ソニー・インタラクティブエンタテインメントから2021年8月20日に発売される、「Ghost of Tsushima Director’s Cut」の壹岐之譚をプレイしてのレビューをお届けする。
「Ghost of Tsushima Director's Cut」(以下、「ツシマ」DC版)は、SIEワールドワイド・スタジオの一つである、Sucker Punch Productionsが開発し、2020年7月に発売された「Ghost of Tsushima」のバージョンアップ版。新エリア“壹岐”が追加されるほか、PS5に対応しており、既にPS4版を持っている人向けに、PS5へのアップグレード版なども発売される。
本作の魅力をひとことで語るのは難しいのだが、1200年頃の鎌倉時代に実際に起こった対馬への蒙古(モンゴル)襲来をベースに、侍である境井仁の生き様を描いた作品だ。日本の美しい四季が対馬というひとつの島に融合したその世界観は、発売当時から高く評価された。
本作はオープンワールドになっており、どのように物語を進めていくかはプレイヤー次第。ひたすら蒙古と戦うのも良し。美しい景色を眺めるのも良し。装備や護符などのアイテムを収集するも良し。とにかく少しでもステータスの強化を進めるのも良し。胸を打つ物語の数々を楽しむも良し。
「多彩な遊び方が出来る」というのは、オープンワールドものでは至極当たり前のことだ。だが、「ツシマ」にはそれ以外の魅力が数多くあり、だからこそ発売から1年が経った今でも多くのファンが遊び続けているタイトルである。
本稿では「ツシマ」本編のレビューについては省いているため、本作を未プレイを人はまずこちらのレビューに目を通してもらえれば幸いだ。
少々前置きが長くなったが、1年前に「ツシマ」に魅了され、思い立ったが吉日とばかりに対馬から壱岐へ旅をしてきた筆者が(なおその時点でDLCについては発表されておらず、壱岐に寄ったのは偶然)、「ツシマ」DC版で新たに追加されるエリア“壹岐”を歩きつくした、そのプレイレビューをお届けしよう。
※注意:壹岐は、現在“壱岐”と書くのが一般的だが、本作では旧国名の壹岐を使用している。広く一般的な壱岐島を指す時は、“壱岐”表記とする。
なお、このプレイレビューは物語のネタバレを含まない。プレイにはPS5(高解像度モード)を使用しており、PS5ならではの要素にも触れている。
DC版最大の追加要素となるのが、新シナリオ“壹岐之譚”。日本本土と大陸の中間に位置する対馬と壱岐は、度々大陸との争いの舞台となってきた歴史があり、ゲーム本編ではその名の通り対馬が舞台に、そして新シナリオでは主人公の仁が壹岐の島を舞台に、呪師「オオタカ」が率いる蒙古軍と戦うこととなる。
仁は対馬にて、侍の常識が通用しない蒙古に対抗するべく、侍の矜持を捨てる。それはいわゆる闇討や毒殺など、侍にとっては邪道な手段で敵と戦うことだ。その戦い方を「お侍様の戦い方じゃない」と言われた仁は、誉れある侍としての自分と、侍としての生き方を貫くだけでは蒙古には勝てないという現実に、挟まれる。
そんな仁の生き様を描いたメインストーリーとは異なり、主に仁の過去にフォーカスが当たっているのが壹岐之譚。
過去に壹岐を訪れたことのある仁は、壹岐で過ごしていく中で、自身の記憶に刻まれた様々な心の傷と対峙することを余儀なくされる。やがては、境井家の過去をも思い出し始める仁。壹岐と境井家、そして仁に、何があったのか。プレイヤーは物語の中でそれを知っていくこととなる。
壹岐之譚は、本編中で豊玉に到着後であればいつでも行けるようになるので、まずはその手順を紹介しよう。
1. メニュー画面から「進行状況」タブを選択。
2. 「壹岐之譚」を開始できるというポップアップが表示されるので選択後、目的「彼の地へ」を選択し、目的地に向かう。
アップデート版での購入の人も同じ手順になるので、覚えておこう。また、PS4版からPS5版へセーブデータの移行もできるので、これを機にPS4版からPS5版に乗り換えたいという人も安心してほしい。
