7月28日にBunkamura オーチャードホールにて「サクラ大戦25周年オーケストラコンサート~田中公平作家生活40+1周年記念~」が開催された。ここではそのレポートをお届けする。
このコンサートは、もともと田中公平氏の作家生活40周年である、2020年に開催される予定であったが、時世のこともあり延期に。このタイミングでの開催となった。
さて、みなさんは「サクラ大戦」と聞いてなにを思い浮かべるだろうか? 筆者は女の子が歌い、踊る、キラキラと輝くステージと“霊子甲冑”に乗り込んで命をかけて戦う姿のふたつのイメージが強かった。ただ、今回のコンサートの多種多様な曲を聴いて、このシリーズが多彩な文化を描いてきたことを思い出した。
「サクラ大戦」「サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~」は帝都、「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」はパリ、「サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~」はニューヨークを舞台にしているが、どの曲も、その国の発展で生まれた文化の楽しさや素晴らしさを伝えてくれる。
「サクラ大戦」というシリーズ自体が、バラバラだった仲間の個性を認め、お互いの短所よりも長所を称え合うようになっていくストーリーだ。音楽からもその忘れてしまいがちな尊さを想起させてくれた。
田中公平氏と日髙のり子さんによる軽快なトークも
最初の曲は“序曲”。「新サクラ大戦」の曲をこのコンサートのために編曲したのだという。その後、田中公平氏とエリカ・フォンティーヌ役の日髙のり子さんが登壇。「今日は何の日であるか?」というクイズに公平氏が「土用の丑の日でしょ?」とふざけるなど、息のあったトークで会場を盛り上げた。なお、7月28日はシリーズの顔である真宮寺さくらの誕生日だ。
普段は帝都の曲が多いので、今日は巴里と紐育の曲もたくさん披露すると伝える公平氏。「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」や「サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~」はこれまでゲーム内の音源でしか再生されていないので、楽器での演奏は初。その意味でも貴重な機会となった。
まずは「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」から“巴里の恋人たち”“巴里華撃団、デビュー!”“道化”“希望の門→リボルバーカノン起動”の4曲を演奏。パリをイメージした優雅な曲に酔いしれることができた。
曲の終わりに登場した公平氏と日髙さんが「いろいろな敵が登場したけどシゾーしか思い出せない」と言っていたのが個人的に笑いのツボであった。シゾーはウサギの怪人で最初に登場したボスであったが、その後は関連作やクロスオーバー作品でも復活して登場、また新規のテーマソングを引っさげてライブにも出演しているなど愛されているキャラクターだ。
また、後半に演奏された曲の感想で、日髙さんがエリカの声で「はじめての出撃を思い出しちゃいました~!」と言うファンサービスも。公平氏の「いつまでその声を出すの?」というツッコミで会場のファンを笑わせた。
続いて「サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~」から、“ネオンの照らす街”“リトルリップシアター”“コーヒーブレイク”“紐育華撃団、レディー・ゴー!!”“恋する紐育”“地上の戦士(最終決戦バージョン)”を披露。ニューヨークをイメージした華やかな曲たちがオーケストラの豪華な演奏でよみがえった。
なお、「サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~」は2005年にPS2で発売されたタイトルだが、移植やリメイクなどはされていないので、久々に曲を聴いたという人もいるかもしれない。筆者もPS2を引っ張り出してあのド派手な空中戦を遊びたくなってしまった。
次は「サクラ大戦」の曲。“サクラ色協奏曲”(サクラ色コンチェルト、時は忘却の彼方に、作戦会議、帝都のために、花咲く乙女、“勝利!)が演奏された。「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」や「サクラ大戦V ~さらば愛しき人よ~」の曲も良かったが、帝都を舞台にした「サクラ大戦」は故郷に帰ってきたような安心感があるから不思議だ。帝都を舞台にしていることもあるが、「サクラ大戦」自体がシリーズのはじまりとなる作品なので、強くそう感じるのかもしれない。
