「英雄伝説 零の軌跡:改」(2020年4月23日発売)、「英雄伝説 碧の軌跡:改」(2020年5月28日)の発売を記念して、両作のファンである編集・ライターの2人がその魅力を改めて語り合った。今回は、「碧の軌跡」に関する話を中心に、「軌跡」シリーズの気になるところにも触れている。
目次
なお、参加者のプロフィールならびに「零の軌跡」に関する話は以下の記事で触れているので、併せてチェックしてほしい。
※「碧の軌跡」および「軌跡」シリーズに関するネタバレをかなり含んでいるのでご注意ください。
「零の軌跡」と「碧の軌跡」は何が違う?
アサミリナ(以下、アサミ):「碧の軌跡:改」をクリアしたあと、対馬に攻め込まれているアサミリナです。よろしくお願いします。
TOKEN:アサミさんには、ちょっと対馬から戻ってきていただいて(笑)。改めて「碧の軌跡」を触ってみると、すごくまとまっているな、と思いました。確かに少し古臭くはありますが、個人的にはあの雰囲気が好きだったので。マップの作り方とかもそうですけど、「軌跡」シリーズとしては元々こういうイメージのほうが強いんですよね。
アサミ:私は「閃の軌跡」をプレイしていないから、尚更「碧の軌跡」くらいまでの作風が「軌跡」シリーズっていうイメージがありますよ。
TOKEN:今プレイしてみても、意外と古く感じることがないですよね。
アサミ:今ソーシャルゲームなどでまた2D作品も増えていたりすることもあって、「零の軌跡」も「碧の軌跡」も意外と古く感じないですよね。
「閃の軌跡」からのファンだと、もしかしたらこの作風は古く感じるのかもしれないですが……そもそも「空の軌跡」、「零の軌跡」、「碧の軌跡」をプレイしないで「閃の軌跡」だけをプレイしている人って、多いのでしょうか? ちなみに私の周りでは、比較的「碧の軌跡」までプレイして、「閃の軌跡」に行かなかった人が多かったんですよ。
TOKEN:そうですよね、「零の軌跡」の時に新しい層を呼び込んだみたいに、「閃の軌跡」でまたファン層が入れ替わった感じはありました。売上本数は大きく変わらなかったようなので、「碧の軌跡」までのファンがいる一方で、新規のプレイヤーが「閃の軌跡」で入ってきているということですね。キャラクターの造形から世界観とかも含めて、「閃の軌跡」でほぼ全ての要素が変わりましたし。特に作中で描かれるキャラクターの幅は広がったかなと。
アサミ:前回の対談で、「零の軌跡」と「碧の軌跡」は特務支援課の4人をすごく濃く描いた物語っていう話をしたと思うんですけれど、「閃の軌跡」はその逆をいっているような作品ですよね。
TOKEN:その分、ニーズという意味では、より多くの層に刺さったかなと。
アサミ:なるほど、「零の軌跡」と「碧の軌跡」は一応ワジとノエルも特務支援課に含めるならメインとなるのは6人までですしね……。私はたまたまランディがどストライクでしたけれど、キャラが少ない分、至高の推しみたいなのには出会いにくいのかなぁ。
TOKEN:ところでアサミさんは「零の軌跡」が一番好きだったということですが、「碧の軌跡」の印象はどうなんですか?
アサミ:私が好きだった「零の軌跡」とはだいぶ変わったな、という感じです。推理要素も一応はありましたけれど、「碧の軌跡」ではほぼオマケくらいになっていましたし。ただ、シリーズとしては「碧の軌跡」は「空の軌跡」に近づいたなという感じがあるので、「軌跡」シリーズとしての流れは面白かったですよ。
TOKEN:「碧の軌跡」が「空の軌跡」に近いと感じるのは、どういう点ですか?