ただし、壹岐之譚を進めようとすると「壹岐に行くとしばらく対馬には戻れないこと」「壹岐の敵は強いこと」を注意される。この点についてのみ先に結論を述べてしまうと、事実、壹岐の敵は非常に強い。これだけを念頭に置いておいてほしい(難易度の詳細は後述する)。
壹岐でも、基本的なゲームの進め方は本編と変わらない。壹岐に到着したら程なくして、自由に島内を旅することが出来る。メインのストーリーを追っていくも、壹岐の島を隅々まで探索するも、プレイヤー次第。
だが、探索と言っても色々ある。筆者はまず、壹岐の地図を開いた。島の南東に書かれたエリア名を見てひとつ頷き、他には目もくれず、真っ先にそこを目指した。それは本稿の冒頭に使用した画像の場所・“猿岩”だ。
猿岩とは壱岐に実在する観光名所で、猿の横顔に見える巨大な岩。筆者も実際に壱岐で猿岩を見てきたので思い出深い場所であり、ゲーム中で見事に再現されている名所に、胸が熱くなった。もしも壱岐に実際に行ったことがある人は、ぜひ思い出の中の猿岩が再び眼前に広がる喜びを感じてほしい。
もちろん、猿岩だけに限った話ではない。他の名所もいくつか再現されているので、色々探し回って見よう。
更にゲーム中では、様々な美しい風景がプレイヤーの目を潤してくれる。色鮮やかな、花畑。焼けつくような、夕陽。どこまでも続く、水平線。だがその海上には、蒙古の船が見える。どんなに美しい風景だろうと、ここは今過酷な戦場であるのだということを、忘れさせることはない。
「ツシマ」の世界は、ただ闇雲に美しいだけではなく、仁の前には時に暗い空と冷たい海が立ちはだかることもある。壹岐の地でも、それは変わらない。
目を覆いたくなるような風景も、しばしば飛び込んでくる。あまりに惨たらしく、まるでゴミのように人が死ぬ。だが、それは”戦場のリアル”でもある。それらも全て含めて本作の魅力を高めており、この世界は決して美しさだけで沢山のプレイヤーを虜にしているわけではないのだ。
壹岐という新たな地で、新たな美しさと、新たな残酷さに出会うことは間違いない。時には息を飲み、息を潜め、息を抜きながら、壹岐の旅を満喫してほしい。
壹岐之譚では、前述の通り対馬よりも敵が強くなっている。豊玉まで辿り着けば解放できる要素ではあるが、本作を初めてプレイする人が豊玉にたどり着いた時点で壹岐之譚に挑もうとすると、相当な苦戦を強いられるだろう。
なお筆者は周回プレイのデータがまだ豊玉に辿り着いていなかったため、今回のレビューのためにメインストーリーを終えた直後のセーブデータを引っ張り出してきた。
体力や武具の強化も7~8割ほど強化が終わっており、暗具はすべて最大数まで持てるように強化完了済み。対馬での戦いはそろそろ物足りなさを感じていたので、難易度は“難しい”がデフォルト、手こずる場所では“普通”にしていたのだが、壹岐に入って10分後、筆者の指は躊躇うことなく難易度“易しい”を押していた。
その理由のひとつとして挙げたいのが、壹岐之譚から追加された“呪師”。この呪師は敵集団の奥まった所にいることが多く、そこから自軍を強化する経を唱えてくる。この”自軍を強化する経”というのが、「強化というより、ほぼ無敵では……?」と思うほどだ。
強化の経の効果は、難易度を”易しい”にしても、あまり変化を感じられなかった。つまり“易しい”を選んだところで、呪師がいる限り敵はほぼ無敵状態なので、ゴリ押しは出来ない。呪師がどこにいるのかを素早く突き止めて、倒さなければならないのだ。
だが、呪師は外見は他の蒙古兵とそう変わらないため、遠くから耳を澄ましてもどれが呪師なのかは判別がつきにくい。
近接戦がメインのバトルスタイルの場合、呪師に辿り着くまでは攻撃がほぼ入らないので、呪師を見つけて倒すまでは敵兵をトレインしていくことになる。呪師を倒し終わって後ろを振り返れば、そこにいるのは大量の蒙古。
こんな戦闘が多く発生するのが、壹岐之譚である。蒙古の拠点の各所に、大体ひとりは呪師がいると思っていいだろう。しかも壹岐にいる蒙古兵の大半は剛兵タイプで、ほぼ怯まない。もちろん言うまでもないが、剛兵だからと言っても、月の型はあまり有効ではない。更にこの剛兵たち、戦闘の途中だろうが盾を持ったり、双剣になったり、槍になったりと、様々な武器に持ち替えてくる。難易度”易しい”であろうと、攻撃に全く容赦がない。
