Crytekは、クライミングゲーム「The Climb 2」を本日3月5日にOculus Quest Storeでリリースした。
Facebook Connect 2020で発表された「The Climb 2」は、ロープやハシゴ、路面から高い場所に吊り下げられている建設機器など、ダイナミックな対象物が登場するクライミングゲーム。15種類のマップが用意されている。
これまでのロッククライミングに、まるでパルクールのような要素が取り入れられた本作。プレイヤーは新たな「シティ」という舞台で、突起する煉瓦や窓枠を見つけて上へ上へとよじ登る。また、前作「The Climb」の舞台も、それぞれEasy、Medium、Hardの3種類の難易度別ルートも収録されている。
「The Climb 2」は2,990円で販売され、期間限定で「The Climb」と「The Climb 2」のDUO PACK(セット)が3,990円で登場する(日本時間3月5日3時から3月13日3時まで)。
Oculus Quest Store
https://www.oculus.com/experiences/quest/2617233878395214/
また、Crytekのシニアプロデューサーであるファティ・オズバイラム氏のインタビューも公開。「The Climb」とその続編について、高所恐怖症にもかかわらず自らテストプレイしたこと、新しいマップについてなどが語られている。
ファティ・オズバイラム氏 インタビュー
――ゲーム業界で仕事を始めるきっかけは?VRについて、まず何に魅力に感じたのでしょうか?
2009年に学業を終え、Crytekのユーザーエクスペリエンスデザイナーとしての仕事に就きました。2012年以降はプロデューサーとして、最前線でビデオゲームの開発に関する経験を積みました。
Crytekでは、イノベーションが全てです。当初VR空間の中で何ができるか検討してほしいと依頼があり、まずは一歩離れて、夢中になれる体験を創り上げるために何が必要なのか考えてみました。VRに適していると思われるあらゆるゲームプレイの技巧、つまりゲームの主たる仕組みのプロトタイプを作成する専門チームを立ち上げました。それから6年経った今、当時作り上げた最初のプロトタイプを活用したIP(知的財産)の第2弾として「The Climb 2」をリリースするに至りました。
――「The Climb 2」の開発にあたり、「The Climb」から得た教訓に基づいて改良を行った点はありますか?
VRは、イマージョン、つまりそれが実体験のように感じられるかどうかですから、その世界を描くグラフィックの忠実性が極めて重要です。もちろん、CryEngine(クライエンジン、Crytek開発のゲームエンジン)は、VRの世界を美しく描画しているので、プレイヤーは自分があたかも別世界に存在するかのような感覚や、もしくはめまいのような感覚さえ感じることになります。
「The Climb」は、既に手軽で臨場感のあるゲームに仕上がっていましたので、ゲームプレイの根本的な仕組みはあまり変えていません。また、VR体験を最高のものにするためには、1秒当たりのフレーム数が安定していることが重要です。ですから、そういったことを念頭に置きつつ、これまでのプロジェクトから学んだことを含め、コンテンツ作成のパイプラインを調整しました。
――時間の経過とともに、プロジェクトはどのように変わりましたか?
「The Climb」は、「The Climb 2」に比べると静止しているように感じてしまうかもしれません。今回は、プレイヤーが利用できるロープやコンテナ、ハシゴ、そして登攀用具などを導入しました。それらに飛び移ったり使ったりする際には、プレイヤーの体重に反応します。
またスライディンググリップも追加しました。角度45度のエッジで、スライディンググリップに掴まって滑り降り、最後には端っこで落ちてしまいます。タイミングよくスライディンググリップを利用すれば、スライドしながら飛び降りることでリーチとスピードを増すことができます。スライディンググリップは、プレイヤーがスライドの端に到達し次のアクションを起こさないと落ちてしまうリスクがあり、とてもスリリングですが、成功すれば勢いを獲得する事ができます。これは是非マスターしてもらいたいテクニックのひとつです。
アート面での一番大きな変更は、「シティ」という舞台が加わったことです。「The Climb」では、時おり人工的な構造物があったものの、全体的に自然環境の中でのクライミングに限定されていました。「The Climb 2」では、様々な対象物で、楽しくクライミングに挑戦できるよう、この新たな体験のプロトタイピングに多くの時間を費やしました。
――「The Climb 2」の開発にはどれくらいの時間がかかりましたか?おもしろいエピソードがあれば教えてください。
どこからどこまでを「開発」とするのかにもよりますが、私たちは、常に所有しているIPについて、そしてそれをどのように活用できるかについて考えています(まだいくつかの案がバックログにありますので、よきタイミングでそれらにも着手することになるかもしれません!)。本格的に「The Climb 2」の制作を開始したのは、2020年初頭です。
「The Climb 2」に関しては、前作での体験の緊張感や臨場感を保ちながらも、新たに導入すべき要素を評価することを目的に、チームミーティングを行いました。「コンセプトを定義」していくプロセスやそれを基にしたアイディア出しは、今後のゲームの展開で採用したい様々なアイデアが飛び交い、とても楽しいものでした。
最終的には、プレイヤーが人工的な構造物を登る「シティ」を舞台にしようということになりました。「シティ」にはあらゆる面があり、横への移動も増えています。ひとつのビルをよじ登るだけでなく、それぞれ特徴のある3つの異なるビルを登ります。例えば、一面ガラス張りのビルでは、吸着カップや移動中の窓清掃用のゴンドラを使います。次のビルへは、広大な都市の景観を背景にジップラインを使って滑り降ります。そして、動くエレベーターに飛び移って上部へ運んでもらうこともできます。
あまりネタバレしたくないのでこれくらいにしておきますが、本当にクールな場面や仕掛けをたくさん取り入れました。一言で「シティ」といっても、様々なフレッシュでエキサイティングな舞台が揃っています。
――新しい15種類のマップの内、どれがお気に入りですか?その理由も教えてください。
ありきたりの表現になってしまいますが、どれにもそれぞれ独特で、楽しい要素が含まれています。高所恐怖症の方には、特に「Hard」レベルでの設定は最も困難なのですが、やりがいのあるチャレンジです。終わった時には、汗をびっしょりかいていますけどね!
