2020年9月23日よりオンラインにて開催中の「東京ゲームショウ2020 オンライン」。その公式番組として国内のパブリッシャー、ディベロッパーの代表4人による基調講演「未来は、まずゲームにやってくる」が9月25日に配信された。
この講演にはバンダイナムコスタジオの内山大輔氏、カプコンの竹内潤氏、コナミデジタルエンタテインメントの谷渕弘氏、スクウェア・エニックスの浜口直樹氏が参加。モデレーターを務める元ファミ通編集長・林克彦氏の進行のもと「次世代機の未来」、「ユーザーコミュニケーションについて」、「ウィズコロナ時代のゲームづくりと未来」の3つをテーマにディスカッションを行った。
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| 左から司会の片岡由衣さん、KADOKAWA Game Linkage ファミ通グループ代表の林克彦氏、バンダイナムコスタジオの内山大輔氏、カプコンの竹内潤氏、コナミデジタルエンタテインメントの谷渕弘氏、スクウェア・エニックスの浜口直樹氏。内山氏と竹内氏はリモートでの参加となった。 |
ゲームを大きく変えるポテンシャルを持つ次世代機
今年の11月に次世代機となるPlaystation5とXbox Series Xが相次いで登場することから、まずは「次世代機の未来」をテーマにトークが展開された。
バンダイナムコは次世代機に対応した新作「スカーレットネクサス」を開発中だが、内山氏によると開発陣は次世代機の持つハードウェア的パフォーマンスに大きな手応えを感じており、高速SSDやCPU、GPUのパワーに驚かされているという。これらの技術をゲームユーザーの体験や遊びにどう繋げていくのか。ハード側から開発者に挑戦状を突きつけられているように感じていると神妙な面持ちで語った。
「バイオハザードヴィレッジ」などを開発中のカプコンも同様で、竹内氏は現行機でかなりのブレイクスルーができたと考えていたというが、次世代機に触れてみて「もっと向こう側、はるか遠くに出口があるみたいに感じた」と嘆息。処理も読み込みも恐ろしく速いことから「この“速さ”をどうゲームに落とし込んでいくか、考え方をシフトさせないと使いこなせないのではないか」といった印象を抱いたという。
たとえば、これまでは当たり前にローディングが存在していて、その最中にTIPSなどを表示していたが、これからはそういったことができなくなる。バンダイナムコでも同じようなことが課題になっていて、「スカーレットネクサス」の開発陣が「TIPSどうしよう」となっていたという。こうしたことは「ぜいたくな悩み」としつつ、「いろいろな部分で変化が求められる」、「これまでと違った取り組みが必要になる」と竹内・内山両氏は語った。
一方、スクウェア・エニックスの浜口氏は、スマートフォンがいつでもどこでも手軽に楽しめる、より生活に溶け込む方向に進化しているのに対して、次世代機は「ゲームをやるぞ!」という強いモチベーションを持つユーザーに特別な体験や没入感を与える方向に進化していくのではないかと分析。さまざまなプラットフォームのすみ分けが進むことで、開発側のビジョンがダイレクトになり、ユーザーにコンテンツを届けやすくなるのではないかとの考えを述べた。
コナミデジタルエンタテインメントの谷渕氏は「パワフルプロ野球」シリーズなどのスポーツゲームを手掛けていることから、野球ファンのような一般層に次世代機向けの作品をどう届けていくかが課題と回答。スポーツにもIT技術が入ってきているだけに、それをどう次世代機に落とし込み、新たな遊びを生み出すか考えているとのことだ。
また、竹内氏は次世代機について、「これまでと違う形でユーザーと繋がれるハードになるのではないか」と予測。「バイオハザードVII」で配信者たちの「怖い、怖い」という声が評判になったことから、「シングルプレイのゲームでもソーシャルネットに入っていける、そのカギを手に入れることができた」と感じているそうで、次世代機ではそこに新たな広がりや大きなチャンスがあるのではないかと期待を述べた。
配信やSNSの発達で変わるもの、変わらないもの
この竹内氏の話を受けて、トークのテーマは「ユーザーコミュニケーション」へとシフト。メジャーリーガーのダルビッシュ有選手が、コナミの「プロ野球スピリッツ」についてSNSで情報発信していたのをきっかけにコナミとのコラボが実現。プロ野球ファンが大いに喜ぶという出来事があったのだが、事前の仕込みも何もなかったのに、こうしたことが実現したことについて谷渕氏は「時代が変わってきたなと感じますね」と感慨深げだった。
浜口氏もまったく同意で、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY VII REMAKE」は緊急事態宣言の直下である4月10日のリリースで、企画していたリアルでのイベントがまったくできなくなったという。しかし、実況や配信動画が拡散されてSNSなどで大盛り上がり。そうした現象に「時代をすごく感じた」と語った。