仁の存在が感付かれるまで呪師は経を唱えないので、弓などの遠距離攻撃で少しずつ数を減らす戦法は、以前よりも一層重要だ。だが壹岐の剛兵たちは武器を持ち替えるため、「先に弓兵を倒しておく」という、対馬の地で培った安全策は、あまり役に立たない。目に見える弓兵を倒しておいたところで、残っていた敵が弓を持って仁を狙ってくる。
筆者の残念な腕前のせいもあるが、ひとつの蒙古の拠点を落とすのに、弓矢や吹き矢から近距離暗具まで、大半を使い果たすくらいの温度感だ。難易度”易しい”でもこの有様なので、難易度が上がれば更に消耗は激しくなるだろう。だからこそ、これまでなかなか使う機会がなかった武器たちの出番でもある。呪師という新たな強敵を相手に、色々な戦い方を模索してみてほしい。
なお、PS4版からPS5版へ移行する場合でも、ボタンの変更点はほぼない。ジャンプは×ボタン、回避は〇ボタンのままなので、慣れた操作で安心して遊ぶことが出来る。メニュー画面での決定ボタンが×ボタンになっている程度だ。
壹岐の旅では、様々な新要素が待っている。その全てを紹介してしまっては出会う楽しみがなくなるので、ここではいくつかの要素を紹介するに留めよう。
R2ボタン長押しでオブジェクトに鉤縄を引っかけ、更にL2を長押しすることでオブジェクトを引き倒す、という操作が登場。これまでになかった操作のため、長い間遊んできた人ほど”引き倒す”という操作自体を失念しがちなので、注意してほしい。特に神社など、ストーリーの本筋とは外れたやり込み要素では、オブジェクトを引き倒して道を作っていく、この要素が鍵となる。
やり込み要素でのルート取りが複雑になっているため、難易度が上昇している。目的地にたどり着くためにありとあらゆるルートを試し、引き倒しの存在を思い出そう。
本編でもタッチパッドから笛を吹くことが出来たが、それとは別物。壹岐での“笛を吹く”とは、和歌などと同じ収集要素として登場する。
笛の旋律にあわせてコントローラを傾け、ジャイロセンサーでポインタを合わせるのだが、何気ない操作に見えて、結構「笛を吹いている」という気分になれる、非常に面白い要素だ。
特に最後の吹き終わりの余韻は、実に良い。全神経を集中させながら次第に小さくなっていく音を聴いていると、手の中にあるコントローラが本物の笛のような気にすらなる。和歌と同様の収集要素なので、一度完了してしまうと再プレイは出来ない。スクリーンショットを撮影したい場合などは、注意してほしい。
敵軍に向かって馬を全力で疾走させると、一度に複数の敵に大ダメージを与えられるという、”馬力”が登場。馬力は兵術カテゴリに含まれ、他の兵術と同様に技量ポイントを振って強化することが出来る。馬力は非常に強力だが、発動するのに気力を消費する。
稽古台などと同様、壹岐の各所に点在する、弓の修練場。時間内に全ての行灯を射抜くのだが、より短い時間で達成するとその分護符に力が貯まる。黄金は7秒以内、白銀は15秒以内……などとなっているが、行灯の数は10個前後あるので、そう簡単ではない。
他にも壹岐にしかない要素は多数あるのだが、のんびり壹岐を周りながら自分自身の眼で発見していってほしい。スクリーンショットを掲載するだけでネタバレになってしまいそうな要素もあるためあえて掲載しないが、筆者には現状まるで完了方法がわからない要素もいくつかあった。他の猛者の冥人たちに、託したい。
壹岐では、新しい動物たちが登場する。そして、とある要素を終えることで、その動物たちといつでも触れ合えるようになる。
「そんなこと?」と、思うなかれ。「ツシマ」発売1周年を記念してプレイステーション公式ツイッターアカウントが行ったキャラクター人気投票では、なんと主人公の仁を差し押さえて、狐が1位に輝くというほど、本作では動物が愛されている。「ツシマ」はもう、動物を抜きに語れなくなっているのだ。
『Ghost of Tsushima』発売1周年記念#ツシマキャラクター人気投票 結果発表!