休憩を挟んで2部へ。まずは「サクラ大戦The Movie」の“エンディング”が演奏された。ゲームの曲だけかと思っていたので、映像作品の曲から選別されたのはうれしいサプライズだった。
次はボーカル曲の“未来(ボヤージュ)”を日髙のり子さんが披露した。「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」のエンディングで前向きな別れを描いた曲だ。2001年発売の作品だが、日髙さんは当時と変わらない歌声で、ファンをあの頃にタイムスリップさせてくれた。
続いて、舞台「新サクラ大戦 the Stage」の帝国歌劇団・花組が登場し、レニ・ミルヒシュトラーセの曲“素晴らしき舞台”。ここでは、公平氏がボーカルを務めたが、その圧倒的な声量はすさまじかった。作曲家としての顔しか知らなかった人は、さぞ驚いたのではないだろうか。
その後は帝国歌劇団・花組が“花咲く乙女”“夢のつづき”“新たなる”をオーケストラをバックに歌ったが、前回のライブよりもさらに声が通るようになっていたのが印象的だった。日々、成長する彼女たちの今後の活躍にも期待が高まった。
また、“新たなる”ではエリック・ミヤシロ氏によるトランペットも。迫力の音圧でファンを魅了した。
コンサートは「新サクラ大戦」の“ラスボスのテーマ”で幕を下ろし、アンコールへ。
公平氏が日髙さんに「まだ歌っていない曲があるでしょ?」「おはようボンジュール(エリカおはようダンス)を歌ってないよ」と切り出し、日髙さんも「マラカスはありますかね?」と冗談を交わした。実際に歌ったのは“エリカおはようダンス”ではなく、「サクラ大戦3 ~巴里は燃えているか~」のオープニング“御旗のもとに”。「ほかの4人の分も背負って歌います」という言葉通り、迫力の声とダンスでファンを楽しませてくれた。
そして、次の曲が大きなサプライズで「サクラ革命」の“誠花よ夢よ咲き誇れ”であった。MCなどで説明が無かったことやゲームのクライマックスで流れる歌ということもあり、曲自体を知らない人も多かったかもしれないが、「サクラ革命」とこの曲について言葉で説明しなかったのはよかったと思っている。「サクラ革命」のサービス終了の悲しさなどといった今はノイズとなる情報を入れずに曲に酔いしれることができたし、公平氏の歌から「サクラ」のすべての曲を愛していることは完璧に伝わった。
最後はサクラ大戦歌謡ショウの第二回公演「つばさ」のテーマ曲である、“つばさ”。公平氏がアンコールで必ず歌う曲だが、聴く人に希望を与えるこの曲は、今だからこそ、響くものがあった。
時世による息苦しさから、人々はみな余裕のない日々を送っている。そんななか、楽しいと思うことをしていいのだろうか? と悩むときもあるかもしれない。
しかし、この“つばさ”と、この日のコンサートで流れたシリーズの歴史を紡ぐ曲たちは、文化を肯定し、人が豊かに生きる術を思い出させてくれたようにも感じる。ファンが自然と手拍子をする姿は活力のようにも思えた。
公平氏と「サクラ大戦」シリーズに改めて感謝するとともに、今後も人々の生きる希望になってくれることを望みたい。
なお、今回のコンサートは8月1日(日)までに配信チケットを購入すると、8月2日(月)までアーカイブ視聴が可能。気になった人はチェックしてみて欲しい。
配信チケット購入ページ
https://eplus.jp/sf/detail/3429850002-P0030002?P6=001&P1=0402&P59=1
セットリスト
M1 新サクラ大戦 BGMのメドレー
M2 巴里の恋人たち
M3 巴里華撃団、デビュー!
M4 道化
M5 希望の門 → リボルバーカノン起動
M6 ネオンの照らす街 → リトルリップ・シアター
M7 コーヒー・ブレイク
M8 紐育華撃団、レディー・ゴー!!
M9 恋する紐育
M10 地上の戦士(最終決戦バージョン)
M11 サクラ色協奏曲
M12 サクラ大戦 劇場版 エンディング
M13 未来(ボヤージュ)
M14 素晴らしき舞台
M15 花咲く乙女~夢のつづき
M16 新たなる
M17 檄!帝国華撃団<新章>
M18 新サクラ大戦 ラスボスのテーマ
~アンコール~
M19 御旗のもとに
~アンコール2~
M20 誠花よ 夢よ 咲き誇れ → つばさ~ラストバージョン