「CEDEC2020」で9月3日に行われたセッション「3D美少女キャラのモーションキャプチャによる『かわいい』動きへのこだわり」をレポート。モーションキャプチャーを行うにあたって意識することを実践形式で紹介していった。
サイバーエージェント ゲーム・エンターテイメント事業部のスマートフォンゲームにおける、3D美少女のかわいさの表現力を向上させるために設立されたクリエイティブチーム「ebi tec labo」。その取り組みはゲームに留まらず、ホロレンズなどの最新のメディアとオリジナルの3Dキャラクターを組み合わせたコンテンツを作っているという。
同チームの3DCGディレクターである海老沼宏之氏、クリエイティブディレクターの庄司拓弥氏が登壇して行われた本セッションでは、特に3D美少女の“かわいい”表現の中でも特に動きにフォーカス。多数のタイトルでモーションアクターとしての実績を持つ能登有沙さん(L&Lビクター所属)を迎えて、実践形式で解説していった。
本セッションは美少女コンテンツにモーションキャプチャーを取り入れたい人、モーションキャプチャーのディレクションを行いたい(もしくは行っている)人を対象としたものなのだが、実際にモーションキャプチャーを行うにあたって大事になるのが、動きのイメージを明確にしてアクターと共有していくことだという。
実際のモーションキャプチャーの現場で問題になるのが、仕様だけが決まっているものの、動きのイメージをディレクション側が持っておらず、アクターに丸投げしてしまうケース。ディレクション自体がはっきりしないだけでなく、チームの意見が分散するようなケースもあり、現場の混乱を招きかねない。
アクターの目線でも、実際にモーションキャプチャーの現場に臨む際、まだ世に出ていないキャラクターのケースもあり、その時点でイメージを固めるのは難しい。そういった点からもディレクターがイメージを共有する重要性は感じられることだろう。
続いては、本題でもある“かわいい”動きを作るためのアプローチが語られた。主に「かわいい動きを学ぶ」「かわいい動きの言語化」「ワンランク上のかわいい動き」の3つの要素で構成されていたため、順番に紹介していく。
かわいい動きを学ぶ
最初に必要となるのが、ディレクター自身が「かわいい動き」を学ぶこと。とはいえ、人の受け取る印象や時代によって感じ方は千差万別であるため、正しいと定義すること自体が難しいものとなっている。
どのようにかわいい動きを学んでいるのか質問を寄せられた能登さんは、自分の中で動きを記録していく、インプットの必要性について言及。アニメのキャラクターなどからイメージする動きやポーズは実際に動いてみると不自然な場合もあり、バラエティ番組などから学んでいるという。
そのほか、実際に動いてみて不自然な動きの流れを発見したり、時代によるかわいいのトレンド、年齢などの違いも研究しているということで、一言で「かわいい動き」といっても、多くのことに意識を向ける必要があるようだ。
かわいい動きの言語化
かわいい動きを学んだら、続いてはその動きを共有するために言語化する必要がある。ここではキャラクターの性格を設定から分析して、その動きを言語化するというアプローチがとられた。
ebi tec laboでは大きく5つの性格に分類(元気系、快活系、冷静系、清楚系、無機質系)。これらはあくまでイメージだが、こうした取っ掛かりから考えることが重要になるという。
ワンランク上のかわいい動き
そして最後の工程として紹介されたのが、ワンランク上のかわいい動きを実現するためのアプローチ。基本となる動きの方向性はキャラクターの設定からある程度見えてくるのだが、そこにディレクターとアクターが協力して演技に少しだけ演出を加えることで、よりイメージに近い動きへと昇華されていく。
今回のセッションでは、オリジナルの設定をもとにモーションキャプチャーの流れを実践することに。まずは清楚系に分類されるキャラクターに対して、「よろこびワンアクション」というお題で動きをつけていった。
実際にアクターに動いてもらう前に、ディレクターが身振り手振りや写真を共有するなどのかたちでそのイメージを共有。本番前のリハーサルとして、まずはイメージに沿った動きをしてもらう。その時、淡々と進めるのではなく、意図的に大きな声を出すなどして、アクターのテンションを上げていくのが大事だという。
リハーサルを通じてある程度のイメージが共有されたところで、ここからちょっとした演出の追加が行われていく。今回、清楚系のイメージとして海老沼氏が提示したのが以下の項目だ。
ここでは、開いていた足を閉じたり、体を斜めに傾けたりすることで清楚な雰囲気を表現。同時に手の指を丸めることでも上品さを出していたのだが、それによってキャラクターの年齢設定が少し上がってしまうということで、能登さんからあえて指を伸ばすという提案が。こうしたディレクターとアクターのコミュニケーションを経て最終的なポーズが決まっていく。
その後は元気系の設定で挨拶のアクションを実践。最初は両手を顔の横で広げた、少し幼い雰囲気のポーズとなっていたが、海老沼氏はその後、右足を上げ、左手を下げることで少し落ち着いた印象のポーズを指示。一方、能登さんはそのポーズのままでは動きとして不自然になることから、右足ではなく左足を上げるかたちに修正し、最終的なかたちに落ち着いた。
最初の例と同様、お互いにやり取りを重ねながらそのキャラクターに合った動きを模索していく様子は分かりやすく、同時に現場でスムーズにイメージをすり合わせるためにはディレクション側の動きへの理解とイメージが必要であることが改めて感じられた。
※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。
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