— プレイステーション公式 (@PlayStation_jp) July 19, 2021
最も多くの誉れを獲得したのはツシマのアイドル、狐さま
投票数合計87,106票!たくさんのご参加誠にありがとうございました!#ゴーストオブツシマ #GhostofTsushima pic.twitter.com/nG9jveCdb4
そんな発売当時からの絶大な狐人気もあってか、壹岐では更に様々な動物を愛でることが出来るようになった。
まずは、壱岐にて日本最古のイエネコの骨が発見されたことに由来しての登場だと思われる、猫。
猿岩などに由来していると思われる、猿。
鹿は本編に続いての登場だが、撫でられるのは壹岐だけ。
どの動物も、なんと可愛らしい。しかも嬉しいことに、一度“撫でる”要素を解放した動物は、そこに行けばいつでも撫でられるのだ。猫だって何度でも撫でられるし、猿には無限に餌をあげられる。だが、残念ながら現状では、対馬に戻っても狐を撫で直す手段はないようだ。試しに対馬の地でまだ未開放だった狐の巣と祠に行ってみたが、一度撫でたあと、狐の姿は消えてしまった。
そして本作には、可愛い動物たちとの思い出を残すため(だけではないのだが)、フォトモードがある。本編からある要素だが、「ツシマ」では今でも非常に多くもファンが対馬の美しい風景や、仁の姿などをフォトモードで楽しんでいるので、改めて紹介しておきたい。
フォトモードは、コントローラの右ボタンで起動。起動直後は、ゲーム内での天気と時間がそのまま反映される。
そのままの風景を撮影しても良いのだが、天候を変えたり、時間を変えたりできるので、気になる項目をかたっぱしからいじってみると良い。
プレイに使用しているモニタの設定などにもよるが、ゲームの画面は思っていたよりも暗いことが多いので、露出を上げたり、カラーフィルタを変えたりして、まずは一枚撮影してみよう。
同じ画面でも、時間を変えるだけで見栄えが変わることもある。前述の猿のスクリーンショットの没ショットとして、時間が昼間のものをお見せしよう。
これが何故没かというと、画面が明るいせいで「壹岐」のスタンプがまったく目立たなくなってしまっているからだ。だが、それは筆者のこだわりであり、昼間のままのスクリーンショットのほうが好み、という人もいるだろう。そこも含めて、スクリーンショット一枚に、プレイヤーの個性が現れる。
本記事はプレイレビューのため、そこまで構図やフィルタにこだわったスクリーンショットは撮影していないが、それでも綺麗だと感じた風景で、ちょっとフォトモードを起動して少しカメラの角度などを調整して、ポチっとするだけで、まるでカメラマンにでもなったかのような風景を簡単に撮影することが出来る。
このフォトモードによる撮影も本作の魅力のひとつなので、「ツシマ」の世界をより一層楽しんでみてほしい。
「ツシマ」DC版がPS5に対応したことは前述の通りだが、改めてPS5でのパワーアップ要素をお届けしたい。その最たるは、DualSenseに対応したことによる臨場感だ。
ふとした効果音などが、DualSenseのスピーカーから鳴る。たったそれだけのことなのに、音の表現力が増し、より一層プレイへの没入感が得られるようになった。ホームシアターシステムかPS5対応の3Dオーディオ用ヘッドフォンがあれば、本作の音のクオリティの高さもしみじみ感じることが出来るだろう。