アサミ:一番は結社絡みの話が一気に増えたこと、そして「空の軌跡 the 3rd」で出てきたケビンやリースがいきなり序盤からストーリーで重要度を感じるあたりとか、レクターやキリカさんの動きなどから「空の軌跡」っぽさを感じますね。
「零の軌跡」がほぼ特務支援課を中心に描かれていた物語なのに対して、「碧の軌跡」は特務支援課近辺で終わる話じゃなくなってきている辺り、というのが一番いいのかな。
TOKEN:なるほど、そういうところで「空の軌跡」を感じるんですね。「零の軌跡」って特務支援課が集まってチームとしてひとつにまとまっていくお話でしたが、「碧の軌跡」はチームとしてクロスベルの陰謀に立ち向かっていったり、“零の至宝”を巡ってのより大きな陰謀、という内容でしたし。
アサミ:そうそう、その“大きな陰謀”に「空の軌跡」っぽさがあったんですよね。「零」の時はD∴G教団がその大きな陰謀枠でしたけれど、言っても関係者が多かったのもあって、やっぱりあれは特務支援課周りとレンの問題だったという感じがするんです。
その点、「碧の軌跡」はキーア……零の至宝を巡っての物語にしては、あまりにあれこれ色んなキャラクターの思惑が裏で動きすぎかな、というのはありました(笑)。逆にその複雑さが、本来の「軌跡」シリーズらしさを感じたんですけれど。
TOKEN:「碧の軌跡」は情報量の多い作品でしたよね……。プレイ時間は「零の軌跡」とあまり変わらないのに、倍くらい遊んでいるような感覚があります。
アサミ:それは私も感じましたね。体感的に40時間くらい経っているだろうと思ってプレイ時間を見てみたら、20時間くらいしか経っていなかったり。
TOKEN:そう考えると、もう少しいくつかの要素を「零の軌跡」に回してもよかったような気もするんですけれどね。
アサミ:でも「零の軌跡」はあそこで終わっているからいい、というのもあるんですよね。前回の対談でお話しましたけど、「零の軌跡」は基本的に特務支援課内で終わっていることと、爽やかですっきりしているところが良い点なので。
TOKEN:「碧の軌跡」は、映像とかも含めて見せる表現が多いので、よりドラマっぽくなっている感じですよね。「零の軌跡」は推理とかの要素も含めて、ロイドたち――プレイヤーが介入していく部分が多かったという印象ですが。
「零の軌跡」の時は、クロスベル創立記念祭あたりが結構長い印象があったんですけれど、「碧の軌跡」ってあれくらいの長さを感じる章がずっと続きますよね。
アサミ:「碧の軌跡」は確かに1章からいきなりあれくらいのボリュームを感じましたね。実際には1章は2日しかないんですけれど……やけにエピソードが濃くて。
キャラクターに関するやり取りから「碧の軌跡:改」の追加要素にも触れる
TOKEN:キャラクター周りについてですが、前回アサミさんが「碧の軌跡」の主役はランディってお話していて、改めてそれはとても感じました。
アサミ:そうなんですよ~! 「碧の軌跡」はランディが自身の在り方をすごい模索する物語だと思っています。確かに最終的に話の中心は零の至宝であるキーアに集中しますけれど、でもラストダンジョンの最後の最後まで、シグムントがランディの前に立ち塞がったりするじゃないですか。ロイドやキーアも乗り越えていくものがあるけれど、「碧の軌跡」の物語の中で一番成長していくのはランディだと思います。
TOKEN:ランディって「零の軌跡」の時は比較的良いお兄さんポジションだったのに、「碧の軌跡」は一転して暗くなって、めっちゃ重いものを背負っていますよね。
アサミ:ランディ……というよりはランドルフですが、「零の軌跡」という下地があったからこそ、ランドルフという存在を受け止められるようになっていたロイドたちが、もがき苦しむランディを導いていき、ランディもメンバーたちのおかげでようやく今の自分を受け入れられるという……。
TOKEN:「零の軌跡」の時って、ティオ以外は割と表面的なエピソードが多かったのに対して、「碧の軌跡」は一転して各キャラクターが深く掘り下げられている感じがしますよね。それは結局、起こっている問題の物事の大きさにもあると思うんですけれど。
アサミ:結社はもちろんのこと、赤い星座の存在も大きかったですしね。あとはクロイス家と……そう、「碧の軌跡」って「このキャラにこんな設定が!?」っていうのがひっきりなしに出されましたよね……。ワジもでしたし、マリアベルにしてもアリオスさんにしても……主要キャラの大半に裏の顔がありすぎた……。その中で、ノエルだけが割と普通だったなぁと。
TOKEN:バランスを考えるとノエルはああいう普通のキャラクターで良かったと思います。ただ、ノエルが入ることで車が使えるようになる、というシステムと連動した役割があったので、そこが面白かったなぁ。
アサミ:確かにファルコムさんのゲームだと、セルゲイが「ロイド、おまえ免許取れ」とか言って、モノローグで「ロイドは運転講習を受けるのだった」とか出てきてもおかしくないところなんですよね(笑)。そこらへん、最後まであの4人が免許を取らなかったのも、オルキスタワーに乗り込む時の伏線だったのかな。
TOKEN:そのあたりも含めて、ノエルが先だったのか、車移動が先だったのかわからない部分ではありますけれど、うまく紐づけてきたなって思いますよね。
アサミ:私は個人的にダドリーが好きだったので、一部だけでもパーティキャラとして操作できるのが嬉しかったですね。
TOKEN:僕はヴァルドの「零の軌跡」での立ち位置が結構好きだったんですけれど、「碧の軌跡」では不貞腐れてあんな姿になっちゃって、なんだか可哀想になっちゃいました。
アサミ:ヴァルドは可哀想でした。マリアベルたちに付いてはいまいしたけれど、立ち位置としては、利用されているだけ感が強かったですし。物語の構成上仕方ないのかもしれないですけれど、割とみんな可哀想なんですよね……。ヴァルドはエンディングに後ろ姿らしきものが映っていたきりかなぁ。「創」に出るのは見たので、楽しみです。
TOKEN:ちなみにアサミさん、通商会議の時にオリヴァルトの付き人として学生がいたのって、覚えています?
