【おとめげ！】第20回「ビルシャナ戦姫 ～源平飛花夢想～」――女性の義経が紡ぐ、新たな源平合戦を刮目！

「おとめげ！」は、イケメンと可愛い女の子をこよなく愛するライターが、さまざまな乙女コンテンツをご紹介する連載企画です。今回はアイディアファクトリーの女性向けゲームブランド「オトメイト」から2020年9月17日に発売されたNintendo Switch用ソフト「ビルシャナ戦姫 ～源平飛花夢想～」についてお届けします！

女性の遮那王（義経）による、新たな源平合戦！

「ビルシャナ戦姫 ～源平飛花夢想～」の主人公は、波乱万丈な生涯をおくったと名高い平安時代の武将・遮那王（元服後は源義経／名前のみ変更可）です。本作の舞台は、遮那王が生まれた年に起きた「平治の乱」から15年後。遮那王は源氏の一族として打倒平家を期待されながら育ちましたが、当人は争いを望まず穏やかな生活を望んでいました。しかし平教経が京都の鞍馬を訪れ、遮那王に勝負を申し込んだため事態は一変。弁慶たちとの出会いを経て、現在の東北にある平泉を目指すことになります。

史実での義経は文武に優れ、権力を握っていた一族「平家」を滅ぼした立役者の1人でした。皇位を巡る争い「平治の乱」で遮那王の父・義朝が平清盛に討たれ、平家は政治的な権力を強めていきます。一方、源氏の跡継ぎである兄・頼朝は伊豆へ島流しとなり、遮那王は鞍馬寺へ預けられました。

遮那王は源氏に縁のある奥州の藤原秀衡（ふじわらのひでひら）を頼って平泉へ向かい、やがて平家を倒すべく挙兵した頼朝の元へ合流。断崖絶壁を馬で駆け下り奇襲を仕掛けた「鵯越（ひよどりごえ）の逆落とし」をはじめ、平家が滅亡した「壇ノ浦の戦い」までさまざまな武勲をたてました。

しかし、頼朝の許しなく朝廷から冠位を授けられるなどで兄弟間の対立が深まり、平泉でその生涯を閉じたといわれています。その悲劇的な末路が人々の心を掴んで人気を集め、現代に至るまでさまざまな伝説や物語が生み出されました。

本作ではそうした史実の要素もふんだんに取り入れつつ、義経が“実は女性である”という秘密を抱えたまま、源氏と平家の存亡をかけた戦いへ身を投じます。自身に課せられた宿命に立ち向かう中で出会う5人の男性と迎える結末はどのようなものなのか……切なくも激しい感情で揺れ動く歴史ファンタジーをたっぷりと楽しめますよ！　ちなみに全体的にはシリアスですが、時にはホッと一息つけるような微笑ましいやり取りもあるのでご安心を。

ストーリーの途中に現れる選択肢によりルートが分岐し、攻略対象キャラクターの好感度や遮那王の能力値によって結末が変化します。恋愛エンドや悲恋エンドのほか、バッドエンドやサブキャラクターとのifエンドも見どころ。一度クリアするとフローチャートの好きな部分から再開でき、好感度や能力値も調整可能なので見たいエンドが見やすい仕組みになっています。

個人的なオススメは、遮那王をはじめとした武将たちが一対一で戦うシーンです。武器を構えた立ち絵のバリエーションが多いのもあり、鍔迫り合いのようなシチュエーションなどを迫力満点に再現しています。静止画では伝わりにくいかと思いますがスピーディな斬り合いが展開し、効果音も合わせて臨場感はばっちり。共闘で背中合わせといったシーンもありますし、戦いを通して生まれるさまざまな感情をじっくり体感できますよ。

遮那王が出会い、運命を共にする5人のキャラクター

それでは、登場キャラクターについてご紹介していきましょう。本作の遮那王は多くの人から慕われる心優しい人物で、母親や兄・頼朝とは離れて暮らしていたため肉親の愛情に憧れています。一方、戦いの際には鬼神のごとき動きをみせる苛烈な一面もあり、彼女がどうして家族と離れて育ったのかも含めて本作の重要なポイントとなりますよ。

