セガとColorful Paletteより配信中のiOS/Android用アプリ「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」(以下、「プロセカ」)。本稿では、2020年9月30日のサービス開始から半年が経過した「プロセカ」の“ハーフアニバーサリー”を記念して、本作のこれまでの物語を、筆者の主観も交えておさらいする。
目次
「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」には、“本当の想いを見つけられる場所”――“セカイ”で出会ったバーチャル・シンガーたちに導かれ、音楽に懸ける夢や目標のために結成された5つのユニットが登場する。
幼馴染みバンドユニットの「Leo/need(レオニード)」。
異色アイドルユニットの「MORE MORE JUMP!(モアモアジャンプ)」。
実力派ストリートユニットの「Vivid BAD SQUAD(ビビッドバッドスクワッド)」。
はちゃめちゃショーユニットの「ワンダーランズ×ショウタイム」。
正体不明の音楽サークル「25時、ナイトコードで。」。
彼らの物語はそれぞれがまったく異なる軌跡を描きながらも、ときに交差し、影響を与え合うことで、新たな展開を見せてきた。この“ハーフアニバーサリー”というタイミングでこれまでの展開を振り返ることは、これから先の未来で描かれる物語を予想し、期待をより大きく膨らませることにも繋がるのではないだろうか。
また、「プロセカ」に興味はあるけど、どんな物語かよく分からない……という人にとっては、本作の魅力を把握するきっかけにもなるかもしれない(ネタバレを含むので、自分でゲームに触れるまでストーリーの概要を知りたくない場合は注意)。
あなたが「プロセカ」をよりいっそう楽しむために、本稿が少しでも役立てば幸いだ。
Leo/need:幼馴染同士の絆の再生、そして“バンドとして活動を続けること”にまつわる葛藤
宮益坂女子学園(宮女)の1年生、星乃一歌(CV:野口瑠璃子)は、友達想いの心優しい少女。そんな一歌の最近の悩みは、幼い頃に一緒にバンドを組んだこともある同じ宮女の1年生、望月穂波(CV:上田麗奈)と日野森志歩(CV:中島由貴)との関係が、いまはぎこちないものになっていることだった。
そんな中、生まれつき病弱で、中学時代はあまり会えなかったもうひとりの幼馴染み、天馬咲希(CV:礒部花凜)が宮女に復学してくる。咲希は、昔のようにみんなで一緒にいたいと願うが、4人の関係が昔とは変わってしまったこを知る。だが、突如いざなわれた“教室のセカイ”で初音ミクと出会い、4人でバンド演奏をしたことをきっかけに、次第に関係に変化が現れていく。
一歌、咲希、穂波、志歩はもう一度距離を縮め、かつて4人で一緒に見た“しし座流星群”のフランス語をヒントに、「Leo/need」という名前のバンドを結成するのだった。
そんなLeo/needに密かに新たな転機が訪れたのは、イベントストーリー「揺れるまま、でも君は前へ」、「響くトワイライトパレード」で描かれた、プロ志向のバンドによる志歩への誘い。
幼い頃のバンドの活動をしなくなってからもベーシストとして腕を磨き続け、プロへの憧れもある志歩は、プロ志向のバンドからの勧誘により、他の3人との意識の違いに気づき、自分の夢に一歌達を巻き込むことへの葛藤が生じる。このことをまだ一歌たちにも相談できていない志歩が、この先どんな経験をして、どのような決断を下すのか……。これが、今後のストーリーの見どころとなりそうだ。
また、イベントストーリー「響くトワイライトパレード」では、一歌と志歩がそれぞれ「ワンダーランズ×ショウタイム」の草薙寧々と、今後への布石とも思えるやりとりをしている。一歌は同じ歌い手として。志歩はより上の環境で活動できそうな実力がありながら、「ワンダーランズ×ショウタイム」に所属している寧々に、現在の自分の悩みを投影してのことだった。咲希の兄である天馬司も所属する「ワンダーランズ×ショウタイム」と「Leo/need」との関係は、これから先、さらに深まっていくかもしれない。
果たして“幼馴染の絆”は、バンドでの活動を続けていく上で必ず生じる“活動に対するスタンスの違い”を乗り越えられるのだろうか?