アサミ:キャラクターの造形までは覚えていないですけれど、誰か居たなぁくらいなら……。
TOKEN:あの子、実は「閃の軌跡」に出てくるトワという子なんですよ。リィンたちの先輩にあたるキャラクターで、PSP版の「碧の軌跡」の時にはいなかったと思うんですよね。
アサミ:「改」での追加要素ですか?
TOKEN:そうみたいですね。そもそも「閃の軌跡」でトワが通商会議のスタッフとして参加したという話があったので、そこが今回の「改」で補完されているんだろうなと思いました。
アサミ:ああ、でもそういう部分は確かにあって、「こんなNPCいたっけ」といくつか思っていたキャラクターはいたんですよ。でもTOKENさんなら、それが誰なのか解っていたのかなぁ。
そういえばオリヴィエが学校の理事長をやっているみたいなことを話していて、改めてそのセリフを聞いて「ああ、これが『閃の軌跡』につながっているのか」とは思いました。
TOKEN:そうそう、それもあったし、あとは帝国側の重要キャラの名前とかも結構出てくるんですよね。
あと、警察学校にあるタイミングで行くと、ピンクの髪のユウナという子がいるんですけど、その子が昔ロイドと同じアパートに住んでいた、「閃の軌跡III」から出てくるキャラクターなんですよね。ユウナは特務支援課に憧れて警官になろうしていたという背景を、「碧の軌跡:改」で補完しているという。
アサミ:ユウナ……多分全然気づかなかったです。そういえば、キーアって「碧の軌跡」以降は特に何もないんですか?
TOKEN:至宝としての力を失ってからは、ちょっと超人的な部分はありますけれど、特に直接的な何かはないですね。
アサミ:「創の軌跡」でキーアのビジュアルが公開された時に、最初「誰だ、これ」ってなったんですよね(笑)。
TOKEN:ああ、キーアはやっぱり幼かった分、この数年で成長していますしね。「閃の軌跡IV」でもこのビジュアルだったんで、プレイしていればすぐわかるんですけれど。
アサミ:そうだったんだ……その「閃の軌跡IV」でのビジュアルを知らなかったんで、キーアにはすごく驚いたと共に、キーアって「碧の軌跡」のあとってどうしてたんだろう、くらいに気になったんですけれど。「創の軌跡」のキャラクター紹介ではバニングス姓を名乗ってますし。
TOKEN:バニングスなのは便宜上、という感じですかね。なにせ500年前の子、というのがあるので。
アサミ:なるほど。最初は、「え、結婚? 養子?」とか色々考えちゃいました(笑)。あ、あとエリィがアリアンロードの正体に気が付く、みたいなところ、気になっていたんですよ。途中で「あら、あの人……。でもみんなを惑わせるだけになりそうだから、やめておくわ」みたいなことを言って、結局その後も何もなかったので。
TOKEN:あー、アリアンロードって、結社のメンツの中では比較的正体の分かりやすい部類なんですよ。あの世界の中ではめちゃくちゃ有名な人ということで。そのあたりの回収されていない謎は、結構「閃の軌跡」シリーズでわかるものが多いです。
アサミ:うぐぐ。「閃の軌跡」への圧を感じる(笑)。
TOKEN:「零の軌跡」と「碧の軌跡」は、本当にキャラクターの魅力をしっかり描けた作品で、だからこそそのキャラクターたちのストーリーの続きを見たい、という気持ちにもさせられますしね。
アサミ:だから、「閃の軌跡III」にランディが出るという情報を見た時に、めちゃくちゃ迷ったんですよ……。
TOKEN:そうだったんだ(笑)。
アサミ:でも、やるならやるでやっぱりシリーズものは「I」からやるべき、みたいなゲーマー魂みたいなものがあるので、当時別のゲームの予定とかもあって結局「I」からやる時間が取れなくて諦めたんですけれど、なんだかんだと引きずってはいるんですよ。
「創の軌跡」は絶対プレイしようと決めていますけれど、でも「閃の軌跡」をプレイしないで「創の軌跡」をやってもいいのかなぁ、みたいな気持ちもあるんですよね……。
TOKEN:「創の軌跡」って、帝国から解放された後からですよね。ちなみに僕は、どうしてもクロスベル組が気になるなら「閃の軌跡III」から入るのもありだと思いますよ。
アサミ:「III」から入っていいものなんですか?
