インディースタジオ・Route 59による3Dビジュアルノベル「Necrobarista」(ネクロバリスタ)のインプレッションをお届けします。
Steam、GOGで配信中のビジュアルノベル「ネクロバリスタ」は、「あの世」と「この世」の狭間にあり、死者が最後の24時間を過ごす「ターミナル」というコーヒーショップを舞台にしたビジュアルノベルです。
ターミナルを引き継いだばかりの見習いネクロマンサーでバリスタのマディと、彼女を取り巻くキャラクターたちの交流が描かれることになります。
死者が最後に過ごすカフェは、人間に与えられた「時間」を考えさせられる
お店を舞台にしたアドベンチャーゲームだと、最近では「VA-11 Hall-A (ヴァルハラ)」や「コーヒートーク」がありましたが、これらがお客さんとの交流を描いたことに対し、本作はメインキャラクター同士の会話で進行するため、毛色はかなり異なります。
ストーリーは「ターミナル」にキシャンという死者が訪れるところからスタート。本作はプレイ時間が4~5時間ぐらいと短いこともあり、極力ネタバレは控えますが、単純にキシャンの最後の24時間を見守るだけのストーリーではなく、ひねりも効いてます。とくに終盤は「なるほど。そういうことか」と、いい意味で裏切られてゾクゾクしました。
本作は生死を扱っていることもあり、全体のテーマとして“残された時間をどう使うのか”が描かれていきます。
筆者自身も40歳が近くなり、自分には残りの人生がどのぐらいあるのかぼんやり考えるようにもなりましたし、残念ながら亡くなってしまう身近な人も出るようになってきました。
そんななか、生と死の狭間にある「ターミナル」での、これから旅立っていくものの本音の言葉や残されたものが抱く感情や乗り越えていく様子などは心を打つものがありました。
登場キャラクターはマディとキシャン、いつの間にかカフェに住み着いた天才少女のアシュリー、カフェの元オーナーのチェイ、評議会に所属しているネッドが主要人物となります。
登場キャラクターの数は少ない分、それぞれ個性的で魅力あふれる人物になっています。とくに元気いっぱいの女の子である天才少女・アシュリーは、動きも相まってすごくかわいいです。
なお、ターミナルが評議会の管理化に置かれているなど、物語を読んでいけばある程度の世界観は理解できますが、キャラクターたちのバックボーンなどはほとんど語られないので、人によっては少し置いてけぼり感を覚えるかもしれません。
ただ、個人的には物語やキャラクターに想像できる余地が多くて楽しかったです。これはゲームよりもアニメ作品などの楽しみ方に近いかもしれません。本作はアニメ的な演出が多いので、深夜アニメを観るように楽しむのはアリなんじゃないかなと思っています。
ノベルゲームの新しい方向性を開拓した意欲作
本作はテキストを読み進めながら物語を読んでいくビジュアルノベルですが、いちばんのポイントは独特な演出です。
ノベルゲームは立ち絵イラストとウインドウ内にテキストで成り立っているものが多いですが、本作は3Dで作られているため、キャラクターたちに動きがあります。
そこまでリッチにグリグリと動くということはありませんが、キャラクターたちの距離感が明確に分かれたり、引きの画で情緒的なシーンが表現されたりと、視覚的に楽しむことができます。
また、テキスト部分も凝っているのが特徴。たとえば小声でしゃべるシーンは小さい文字で表現されますし、セリフだけでなく状況を説明する地の文が表示されることもあります。このようにセリフが演出のひとつとして扱われているのは、漫画を読んでいるようでもあり、新しい体験だと思いました。
さらに、文章のなかにはクリックできる単語があり、補足文を読むことができます。補足もさまざまで“キャラクターがどうしてそういう感情を抱いたのか”といった説明から制作秘話のメタ的なものまで、さまざまです。
ここまでの解説で伝わったかもしれませんが、本作はビジュアルノベルのノベル部分を大事にしている作品です。ノベルゲームは進化を遂げていくなかで「STEINS;GATE ELITE」のようなフルアニメの作品も出てきていますが、ただ、それは開発費のかかるリッチな作り方でもあり、どこのメーカーでも真似をできるものではありません。
また、アニメに寄りすぎると誰でも気軽に楽しめる一方、読書体験としての楽しさが薄れてしまうと思うんです。そんななか、本作は視覚的な演出もありつつ、しっかり文章の楽しさを教えてくれる作品になっています。
本作ではメインストーリーの合間にターミナルを探索するパートも。ここではメインストーリーで手に入れたキーワードを消費してサブシナリオを読むことができます。こちらは文章のみで展開しますが、キャラクターのバックボーンが分かるもののほか、錬金術やコーヒーのうんちくを知ることができるものなど、内容はバラエティ豊か。
サブシナリオを読んでいるときは、なんだが、本当にコーヒーショップで読書をしているようで落ち着きます。演出で楽しませてくれるメインシナリオとは違った感覚のものですが、こちらも楽しいです。
ちなみに本作のBGMはアニメ「メイドインアビス」などを手掛けた作曲家ケビン・ペンキン氏が手掛けていますが、氏のオシャレなBGMは心地良く、文章を読むのがさらに楽しくなります。
世界観の描写不足やボリュームの少なさやなど洗練されていない部分もありましたが、今後のノベルゲームのひとつの方向性を示した重要な作品になっていると思います。記事を読んで気になったら、ぜひプレイしてみてもらいたいですね。
Steam
https://store.steampowered.com/app/725270/Necrobarista/
GOG
https://www.gog.com/game/necrobarista
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