「needLe」(作詞・作曲:DECO*27)
MORE MORE JUMP!:アイドルを夢見る少女の想いによって、3人の“元アイドル”が明日への希望を取り戻す
宮益坂女子学園の1年生、花里みのり(CV:小倉唯)は、国民的アイドルグループに所属する桐谷遥(CV:吉岡茉祐)に憧れてアイドルを目指していた。けれどオーディションには50連敗中。追い打ちをかけるように遥がアイドルを引退したと知り、大きなショックを受ける。
そんな遥がアイドル引退後、自分と同じ宮女に同級生として復学したことを知ったみのりは驚くが、いままで遥からもらったものを大事にしながら、普通の女の子に戻ることを決めた遥を応援しようと決心する。しかしそんなみのりと遥が、宮女の2年生で元アイドルの桃井愛莉(CV:降幡愛)と、同じく2年生で現役アイドルの日野森雫(CV:本泉莉奈)の口論を聞いてしまったことをきっかけに、4人の運命の糸は絡み合う。
その後、雫も所属するグループを脱退し、アイドルを辞めることに。アイドルを夢見るみのりと、アイドルを辞めた遥、愛莉、雫。4人はペンライトが輝き、初音ミクをはじめとするバーチャル・シンガーたちがアイドル活動を行っている“ステージのセカイ”へと導かれ、やがて新たなアイドルユニット「MORE MORE JUMP!」を結成するに至る。
ほかの3人と違ってアイドルとしての経験はゼロに等しいみのり。だが、3人がもう一度アイドルとしてステージに立つ決意ができたのは、みのりのアイドルへの純粋な想いがあったから。その誰かをまっすぐに勇気づけられる姿は、まさに3人がかつて目指していたアイドルそのものだった。
ほかのユニットとの絡みとしては、「[アイドルじゃない私]桐谷遥」のサイドストーリーなどで描かれるように、遥と「Vivid BAD SQUAD」の白石杏が、高い目標を持つ者同士だからか、以前から親友でありライバルだったことも見逃せない。同じく「Vivid BAD SQUAD」の小豆沢こはねとみのりがクラスメイトだったりと、今後イベントストーリーなどで両ユニットの関係が掘り下げられる機会があるとしたら、どのようなやりとりが交わされるのか楽しみだ。
イベントストーリー「ここからRE:START!」で描かれたように、事務所に所属せず、フリーのアイドルとしてまずは配信を中心に活動していくことになった「MORE MORE JUMP!」。インターネット全盛の現代だから描ける“等身大のアイドル像”を、確かな希望と共に描いてくれることに期待したい。
「アイドル新鋭隊」(作詞・作曲:Mitchie M)
Vivid BAD SQUAD:“ふたり”と“ふたり”のライバルユニットは、やがて同じ夢を追う“4人”に
神山高校の1年生、白石杏(CV:鷲見友美ジェナ)は、元ミュージシャンの父親がかつて行い、ストリートで伝説となっているライブイベント“RAD WEEKEND”を超えるイベントを自らの手でつくることを目標にしていた。そのために、最高のパートナーと出会いたい――そう思っていた矢先、杏は心打たれる歌声を持つ少女と出会う。
その少女の名前は小豆沢こはね(CV:秋奈)。道に迷って杏の父が経営するライブカフェ&バーを訪れた、宮益坂女子学園の1年生だった。杏からの熱烈なラブコールを受け、自分も同じ目標のためにステージで歌ってみたいと思うようになるこはね。ふたりは“Vivids”というユニットを組み、ストリートのイベントに参加しはじめる。
そんなふたりの前に現れたのが、杏と同様、“RAD WEEKEND”を超えるイベントを目標とする東雲彰人(CV:今井文也)と青柳冬弥(CV:伊東健人)の2人組ユニット“BAD DOGS”だった。“RAD WEEKEND”への覚悟を問う彰人はこはねたちの実力を試すが、“Vivids”のライブを見て、ふたりの覚悟を認めるように。
