アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第20回は原案・シリーズ構成を虚淵玄氏が務めたリアルロボットアニメ「OBSOLETE(オブソリート)」を取り上げます。

目次
  1. こんなゲームファンにオススメ!
  2. 第20回「OBSOLETE(オブソリート)」
  3. 藤津亮太(ふじつ・りょうた)

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。

今回は、YouTube上で全12話が配信され、3月26日にはBlu-rayの発売も控える、原案・シリーズ構成を虚淵玄氏が務めたリアルロボットアニメ「OBSOLETE(オブソリート)」を取り上げます。

こんなゲームファンにオススメ!

  • 「アーマード・コア」シリーズや「ボーダーブレイク」などロボットを題材にしたゲーム
  • Phantom PHANTOM OF INFERNO」や「ガンスリンガー ストラトス」シリーズなど虚淵玄氏が原案・シナリオなどで関わったゲーム

第20回「OBSOLETE(オブソリート)」

ロボットアニメを大きく分類する時、「スーパーロボット」と「リアルロボット」というカテゴリーを使うことがある。もちろんこの分類は厳密なものではない。この2つのカテゴリーには複雑な中間領域が含まれている。ただ確実に言えることのもある。

それは「スーパーロボット」と比べた時、「リアルロボット」は、ロボットそのものの魅力とその世界観のおもしろさがより密接な関係にあるということだ。

いかなる政治的・技術的背景からそのロボットが生まれ、どのような環境で使われているのか。映像化されたのは「世界」の一部に過ぎない。映像の細部からその「描かれていない世界」の広がりを感じ取ったり、あるいはもっと積極的に世界を想像していく過程から、「このロボットは(一見荒唐無稽に見えるが)“リアル”な存在だ」という実感が生まれるのだ。

「OBSOLETE」は2019年12月と2020年12月の2回に分けて全12話を配信した、いわゆる「リアルロボットもの」だ。これまでに全世界の総再生回数が5000万回を突破するほどの人気を得ている。

本作は毎回舞台となる地域が異なる。中南米の山中もあれば、印パ国境の氷河、内戦中のアフリカの国家なども登場する。また一方で、1話あたりの尺は約11分と通常のアニメの半分ほど。そのかなりの部分がロボットの活躍シーンで占められている。本作は、限定されたシチュエーションにおけるロボットの活躍にだけフォーカスすることで、「そこには描かれていない世界」の広がりを想像することが可能な作りになっている。

本作に登場するロボットは「エグゾフレーム」として呼ばれる。エグゾフレームは、突如現れた異星人が石灰岩1トンと引き換えに供給するという形で人類に手渡される、2mほどの小型ロボットだ。意識制御で操作も簡単。そのため第三世界や紛争地域などでは、安価な兵器として急速に普及することになった。これは威力が高く、耐久性に優れ、コストが低いアサルトライフル・AK-47が世界中で使われているという現実を、ロボットアニメに反映させた設定だ。

安くて使い勝手のいいロボットが世界のパワーバランスを崩してしまう。それは先進国――特にアメリカにとっては脅威ともなっていく。では、この変革を臨み仕掛けたものは誰か。アメリカはそれにどう対応するのか。各話の点描を通じて本作はそんな大きな物語も浮かび上がらせる。「OBSOLETE」という作品は、エグゾフレームというロボットを通じて見えてくる「世界観」そのものが主役の作品なのである。

「OBSOLETE(オブソリート)」公式サイト
https://project-obsolete.com/

藤津亮太(ふじつ・りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。

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