――ゲームの開発は様々な情報を扱うということもあり、在宅でのお仕事が大変なイメージです。

鈴木氏:実際に在宅を行ってみると色々な対応が必要という事が分かってきました。それと同時に良いことも出てきているので正に試行錯誤している最中です。

――それでは光人さん個人の現在の働き方についてですが……在宅勤務はどうしてもだらだらと仕事をしがちですが、オンオフの切り分けは出来ていますか?

鈴木氏:オンオフの切り替えというのは、単純に集中力とかそういう問題だけでもないので、難しいと思うんですけれど、今のこの情勢で、在宅で仕事をする上では懸念事項の一つになってしまう人も多いでしょう。いつでもメールチェック出来る環境なわけですから、急務案件等が無い場合は業務後や土日はコミュニケーションツールを開かないなどの工夫、そしてリセットがとても大事です。

僕は会社でもどこでも結構切り分けが上手い方で、オンになったら強制的に周囲をシャットダウンするんですけれど、それでも足元に猫とかが寝ていると、どうしてもそれが上手くいかないこともありますよね……少なくとも会社にいたら、足元に猫がいることはないので。癒されてる場合ではないですし(笑)。

――(笑)。今、お子さんもご自宅にいらっしゃると思いますが、お仕事の途中でお部屋に入ってこられたりはしませんか? 光人さんのお子さんは小学2年生ですから、まだまだお父さんと遊びたい盛りだと思いますが。

鈴木氏:どうしても子供なので言うことを聞いてくれない時というのはあります。その時は、夕方に散歩へ行ったりゲームしたり、どうしてもその日のうちにやらなければならない案件があるときは、「ごめんね」と話して聞かせています。

でも、正直なところ子供に関しては、僕は今のこの在宅の時間があって良かったな、という気持ちでいます。会社に行ってしまうとその間は子供のことは見てあげられませんが、今しか見れない子供の姿を見ていたいじゃないですか。

――どんどん大きくなる時ですから、本来ならなかなか過ごせない時間を、こうして過ごせるのは貴重ですよね。

鈴木氏:家庭内に人が集まってしまうことでどうしても滞ったりする部分は出てきますけれど、多分その悩みは皆さん共通でしょうし、仕事とのバランスを上手くとって楽しむほうが前向きですよ。

僕の場合、普段から社外の方と一緒に仕事するケースが多いのですが、みなさんフリーランスなのでそもそも自宅で仕事をするということに慣れていて、データの上げ方ひとつにしても時間の使い方にしても、彼らから色々教わる事が多いんですよ。そういった蓄積が今はとても意味があるなと感じています。

――確かに、私は元々在宅ベースなので、仕事のことだけで言うならば、在宅になって困ったことというのはゼロですね。ですが、普段は会社で仕事をしている主人や、現在大学生の娘は在宅のこの状況に合わせて、色々環境を整えていました。部屋の模様替えから機材の買い揃えまで、色々ありますけれど。

鈴木氏:模様替えに機材の買い揃えとか今凄い共感しますね(笑)。僕らの業界は、徐々に、リモート録音とかも出てくると思うんですよ。楽器の演奏などもそうですが、声優さんの収録なども含めて……。恐らくこれからは、自宅で録れて当たり前、みたいな環境になってくると思いますし、そこにどうやって対応していくかについては課題ではあるんですが、それは録られる方ばかりではなく、録る方も同じなんです。今後そういったリモート録音などは、双方に必要なスキルだろうと感じています。

どちらにしても周囲の環境をやれるところから整えていくというのは、どのような職種であれ、必要になってくると思います。ただ「やれない」と言っていても、前には進めませんので。柔軟な対応やその行動の先に新たな楽しみが生まれる可能性だってあるわけじゃないですか。そういう希望を持っていたいですよね、やっぱり。

鈴木流「サマータイム」とは――朝の6時に出社して15時に退社

――それでは、光人さんが以前から取り組まれていたという、一風変わった働き方について伺っていきます。光人さんは普段からサマータイム制を取り入れているということですが、いわゆる一時間早い時間に出社する、とかでしょうか?