源頼朝は遮那王と同様、まだ子供の頃に父・義朝や兄を平治の乱で失います。処刑は免れますが伊豆へ流刑となり、源氏再興への強い願いを抱きながら孤独に生きてきました。打倒平家を掲げて蜂起し、遮那王も頼朝の力となるため参上します。

当初は凄惨な過去の出来事もあり、弟に対しても固い態度を崩しませんが、一途に兄を慕う遮那王と接するうちに少しずつ変化が。厳しさの中にも複雑な感情が垣間見え、確かな情愛を感じられる絶妙な演技も聞きどころです。誰よりも強くあろうとする人だからこそ、遮那王にはずっと側で支えてあげてほしいと願わずにはいられません！

清盛の息子である平知盛は、落ち着いた言葉遣いや柔らかな物腰が特徴の男性です。知略だけでなく武勇にも優れ、幼い頃から戦場に立ってきました。栄華を極める平家の中にありながら、平家の興亡を描いた「平家物語」の一節でも有名な“盛者必衰”を悟っているかのような冷めた雰囲気をまとっています。

そんな知盛が偶然出会い、強く興味を惹かれたのが遮那王です。敵として遭遇しながらも、さまざまな手段で彼女を翻弄して心の中に入り込んでくるので、色々な意味でドキドキさせられました。また、知盛のルートでは「何故、平家がこれほど栄えたのか？」という理由も明らかに。本作全体の謎に大きく関わっているのでプレイするタイミングは終盤がいいのと、弁慶ルートもセットでおすすめです。

平教経は清盛の弟・平教盛の息子で、知盛や重衡とは従兄弟関係にあります。栄華を極めるうちに貴族化していく平家の中でも侍としての志を大事にし、その腕前は遮那王にも匹敵。同い年の遮那王とは何かと比べられてきたため、ライバル心をむき出しにしています。

遮那王との純粋な勝負を望む教経ですが、否応なく背負った平家という名がそれをなかなか許してくれません。そのため、教経は周囲も驚くような行動に出ます。そこから見えてくる教経の本質が非常に真っ直ぐで、遮那王とも1人の人間として向き合おうとするのが素敵だなと思いました。お互いの願いがもうすぐ叶うというところで上手くいかず、歯がゆい場面も多いのですが、その分終盤にグッときますよ！

比叡山延暦寺の僧兵だった武蔵坊弁慶は平家とのいざこざで寺を追われ、その因縁から京の都で平家を相手に刀狩りをしていました。そこで遮那王と出会い、やや強引に付き従うことを決めます。あまり人の話を聞かないところもありますが、裏表のない実直さに遮那王や仲間たちも大いに救われます。

源氏として生まれ、何かと辛い思いをすることの多い遮那王ですが、弁慶はそうした宿命も丸ごと一緒に受け止めてくれるような包容力に満ちています。何があっても、どのような自分でも絶対に信じてくれる相手がいるというのはとても心強かっただろうなと思いましたし、物語の途中でも弁慶と遮那王ならいい家族になれるだろうなと十分信じられました。

春玄は義朝をかばって果てたという臣下・源重成の子供で、遮那王とは同じ時期に鞍馬寺へ預けられました。遮那王が女性であることを最初から知っている数少ない相手で、もっとも気心の知れた間柄となります。父のように遮那王を守ると誓っており、剣技こそ一歩遅れを取っていますが知略では遮那王にも負けません。

源氏としての使命を背負った遮那王と共に歩んでいく春玄ですが、やがて自身も複雑な運命の渦中にいることを知ります。「なるほど！」と深く納得できた一方、2人の行く末がどうなるのか1番気になったルートでもありました。

このほか、サブキャラクターとして登場する平重衡、佐藤継信、佐藤忠信、佐々木高綱にもifエンドが用意されています。攻略キャラクターくらい親密とはいきませんが、兄弟で行動することの多い重衡や継信・忠信と2人きりになるシーンや、頼朝の家臣である高綱が普段どんな活動をしているのかなど、ほかのルートでは見られない姿を堪能できます。こちらも含めてぜひ、本作の世界を隅々まで楽しんくださいね！