TOKEN:いうなれば、「I」と「II」はリィンとVII組のことを知る部分なので……。
アサミ:最初からVII組のキャラクターを視野にいれないのならば、「III」からでもいいということですか。
TOKEN:そうですね。「閃の軌跡」はとにかくキャラクターが多いので、背景とかが複雑すぎるんですよ。それを描くための「I」と「II」という感じです。
アサミ:なるほど、今「閃の軌跡」の公式サイト見ていますけれど、確かにキャラクターが多すぎて、訳がわかりません。
TOKEN:待って、アサミさん! 「閃の軌跡IV」の公式サイトのキャラクター紹介は、かなりネタバレが!(笑)
アサミ:(笑)
TOKEN:どちらにしても「創の軌跡」でわかることなのかもしれないですけれど。
アサミ:じゃあ、一応見ないでおきます(笑)。ちなみにワジやノエルは「閃の軌跡」でも出てくるんですか?
TOKEN:ワジとノエルは名前が出てくるぐらいですね。「創の軌跡」で久しぶりの登場になります。
アサミ:ノエルが全く出てこないって、ちょっと意外ですね。元々「零の軌跡」でも人気がありましたし。ワジは立場的にあまり出なさそうなのはわかりますけれど。ワジが守護騎士(ドミニオン)らしい姿を見せるのは「碧の軌跡」だと本当に終盤の少しだけなので、「創の軌跡」のワジはかなり楽しみです。
「軌跡」シリーズにおける「碧の軌跡」の立ち位置とは?
TOKEN:「碧の軌跡」からは一層、「空の軌跡」をやっていないとわからなさそうっていう話が増えてきたな、とは感じるんですけれど、どうでしたか?
アサミ:私も「碧の軌跡」は割と早いうちから、これはさすがにそろそろ「空の軌跡」をやっていないとわからなさそう、というのは思いました。
TOKEN:星杯騎士団は「空の軌跡」の中でも更に「空の軌跡 the 3rd」をやっていないとわからないですよね。それまでは伏線で存在を匂わせるくらいのものだったのが、「空の軌跡 the 3rd」でようやく星杯騎士団の思惑がわかるような感じですし。
アサミ:前回、「零の軌跡」は単体として成立する作品だと言いましたが、「碧の軌跡」は一転して単体で成立しないんですよね。もちろん「零の軌跡」あっての「碧の軌跡」なので、最低限「零の軌跡」は必要としての話ですけれど。「碧の軌跡」はもうロイドの視点だけで進む物語じゃないので、プレイヤーもロイドの視点だけでは理解しきれない。
とは言っても、最初に「碧の軌跡」が出た当時はPSPで「零の軌跡」と「空の軌跡」三部作が全部プレイできていたので、「零の軌跡」が面白かった人は「空の軌跡」もやってね、という感じで導線が出来ていましたし、その上で「碧の軌跡」が出たので良かったと思うのですが、今回の改で初めて「軌跡」シリーズに触れる人にはちょっと通じないかもしれませんね。
TOKEN:一応星杯騎士団やら一部の情報はクロスベルの街の図書館などで情報を補完することは出来るんですけれど、それくらいしかないですし。
「碧の軌跡」は国家間のやり取りが結構激しくて、西ゼムリアの勢力図みたいなのをかなりちゃんと把握しておかないと、なかなかイメージは掴みづらいというのもあるんですよね。通商会議のところとか、自分は勢力関係が分かっているから受け止められるけど、解らないといきなりすごい話になったと思うんじゃないかなぁと。
アサミ:私みたいに「空の軌跡」と「零の軌跡」しかやっていないと、クロスベルの立地条件みたいなのが、いまいち把握しきれていない部分があるんです。
TOKEN:やっぱりそうですよね。あの頃の地図だと、そこらへんがわかりにくく感じました。
アサミ:前回の対談でもお話しましたけど、私はクロスベルがそこまで重要な立ち位置だって解っていなかったんですよね。もちろんゲーム中で何度となくクロスベルの不安定さについては触れられているんですけれど、文字情報と絵で得られる情報ってどうしても違うので、やっぱりなんとなく実感が沸きにくいんですよ。
TOKEN:そこらへんをもっとフォローしておくと、多分「空の軌跡」シリーズをやっていなくても楽しめるんじゃないかなという感じはします。