鈴木氏:会社の制度としてサマータイムがあるわけじゃなく、あくまで僕が裁量労働の範囲で勝手にサマータイムと名付けている働き方なのですが、毎年大体ゴールデンウィーク終わった時期あたりを境に、朝の6時くらいから仕事をしています。

――……ええ? 今は在宅ですから、起きてすぐにそのままお仕事を始めることも可能かと思いますが、普段からその時間にはもう出社なさっているということですか?

鈴木氏:そうです、始発電車とかに乗って出社していますね。

――始発って、朝の4時半とか5時とかですよね……。

鈴木氏:皆さん、そういう反応なんですけれど……実はすごくいいことばかりなんですよ。これから暑い季節になりますが、朝ならば比較的涼しいですし、電車は空いていますし。

しかも他の人が出社していないので、朝はメールが一切こないんですよ。なので、午前中には大体の僕のその日の作業は片付いていて、午後くらいから徐々にメールが来始めたり、打ち合わせがあったりするので、そういった仕事を終えて15時くらいには帰ります。

それから少し飲んでもまだ夕方の17時とかなので、家に帰って家族みんなでご飯を食べたり、一緒に寝たりもできるし、時間の使い方に無駄がないんです。なので、子供が生まれてからは、この働き方を取り入れています。

――では、5年近く続けられているのでしょうか。

鈴木氏:そうですね。継続的にずっと出来ているわけではないんですけれど、やたらと早い時間に出社してさっさと帰る、というこのスタイルを、勝手にサマータイムと呼んでいるんです。なので、5月の中旬くらいから10月の頭くらいまで、極端に同僚や友人との飲み会が減るという(笑)。

――冬の間は、やられてないんですか?

鈴木氏:夏の間だけですね。なんとなく気分的にも、冬はちょっと朝早いと寂しいなって。冬はいわゆる定時と言われている時間に行くようにしていますので、大体一年の半分くらいをサマータイム制で働いています。

――スクウェア・エニックスさんは、そういうところが面白いですよね。

鈴木氏:そうなんですよ、うちの会社は裁量労働制の方もいるので、色々な働き方をしている人がいるようです。

でも、みんなある程度は自分の中のコアタイム的なものは決まっていて、今日は朝に来たけど明日は夜、みたいな人は少ないんですよ。なので、「この人はこの時間帯にいる」みたいな共通認識もある程度出来ていますし、僕も基本的には部の方針に合わせる形にして「何か重要な話がある時は、15時までにお願いします」という感じです。シフトが5時間位ずれているだけと考えれば、大したことでもないんですよ。ただ少し早いというだけで。今在宅でみんなが離れて仕事をしていてもさほど問題なく働けている、というのもあると思います。

――お子さんとの時間を持てるというのは、いいですね。晩御飯を家族全員でそろって食べるって、意外と難しいですし。

鈴木氏:そうなんですよ。始発電車は極端なので、なかなかみんなの共感は得られないのですけど、まぁ僕にとってはこれがベストなので別にいいかなって。

一方で、一緒に仕事をしている社外の方は僕と同じようなスタイルの人が多くて、朝の6時半に修正依頼のメールをすると、3分後くらいにそのメールの返事がきたりするので、こちらとしては有り難いですけれどね。

――光人さん流の働き方改革、とても面白かったです。これまで見えてこなかった部分もたくさん見えてきたので、元々スクウェア・エニックスさんを目指している方たちはもちろんのこと、この記事を読んで「そういう働き方が出来るなら」とスクウェア・エニックスさんへの入社を考えてくださる方が増えると嬉しいですね。ありがとうございました。

鈴木光人氏プロフィール

スクウェア・エニックス所属の作曲家。「ファイナルファンタジーVII リメイク」、「ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII」、「メビウス ファイナルファンタジー」、「スクールガールストライカーズ」などを担当。

近年ではゲームのみならず、TVアニメ「スクールガールストライカーズ Animation Channel」の楽曲制作、音楽専門誌での機材レビュー執筆や舞台音楽の制作にも携わっており、多方面で才能を発揮している。

音楽レーベル「mojera files & records」を立ち上げ「mojera」名義で作品をリリース、アーティストとしても活動中。

SQUARE ENIX MUSIC Official Blog「鈴木週報」
http://blog.jp.square-enix.com/music/cm_blog/suzuki/

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