“Vivids”のこはねと杏も、“BAD DOGS”の彰人と冬弥も、最高のイベントをつくりたい想いは同じ。4人は初音ミクをはじめとするバーチャル・シンガーたちがいる“ストリートのセカイ”に導かれ、やがて4人組ユニット「Vivid BAD SQUAD」を結成して、活動をスタートする。
前述した杏と遥の幼馴染関係のほか、こはねだけが宮女の生徒である点、彰人と「25時、ナイトコードで。」の東雲絵名の姉弟関係に、冬弥が「ワンダーランズ×ショウタイム」の天馬司を尊敬していることなど、ほかのユニットとの接点も多い「Vivid BAD SQUAD」。「満たされないペイルカラー」や「天馬さんちのひな祭り」など、ここ最近のイベントストーリーではこれらの接点があるからこそのエピソードも多く、彼らがメインではないエピソードでの新たな一面にも注目したい。
価値観、生活環境、パフォーマーとしての経験の差……。メンバー間にさまざまな違いがあるからこそ、「Vivid BAD SQUAD」の物語はいつもアツい。そんな彼らが想いを共にする“最高のイベントの実現”に、どのように近づいていくのか? これから先の展開からも、目が離せない。
「Ready Steady」(作詞:q*Left、作曲:Giga)
ワンダーランズ×ショウタイム:“お客さんの笑顔”のために歌い踊るショーユニットは、テーマパークの危機も救えるか?
神山高校の2年生、天馬司(CV:廣瀬大介)は、自信過剰で目立ちたがり屋な性格。子どもの頃に見た劇団のショーに憧れ、世界一のスターを目指している。そんな夢への第一歩として司は、テーマパーク“フェニックスワンダーランド(通称フェニラン)”のキャストオーディションを受ける。無事オーディションに合格したかに見えた司が案内されたのは、テーマパークの片隅にひっそりと存在する寂れたステージだった。
そこで待っていたのは、底抜けに明るい少女、鳳えむ(CV:木野日菜)。実は司は、本来のキャストオーディションには不合格だったが、この寂れた“ワンダーステージ”でキャストをしているえむの目に留まったことで、ここに呼ばれたのだという。自分に相応しいステージはここではないと、辞退しようと考える司だったが、そのとき、ふたりは奇想天外な“ワンダーランドのセカイ”にいざなわれ、ここで初音ミクをはじめとするバーチャル・シンガーたちに出会う。ミクとKAITOによれば、司は“本当の想い”を忘れてしまっているのだという。
なんだかんだで行きがかり上、えむと共にワンダーステージに立つことになった司は、よりよいショーをするため、仲間を集めることに。その中で、自分の本当の願いが「スターになること」ではなく、「お客さんに笑顔になってもらうこと」だったと思い出す。
ステージの演出や脚本づくりを得意とする変わり者の天才少年・神代類(CV:土岐隼一)と、類の幼馴染で、美しい歌声を持つ毒舌少女・草薙寧々(CV:Machico)も仲間に加わり、4人の一癖も二癖もある少年少女が集うこのショーユニットは、「ワンダーランズ×ショウタイム」と名付けられるのであった。
イベントストーリーでは、類や寧々たちひとりひとりが着実に成長し、「ワンダーランズ×ショウタイム」のショーがフェニックスワンダーランドのお客さんたちに親しまれていく様子が描かれてきた。
しかし直近のイベント「スマイルオブドリーマー」では、フェニランが経営陣の方針により、老若男女に向けたテーマパークから、若者向けの場所に生まれ変わる予定であることが明らかに。司たちは、フェニランがみんなが笑顔になれる場所であり続けるため、できることを考えていく……。
すべてのユニットの中でも特に個性的な人物が揃っている「ワンダーランズ×ショウタイム」。そのやりとりは楽しいものが多いが、“人々の笑顔”というテーマに関わる描写は、とても切実だ。司たちの活動はこれから先、より多くの人々の心を動かすことができるのだろうか?