アサミ:だから私、通商会議とかは割と「唐突だな!」というくらいで見ていた感じでした。「空の軌跡」から「零の軌跡」までだと、通商会議の場面で気がいくのって、リベールのクローゼと、帝国ならオリビエのほうなんですよね。
TOKEN:なるほど。各国のパワーバランスが解ったうえであの通商会議を見ると、かなり印象が変わると思いますよ。ちなみに僕はまだ「碧の軌跡:改」をエンディングまで見れていないのですが、「碧の軌跡」の終わりってどうなっていましたっけ。
アサミ:「碧の軌跡」のエンディングはすごくあっさりしていて、キーアを助けたあとは「クロスベルはその後、2年間、帝国の占領下に置かれた」みたいな文章だけで終わるんですよ。
TOKEN:それだけでしたっけ。
アサミ:いまいち「碧の軌跡」のエンディングって記憶になかったんですけれど、改めて見て「なるほど、『閃の軌跡』をやっていないとこれは忘れるわ」とは思いました。あとはスタッフロールのバックに、ロイドとアリオスがキーアを連れて逃げているようなイラストがあったりはしますけれど、本当にそれっきりです。
TOKEN:一応帝国に占領されたところまでは出るんですね。
アサミ:あっさりとは書かれています。完全に「後は次の物語をやってね」という終わりですよ。
TOKEN:「碧の軌跡」は、そういった部分も含めて一本の中に話が凝縮されていて、プレイしている側から見ても、どんどん話が進んじゃいますよね。
アサミ:そうですね。だから大筋を覚えている割に、ひとつひとつのエピソード自体の印象はちょっと薄いんです。ランディのこととかは「碧の軌跡」全体を通して描かれているので強烈に覚えているんですけれど、それらを取り巻く他の話はかなり忘れていて。
TOKEN:僕も「碧の軌跡」の記憶って、ちょっと薄かったんですよね。
アサミ:「零の軌跡」はシンプルにストーリー周りを追えましたけれど、「碧の軌跡」はそういう作りじゃないですし。
TOKEN:そうそう、「零の軌跡」の時って黒幕がわかりやすかったのに対して、「碧の軌跡」は黒幕が一転してわからないですよね。
アサミ:黒幕というか、ガイを殺したのは結局誰なんだ、みたいな感じはずっとありましたね。
TOKEN:信頼していた相手ほぼ全員に裏切られるんで、展開的にエグいですよね……。改めてやると、結構グサグサきます。
アサミ:それですよ。「零」が爽やかだったのに、「碧」がとても重い……。次々と押し寄せてくる裏切り……。個人的には裏切るのはマリアベルだけでもよかったのにな、とは思います。もちろん皆、裏切るのに理由があったのは解っていますし、そのための伏線も「零の軌跡」の時点で散々はられていたんだな、というのは「碧の軌跡」をプレイしてから解ったことですけれど。
TOKEN:とりあえず先生は、大分心が痛かったですよね……。
アサミ:先生の裏切りって、通商会議もフラグだったんですかね? 私は全然気づかなかったです。
TOKEN:僕もあそこでは全然気づかなかったですよ。なので真の黒幕として先生が出てきた時は、大分面食らいました。
アサミ:改めて振り返ってみると、アリオスさんとガルシアのどちらも、ガイを殺した犯人にさせたくなかったのかな、とは思いましたけれど。なので、ガイ殺しの犯人のために用意されたのが先生なのでは、……というこじつけ的な妄想。それくらいしか、最後の最後で先生が黒幕として出てきた理由があまり浮かばなくて。
TOKEN:「軌跡」シリーズは割とそこらへんを匂わせるのに、先生は本当に何もなかったですから。そういうところも含めて、情報量の多い作品でしたね。
アサミ:「碧の軌跡」は衝撃展開が続くので面白いんですけれど、私が「碧の軌跡」よりも「零の軌跡」が好きなのは、物語としての雰囲気とか、そういうのもあるかと思います。
「閃の軌跡」シリーズにも繋がるシステム面のチャレンジや、ゲーム全体で見た音楽の印象