繊細な振動によって、馬に乗っている時の揺れなどもリアルになった。筆者はコントローラが激しく振動するのは苦手なのだが、本作ではコントローラの振動の強弱が選べるのは非常に有り難かった。これまではオンかオフかの二択だったので、泣く泣くオフにするしかなかった場面もあったのだが、本作では振動を弱に設定することで全く問題なくプレイ出来ている。
弓を引いた時のトリガーエフェクトの感覚なども、非常に心地良かった。トリガーエフェクトも強・弱・無の3つから選べるので、好みに合わせて設定してほしい。
なお、一部のゲーム内のシステム設定は引き継がれていなかった。筆者は“カメラは絶対リバース族”だが、リバースの設定などは引き継がれずノーマルに戻っていたり、ロックオンの有無なども変わっていた。PS4版からPS5版に移行した場合、「設定」欄の項目は一通り見直しておいたほうがいだろう。
PS5ならではの高い表現能力は、「ツシマ」との相性が良い。視覚、聴覚、触覚との3段階で訴えてくる体験は更にリアリティが増し、深く「ツシマ」の世界へと誘ってくれる。もしもPS5を持っている人は、躊躇うことなくPS5版へのアップグレードで遊んでほしい。
筆者は「ツシマ」好きをこじらせて対馬と壱岐に行ってしまったほどだが、恐らく既に「ツシマ」を遊んでいる人ならば、この気持ちは少なからず理解できるだろう。
残念ながらご時世的に気軽に「対馬と壱岐に行ってほしい!」と言えないのが残念だが、本作には「いつか機会があったら対馬と壱岐を訪れたい」――そんな風に思わせられる魅力がある。
「聖地巡礼」と言ってしまえばそれまでではあるが、筆者はミーハーでありつつも聖地巡礼をするタイプではない。なのに何故わざわざ東京から対馬(と壱岐)まで行ったのかというと、ゲームの「ツシマ」を通じて”対馬”という土地に深い興味を抱いたからに他ならない。どこからフィクションで、どこまでリアルなのか、それを知りたいと思わせられた。
もちろん「ツシマ」は、対馬という土地と蒙古襲来という史実をかけあわせて作られた、フィクションである。それを理解してなお、ゲームと現実の境目を実際に対馬の土地で感じたいと思わせられるのは、オープンワールドで対馬の島を自在に駆け巡れることや、徹底的に排除されたUIなど、ゲームへの没入感を高めたことに、起因しているのかもしれない。
解っていながらも、境目を知りたい。だから今回の壹岐之譚でもまず真っ先に、猿岩があるのかを探しに行った。自分の知っている風景はあるのか。なくてもいい。あってもいい。どちらでも構わない。ただ、”知りたい”だけなのだ。そもそも最初から”境界”を司る存在と共にこの世界を歩んでいたのだから、「境目を知りたい」という欲はなんら不思議ではないだろう。
そしてその体験は、壹岐之譚でも変わらない。筆者は対馬旅行ついでに壱岐を回ってしまっていたので本作よりも先に壱岐を知っていたが、それでもやはりゲームと現実の境目を駆けずり回った。知っている風景も、知らない風景も、全てが楽しい。やはり、どちらでもいいのだ。「ツシマ」という体験に必要だから在り、不要だから無かったという、それだけのことに過ぎない。
壱岐の島は対馬よりも大分狭いけれど、対馬の島をどこまでも走ったあの時の楽しさから更に3倍返しくらいになって我々の前に提示されたのが、壹岐之譚のように感じた。狭い島ながら、対馬で楽しかった要素と壹岐ならではの新要素とが融合し、更に奥深い体験をさせてくれる。
まだ「ツシマ」をプレイしていなかった人たちは、DC版を機にぜひ遊んでみてほしい。そして壹岐之譚を楽しみにしている冥人たちには、改めて壹岐が素晴らしい地で、そこでは様々な体験が待ち受けていることを告げよう。