日本ファルコムが6月24日に発売したPS4用ソフト「那由多の軌跡:改」。PSPで発売された「那由多の軌跡」を現行機種で遊べる本作の魅力を紹介する。
2012年当時、「アクションRPG」スタイルを軸とした「軌跡」シリーズの意欲作として発売された「那由多の軌跡」。20年を超える「軌跡」シリーズの歴史の中でも特殊な立ち位置のタイトルということもあって、発売当時にプレイできていないという人も少なくないのではないだろうか。
そんな同作がおよそ9年の歳月を経て、現行機種であるPS4で「那由多の軌跡:改」としてリリースされることになった。HDリマスターやグラフィック表現の強化、フレームレート60fpsの対応、各種UIのブラッシュアップなど、細部にわたって調整が施されている。
発売当時もプレイレポート記事をお届けしてはいるが、ここでは改めて本作をプレイした上で、当時感じた印象などを交えながら本作の魅力に触れていきたいと思う。なお、基本的なゲーム説明などはPSP版当時の記事を参照いただければ幸いだ。
ファルコムならではの遊びやすさとバリエーションを両立したアクション
「那由多の軌跡」は、当時ストーリーARPGと銘打っている通り、ステージクリア型のアクションを中心に、主人公のナユタが暮らす残され島でのクエストなどのサブコンテンツを楽しめるかたちで構成されている。
シンプルなゲーム進行にストーリーが連動しているため、全体的に遊びやすい構造になっているほか、難易度設定も切り替えることができるので、アクションが苦手な人から歯ごたえのあるアクションを楽しみたい人まで、幅広いニーズに応えている。
ファルコムでアクションRPGといえば代表格として挙げられるのが「イース」シリーズだが、本作はどちらかと言うと「ツヴァイ」シリーズをイメージさせるものになっている。やや等身の低い可愛らしさをイメージしたキャラクターモデルで、アクションやギミックのバリエーションを楽しめるのが特徴的だ。
「那由多の軌跡」におけるアクションの特徴は、ボタン連打のシンプルな連続攻撃をベースとしたナユタの剣技アクションと、ノイが放つ強力な四季魔法(アーツ)の切り替え。ナユタは操作の中で攻撃のバリエーションが拡張していくのに対して、ノイはスロットにアーツをセットするためシチュエーションに応じた対応が求められる。四季魔法は回数制限も設けられているため、両者のバランスが絶妙で、直感的なプレイでも十分楽しめる内容だ。
特にボス戦での応酬はアクションRPGの醍醐味と言える、ギミックとアクションの絡みがしっかりと練られていて、上手く進められた時の楽しさはひとしお。また、基本的に独立したステージとしてプレイできるので、ステージ全体を通じた体力管理などを気にしなくていいのも嬉しいところ。
単純な比較はできないものの、フレームレート60fpsの対応によって、アクションの感度も向上しているように感じる。操作をしていてストレスに感じる部分も少なく、改めてギミックをクリアしながら進めていく過程を楽しむことができた。
なお、ベースとなるグラフィックはPSP版当時がベースとなっているが、イベントの随所に登場するグラフィックがリファインされていたりと、現行機でも楽しめるような配慮がなされている。また、一部を除いてゲーム中も残され島とテラの行き来ができるため、目的に沿ってサクサクと遊ぶことができる。
どこかノスタルジックな気持ちにさせる世界観と、等身大のスケールで描かれる冒険
ナユタとノイは、テラ(ナユタたちが言うところのロストヘブン)の各地にある大陸で行き来しながら冒険を繰り広げることになるが、各大陸のロケーションに多様性があり、同時にシチュエーションに合わせた音楽もプレイを彩ってくれる。また、四季の切り替えによるステージの変化もゲームにおけるバリエーションとなっている。
ゲーム内で描かれる世界観は、「軌跡」シリーズとは明確に異なったものになっており、プレイするにあたっての予備知識は全く必要ない。その上で、伏線含めてストーリーはしっかりと完結するため、本作のみをプレイするのももちろん大丈夫だ。
上記の要素を備えながらも、なぜ「軌跡」シリーズの名をなぜ冠しているのかという点については、ストーリーはもちろんのこと、クエストなどのゲーム体験を通じて、作品世界のキャラクターと触れ合える点にもあるかと思う。好奇心旺盛なナユタの視点を通して、さまざまな体験を経て世界の謎に触れていく過程は、シンプルでありながらもすんなりと浸ることができる。
多くのキャラクターが登場するわけではないため、作中で描かれるストーリーは決してボリューム自体が大きいものではないが、それだけに濃密な体験を味わえる。キャラクターにもそれぞれ秘められた背景があり、RPGならではの展開の飛躍を楽しめることだろう。
遊びやすくまとまった、アクションRPGの良作
PSP版当時も感じていたが、ストーリーをしっかりと楽しめるアクションRPGとして仕上がっており、一通りプレイしての満足度も高い本作だが、実は2周目以降で拡張される要素も多く、トータルのボリュームも十分だ。
現在のファルコムといえば「軌跡」シリーズに代表されるターン制のRPGをイメージする人も少なくないだろうが、その歴史を辿ってみれば数多くのアクションRPGを手掛けており、その中でも「那由多の軌跡」は間口の広さとやり応えの両面でバランスよくまとまった作品となっている。
ちなみに、「軌跡」シリーズから近年リリースされた「英雄伝説 閃の軌跡IV -THE END OF SAGA-」や「英雄伝説 創の軌跡」での描写から、「軌跡」シリーズと「那由多の軌跡」の関連性についての考察もファンの間では生まれつつあるが、正直なところ現状では不明な点も多い。そのあたりの補助線という意味で、「軌跡」シリーズのファンもぜひプレイしてほしいところだ。
現行ハードでプレイできない過去の良作が増えていく中で、新作のリリースと並行して旧作の移植を続けるファルコムだが、その中でも本作は特にプレイする機会が少なかったはずなので、こうして多くの人が触れる機会をまた得られたことを、1ファンとして嬉しく思う。