TOKEN:システム面に関してですが、「碧の軌跡:改」をさわってみると、「零の軌跡:改」と比べても戦闘システムが相当いいですよね。全体的にスピードアップもしていますし。マスタークオーツもよかったですね。
アサミ:大分戦略の幅が広がりましたね。より自分好みにカスタマイズできるようになっていたかなと。マスタークオーツの「フォース」みたいなSTR強化型タイプって多分ランディがつけるのがデフォルトなんだろうなぁと思いつつ、ロイドにセットさせてロイドの物理火力をめっちゃ上げたりしていました。そしてランディは元々火力が高いので、「クロウ」とかSPD強化型をつけて、できるだけ早く動けるようにしたり……。
PSP版の時とかどうしていたかは覚えていないですが、多分今回の「改」とは全然違うセットだったんじゃないかなと思いますね。
TOKEN:あとバーストとかのシステムもよかったですね。ここから以降のシリーズに引き継がれていっている部分もあるんだなと。一斉攻撃とかでスキップできたり、ちょっと地味なところまで含め、細かいところが行き届いているなと思いました。
アサミ:戦闘以外のシステムも良かったですよね。車移動とか。
TOKEN:あと、道端の箱とかのオブジェクトを壊すとアイテムが落ちたりね。移動のストレスを色々なくす工夫は、「碧の軌跡」から続いているんだなと。
アサミ:「零の軌跡」でもバス移動とマップジャンプ、そこに「改」では倍速機能とで大分楽にはなりましたけれど、「碧の軌跡」はその更に上をいきましたからね。
TOKEN:移動についてはもう、RPGの宿命ではあるんですけれど。
アサミ:ただ「碧の軌跡」の場合、フィールドに関しては基本的に「零の軌跡」と同じなので、今更景色を楽しむとかでもないですし、それよりは移動のストレスを大幅に軽減してくれるほうが嬉しいです。前作でも散々移動してきた道を再び何回も移動するのはやはり苦痛ですし、移動が苦痛なゲームはプレイしにくいですからね……。
TOKEN:そういう意味で、「碧の軌跡」は一番ストレスがなかったと思います。メインが重いからこそ、他の流れはスムーズで、じっくりメインに取り掛かれたかなと。
アサミ:これもシステムのお話の中に組み込んでいいと思うんですが、「碧の軌跡」の音楽は序盤にあまりアップテンポの曲が使われていないのって、気が付いていましたか?
TOKEN:あれっ、そうでしたっけ。
アサミ:「零の軌跡」って序盤から比較的明るくてポップな曲が多いんですけれど、「碧」って「零の軌跡」から引き続き使われているような曲以外、あまりそういう曲が終盤までないんですよ。ミシュラムとバトル、「零の軌跡」からそのまま使用されている曲は除く、というのがあるので、ちょっとわかりにくいところですけれど。
TOKEN:実際、わからなかったですね……。
アサミ:4章くらいから一気に盛り上げにくるんですが、そこまでは比較的おとなしめの曲というか……全体的にストリングスやピアノが主体の曲が多いんですよね。
TOKEN:「空の軌跡」とかもそういう曲が多かったから、そもそもは「零の軌跡」の音楽が割と異色だったんですよね。
アサミ:そうですね。「零の軌跡」は最初から音楽も爽やかアピールがすごかったですから(笑)。それに対して「碧の軌跡」は、音のほうから軽やかさをアプローチしてこないな、と思ったんですよね。
TOKEN:後半で結社が主体になってくるあたりから、段々盛り上げてくるような感じですかね。
アサミ:その前もボス戦とかではあちこちで盛り上げてくるところがありますけれど、全体の流れとしては4章あたりで気持ちがMAXになるように音楽も構成されている感じがありました。そこが「零の軌跡」と違ってちょっと面白かったな、と。
TOKEN:凄惨なシーンも多いですから、確かにあのシーンに「零の軌跡」の曲調で盛り上げてくるのは違う感じがありますしね。
アサミ:序盤でランディが出ていってひとりで赤い星座と対峙しようとするところとか、通商会議の後半のテロリストとか……確かに「零の軌跡」の曲調ではあわないですし、うまいこと音楽も変えてきているなぁと。