配信や実況での盛り上がりは想定していなかったものの、「ここはユーザーに刺さるだろう」、「このモンスターはファンの記憶に残っているだろうから、こういう風に出してやろう」といったプレイヤーの反応を織り込んだ仕込みは色々していたとのこと。発売後にそれらのキーワードでエゴサーチして、「ちゃんと刺さったんだ」とニヤニヤしながらネットを見ていたことを明かした。
このような状況は内山氏も意識していて、「ゲームの定義について見つめ直している」とコメント。バンダイナムコではコロナの影響で「鉄拳」の大会や「アイドルマスター」のライブが観客を集める形で行えなくなった。しかし、そうした大会、ライブなどの配信や実況プレイ、SNSでのユーザー同士の繋がりなどを見て、これらも広義のゲーム体験のひとつだと認識するようになったそうだ。開発スタジオとしても「ゲームをプレイする以外での繋がりの部分で、どういった機能やアイディアを出していくか。そうした部分へのフォーカスは外せなくなると思います」と内山氏は語った。
コナミもコロナ禍でeスポーツのイベントがまったくできなくなり、オンラインでどう行うかという方向に切り替えざるを得なくなったという。だが、そこから逆に見えてきたことも多く、今後も発想の転換が必要になるのではないかと谷渕氏は見解を述べた。
こうしたコミュニケーションの変化によって、開発の仕方も変わってくるのではないかという林氏の問いかけに、竹内氏は「違ってくる部分もあるけど同じ部分もある」と回答。「バイオハザードVII」の開発時に「キレたカミさんが包丁を持って追っかけてきたらバズるよね」と話していたというエピソードを明かし、「ここで喜んでもらえるという根っこの部分は今までの延長線上で、そこは変わらない」と強調しつつ、一方で「バズる」という考え方になるところは、これまでとの大きな違いと語っていた。
コロナ禍を契機に変わりゆくゲーム開発の現場
最後のテーマは「ウィズコロナ時代のゲームづくりと未来」。未だ続くコロナの影響下の中、ゲーム業界はどのように取り組んできたのか。そして、今後ゲーム作りはどのように変わっていくのかが語られた。
まずは今年の4月に緊急事態宣言が出されたときの出来事について。やはり各社ともインフラやセキュリティの問題があったり、リモートでのワークフローになじむまで時間がかかったりしたことから1カ月くらいはドタバタの連続だったという。ただ、現在は落ち着いてきていて、スクウェア・エニックスは基本的には在宅で作業を行っているが、コアメンバーは週2回くらい出社してコミュニケーションを取るなど、在宅をメインとしつつ出社とのバランスを取っているそうだ。
以前なら在宅での開発など問題外だったが、ケガの功名で「案外できるね」と気づくことができたとも内山氏は語る。とくにプロダクション作業に入ったときの生産性、集中してアセットを作っているときの作業効率はそんなに悪くないという。ただ、新たなチームを作って雑談の中からアイディアをまとめ上げる開発の入口の部分と、最後にみんなで触って面白さを確かめたり、改善点を出し合ったりする出口の部分は「やはり会社に集まって、みんなで開発したほうがいい」との見解を示した。
このクリエイティブにおけるコミュニケーションについては各社とも苦慮しているようで、竹内氏によるとカプコンでは「○○クンと話をしていないとボクは考えられない」というスタッフもいたりしたという。現在はリモートの環境も整ってはいるが、やはり「出社したい」というスタッフが多く、出社率は高めになっているとのことだ。
浜口氏も雑談の中でのコミュニケーションの重要性を指摘。これがリモートになって、もっとも失われた部分で、そこをどうアイディアでカバーしていくかが試されていると語った。ただ、開発の水準はかつてのレベルに戻ってきているので、今後も臨機応変に対応しつつ、より効率の良いものにしていけたらと期待を述べた。
また、内山氏は今回のコロナをきっかけにして、すでに世界の人々が新しいスタイルを身に付けつつあると語り、そうした世界に適応していくための一番良い解決方法を各社がそれぞれ探していくことになるだろうとコメント。竹内氏も「今後はサプライチェーンのありようも変化していく。僕たちだけじゃなくて業界全体が変化していく時期がきたと思います」と語った。
これらの話を受けて林氏は「皆さんが無理なくブラックじゃない状況で働けたら一番」、「そうした部分で変革があれば良い」と総評。最後に全体のまとめとして、「僕らゲームファンは新しいゲームが遊べるのが何よりなので、それが実現しそうだなと思えたのがうれしかったです」と語り、今回の基調講演は終了となった。
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