――「The Climb 2」のようなゲームに関しては、VRが最も適しているとお考えですか?VR環境以外でもこのゲームは成り立つのでしょうか?
「The Climb」では、魅力的な環境の中で実際にクライミングをしているような気分になります。ですから、「The Climb」も「The Climb 2」もVR無しでは楽しむことのできないゲームだと思います。通常のゲーム用のデバイスでは、VR環境で体験することのできる臨場感や緊張感を実現することはできませんから。
――「The Climb」のファンにとって、「The Climb 2」の魅力はなんでしょうか?初めてこのゲームを体験するプレイヤーにとってはどうでしょう?
「The Climb」を体験したプレイヤーにとっては、自然界の舞台は親しみのあるものかもしれませんが、「The Climb2」のどのマップも全く新しく開発されたものであり、ダイナミックな要素が追加されているので、フレッシュでエキサイティングなチャレンジとして楽しんでいただけるはずです。
もちろん新しい「シティ」という舞台は、「The Climb」経験者でも新規のプレイヤーでも、まったく新しい体験となると思います。
――サウンドトラックとサウンドデザインの担当者は?音を作り上げていく過程は、どうでしたか?
設定や特徴の定義が決まったところで、私たちのオーディオチームがそれぞれの設定に適したスタイル、その環境における存在感をサポートするためのサウンドデザインを開始しました。それぞれの環境や時間帯に合った雰囲気や情緒を明確に示す音楽やSE(音響効果)です。新しい「シティ」の舞台では、その現代的なテーマに合った音楽が独特のムードを演出しています。
メニューに関しては、ゲームを起動するたびに変化する音楽環境をつくりました。Questでは、プレイヤーが登ることに惹きつけられるよう、SEが高さの感覚を表現できるよう微調整を重ねました。様々な音を3Dの世界で再生し、また、特注のバイノーラル方式の再生音を用いることで、それぞれの環境下でリアルで臨場感のある音を実現しました。
――「The Climb 2」のデモやプレイテストの際に見た、ベストリアクションは?
一番おもしろかったのは、高所恐怖症の私がストレスで汗びっしょりになってプレイするのを見ている人達のリアクションでした。でも、見ていた人たちも、いざプレイを始めると、その姿は私とさほど変わりないと思いましたけどね!
忘れられないのは、私の父と母がヘッドセットを着けて、「Canyon」の舞台で頂上にたどり着いた時のリアクションです。母は非常に感心した様子で、その瞬間を愉しんでいるようでした。父は、自身のVR体験について何かひらめいたようでした。
とにかくヘッドセットを装着して実際にVRの感覚を体感してください。最高の体験です。
――VRのために開発を始める開発者へのアドバイスをお願いします。
まずは、シンプルにすること、そして不可欠な部分に焦点を合わせることです。例えば、私達がVRにおけるクライミングのプロトタイピングを開始した際、最初に手掛けたプロトタイプは、しっかり掴んで放す両手、でした。プロトタイプが良い感じで仕上がっていたので、チームのみんなが(リーダーボードやスタミナ、チョークなどを追加して)ゲーム化しようと言い始めました。それで、仕組みや体験の場として構想が正しい方向に進んでいるのだと実感しましいた。
開発を始める前にまず、「VRで何を直観的に感じられるのか」という点に取り組むことが、VRにおけるイマージョンへの鍵だと思います。そこから必要な要素や機能を追加していけばよいわけです。
――次のお楽しみはなんでしょう?作品に関するエキサイティングなアップデート情報はありますか?
まずは何よりも、ダイナミックなグリップや「シティ」の設定についてプレイヤーの皆さんの反応を楽しみにしています。今後もコミュニティを持続させ、エキサイティングなチャレンジを提供できるよういくつかアップデートを発表しますので、お見逃しなく!
――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。
ファンの皆さんに御礼を申し上げます。皆さんにサポートいただけて、本当に光栄です。「The Climb 2」をリリースできてワクワクしています。気に入っていただけますように!