「零の軌跡」と「碧の軌跡」って実質前編と後編みたいな立ち位置ですし、そういう作品でここまで音楽を変えてくることってあまりないんですよね。そこまで含めて「零の軌跡」があそこで終わって、「碧の軌跡」にこういう展開を詰め込んだのかなぁと、音の面でも深読みしています。
TOKEN:ロイドたちが抱えている状況の重さに押し潰されていくような感じは、ストーリー全体からありますよね。
アサミ:そうそう、それを音でもうまく持っていっているなぁ、と。
TOKEN:「零の軌跡」と同じ舞台、同じキャラクターで、ここまでがらりと雰囲気が変わるとは思っていなかったんですよね。
アサミ:でも、「零の軌跡」で土台が出来ていたからこそ、というのはありますよね。「零の軌跡」がなくて「碧の軌跡」でいきなりロイドがあのくさいセリフ連発でいくと、キャラクターとしては「何言い出してるんだ、この子は」みたいな気持ちになっていたかもしれない(笑)。
TOKEN:「軌跡」は割とくさいセリフ多いですけれど(笑)、ロイドは確かに「零の軌跡」がないとキャラクターとしては弱かったかもしれないですね。やはり「零の軌跡」あっての「碧の軌跡」という感じがします。
「碧の軌跡」での気になる謎は「閃の軌跡」シリーズで語られる
アサミ:ちなみに「碧の軌跡」で気になっていた「幻焔計画」は、「閃の軌跡」で終わるんですか?
TOKEN:一応、終わっていると言っていいとは思います。ただ、何をもって幻焔計画が完了しているのか、僕たちもあまりよく解っていなくて(笑)。とりあえずそれなりの収束を見せている、という感じですかね。
アサミ:なるほど……。キャラクターの生死とかも、「閃の軌跡」でそれなりに片が付くんでしょうか。
TOKEN:死の概念が「軌跡」は割と曖昧なので、単純に生死とは言い切れないんですけれど……死んでいたと思った人が生きているのもザラで、そしてその生きている理由とかも結構ちゃんとしたものなので、そこも含めて物語の核心になっています。
アサミ:じゃあ、誰が生きていて誰が死んでいるのかとかも、あまり知らないほうがいいんですね。そもそも私、「閃の軌跡」からのキャラクターって、リィンとクロウしかわからないんですよね……(笑)。それも見た目だけで……。
TOKEN:そうですね。なので、僕は「閃の軌跡」を説明するときは、まず「学校生活が楽しめる」くらいしか言わないことにしています(笑)。
アサミ:すごい詐欺じゃないですか、それ(笑)。
TOKEN:学校生活の中で色々乗り越えていくのには違いがないので……(笑)。
アサミ:ひどい話だ(笑)。
TOKEN:でもそのサイクルは、「零の軌跡」に近くはあるんですよ。学校側のカリキュラムに沿って実地研修に行って、事件が起きたりして、そしてまた学校に帰ってきて……という。「空の軌跡」はストーリーが進むに従ってその行先の遊撃士協会が拠点となっていきますが、「零・碧の軌跡」はクロスベルの特務支援課が拠点で動かないじゃないですか。「閃の軌跡」も士官学校という拠点は変わらないので。
ちなみに「閃の軌跡」でのロイドたちはレジスタンス的な立ち位置だったんで、「閃の軌跡III」以降を知っていると彼らがどう動いていて、クロスベルがどうなっていたのかを知ることが出来るんですよね。なので、僕としてはやはり「閃の軌跡III」をやってほしいですね(笑)。
アサミ:うっ、再び来るこの圧!(笑) クロスベルの街って「閃の軌跡」でも出てきていたんですか。
TOKEN:入れるのは一部ですけれど、ちゃんと3Dマップで出てきますよ。
アサミ:おお、ちゃんと3Dで再現されているんだ……。でも「創の軌跡」ではそれがきっと一部じゃなくて全部3D化されているんですよね……楽しみです。
TOKEN:改めてになりますけれど、もしも「閃の軌跡」しかプレイしていないという人がいたら、今回の「改」発売をきっかけに、ぜひ「零・碧の軌跡」をプレイしてほしいと思います。
「閃の軌跡」と並行している物語ですし、「碧の軌跡」で何が起きていたかを知らないと「閃の軌跡」で繋がらない部分はどうしても出てくると思いますから。そういう意味でも、すごくいいタイミングで今回の「改」を出してくれたなと。