「セカイはまだ始まってすらいない」(作詞・ 作曲:ピノキオピー)
25時、ナイトコードで。:楽曲制作を通して癒えない“痛み”に立ち向かう4人に、“救い”は訪れるのか?
通信制の高校に通う少女、宵崎奏(CV:楠木ともり)は、インターネットで楽曲を発表する音楽制作ユニット「25時、ナイトコードで。」の作曲担当。かつて自分がつくった音楽が大切な人を傷つけてしまったトラウマから、「誰かを救える音楽」をつくるため、さらに楽曲制作にのめり込む生活を続けている。
「ニーゴ」のメンバーは“K”のハンドルネームで活動する奏を合わせて4人。奏以外に、作詞担当の“雪”、イラスト担当の“えななん”、動画制作担当の“Amia”がいて、いずれもお互いの本名は知らず、リアルでの面識もない。それでも、チャットを通してのやりとりと、送り合う成果物を通して、クリエイターとして付き合ってきた。
そんなある日、突然“雪”がチャットに一切のログインをしなくなってしまう。心配した奏、えななん、Amiaが雪の痕跡を探していると、気づけば3人は見知らぬ空間に立っていた。真っ白な髪をした初音ミクが存在するその空間は雪――朝比奈まふゆ(CV:田辺留依)の心を映した、無機質な“誰もいないセカイ”だった。
誰にでも好かれる“いい子”を演じながらも、誰にも言えない心の空白を抱えていたまふゆは、その苦しみに耐えられなくなり、すべてを投げ出してセカイへと閉じこもっていたのだった。そんなまふゆをいまはまだ救うことができないと胸を痛めながらも、いつかきっと救いになる曲をつくると約束する奏。えななんが東雲絵名(CV:鈴木みのり)、Amiaが暁山瑞希(CV:佐藤日向)と、全員の本当の名前も明らかになり、4人はリアルでも直接会う、これまでよりも少し深い関係になった。
ほかのユニットよりもさらにシリアスな心の問題が描かれる、本作において一際異質なユニットと言える「ニーゴ」。彼女たちの場合、イベントストーリーなどでほかのユニットのメンバーと関わる際も、一種独特なエピソードが生まれている。
宮益坂女子学園の体育祭の様子が描かれる「走れ!体育祭!~実行委員は大忙し~」では、笑顔で挨拶をするまふゆに対して「ワンダーランズ×ショウタイム」のえむが、極度に怯える様子が描かれた。誰かを楽しませ、笑顔になってもらいたいと願っているえむには、上辺だけ取り繕った笑顔に気づける、なんらかの感覚が備わっているらしい。
また、神山高校の文化祭が描かれる「KAMIKOU FESTIVAL」では中学時代、周囲に馴染めなかった瑞希と類が屋上で同じ時間を共有していたことが明らかに。
互いの存在が“生きていく支え”にもなっている奏とまふゆ、そして自身も問題を抱えつつも、ふたりに寄り添う絵名と瑞希。いつか4人が本当の意味で“救われる”日は来るのだろうか?
「悔やむと書いてミライ」(作詞・作曲:まふまふ)
今後のストーリーへの期待:別々の“セカイ”を行き来できる日は来る?
すでにプレイしている人ならばご存知だと思うが、今回言及したストーリーやキャラクター間の関係性は、作中で描かれるうちのごく一部に過ぎない。エリア会話や各メンバーから読むことができるサイドストーリーなどで描写されるやりとりについても、隅々まで楽しんでほしい。
ユニットごとの物語の新展開と同様に、異なるユニットのキャラクター同士のまだあまり掘り下げられていない描写についても、ますます期待が高まる「プロセカ」のストーリー。3月30日(火)の19時より生配信される公式番組「ワンダショちゃんねる ハーフアニバーサリースペシャル」で発表された、新情報の数々も要チェックだ。