アサミ:「創の軌跡」で、「零・碧の軌跡」と、「閃の軌跡」がまたつながるわけですしね。「零の軌跡」がPSPで出た当時、同じハードで「空の軌跡」に戻れたのと同じように、今はこうして「閃の軌跡」からPS4で「零・碧の軌跡」に戻れるようになったわけですから。
TOKEN:「碧の軌跡」は、「空の軌跡」から「零の軌跡」、「閃の軌跡」と全てのストーリーを繋ぐ位置にあると思いますしね。「零の軌跡」と「碧の軌跡」は言うなれば帝国編――「閃」を描くために、ちゃんと描いておくべき物語だったんだというのは「改」を今プレイしてみて、しみじみ感じます。確かに終わりはあっさりしていますが、あそこで終わる意味もちゃんとあって、「閃の軌跡」に引き継がれていますし。
アサミ:シリーズを最後までやる人にとっては重要な位置付けの作品でありつつ、私みたいに一部だけを切り取った遊び方もできる作品だなぁと思います。
TOKEN:「碧の軌跡」をプレイすると、「閃の軌跡」の見え方って全然違ってくると思うんですよ。でもその逆もあって、「閃の軌跡」の記憶を持って「碧の軌跡」をプレイすると、PSP版の「碧」当時には気づかなかったことも色々あるんですよね。
アサミ:私は今日TOKENさんとお話をして、改めて「閃の軌跡」への意欲が沸きました。
TOKEN:えっ、本当ですか。嬉しいなぁ。
アサミ:時間的にも「創の軌跡」が先にはなっちゃいますけれど、多分「創の軌跡」をプレイした後は、「閃の軌跡」4部作に手をつける覚悟が決まりそうなところまでは来ています(笑)。
TOKEN:「創の軌跡」ももう少しで発売ですね。いよいよ盟主が出てくるので楽しみですよね。
アサミ:盟主って、「閃の軌跡」でも出て来ていないんですか?
TOKEN:姿がはっきり見える形では出ていないですね。今回メインビジュアルで盟主があれだけしっかり描かれているということは、「創の軌跡」でいよいよこの世界の謎の片鱗が見えてきそうです。
アサミ:15年以上経って、ようやく世界の謎の片鱗が見えてくる(笑)。
TOKEN:下手したらここで折り返しくらいですよね。完全に判明するまであと15年かかるかも(笑)。
アサミ:私はそろそろ生きていないかもしれないので、その前に世界の謎は判明してほしい……。
TOKEN:「碧の軌跡」はそういうのを含めて、大きな物語のうねりに紐づいた作品だなという感じがするんですよね。零の至宝を中心に、結社と諸々が動いていますが、こちらの方が「軌跡」シリーズらしさがあるというか。
アサミ:そうですね、「碧」はやっぱり「軌跡」シリーズなんですよね。それは改めてすごく感じました。「碧の軌跡」は「軌跡」を構成するひとつで、「零の軌跡」は「碧の軌跡」を効果的なお話にするために必要な作品だったのかなぁ、なんて思いました。だからこそ「零の軌跡」だけちょっと異質で、「零の軌跡」だけは単体で成立する作品なのかもしれないと感じましたね。
TOKEN:僕はどうしても「軌跡」シリーズ全体で見てしまうので、シリーズとしてではなく別の楽しみ方もあるんだなぁという、自分だと気付けないところに気付かせてもらいました。
アサミ:この先ロイドたちが前面に出てくる物語はもうないのだろうと思っていたので、「創の軌跡」が本当に楽しみです。
TOKEN:僕も、それはほぼ有り得ないだろうと思っていたので、そこには驚きました。でも、これでいよいよロイドたちの物語が完全に終わりそうではありますよね。これからもスポット参戦とかはいくらでもあると思いますし、「軌跡」はそういう作品ですけど。
ただ、特務支援課は遊撃士とかと違って警察組織ですから、基本的に他国の問題にはあまり首を突っ込んでこないとも思いますし。そう考えると、やはり「創の軌跡」が実質クロスベル編のラストになるでしょうね。
アサミ:私もまずは特務支援課の行く末を見届けてから、この対談でかなりやる気になった「閃の軌跡」へ続けられるかどうか、頑張ってみます! ありがとうございました。